
看護過程とは
看護過程とは、アセスメント・看護診断・計画・実施・評価の5段階で個別ケアを科学的に展開する思考プロセス。看護診断(NANDA-I)の位置づけや介護過程との違いをやさしく解説します。
看護過程とはの直接回答
看護過程とは、看護師が患者・利用者一人ひとりに最適なケアを届けるための思考プロセスで、①アセスメント ②看護診断 ③計画立案 ④実施 ⑤評価の5段階から成ります。各段階は評価から再アセスメントへと循環し、状態の変化に合わせてケアを継続的に見直す科学的・論理的な問題解決の枠組みです。
目次
看護過程の概要と位置づけ
看護過程とは何か
看護過程(nursing process)は、看護師が根拠に基づいて個別性の高いケアを組み立て・提供・改善していくための系統的な思考の手順です。経験や勘だけに頼らず、収集した情報を分析・解釈し、解決すべき課題を明確にしたうえでケアを実施し、その結果を振り返る——この一連の流れを繰り返すことで、ケアの質を保ちながら患者・利用者の状態変化に対応します。
「看護過程」という用語は1955年にリディア・E・ホールが初めて用い、1967年にはヘレン・ユラとメアリー・B・ウォルシュが各段階を体系化しました。以降の研究の蓄積により、現在はアセスメント/看護診断/計画立案/実施/評価の5段階として整理するのが一般的です(アセスメントと看護診断をまとめて4段階とする整理もあります)。
看護過程は単なる事務手続きではなく、観察したデータを「看護の視点」で読み解く臨床推論の訓練でもあります。だからこそ看護基礎教育の早い段階から繰り返し学習され、臨床現場でも継続的なケアの基盤として機能しています。介護施設や訪問看護の現場で働く看護師にとっても、多職種に説明できる根拠あるケアを組み立てる共通言語になります。
看護過程5段階の進め方
看護過程の5段階
看護過程は次の5つの段階を順に進め、最後の評価から再びアセスメントへと循環します。
1. アセスメント(情報収集・分析)
患者・利用者の状態を把握するため、主観的情報(S情報:本人の訴え)と客観的情報(O情報:バイタルサイン・検査データ・観察所見)を収集し、看護の視点で整理・分析・解釈します。ゴードンの「機能的健康パターン」やヘンダーソンの「14の基本的ニーズ」などの枠組みを使って、情報を漏れなく拾い上げます。
2. 看護診断(問題の明確化)
アセスメントで得た情報をもとに、看護で解決・予防・緩和できる健康上の問題を特定し、表現を統一して言語化します。臨床ではNANDA-I(NANDAインターナショナル)看護診断が広く用いられ、優先順位を付けて取り組む問題を絞り込みます。
3. 計画立案
抽出した看護問題(看護診断)ごとに、達成したい目標(望ましい成果)と具体的なケア計画を立てます。計画は観察計画(O-P)・援助計画(T-P)・教育計画(E-P)の3つに整理し、誰が実施しても同じケアができるよう具体的に記述します。患者・利用者の同意を得ることも重要です。
4. 実施
計画に沿ってケアを提供します。実施中も状態を観察し、変化したこと・変わらなかったことを記録(SOAP形式など)として残します。状況に応じて計画をその場で修正することもあります。
5. 評価
目標としていた成果が得られたかを判定します。達成できていれば看護問題は解決、未達成なら原因を分析して計画を見直し、必要に応じて新たな情報を収集して再びアセスメントへ戻ります。こうして看護過程はPDCAのように循環します。
看護過程と介護過程の違い
介護現場では「看護過程」と「介護過程」の両方が使われます。どちらも情報収集から評価までを循環させる問題解決の枠組みという点は共通ですが、担い手・目的・診断の有無が異なります。
| 観点 | 看護過程 | 介護過程 |
|---|---|---|
| 担い手 | 看護師(保健師・助産師) | 介護福祉士・介護職員 |
| 段階 | アセスメント→看護診断→計画→実施→評価の5段階 | アセスメント→計画→実施→評価の4段階(PDCA) |
| 中心の視点 | 健康問題・療養上の世話・診療の補助 | 生活課題・自立支援・その人らしい暮らし |
| 診断・標準項目 | 看護診断(NANDA-I等)で問題を表現 | 課題分析標準項目(23項目)でアセスメント |
| 計画書 | 看護計画 | 介護計画(ケアプランと連動) |
大きな違いは、看護過程には「看護診断」という独立した段階がある点です。介護過程は生活上の課題を分析して自立を支える計画を立てるのに対し、看護過程は健康問題を診断名として明確化し、診療の補助も含めたケアにつなげます。介護施設では両者が補完し合い、看護師と介護職が同じ利用者の情報を共有しながらケアを組み立てます。
看護過程を介護現場で活かすコツ
介護現場で看護過程を活かすコツ
- アセスメントの枠組みを決めておく:ゴードンの機能的健康パターンやヘンダーソンの14ニーズなど、施設で枠組みを統一すると情報の抜け漏れが減ります。
- 看護診断は介護職にも伝わる言葉で共有:NANDA-Iの診断名はそのままでは介護職に伝わりにくいことがあります。「転倒リスクが高い」「皮膚障害のおそれ」など、ケアにつながる表現に翻訳して共有しましょう。
- 評価のタイミングを計画段階で決める:「1週間後に再評価」など期限を計画に書き込むと、ケアの見直しが習慣化します。
- 記録はSOAPで残す:S(主観)・O(客観)・A(アセスメント)・P(計画)の形で記録すると、多職種が状態変化を追いやすくなります。
看護過程のよくある質問
よくある質問
看護過程は5段階ですか、4段階ですか?
アセスメント・看護診断・計画立案・実施・評価の5段階とするのが一般的ですが、アセスメントと看護診断をまとめて4段階とする整理もあります。どちらも内容は同じで、区切り方の違いです。
看護診断とは何ですか?
アセスメントで得た情報をもとに、看護で解決・予防・緩和できる健康上の問題を特定し、表現を統一して言語化することです。臨床ではNANDA-I看護診断(13領域)が広く使われています。
看護過程と介護過程は何が違いますか?
看護過程は看護師が健康問題を「看護診断」として明確化する5段階、介護過程は介護職が生活課題と自立支援を扱う4段階です。看護診断という独立段階の有無が大きな違いです。
SOAPと看護過程は同じですか?
SOAPは看護記録の書き方(S・O・A・P)の一つで、看護過程そのものとは別物です。看護過程の各段階で得た情報を記録する手段としてSOAPが使われます。
看護過程の参考資料
- [1]
- [2]
- [3]
- [4]
看護過程のまとめ
まとめ
看護過程は、アセスメント・看護診断・計画立案・実施・評価の5段階を循環させ、根拠に基づく個別ケアを継続的に改善する思考プロセスです。介護過程との最大の違いは「看護診断」という独立した段階があること。介護施設や在宅の現場では、看護師と介護職がそれぞれの過程を持ち寄り、利用者の情報を共有しながらケアを組み立てることで、質の高い支援が実現します。
この用語に関連する記事

インスリン療法の利用者の介護|介護職ができること・できないこと
インスリン療法を受ける高齢者の介護で、介護職ができること・できないこと(厚労省令和4年通知の医行為線引き)を解説。低血糖・高血糖の観察と補食対応、シックデイ、看護師への報告・連携まで現場目線でまとめます。

看護師の不足感、病院・介護施設の77.3%に|SMS調査「働き方改革は約5割が未着手」
株式会社エス・エム・エスが2026年5月に公表した調査で、病院や介護施設など事業者の77.3%が看護師の不足感を回答。働き方改革・定着の取り組みは約5割が未着手。介護現場の医療連携・夜間対応への影響と業務設計の打ち手を読み解きます。

せん妄の見極めと現場対応|認知症との違い・誘発因子・看護師連携を介護職目線で解説
介護職向けにせん妄の見極め方を解説。認知症との違い、準備・直接・促進因子の3因子、CAMの観察ポイント、看護師への報告フォーマット、夜間せん妄の対応と予防までを公的資料に基づき実務目線で整理。

介護福祉士から看護師へキャリア転換|准看護師・看護師ルートの選び方・学費・現実
介護福祉士から看護師を目指す全ルート(准看護師経由・3年制専門学校・大学)の学費・期間・合格率・収入を徹底比較。共通基礎課程制度の現状、看護師等修学資金貸付・専門実践教育訓練給付金の活用法、30〜40代社会人入学の現実、介護福祉経験が看護現場で活きる場面まで具体例で解説。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。