
喀痰吸引等実施加算とは
喀痰吸引等実施加算は、訪問介護・夜間対応型訪問介護で社会福祉士及び介護福祉士法に基づく研修を修了した介護職員等が喀痰吸引・経管栄養を実施した際に算定される加算(100単位/月)。算定要件・対象行為・登録事業者の要件を整理する。
この記事のポイント
喀痰吸引等実施加算(かくたんきゅういんとうじっしかさん)は、訪問介護および夜間対応型訪問介護で、社会福祉士及び介護福祉士法に基づく「喀痰吸引等研修」を修了した介護職員(または認定特定行為業務従事者)が、医療的ケア(喀痰吸引・経管栄養)を実施した利用者について算定される介護報酬の加算です。1人あたり月100単位を算定でき、医療的ケアが必要な在宅利用者を支える訪問介護事業所への報酬上の評価として位置づけられています。事業所が「登録特定行為事業者」または「登録喀痰吸引等事業者」となっていることが要件です。
目次
喀痰吸引等実施加算の制度背景
2012年の社会福祉士及び介護福祉士法の改正により、研修を修了した介護福祉士・認定特定行為業務従事者は、医師の指示と看護師との連携のもと、喀痰吸引・経管栄養を「業」として実施できるようになりました。これを受けて、医療的ケアが必要な利用者を支える訪問介護事業所の負担を評価するため、2015年度の介護報酬改定で喀痰吸引等実施加算が新設されました。
現行(令和6年度改定後)の単位数は1人あたり月100単位。算定対象となるサービスは以下です。
- 訪問介護
- 夜間対応型訪問介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一部)
事業所が法律上の「登録特定行為事業者」(旧称:登録喀痰吸引等事業者)の登録を受けていること、そして実施する介護職員等が研修修了者または認定特定行為業務従事者であることが必須です。
喀痰吸引等の対象となる5行為
介護職員等が研修修了後に実施できる「特定行為」は以下の5つです。
- 口腔内の喀痰吸引(咽頭の手前まで)
- 鼻腔内の喀痰吸引(咽頭の手前まで)
- 気管カニューレ内部の喀痰吸引
- 胃ろう・腸ろうによる経管栄養(胃ろう・腸ろうの状態確認は看護師等の役割)
- 経鼻経管栄養(経鼻チューブの状態確認は看護師等の役割)
研修区分は2種類:
- 第1号研修:5行為すべて実施可能(不特定多数の利用者向け)
- 第2号研修:5行為のうち選択した行為を実施可能(不特定多数の利用者向け)
- 第3号研修:特定の利用者に対して必要な行為のみ実施可能(医療的ケア児・特定の在宅療養者向け)
介護福祉士の養成課程(実務者研修)でも医療的ケアが含まれており、加えて実地研修を修了することで業務として実施できるようになります。
算定要件と運用上の注意点
- 事業所登録:都道府県に「登録特定行為事業者」として登録(旧名称「登録喀痰吸引等事業者」)
- 従事者の研修修了:実施者は喀痰吸引等研修(第1号〜第3号)の修了者、または介護福祉士養成課程+実地研修修了者
- 医師の指示書:実施するすべての行為について医師の指示書(喀痰吸引等指示書)が必要
- 看護師との連携:訪問看護ステーション等との連携体制を整備し、状態変化時の対応を明確化
- 記録の整備:実施記録(実施時刻・状況・利用者の状態)を毎回作成し、医師・看護師と共有
- 緊急時対応マニュアル:誤嚥・窒息・呼吸状態急変時の対応手順を整備
算定要件を満たさない実施は加算算定不可となるだけでなく、無資格者による実施は法律違反となるため注意が必要です。
関連する加算・制度との関係
| 加算名 | 対象サービス | 単位数 | 主な要件 |
|---|---|---|---|
| 喀痰吸引等実施加算 | 訪問介護・夜間対応型 | 100単位/月 | 登録事業者・研修修了者・利用者ごと |
| 特定事業所加算(Ⅴ) | 訪問介護 | 所定単位×3〜20%加算 | 研修修了者の配置率等の総合要件 |
| 看取り連携体制加算 | 訪問介護 | 64単位/回 | 看取り期の利用者対応 |
喀痰吸引等実施加算は、利用者ごとに毎月算定される個別加算です。医療的ケアが必要な利用者の在宅生活を支える事業所の収益基盤となるため、研修修了職員の確保と事業所登録は重度者対応を行う訪問介護事業所にとって重要な戦略となります。
よくある質問
Q1. 介護福祉士なら自動的に実施できる?
A. いいえ。2015年度以降の介護福祉士養成課程修了者でも、実地研修の修了が別途必要です。既資格者は喀痰吸引等研修(第1号・第2号)を修了する必要があります。
Q2. 加算は利用者ごとに算定?
A. はい。喀痰吸引等を実施した利用者1人につき月100単位です。複数の利用者に実施する事業所は、利用者数に応じて加算が積算されます。
Q3. 看護師との役割分担は?
A. 介護職員等は医師の指示書に基づく定型的な行為を実施。状態変化の判断、薬剤投与、体位変換以外の医療判断は看護師の役割です。
Q4. 訪問介護以外でも算定できる?
A. 通所介護・短期入所などでは「総合医療体制加算」など別系統の加算で評価されます。喀痰吸引等実施加算は訪問系サービスの加算です。
Q5. 研修費用や受講期間は?
A. 第1号・第2号研修は基本研修50時間+実地研修。費用は10〜15万円程度(自治体・事業所の補助制度あり)、期間は3〜6か月が目安です。
参考資料
- 厚生労働省「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077077.html
- 社会福祉士及び介護福祉士法第2条・第48条の2〜第48条の7
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
- 「医療的ケアが必要な利用者支援に関するガイドライン」
まとめ
喀痰吸引等実施加算は、医療的ケアが必要な利用者を在宅で支える訪問介護事業所への報酬上の評価です。介護職員等の喀痰吸引等研修修了、登録特定行為事業者の登録、医師指示書・看護師連携といった要件を満たすことで月100単位/利用者の算定が可能となります。重度者対応を行う事業所の収益と職員のスキルアップを両立させる重要な加算です。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
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