
構音障害とは
構音障害は呂律が回らない・発音が不明瞭になる症状。脳卒中・パーキンソン病・口腔疾患等が原因。言語聴覚士による評価とリハビリで改善が期待できる。
この記事のポイント
構音障害は、舌・口唇・声帯など発声発語器官の運動機能障害により発音が不明瞭になる症状で、脳卒中後遺症・パーキンソン病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)・口腔疾患などが原因です。失語症(言葉そのものの理解・産生障害)とは異なり、「言いたい言葉は分かるが発音できない」状態で、言語聴覚士(ST)による評価とリハビリで改善が期待できます。
目次
構音障害の3タイプ
構音障害は原因により大きく3タイプに分類されます。
1. 運動性構音障害(dysarthria)
脳卒中・パーキンソン病・脊髄小脳変性症などの中枢神経疾患や筋疾患により、発声発語器官の運動コントロールが障害されたタイプ。最も頻度が高く、介護現場で出会う構音障害のほとんどがこれにあたります。
2. 器質性構音障害
口蓋裂・舌切除後・歯牙欠損など、発声発語器官の形態異常による構音障害。先天性のものと、口腔がん手術後などの後天性のものがあります。
3. 機能性構音障害
器質的・神経学的異常がないにもかかわらず特定の音が誤って発音される状態。主に小児で見られ、成人介護では稀です。
運動性構音障害の主な原因疾患6つ
- 脳卒中(脳梗塞・脳出血):脳幹や錐体路の障害でけいれん性・弛緩性構音障害が出現
- パーキンソン病:声量低下・単調な発声・早口傾向(パーキンソン性構音障害)
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS):球麻痺型では最初の症状が構音障害になるケースが多い
- 多系統萎縮症:失調性構音障害(リズム障害・破裂的発声)
- 進行性核上性麻痺(PSP):声量低下と嚥下障害を伴うことが多い
- 重症筋無力症:会話を続けると徐々に声がかすれる易疲労性構音障害
リハビリテーションの実際
構音障害のリハビリは言語聴覚士(ST)が中心となり、原因疾患に応じた訓練を組み合わせます。
1. 発声発語器官の運動訓練
口唇・舌・軟口蓋・呼吸筋の運動範囲拡大訓練。「パタカラ体操」「舌の前後左右運動」「呼吸筋トレーニング」が基本メニューです。
2. 発音の代償法
明瞭度向上のためゆっくり話す・1音ずつ区切る・口を大きく開けるなどの代償戦略を訓練します。LSVT-LOUDというパーキンソン病向けの大声発声訓練は研究エビデンスが豊富です。
3. AAC(補助代替コミュニケーション)
重度例ではコミュニケーションボード、文字盤、視線入力デバイス、音声出力装置(VOCA)などのAAC機器を活用します。介護現場では「はい・いいえ」の合図方法を本人と家族で共有することが第一歩です。
構音障害のよくある質問
Q. 失語症との違いは?
A. 失語症は脳の言語領域(ブローカ野・ウェルニッケ野)の障害で言葉の理解・産生そのものが障害される状態で、構音障害は発声発語器官の運動障害です。失語症では「言葉が出てこない・意味が分からない」、構音障害では「言いたい言葉は分かるが発音が不明瞭」と現れ方が異なります。両者を合併するケースも珍しくありません。
Q. 介護現場でできるコミュニケーション工夫は?
A. ①ゆっくり話してもらう ②静かな環境を整える ③閉ざされた質問(はい・いいえで答えられる質問)から始める ④筆談・コミュニケーションボードを併用する ⑤聞き返すときは「もう一度お願いします」とはっきり伝える、の5点が基本です。
Q. 介護保険でリハビリを受けられますか?
A. 通所リハビリ・訪問リハビリ・介護老人保健施設で言語聴覚士のリハビリを受けられます。医療保険でも脳卒中後の維持期は150日まで利用可能で、介護保険との切り替え時期はかかりつけ医・ケアマネと相談します。
参考文献・出典
- [1]成人発話障害(構音障害)の臨床- 一般社団法人日本言語聴覚士協会
- [2]脳卒中治療ガイドライン- 日本脳卒中学会
- [3]パーキンソン病診療ガイドライン- 日本神経学会
- [4]成人発話障害領域研究- 日本コミュニケーション障害学会
- [5]指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準- 令和6年厚生労働省告示
まとめ
構音障害は、発声発語器官の運動障害で「言いたい言葉は分かるが発音できない」状態を指し、脳卒中・パーキンソン病・ALSなどが主因です。失語症と区別して理解することで、介護現場での適切な声かけ・コミュニケーション方法が選択できます。言語聴覚士によるリハビリで明瞭度は改善が期待でき、必要に応じてAAC機器を活用すれば本人の意思表出機会を大きく広げられます。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
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