更衣介助とは

更衣介助とは

更衣介助の基本と脱健着患の原則、片麻痺・寝たきりの方への手順、声かけ・プライバシー保護・温度配慮など、訪問介護や施設で実践したいポイントをやさしく解説。

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この記事のポイント

更衣介助とは、麻痺・拘縮・筋力低下などにより自分で着替えが難しい方の衣類の着脱を支える介助のこと。「脱ぐときは健側から、着るときは患側から」という脱健着患(だっけんちゃっかん)の原則を守り、声かけ・プライバシー保護・室温配慮を徹底することで、安全と尊厳を両立できます。訪問介護では身体介護に区分され、介護福祉士国家試験でも頻出の基本技術です。

目次

更衣介助とは|定義と目的・身体介護区分での位置づけ

更衣介助(こういかいじょ)は、加齢による関節可動域の低下、片麻痺、拘縮、筋力低下などで自分での着替えが難しい方の衣類の着脱をサポートするケアです。「着脱介助」と呼ばれることもあります。日中の活動着とパジャマの切り替え、汗や排泄で汚れた衣類の交換、入浴前後の着替えなど、1日の生活リズムを区切る大切な場面で行われます。

更衣介助の目的は単に衣服を替えることではありません。身体を清潔に保ち皮膚トラブルや褥瘡を予防すること、関節を動かして関節可動域(ROM)を維持すること、季節や活動に合わせた衣類で体温を調整すること、そして衣服を選び着替えるという行為を通じて生活リズムとQOLを保つことが含まれます。

訪問介護のサービスでは、更衣介助は「身体介護」に区分されます。厚生労働省告示の介護報酬上、生活援助(家事支援)ではなく身体介護として算定されるため、ヘルパーが利用者の身体に直接触れて行うケアの代表例として位置づけられています。介護福祉士国家試験でも、脱健着患・片麻痺対応・自立支援の観点が頻出するため、新人介護職が最初に体得すべき基本技術のひとつです。

更衣介助の5つの原則

  • 1. 脱健着患(だっけんちゃっかん):脱ぐときは健側(動かしやすい側)から、着るときは患側(麻痺・拘縮・痛みのある側)から行う。患側を無理に動かさずに済むため、痛みや関節への負担を最小化できる。介護福祉士国家試験でも頻出の最重要原則。
  • 2. 声かけ・同意の確認:「次は袖を通しますね」「少し肘を曲げます」など、動作の前に予告する。突然身体に触れない、利用者のペースを尊重し、できる動作は本人にやってもらう自立支援の視点を持つ。
  • 3. プライバシー保護:カーテン・タオル・バスタオルで露出を最小限に抑える。可能であれば同性スタッフが対応する。脱衣の途中で来訪者が入らないよう「更衣中」の札を活用する施設もある。
  • 4. 室温・体温への配慮:室温を23〜25度前後に保ち、エアコン・暖房で寒暖差をなくしてから始める。冬場はあらかじめ衣類を温めておく、夏場でも冷えやすい高齢者には肩掛けを準備するなど、低体温・ヒートショックを防ぐ工夫が必要。
  • 5. 関節可動域への配慮と自立支援:拘縮や痛みのある関節は無理に伸ばさず、肘・手首・肩を支えながらゆっくり動かす。ボタン留めや袖通しなど、本人ができる部分は見守りに留め、過介助を避ける。皮膚の発赤・乾燥・褥瘡の有無を観察する機会としても活用する。

片麻痺の方への更衣介助の手順(座位・前開き上衣の例)

右片麻痺の方の前開き上衣を交換する場面を想定します。脱健着患の原則に沿って進めます。

  1. 準備:室温を23〜25度に調整し、清潔な衣類とタオルを手元に置く。利用者をベッドサイドや椅子に安定した座位で座ってもらい、足底をしっかり床につける。これから何をするのか丁寧に説明し同意を得る。
  2. 脱がせる:健側(左)から:前ボタンを外す。健側(左)の肩を抜き、左袖から左腕を抜く。次に背中側に回した袖を後ろから引き、患側(右)の肩・肘・手首を支えながらゆっくり右腕を抜く。患側を引っ張らず、関節を支えるのがポイント。
  3. 皮膚の観察と保清:脱いだタイミングで背中・脇・胸の皮膚を観察。発赤・湿疹・褥瘡の前兆がないかチェック。汗ばんでいれば乾いたタオルで軽く拭く。
  4. 着せる:患側(右)から:新しい上衣の右袖に、患側(右)の手・肘・肩の順でゆっくり通す。袖を肩まで上げておくと後の作業が楽になる。続いて健側(左)の腕を左袖に通す。
  5. 整える:襟元・脇・背中のシワを伸ばし、ボタンを留める。「気持ち悪いところはありませんか」と必ず確認する。最後に姿勢が崩れていないか、衣類が下着と重なって食い込んでいないかを観察して終了。

寝たきりの方への更衣介助の手順(仰臥位・かぶり上衣の例)

ベッド上で全介助が必要な方のかぶり上衣を交換する場面を想定します。体位変換と組み合わせて行います。

  1. 準備:ベッドを介助しやすい高さに調整し、室温を確認。タオルケットで下半身を覆ってプライバシーを確保。新しい衣類は袖を通しやすいよう「裏返し→袖を肩までまくる」状態で準備しておく。
  2. 脱がせる:上衣をたくし上げる:仰臥位のまま上衣の裾を胸元までたくし上げる。利用者を健側に向けて側臥位にし、患側の身頃を背中の下まで丸める。次に逆向きに側臥位にし、丸めた身頃を引き出す。
  3. 袖を抜く:健側→患側:仰臥位に戻し、健側の袖を肩・肘・手首の順に抜く。続いて患側の袖を、関節を支えながらゆっくり抜く。皮膚の観察と汗の拭き取りもこのタイミングで。
  4. 着せる:患側の袖から:新しい上衣の患側袖に、手・肘・肩の順で通し、肩まで上げる。次に健側の腕を袖に通す。襟元を首から通し、後身頃を背中側まで広げる。
  5. 整える:再度側臥位にして、後身頃のシワや食い込みを丁寧に伸ばす。仰臥位に戻し、襟元・脇・腰回りのフィット感を確認。掛け布団を整え、頭の位置・枕の高さを最終チェックして終了。所要時間は10〜15分が目安。

現場で活きる更衣介助のコツ

  • 衣類は前開き・伸縮性のあるものを選ぶ:拘縮や麻痺がある方には、かぶりよりも前開きシャツ、ボタンよりもマグネット式やマジックテープのほうが負担が少ない。下衣はウエストゴム・ストレッチ素材が扱いやすい。
  • 本人の好みと尊厳を尊重する:「今日は何を着ますか」と選択肢を示すことで、自己決定の機会を残す。施設では入所者の私物に名前を書き、家族とコーディネートを共有しておくと納得感が高まる。
  • 2人介助を恐れない:座位保持が困難・体格差が大きい・意識がはっきりしない場合は、無理せず2人介助に切り替える。1人で抱え込むと利用者の転倒・スタッフの腰痛事故につながる。
  • 関節可動域訓練(ROMex)と組み合わせる:袖を通すときに肘・肩を意識的にゆっくり動かすことで、自然な可動域訓練になる。理学療法士・作業療法士と連携し、無理のない範囲を共有しておく。
  • 記録に残す:訪問介護記録や介護記録に「皮膚の状態」「拒否の有無」「自立度の変化」を残す。脱健着患の声かけにどこまで応じられたかなど、ADL評価の貴重な手がかりになる。

更衣介助に関するよくある質問

Q1. 「脱健着患」と「着患脱健」はどちらが正しいですか?

意味はまったく同じで、どちらの呼び方も介護・看護現場で使われます。覚えやすさ重視で「だっけんちゃっかん」と読む施設が多く、介護福祉士国家試験でもどちらでも出題されます。

Q2. 更衣介助は訪問介護で何分くらいかかりますか?

立位がとれる方の前開きシャツ交換であれば5〜10分、寝たきりの方のパジャマ全交換は10〜15分が目安です。訪問介護計画書ではこの時間を含めて身体介護の単位数(20分未満/20〜30分/30〜60分など)が設定されます。

Q3. 拘縮が強い方の腕が袖に入りません。どうすれば?

無理に伸ばさず、肘・手首・肩を支えてゆっくり動かします。それでも入らない場合は前開きの伸縮素材に変更する、ハサミで袖の縫い目を開いてマジックテープで留め直す「介護衣」を導入するのが一般的です。理学療法士に相談して関節可動域を確認しましょう。

Q4. 利用者が着替えを拒否するときは?

無理強いはせず、いったん時間を空ける、声かけの仕方を変える、本人に衣類を選んでもらう、家族の写真や思い出話で気持ちを切り替えるなどの工夫を試します。BPSDが背景にある場合はチームで原因を分析し、ケアプランの見直しを検討します。

Q5. 同性介助は必須ですか?

法令上の必須事項ではありませんが、利用者の尊厳とプライバシー保護の観点から、可能な限り配慮することが推奨されます。事業所のシフト調整や利用者との事前合意で運用するのが現実的です。

参考資料・一次ソース

まとめ

更衣介助は、麻痺・拘縮・筋力低下のある方の着替えを支える身体介護の基本技術です。「脱ぐときは健側、着るときは患側」の脱健着患の原則を守り、声かけ・プライバシー保護・室温配慮を徹底することで、利用者の尊厳と安全を守れます。片麻痺の方には関節を支えながら、寝たきりの方には体位変換と組み合わせて行うのが基本。1日数回の更衣介助は、皮膚観察・関節可動域維持・自立支援のチャンスでもあります。介護福祉士国家試験でも頻出のため、新人のうちに確実に体得しておきたい技術です。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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