
起居動作とは
起居動作とは、寝返り・起き上がり・座位保持・立ち上がりなど、寝た姿勢から起き座り立つまでの姿勢を変える基本動作のこと。ADLの土台であり、介助と自立支援、廃用・拘縮予防の観点からやさしく解説します。
起居動作とは(要点)
起居動作(ききょどうさ)とは、寝た姿勢から起き上がり、座り、立ち上がるまでの「姿勢を変える一連の基本動作」のことです。具体的には寝返り・起き上がり・座位保持(端座位)・立ち上がりなどを指し、移乗や移動、食事・排泄・入浴といったあらゆる生活動作の出発点になります。介護・看護の現場では最も頻繁に行われる動作のひとつで、介助の対象であると同時に、残った力を活かす自立支援の対象でもあります。
目次
起居動作の概要と意味
起居動作の意味と位置づけ
「起居(ききょ)」は「起きて居る」、つまり寝た状態から身体を起こして過ごすことを表す言葉です。介護やリハビリテーションの分野では、横になった姿勢から座る・立つへと姿勢を移し替えていく一連の動作をまとめて「起居動作」と呼びます。重心の位置を水平・垂直に移動させながら、支持基底面(身体を支える床との接地範囲)が刻々と変わる不安定な状態を経て、安定した姿勢を作り直していく過程です。
起居動作は、日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living)を構成する基本要素のひとつとして位置づけられます。ADLは「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」などからなり、高齢者や障害のある方がどの程度自立して生活できるかを測るものさしとして、リハビリや介護保険制度で評価に用いられます。起居動作はそのすべての生活動作の土台にあたり、ここがうまくいかないと、トイレに行く・食卓につく・着替えるといった次の動作にもつながりません。
そのため起居動作は、できない部分をすべて代わりに行う「介助」の対象であると同時に、本人ができる動きを引き出して残存能力を保つ「自立支援」の対象でもあります。「できるところは見守り、できない部分だけ手を添える」という考え方が、起居動作の介助の基本になります。
起居動作の基本的な流れ
起居動作は、ベッド上で寝た状態から立ち上がるまで、次のような順序で連続して行われます。それぞれが次の動作の準備になっており、ひとつ前の姿勢が安定していないと次に進めません。
- 寝返り(仰向け→横向き):あおむけから横向きへ姿勢を変える動作。床ずれ(褥瘡)予防の体位変換とも重なり、起き上がりの前段階になります。顔・肩・骨盤・膝の順に「分節的」に回旋すると、少ない力で楽に返れます。
- 起き上がり(横向き→座位):横向きの姿勢から肘や手で支えながら上体を起こす動作。下になった肘を支点に、両脚をベッドの外へ下ろす動きと連動させると、てこの原理で起きやすくなります。
- 座位保持(端座位):ベッドの端に腰かけ、両足を床につけて座った姿勢を安定して保つこと。背すじを伸ばし、足裏全体を床につけて支持基底面を広げると、立ち上がりの土台になります。
- 立ち上がり(座位→立位):座った姿勢から立つ動作。上体を前傾させて重心を足の上に移し、お辞儀をするように前へ→上へと動くのがポイント。起居動作の最終段階であり、移乗や歩行の入口になります。
この一連の流れは、起き上がるときは「寝返り→起き上がり→座位→立位」、横になるときはその逆順をたどります。日々の生活でこの動作を繰り返すこと自体が、関節の動く範囲(関節可動域)と必要な筋力を保つリハビリにもなります。
起居動作の介助と廃用予防のポイント
介助と廃用予防のポイント
起居動作の介助では、「全部やってあげる」ことが必ずしも良いケアとは限りません。手を出しすぎると本人の動く機会が減り、筋力や関節の柔軟性が落ちて、かえって動けなくなる廃用症候群(生活不活発病)を招くことがあります。次の視点が大切です。
- できる動きは引き出す:本人が自分で動ける部分は見守り、難しい局面だけ最小限の力を添える。声かけで動作の手順を導くだけで自分で起き上がれる方も多くいます。
- てこと重心移動を使う:力任せに持ち上げず、寝返り・前傾・足の踏みかえといった本来の動きの流れに沿って介助すると、本人も介助者も負担が小さくなります。
- 不安定な局面を支える:起き上がりや立ち上がりは重心が大きく動き転倒・ふらつきのリスクが高い場面。足の位置や手すりの使用を整え、急がず段階的に行います。
- 早期離床と繰り返し:寝たきりを防ぐには、安静にしすぎず、座る・立つ機会を生活の中で繰り返すことが重要です。早めにベッドから離れて座位・立位をとることは、関節可動域・筋力の維持と、その先の生活再建の第一歩になります。
- 拘縮・褥瘡の予防とつなげる:寝返りや体位変換が滞ると、関節が固まる拘縮や床ずれ(褥瘡)が起こりやすくなります。起居動作の維持は、これらの予防とも一体で考えます。
起居動作のよくある質問
起居動作に関するよくある質問
起居動作と移乗・移動はどう違いますか?
起居動作は「寝る・起きる・座る・立つ」と姿勢そのものを変える動作です。移乗はベッドから車いすへ乗り移るなど座る場所を移す動作、移動は歩行や車いす走行で場所を移す動作を指します。起居動作(特に座位保持・立ち上がり)が安定して初めて、移乗や移動が安全に行えます。
起居動作はADLに含まれますか?
はい。日常生活動作(ADL)は「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」などで構成され、起居動作はその基本要素のひとつです。リハビリや介護保険の評価では、起居動作の自立度も重要な観察項目になります。
本人が自分で起き上がれるなら手伝わない方がよいのですか?
安全に行えるなら、できる動きは見守るのが基本です。過剰な介助は動く機会を奪い、廃用症候群につながります。ただし転倒やふらつきのリスクがある場面では、危険な局面だけ手を添える「部分介助」を行います。
起居動作が難しくなると何に困りますか?
起き上がりや立ち上がりが難しくなると、トイレ・食事・着替えなど次の生活動作すべてに介助が必要になり、寝たきりや活動量の低下を招きやすくなります。早めの離床と動作の繰り返しで、土台となる起居動作を保つことが大切です。
起居動作の参考資料
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起居動作のまとめ
まとめ
起居動作とは、寝返り・起き上がり・座位保持・立ち上がりといった「姿勢を変える一連の基本動作」であり、移乗・移動・食事・排泄などあらゆる生活動作の土台です。ADLの基本要素として自立度を大きく左右します。介助では「できる動きは引き出し、危険な局面だけ支える」ことを基本とし、安静にしすぎず動作を繰り返すことが、廃用症候群や拘縮・褥瘡の予防、そして寝たきりを防ぐ自立支援につながります。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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