
甲状腺機能亢進症とは
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の定義・症状(動悸・体重減少・手の震え・発汗)をわかりやすく解説。高齢者で症状が出にくく、うつや認知症と紛らわしい点、甲状腺機能低下症との違い、治療と介護・受診の注意も整理します。
甲状腺機能亢進症とは(定義)
甲状腺機能亢進症とは、首の前にある甲状腺から甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、全身の代謝が異常に高まった状態をいいます。代表的な原因が自己免疫疾患のバセドウ病です。動悸、体重減少、手の震え、発汗といった症状が現れますが、高齢者では症状がはっきり出ず、うつや認知症と紛らわしいことがあります。
目次
甲状腺機能亢進症の概要
甲状腺機能亢進症とはどんな病気か
甲状腺は、のどぼとけのすぐ下にある蝶のような形をした臓器で、全身の代謝を調整する甲状腺ホルモンをつくっています。甲状腺機能亢進症は、この甲状腺ホルモンが過剰につくられ、体じゅうの細胞が必要以上に活発に働き続ける状態です。エンジンを常に高回転で回しているようなイメージで、心臓・体温・体重・気分など幅広い機能に影響が及びます。
その代表的な原因が「バセドウ病(グレーブス病)」です。バセドウ病は自己免疫疾患の一つで、本来は外敵を攻撃するはずの抗体(TSHレセプター抗体)が甲状腺を刺激し続け、ホルモンを過剰に産生させてしまいます。甲状腺機能亢進症の大部分はこのバセドウ病が占めますが、ほかにも甲状腺の炎症や、ホルモンを過剰につくる結節(しこり)が原因になることもあります。
「甲状腺機能亢進症」は症状・状態を表す言葉で、「バセドウ病」はその原因となる病気の名前です。両者はほぼ同じ意味で使われることもありますが、厳密には亢進症を引き起こす病気の一つがバセドウ病という関係になります。
甲状腺機能亢進症の主な症状
代謝が過剰に高まることで、次のような症状が現れます。
- 動悸・頻脈:心臓が速く強く打ち、脈が速くなる。安静にしていてもドキドキする。
- 体重減少:食欲はあってよく食べているのに、体重が減っていく。
- 手の震え(振戦):手を伸ばすと細かく震える。字が書きにくくなることもある。
- 発汗・暑がり:汗をかきやすく、暑さに弱くなる。
- 疲れやすさ・倦怠感:体は活発なのにだるさや疲労を感じる。
- イライラ・落ち着かなさ:気持ちが高ぶり、神経質になりやすい。
- 甲状腺の腫れ:首の前が全体的にふくらむ(びまん性甲状腺腫)。
- 眼の症状:バセドウ病では眼球突出や、目が大きく見えることがある。
これらは若い世代から中年層では比較的そろって現れますが、高齢者では一部しか出ない、あるいは別の症状が前面に出ることがあります。
高齢者の甲状腺機能亢進症で症状が出にくい理由
高齢者では症状が出にくく、うつや認知症と紛らわしい
高齢者の甲状腺機能亢進症は、典型的な症状が出そろわないことが特徴です。動悸や手の震え、暑がりといったわかりやすいサインが乏しく、見逃されやすい傾向があります。
かわりに、「元気がない」「ぼんやりして反応が鈍い」「人付き合いを避ける」「気分が沈む」といった、活気のなさや無気力が前面に出ることがあります。こうしたタイプは「無関心型(無症候性)甲状腺機能亢進症」と呼ばれ、活動的になるはずの病気でありながら、見た目はうつ病や認知症とよく似た状態になります。
そのため、高齢者では「年のせい」「認知症が進んだ」「うつかもしれない」と受け取られ、甲状腺の病気だと気づかれないまま経過してしまうことがあります。実際に、疲れやすさや活気のなさを詳しく調べたところ、原因が甲状腺機能の異常だったというケースは少なくありません。
また高齢者では、動悸の代わりに不整脈(心房細動)として現れたり、心臓に負担がかかって息切れやむくみが出たりすることもあります。「最近どうも様子が違う」という変化が、甲状腺機能亢進症のサインであることを念頭に置くことが大切です。
甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症の違い
甲状腺機能低下症との違い
甲状腺の病気には、ホルモンが「過剰」になる甲状腺機能亢進症と、ホルモンが「不足」する甲状腺機能低下症があります。代謝の向きが正反対のため、現れる症状もほぼ逆になります。
| 項目 | 甲状腺機能亢進症(バセドウ病) | 甲状腺機能低下症(橋本病など) |
|---|---|---|
| 甲状腺ホルモン | 過剰 | 不足 |
| 代謝 | 高まる(アクセル過剰) | 低下する(ブレーキ過剰) |
| 脈拍 | 頻脈・動悸 | 徐脈 |
| 体重 | 減りやすい | 増えやすい・むくみ |
| 体温・気温 | 暑がり・発汗 | 寒がり・冷え |
| お通じ | 下痢ぎみ | 便秘 |
| 気分・精神 | イライラ・落ち着かない | 無気力・気分の落ち込み |
| 代表的な原因 | バセドウ病(自己抗体) | 橋本病(慢性甲状腺炎) |
どちらも高齢者では症状が典型的に出ないことがあり、うつや認知症と見分けにくい点は共通しています。亢進症と低下症は治療方針がまったく異なるため、血液検査で甲状腺ホルモンの値を確認し、どちらの状態かを正しく判断することが欠かせません。
甲状腺機能亢進症の治療と介護・受診の注意
治療と、介護・受診での注意点
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の治療には、おもに次の方法があります。いずれを選ぶかは年齢・症状の重さ・甲状腺の大きさ・合併症などを踏まえ、医師が判断します。
- 抗甲状腺薬:甲状腺ホルモンの産生を抑える飲み薬。効果が現れるまで数週間かかり、長期に続けることが多い。
- 放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療):放射性ヨウ素のカプセルで甲状腺の働きを抑える。
- 手術:甲状腺を摘出する方法。薬が効きにくい場合などに選ばれる。
介護や日常生活で気をつけたいのは、治療を続けるうちに今度は甲状腺機能が下がりすぎ、低下症のような状態(だるさ・むくみ・気分の落ち込み)に転じることがある点です。「最近急に元気がなくなった」といった変化も、自己判断せず主治医に伝えることが大切です。
また、薬を自己判断で中断すると症状が再燃し、まれに高熱や意識障害を伴う甲状腺クリーゼという重い状態を招くことがあります。服薬は指示どおり継続し、定期的な血液検査を欠かさないようにします。
受診の目安:安静時の動悸や脈の乱れが続く、食べているのに体重が減る、手の震え、暑がりや多汗が目立つ、高齢の方で急に活気がなくなりうつや認知症のように見える、といった変化があるときは、内科や内分泌内科への受診を検討してください。本ページは一般的な情報の整理であり、診断や治療方針は必ず医師にご相談ください。
甲状腺機能亢進症のよくある質問
よくある質問
- 甲状腺機能亢進症とバセドウ病は同じものですか。
- 完全に同じではありません。甲状腺機能亢進症はホルモンが過剰になった「状態」を指し、その最も多い原因となる病気がバセドウ病です。亢進症の大部分はバセドウ病によるものですが、炎症や結節など別の原因のこともあります。
- 高齢の親が急に元気をなくしました。甲状腺の病気の可能性はありますか。
- あり得ます。高齢者の甲状腺機能亢進症は、活気のなさや無気力として現れ、うつや認知症と紛らわしいことがあります。「年のせい」と決めつけず、血液検査で甲状腺ホルモンを調べてもらうと原因がはっきりすることがあります。
- 動悸や手の震えは必ず出ますか。
- 若い世代では出やすいですが、高齢者では動悸や手の震えがはっきりせず、不整脈(心房細動)や息切れ、活気のなさだけが目立つことがあります。典型的な症状がなくても否定はできません。
- 治療すれば治りますか。
- 抗甲状腺薬、放射性ヨウ素内用療法、手術といった治療でホルモンをコントロールできます。治療の続け方や効果には個人差があるため、主治医と相談しながら継続することが大切です。
- 放っておくとどうなりますか。
- 未治療のまま進むと、心臓への負担や不整脈、まれに高熱・意識障害を伴う甲状腺クリーゼなど重い状態を招くことがあります。気になる症状があれば早めに受診してください。
甲状腺機能亢進症の参考資料
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甲状腺機能亢進症のまとめ
まとめ
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)は、甲状腺ホルモンが過剰になり代謝が高まる病気で、動悸・体重減少・手の震え・発汗などが典型的な症状です。一方で高齢者では症状がそろわず、活気のなさや無気力としてうつ・認知症と紛らわしく現れることがあります。ホルモンが不足する甲状腺機能低下症とは症状が正反対で、治療方針も異なります。「年のせい」と見過ごさず、気になる変化があれば血液検査で甲状腺の状態を確認し、内科・内分泌内科への受診を検討しましょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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