
介護報酬の臨時改定とは
介護報酬の臨時改定とは、通常3年に1度の定期改定サイクルを待たず年度途中で報酬を見直す異例の措置。2026年6月実施(改定率+2.03%)を例に、定期改定との違いと実施理由を解説します。
介護報酬の臨時改定とはの回答カプセル
介護報酬の臨時改定とは、本来3年に1度の定期改定サイクルを待たずに、年度の途中で介護報酬を見直す異例の措置です。2026年度は令和9年度(2027年度)が次の定期改定にあたりますが、深刻な人材不足と物価高騰への対応を急ぐため、2026年6月に処遇改善加算を中心とした臨時改定(改定率+2.03%)が実施されました。
目次
介護報酬の臨時改定の概要
介護報酬の臨時改定とは何か
介護報酬は、介護保険サービスの対価として国が定める公定価格です。この単価(単位数)は、社会保障審議会介護給付費分科会での議論を経て、通常は3年に1度、社会情勢や事業所の経営状況、物価動向などを踏まえて見直されます。これが「定期改定」です。
これに対して「臨時改定」は、次の定期改定を待たずに、年度の途中で報酬の一部を見直す異例の措置です。介護保険法上、報酬改定の時期そのものに制約があるわけではなく、厚生労働大臣が社会保障審議会に諮問し答申を得れば、定期改定のタイミング以外でも改定は可能です。ただし実務上は財源(予算)の裏付けが必要なため、補正予算の成立などを機に実施されるのが一般的です。
なぜ2026年に臨時改定が行われたか
2026年度の次の定期改定は本来、令和9年度(2027年度)に予定されていました。しかし政府は令和7年度補正予算に「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」を計上し、これを財源として2026年6月から処遇改善加算を拡充する臨時改定を実施しました。背景にあるのは次の2点です。
- 深刻な人材不足: 介護職の有効求人倍率は他産業を大きく上回る水準が続き、処遇改善加算取得事業所でも他産業との賃金差が埋まらず人材の流出が課題となっていました。
- 物価高騰への対応の遅れ: 3年サイクルの定期改定では、その間の物価上昇や賃金相場の変化に迅速に対応できないという構造的な課題が指摘されていました。
厚生労働省は令和8年度介護報酬改定に関する審議報告(2025年12月23日公表)を経て、2026年1月の社会保障審議会介護給付費分科会で諮問・答申を行い、改定率+2.03%(処遇改善分+1.95%、食費の基準費用額引き上げ分+0.09%)を決定しました。処遇改善に関する見直しは2026年6月、食費の基準費用額の見直しは2026年8月に施行されています。
介護報酬臨時改定のサービス別加算率データ
サービス別に見る2026年6月臨時改定の加算率
今回の臨時改定は、全サービス一律の引き上げではなく、処遇改善加算の加算率をサービスごとに設定する形で行われました。人材不足の深刻度や賃金水準の違いが、加算率のばらつきに反映されています。
| サービス | 加算率(上位区分) | 備考 |
|---|---|---|
| 訪問介護 | 最大28.7% | 新設区分。全サービス中もっとも高い加算率 |
| グループホーム(認知症対応型共同生活介護) | 最大22.8% | |
| 特別養護老人ホーム等 | 最大17.6% | |
| 居宅介護支援(ケアマネジメント) | 2.1% | 今回新たに処遇改善加算の対象に追加 |
| 訪問看護 | 1.8% | 今回新たに処遇改善加算の対象に追加 |
| 訪問リハビリテーション | 1.5% | 今回新たに処遇改善加算の対象に追加 |
訪問介護の加算率が突出して高いのは、有効求人倍率の高さに象徴される人材確保の困難さが特に大きいサービスだからです。一方、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援は、今回の改定で初めて処遇改善加算の対象に加わったサービスであり、加算率自体はまだ小さいものの、対象拡大という点で制度上の意味があります。
介護報酬臨時改定と定期改定の違い
定期改定との違い
| 項目 | 定期改定 | 臨時改定 |
|---|---|---|
| 実施サイクル | 3年に1度(法定サイクルではないが慣例) | 不定期・年度途中もあり得る |
| 見直しの範囲 | 基本報酬・加算全般を包括的に見直し | 特定のテーマ(今回は処遇改善加算)に絞られる傾向 |
| 財源の裏付け | 通常予算・診療報酬改定等と合わせて編成 | 補正予算など機動的な財源が契機になりやすい |
| 実施の位置づけ | 計画された恒常的な見直し | 人材不足・物価高騰等への緊急対応 |
定期改定は基本報酬から人員基準、加算の新設・見直しまで制度全体を包括的に扱うのに対し、臨時改定は特定の課題(2026年6月改定では処遇改善加算の拡充と対象拡大)にテーマを絞って実施される点が大きな違いです。次の定期改定(令和9年度)では、今回の臨時改定内容を踏まえたうえで、あらためて基本報酬を含む包括的な見直しが行われる見込みです。
介護報酬臨時改定のよくある質問
よくある質問
Q. 次の定期改定はいつですか?
A. 2026年6月の臨時改定は処遇改善加算を中心とした部分的な見直しです。基本報酬を含む包括的な次の定期改定は、令和9年度(2027年度)に予定されています。
Q. 臨時改定は今後も定期的に行われるのですか?
A. 制度上、臨時改定を定期的に行う仕組みが新設されたわけではありません。今回は補正予算という財源の裏付けを機に実施された異例の対応であり、次の臨時改定が確約されているわけではない点に注意が必要です。
Q. 臨時改定によって基本報酬も上がったのですか?
A. 2026年6月の臨時改定では、基本報酬そのものの見直しは行われていません。処遇改善加算の対象拡大・加算率引き上げと、食費の基準費用額の見直し(2026年8月施行)が主な内容です。
Q. 臨時改定の情報はどこで確認できますか?
A. 厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会のページで、審議報告や告示・通知が順次公開されます。事業所の実務対応では、都道府県・保険者からの通知もあわせて確認する必要があります。
介護報酬臨時改定に関連する過去の緊急措置の位置づけ
過去の緊急的な措置との違いも押さえておく
介護分野では、報酬改定そのものではない「緊急的な措置」もたびたび実施されてきました。混同しないよう位置づけを整理します。
- 新型コロナウイルス対応(2020〜2021年度): 通所介護等で一定条件のもと上位区分の報酬算定を認める「臨時的な取扱い」が事務連絡ベースで実施されました。これは告示改正を伴う報酬改定ではなく、運用上の特例措置という位置づけで、2021年3月に終了し、同年4月の定期改定(令和3年度改定)に制度として引き継がれました。
- 物価高騰対応の処遇改善支援補助金(2024年2〜5月): 「介護職員処遇改善支援補助金」として、加算取得事業所に対する補助金の形で賃上げ相当額が交付されました。こちらも介護報酬本体の改定ではなく、補助金による時限措置です。6月以降は令和6年度介護報酬改定で「介護職員等処遇改善加算」に一本化されています。
これらに対し、2026年6月の措置は告示改正を伴う介護報酬本体の改定であり、社会保障審議会介護給付費分科会への諮問・答申という定期改定と同じ法的手続きを、年度途中に踏んだ点で「臨時改定」と呼ばれています。
介護報酬臨時改定の参考資料
- [1]
- [2]
- [3]
- [4]
介護報酬臨時改定のまとめ
まとめ
介護報酬の臨時改定とは、3年に1度の定期改定サイクルを待たず、年度途中に報酬を見直す異例の措置です。2026年6月の改定(改定率+2.03%)は、深刻な人材不足と物価高騰への対応を急ぐため、補正予算を財源として処遇改善加算を拡充・対象拡大する形で実施されました。基本報酬を含む包括的な見直しは、次の定期改定(令和9年度)で行われる見通しです。制度の全体像や算定要件は、処遇改善加算そのものの解説記事もあわせて確認してください。
この用語に関連する記事

都民ファースト、介護職の居住支援手当「拡大継続」を表明|後藤政調会長「対象を事務・調理・送迎にも」
都民ファーストの会の後藤なみ政務調査会長が、東京都独自の介護・福祉職員向け「居住支援特別手当」(最大月2万円)の来年度以降の拡大継続を表明。対象を事務職・調理員・送迎ドライバー等にも広げる構想を示した。有効求人倍率7.95倍の東京で「東京価格」に賃金が追いつかない現状と、国の処遇改善の限界を読み解く。

NCCU、介護報酬「抜本引き上げ」へ50万筆署名を開始|村上副会長「低賃金の元凶は介護報酬の設定」
日本介護クラフトユニオン(NCCU)が2027年度の介護報酬改定に向け50万筆署名を開始。村上久美子副会長は低賃金の元凶を介護報酬の設定と指摘。目標数・しめきり・提出先と、処遇改善加算と基本報酬の構造を中立に解説。

介ホ協、介護報酬12%引き上げを要請|「賃金を2030年までに全産業平均へ」厚労省に要望書
全国介護付きホーム協会(介ホ協)が2026年6月1日、厚生労働省に基本報酬の12%引き上げを要請。介護職の賃金を2030年までに全産業平均へ引き上げる目標を掲げた要望書の中身と、介護職のキャリアへの影響を解説します。

介護職のボーナス交渉のコツ|査定面談・支給日在籍要件・退職時の満額受給まで実務ガイド
介護職のボーナス(賞与)交渉を成功させるための実務ガイド。査定面談での実績アピール、想定より低い時の異議申立て、転職・退職時の支給日在籍要件、処遇改善加算が賞与に乗るかの確認、月給×支給月数の構造を厚労省データで裏づけて解説します。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。