
血糖自己測定(SMBG)とは
血糖自己測定(SMBG)とは、患者が自分で指先を穿刺し血糖値を測る方法。糖尿病・インスリン療法での目的、手順と頻度、低血糖/高血糖の判断、CGM/FGMとの違い、高齢者支援と介護職の関与範囲(医行為との線引き)を解説します。
血糖自己測定(SMBG)の定義キャプセル
血糖自己測定(SMBG:self-monitoring of blood glucose)とは、患者本人が指先などを専用の穿刺器具で刺して少量の血液を採り、血糖測定器(グルコース測定器)で血糖値を読み取る方法です。1型糖尿病やインスリン療法中の糖尿病で、日々の血糖変動を把握し、食事・運動・インスリン量の調整に役立てる目的で行われます。介護職は本人が行う測定の準備・声かけ・見守り・記録を支援できますが、穿刺そのものは行えません。
目次
血糖自己測定(SMBG)の概要と位置づけ
血糖自己測定(SMBG)とは何か
血糖自己測定(SMBG)は、患者が自宅や外出先で自分の血糖値を測り、その値を記録して血糖コントロールに活かす方法です。指先などを穿刺して得た一滴の血液を測定チップ(血糖測定電極)に付着させ、数秒から10秒程度で測定器のモニターに血糖値が表示されます。
日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」では、SMBGは1型糖尿病、およびインスリン療法中の2型糖尿病の血糖コントロールに有効であることから推奨される(推奨グレードA)とされています。一方、インスリンを使用していない2型糖尿病では血糖改善効果について一定の見解が得られていないとされ、目的を明確にした「構造化SMBG」(測定タイミングを教育・指定する方法)が重視されます。
SMBGは「食事・運動・薬物に次ぐ第4の治療法」とも表現され、単に値を測るだけでなく、得られた数値をもとに患者自身が生活を振り返り、自己管理(self-management)につなげることに本質的な意味があります。測定して記録するだけでは、その意義は半減するとされています。
なお、SMBGには健康保険の算定要件があり、保険適用となるのはインスリン製剤などの自己注射を行っている方や妊娠中の糖尿病の方などで、測定回数に応じて血糖自己測定器加算が設定されています。詳細はかかりつけの医療機関で確認します。
血糖自己測定(SMBG)の手順と測定頻度
SMBGの手順と測定の頻度
SMBGの基本的な流れは次のとおりです。手技や機器によって細部は異なるため、必ず医療機関の指導に従います。
- 石けんで手を洗い、よく乾かす(消毒用アルコールを使う場合は乾いてから穿刺する)
- 測定器にチップ(センサー)をセットする
- 穿刺器具を指先の側面などに当てて少量の血液を出す
- にじみ出た血液をチップに吸わせる
- 数秒から10秒程度で表示される血糖値を確認する
- 使用後の穿刺針・チップを所定の容器に廃棄し、値を記録する
測定の頻度(タイミング)
測定回数や時間帯は治療内容と目的によって個別に決まります。強化インスリン療法では1日4回以上(毎食前・就寝前など)測定することがあり、食事や運動による血糖変動を見てインスリン量を調整します。食前と食後2時間を比較すると、血糖が上がりやすい食事・上がりにくい食事を把握しやすくなります。インスリンを使っていない方では、目的を明確にして必要最低限の回数にとどめる配慮が求められます。
大切なのは回数の多さよりも、「何のために、いつ測るか」という目的意識です。1日1回・朝食前だけの測定では1日の血糖の実態がつかみにくく、時間帯を変えて測ることで食事療法の問題点などが見えてきます。
血糖自己測定(SMBG)の値の見方と低血糖・高血糖の目安
測定値の見方と低血糖・高血糖の目安
血糖値は測るタイミング(空腹時・食後など)で異なる値を示します。以下は判断の一般的な目安で、確定診断や治療方針は医師が行います。介護職や家族は値の解釈や薬の要否を判断せず、異常値は医療職へ報告します。
- 低血糖の目安:血糖値70mg/dL未満(日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド2022-2023」)。手の震え、冷や汗、動悸、強い空腹感、集中力低下などが現れ、進むと意識障害に至ることがある
- 空腹時血糖値の正常の目安:100mg/dL未満(日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」)
- 高血糖:口の渇き、多飲、多尿、体重減少、倦怠感などが現れることがある
- 数値だけで自己判断しない:測定値の解釈や「この値ならインスリンを打つ・打たない」といった医学的判断は医師・看護師が行う領域。事前に医師から示された範囲を外れた異常値は速やかに医療職へ報告する
血糖自己測定(SMBG)と持続血糖測定(CGM・FGM)の違い
SMBGと持続血糖測定(CGM・FGM)の違い
SMBGはその瞬間の血糖値を点で測る方法です。これに対し、持続血糖測定(CGM:continuous glucose monitoring)は皮下に留置したセンサーで間質液中のグルコース濃度を連続的に測り、血糖の動き(トレンド)を線で把握できます。CGM・FGMが測っているのは血液そのものではなく皮下の間質グルコース値で、血糖値と相関しますが完全に一致するわけではありません。
- SMBG:指先などを穿刺して採血し、測定ごとにチップと穿刺針が必要。測ったタイミングの血糖値が正確にわかる
- リアルタイムCGM(rtCGM):センサーの値が常時表示され、低血糖・高血糖をアラート(電子音)で知らせる機能がある。就寝中の低血糖の検知にも役立つ
- FGM(間歇スキャン式CGM=isCGM、フラッシュグルコースモニタリング):上腕などにセンサーを留置し、リーダーやスマートフォンをかざした時だけ値を確認する。リアルタイムCGMと異なりアラート機能は機種により異なる
CGM・FGMでも、低血糖/高血糖が疑われる場合や、表示値と症状が一致しないときにはSMBGによる確認が必要になることがあり、SMBGが完全に不要になるわけではありません。どの機器が使えるかは病型やインスリン使用状況などの保険要件によって決まります。
血糖自己測定(SMBG)を高齢者・家族・介護職が支援する際の注意と医行為の範囲
高齢者・家族・介護職が支援するときの注意点
高齢者では視力低下、手指の巧緻性の低下、認知機能の影響などにより、自分でのSMBGが難しくなることがあります。本人の認知能力・手技・視力をアセスメントして測定機種や指導方法を選び、独居や老老世帯では家族・訪問看護・在宅医療と連携する体制づくりが重要です。寒い時期は指先が冷えて採血しにくいなど、季節要因への配慮も必要です。
介護職が関与できる範囲(医行為との線引き)
厚生労働省の通知(医政発1201第4号・令和4年12月1日「原則として医行為でない行為」)と関連ガイドラインを踏まえると、SMBGをめぐる介護職の関与範囲は次のように整理されます。
- 介護職ができること:利用者本人が行う自己血糖測定の準備の補助(測定器・穿刺器具・チップ・アルコール綿を手の届く場所に並べる)、手順の声かけ・見守り、測定後の数値の確認・記録の補助、使用後の穿刺針・チップの片付け・廃棄
- 介護職ができないこと:利用者の皮膚に穿刺器具を当てて針を刺す行為(穿刺)そのもの、簡易血糖測定器による血糖測定や測定値に基づく医学的判断。たとえ本人から頼まれても穿刺はできない
- 持続血糖測定器(CGM・FGM)の例外:通知では、利用者への持続血糖測定器のセンサーの貼付や、当該測定器の測定値の読み取りといった血糖値の確認は、介護職が行ってよい行為とされている。ただし簡易血糖測定器(SMBG)による穿刺・測定はこれに含まれない
つまり介護職の基本姿勢は「介護職が測る」のではなく「本人が測るのを支援する」ことです。あらかじめ医師・看護師の指示や事業所のルールを確認し、異常時はためらわず医療職へ報告します。
血糖自己測定(SMBG)に関連する低血糖時の対応
低血糖が疑われるときの対応
低血糖(血糖値70mg/dL未満が目安)は、手の震え・冷や汗・動悸・強い空腹感・生あくび・集中力低下などのサインで気づくことがあります。進行すると意識障害やけいれんに至ることもあり、早めの対応が重要です。具体的な対応量や手順は医師の指示・本人の治療内容によって異なるため、必ず事前の指示や事業所のルールを確認します。
- 低血糖を疑うサインがあれば、まず安全な場所で休ませ、可能なら血糖値を確認する
- 意識があり飲み込める場合は、医師から指示されている方法でブドウ糖などの糖分を補給する(α-グルコシダーゼ阻害薬を服用している場合はブドウ糖が指定されることがある)
- 意識がない・けいれんしている・飲み込めないときは、無理に飲ませず、ただちに医療職へ連絡し救急対応を判断する
- 血糖値が正常でも、冷や汗・手の震え・意識低下などがある場合は、値と症状を直ちに医療職へ報告する
介護職・家族は、医学的な投薬判断を行うのではなく、観察・初期対応・医療職への速やかな報告という役割を担います。
血糖自己測定(SMBG)のよくある質問
よくある質問
- SMBGとCGM・FGMはどちらが正確ですか。
- SMBGは指先などから採血して血糖そのものを測るため、測ったタイミングの値が正確にわかります。CGM・FGMは皮下の間質グルコース値を連続的に測るもので、血糖の動きの把握に優れますが、血液の血糖値とは完全には一致しません。低血糖が疑われるときなどはSMBGでの確認が必要になることがあります。
- 介護職員が利用者の指を刺して血糖を測ってもよいですか。
- できません。簡易血糖測定器による穿刺・測定は医行為にあたり、介護職員は行えません。介護職員ができるのは、本人が行う自己血糖測定の準備・声かけ・見守り・記録の補助・片付けです。なお、持続血糖測定器(CGM・FGM)のセンサー貼付や測定値の読み取りは、厚生労働省通知で介護職が行ってよい行為とされています。
- SMBGは1日に何回測ればよいですか。
- 治療内容と目的によって個別に決まります。強化インスリン療法では1日4回以上測ることがあります。回数よりも、いつ何のために測るかという目的が重要で、必ず医療機関の指示に従います。
- インスリンを使っていなくてもSMBGは必要ですか。
- インスリン非使用の2型糖尿病では効果について一定の見解が得られていませんが、測定タイミングを定めた構造化SMBGには意義があるとされます。必要性は主治医と相談して判断します。
血糖自己測定(SMBG)の参考資料
- [1]糖尿病診療ガイドライン2024 第7章 糖尿病の自己管理教育と治療支援- 日本糖尿病学会
SMBGの定義、1型・インスリン療法中2型での有効性(推奨グレードA)、構造化SMBGの考え方を示すガイドライン本文。
- [2]医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(その2)(医政発1201第4号)- 厚生労働省医政局長通知(令和4年12月1日)
介護職員が原則として行える行為を整理した通知。インスリン注射の準備・片付け、持続血糖測定器のセンサー貼付・測定値読み取りの扱いを規定。
- [3]原則として医行為ではない行為に関するガイドライン- 日本能率協会総合研究所(厚生労働省委託事業)
持続血糖測定器のセンサー貼付・読み取りの手順、低血糖サインがある場合の緊急時対応、血糖値の正常値・低血糖70mg/dL未満などを介護職向けに解説。
- [4]
- [5]
血糖自己測定(SMBG)のまとめ
まとめ
血糖自己測定(SMBG)は、患者が自分で血糖値を測り、その値を血糖コントロールに活かす方法です。1型糖尿病やインスリン療法中の糖尿病で有効性が高く、測定の目的とタイミングを意識した活用が重要です。CGM・FGMとは測る対象や仕組みが異なり、互いに補い合います。高齢者では支援が必要になる場面が多く、介護職は「本人が測るのを支える」立場で、準備・見守り・記録を担い、穿刺や医学的判断は行わず、異常時は速やかに医療職へ報告することが安全なケアの基本です。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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