口腔機能向上加算とは

口腔機能向上加算とは

口腔機能向上加算とは、口腔機能が低下した/低下のおそれがある利用者に対し、歯科衛生士・言語聴覚士・看護職員等が共同で口腔機能改善管理指導計画を作成・実施する取り組みを評価する介護報酬の加算。(I)150単位、(II)はLIFE提出が要件で、要支援者は月1回・要介護者は月2回算定可能。算定要件と現場のポイントを用語集として解説します。

ポイント

この記事のポイント

口腔機能向上加算とは、口腔機能が低下している、または低下するおそれのある利用者に対して、歯科衛生士・言語聴覚士・看護職員等が共同で「口腔機能改善管理指導計画」を作成し実施した取り組みを評価する、介護報酬上の加算です。通所介護・通所リハビリ・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護・小規模多機能・介護予防サービスなどが対象で、(I)は150単位/回、(II)はLIFEへのデータ提出を要件に算定します。要支援者は月1回、要介護者は月2回まで算定可能です。

目次

口腔機能向上加算の制度的位置づけ

口腔機能向上加算は、2006年(平成18年)の介護予防制度創設とともに導入された加算で、その後の介護報酬改定を経て対象サービスや単位数が拡充されてきました。背景には、加齢に伴う口腔機能の低下(オーラルフレイル)が低栄養・誤嚥性肺炎・全身機能の衰えにつながるという科学的知見の蓄積があります。厚生労働省は2024年度(令和6年度)介護報酬改定で、医療と介護の連携強化と、科学的介護情報システム(LIFE)を活用したアウトカム評価を一段と推進する位置づけとしました。

加算には2つの区分があります。(I)は基本的な口腔機能向上サービスを評価する区分で、150単位/回です。(II)は(I)の要件に加えて、利用者ごとの口腔機能の状態をLIFEに提出し、フィードバックを活用してサービスの質を改善する取り組みを評価する区分で、原則160単位/回です(通所リハビリではリハビリテーションマネジメント加算(ハ)の算定有無により155/160単位に区分)。算定回数は要支援者が月1回、要介護者が月2回までで、計画作成後3か月ごとにモニタリング・再評価を行います。

対象となるのは、認定調査票の口腔関連項目で課題があると判断された利用者、基本チェックリストの口腔機能関連項目で該当する利用者、または専門職のアセスメントで「口腔機能が低下している/低下するおそれがある」と判断された利用者です。サービス提供は、計画に基づいて月2回以上を目安に、おおむね30分以上の個別または集団的な口腔機能向上プログラム(口腔体操・嚥下機能訓練・口腔清掃指導・摂食指導など)として行います。

単位数と算定回数(2024年度改定)

区分単位数主な要件算定回数
口腔機能向上加算 (I)150単位/回専門職配置・計画作成・3か月ごと再評価要支援:月1回/要介護:月2回
口腔機能向上加算 (II)160単位/回(通リハ:155または160)(I)の全要件+LIFEへのデータ提出と活用要支援:月1回/要介護:月2回

※通所リハビリテーションでは2024年6月から(II)が「イ(155単位)」「ロ(160単位)」に区分され、リハビリテーションマネジメント加算(ハ)の算定有無で決まります。LIFEへの情報提供は、新規計画作成時・計画変更時、および少なくとも3か月に1回の頻度で行うことが要件です。

算定要件のポイント

  • 専門職の配置:言語聴覚士、歯科衛生士、または看護職員のいずれかを1名以上配置((I)(II)共通、非常勤の兼務でも可)。
  • 口腔機能改善管理指導計画の作成:専門職と介護職員、生活相談員等が共同で利用者ごとに作成。
  • サービス提供回数:月2回以上を目安に、おおむね30分以上のプログラムを実施し記録に残す。
  • 定期的なモニタリング:3か月ごとに再評価し、計画の見直しや継続可否を判断する。
  • (II)の追加要件:利用者の口腔機能データをLIFEに提出し、フィードバックを介護計画やプログラム改善に活用する。
  • 対象者の判定:認定調査票・基本チェックリスト・歯科衛生士等のアセスメントのいずれかで口腔機能低下が確認された利用者。

(I)と(II)の違い、関連加算との位置関係

(I)と(II)の最大の違いは、LIFEへのデータ提出とフィードバック活用が要件となるかどうかです。(II)は科学的介護を推進する位置づけで、データ提出により10単位上乗せされます。算定にあたっては、両区分は同時には算定できず、いずれか一方を選択します。

関連する加算として「栄養アセスメント加算」「栄養改善加算」があり、口腔機能の低下と低栄養はしばしば併存するため、両者を同一利用者に併算定することは可能です。また施設系サービスでは「口腔衛生管理加算」「経口維持加算」があり、混同しやすいため対象サービス区分を確認する必要があります。地域密着型通所介護や認知症対応型通所介護でも算定可能ですが、訪問介護・訪問看護単独では算定対象外です。

算定までの流れ

  1. 対象者のスクリーニング:認定調査票・基本チェックリスト・現場アセスメントで口腔機能低下のおそれを確認する。
  2. 専門職による初期評価:歯科衛生士・言語聴覚士・看護職員が口腔内の状態、咀嚼・嚥下機能、清掃状態、義歯の有無、誤嚥リスクなどを評価する。
  3. 口腔機能改善管理指導計画の作成:専門職と介護職員、生活相談員、必要に応じて栄養士・理学療法士が共同で計画書を作成し、利用者・家族の同意を得る。
  4. サービス提供:計画に沿って月2回以上、30分程度の口腔体操・嚥下訓練・清掃指導・摂食指導等を提供し、毎回の実施記録を残す。
  5. 3か月ごとのモニタリング:再評価を行い、計画の見直しや継続可否を判断する。
  6. LIFEへの提出((II)算定時):新規計画時、計画変更時、3か月に1回以上の頻度で口腔機能データを提出し、フィードバックをサービス改善に活用する。

現場で算定が伸び悩むときの落とし穴

口腔機能向上加算は要件自体が複雑ではありませんが、専門職配置と計画書の運用がボトルネックになりやすい加算です。歯科衛生士や言語聴覚士の確保が難しい場合は、まず看護職員を配置基準として置きつつ、地域の歯科医師会や訪問歯科診療所と連携して非常勤兼務で月数回入ってもらう形が現実的です。

また、計画書を作成しても「月2回以上のプログラム提供」を実態として記録に残せないと算定できません。1回30分以上の個別または集団プログラムを業務フローに組み込み、実施記録は誰がいつ何分実施したかを明確にしておく必要があります。(II)を狙う場合はLIFEのフィードバック活用が記録上見えるよう、3か月ごとの再評価記録の中で「フィードバックを踏まえた計画変更」を文書化することがポイントです。

転職を考える介護職員にとっては、口腔機能向上加算を算定している事業所は専門職連携・記録運用・LIFE活用が一定水準で整っている目安になります。求人を見る際に「LIFE加算(口腔機能向上加算II)算定事業所」と書かれていれば、科学的介護を推進する体制があるとみなせます。

よくある質問

Q. 歯科衛生士がいなくても算定できますか?
A. はい。口腔機能向上加算(I)(II)とも、言語聴覚士・歯科衛生士・看護職員のいずれか1名以上の配置で要件を満たします。非常勤の兼務でも構いません。
Q. 訪問介護や訪問看護で算定できますか?
A. いいえ。算定対象は通所介護・通所リハビリ・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護・小規模多機能・介護予防サービスなどに限られ、訪問介護・訪問看護単独では算定対象外です。
Q. 栄養改善加算と同時に算定できますか?
A. 同一利用者に対して併算定可能です。口腔機能の低下と低栄養はしばしば併存するため、両加算を組み合わせて運用する事業所が多く見られます。
Q. 月3回以上提供しても算定は2回までですか?
A. はい。算定回数は要支援者が月1回、要介護者が月2回までが上限です。サービス提供自体は月2回以上を目安に行います。
Q. (I)と(II)の最大の違いは何ですか?
A. (II)は(I)の要件に加え、口腔機能データをLIFEに提出しフィードバックを活用することが必要です。10単位の上乗せ評価となります。

参考文献・出典

まとめ

口腔機能向上加算は、口腔機能が低下している/低下のおそれがある利用者に対して専門職連携で計画的に取り組むことを評価する加算です。(I)は150単位/回、(II)はLIFE提出を要件に160単位/回(通リハは155または160単位)で、要支援者は月1回・要介護者は月2回まで算定できます。算定要件は「専門職配置・計画作成・月2回以上のサービス提供・3か月ごとの再評価」と明確で、運用の鍵は記録と専門職連携です。介護職としては、本加算を算定している事業所は科学的介護への取り組みが進んでいる目安となります。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

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