
高齢者の尿路感染症(UTI)とは
高齢者の尿路感染症(UTI)を解説。発熱・排尿時痛が出にくく、せん妄や食欲不振など非典型症状が初発になりやすい特徴、カテーテル関連UTIや脱水との関係、介護現場での気づきと受診の目安を公的資料に基づきまとめます。
この記事のポイント
高齢者の尿路感染症(UTI:Urinary Tract Infection)とは、尿道・膀胱・腎臓などの尿路に細菌が感染して炎症を起こす病気です。高齢者では排尿時痛・頻尿・発熱といった典型症状が現れにくく、せん妄(急な意識・認知の変化)、食欲不振、全身倦怠感、転倒、いつもと違うぼんやりといった非典型症状が最初のサインになりやすいのが特徴です。介護現場での「いつもと様子が違う」という気づきが早期発見の鍵になります。
目次
高齢者の尿路感染症(UTI)の基礎知識
尿路感染症(UTI)は、尿道・膀胱・尿管・腎臓のいずれかに細菌が感染して炎症を起こす状態の総称です。膀胱より下に炎症がとどまるものを下部尿路感染(膀胱炎など)、腎臓まで及ぶものを上部尿路感染(腎盂腎炎)と呼び、上部に及ぶと発熱・側腹部痛をきたし重症化しやすくなります。原因菌は大腸菌など腸内細菌が多く、女性は尿道が短く肛門に近いため感染しやすいとされています。
高齢者は加齢に伴う免疫機能の変化、糖尿病や前立腺肥大などの基礎疾患、おむつや尿道カテーテルの使用、水分摂取量の低下(脱水)などが重なり、UTIのリスクが高まります。とくに介護施設に入所している高齢者では、誤嚥性肺炎や皮膚軟部組織感染症とともに尿路感染症にかかりやすいことが知られています。
厚生労働省「介護現場における感染対策の手引き」でも、高齢者は典型的な症状が現れにくいことがあるため、日頃の変化や反応に注意することが重要だとされ、尿の混濁などUTIの兆候に注意を払い、何かおかしいと感じたら躊躇せず医師や看護職員に相談するよう求めています。本記事は一般的な知識をまとめたもので、診断・治療は必ず医師の判断に従ってください。
高齢者UTIで見落とされやすい非典型症状
高齢者の感染症は典型症状を欠くことが多く、UTIも例外ではありません。次のような「いつもと違う変化」は、UTIを含む感染症のサインである可能性があります。
- せん妄・急な認知の変化:急にぼんやりする、つじつまの合わない言動、興奮や落ち着きのなさ
- 食欲不振・水分をとらない:いつも食べる量が急に減る
- 全身倦怠感・元気がない:日中もぐったりして反応が鈍い
- 転倒・ふらつきの増加:歩行が不安定になる
- 発熱がない、あるいは微熱だけ:高齢者は基礎体温が低く、平熱からの上昇幅で判断する必要がある
- 尿の混濁・濃い色・強いにおい:おむつ交換やトイレ介助時に気づける変化
- 頻尿・尿失禁の増加、残尿感:排尿パターンの変化
発熱・側腹部痛・強い倦怠感など全身症状がそろう場合は腎盂腎炎など重症化のおそれがあり、早めの受診が必要です。
典型症状と高齢者の非典型症状の違い
若年者と高齢者では、同じUTIでも現れ方が大きく異なります。違いを知っておくと、介護現場での気づきにつながります。
| 観点 | 一般的な典型症状(若年〜成人) | 高齢者で起こりやすい現れ方 |
|---|---|---|
| 排尿時の症状 | 排尿時の痛み・灼熱感、頻尿、残尿感 | 訴えが乏しく、症状がはっきりしないことがある |
| 発熱 | 発熱・寒気が出やすい | 発熱を欠く/微熱のみのことがある(平熱が低いため上昇幅で判断) |
| 最初に目立つサイン | 排尿時痛・頻尿などの局所症状 | せん妄・食欲不振・倦怠感・転倒など全身・精神症状 |
| 本人の自覚・訴え | 自分で症状を訴えやすい | 認知機能の低下などで訴えが少なく、周囲の観察が頼り |
このため高齢者では「排尿の症状がないからUTIではない」とは言い切れず、全身状態の変化から疑う視点が重要になります。
介護現場での気づきと予防のポイント
UTIは早期に気づいて医療につなげることと、日々のケアで予防することの両輪が大切です。
- 「いつもと違う」を記録・共有する:食欲・水分量・活気・尿の性状・排尿回数の変化を観察し、看護職員や医師へ早めに報告する
- 水分摂取をうながす:脱水は尿の停滞や全身状態の悪化につながるため、こまめな水分補給を支援する(心臓・腎臓疾患で制限がある場合は主治医の指示に従う)
- 陰部・おむつまわりの清潔を保つ:排泄ケアでは前から後ろへ拭く、こまめなおむつ交換を心がける
- 尿道カテーテルは必要最小限に:留置期間が長いほど感染リスクが高まるため、必要性を医療職と定期的に確認し、不要なら早期抜去を検討する
- 排尿の自立を支える:尿失禁管理だけを目的としたカテーテル留置は避けるべきとされている
発熱・強い倦怠感・尿が出ない・意識がはっきりしないなどの全身症状があるときは、自己判断で様子を見ず、速やかに医師・看護職員に相談してください。
高齢者の尿路感染症(UTI)に関するよくある質問
Q. 高齢者のUTIで発熱がないことはありますか?
はい。高齢者は基礎体温が低く、感染症でも発熱を欠いたり微熱だけのことがあります。平熱からの上昇幅で判断する必要があり、発熱がなくても食欲不振やせん妄など他の変化からUTIを疑う視点が大切です。
Q. なぜ高齢者のUTIはせん妄として現れるのですか?
高齢者の感染症は典型症状が出にくく、認知能力の変化(せん妄・興奮など)や全身倦怠感、転倒といった非典型症状が前面に出やすいためです。「急にぼんやりした」「言動がおかしい」といった変化が、UTIなど感染症の最初のサインになることがあります。
Q. おむつや尿道カテーテルを使っているとUTIになりやすいですか?
尿道カテーテルの留置は尿路感染の原因となり、留置期間が長いほど感染リスクが高まります。尿失禁管理だけを目的としたカテーテル留置は避け、必要性を医療職と確認しながら最小限にすることが推奨されています。
Q. 介護職は何に気をつけて観察すればよいですか?
食欲・水分摂取量・活気・尿の性状(混濁・におい)・排尿回数や失禁の変化など、日常ケアの中で気づける変化を観察し、「いつもと違う」と感じたら看護職員や医師へ早めに報告することが重要です。
Q. 受診の目安はありますか?
発熱・側腹部痛・強い倦怠感・尿が出ない・意識がはっきりしないなどの全身症状がある場合は重症化のおそれがあり、自己判断で様子を見ず速やかに受診してください。診断・治療は医師の判断によります。
まとめ
高齢者の尿路感染症(UTI)は、排尿時痛・頻尿・発熱といった典型症状が出にくく、せん妄・食欲不振・倦怠感・転倒などの非典型症状が初発サインになりやすい点が最大の特徴です。日々のケアで「いつもと違う」変化に気づき、水分補給・陰部の清潔・カテーテルの最小限化といった予防を続けつつ、全身症状があれば早めに医療へつなぐことが、重症化を防ぐうえで欠かせません。
参考資料
- [1]
- [2]
- [3]
- [4]カテーテル関連尿路感染(CAUTI)の予防のためのCDCガイドライン2009(日本語訳)- CDC/HICPAC
尿道カテーテルの使用・留置期間の最小化、尿失禁管理目的の留置回避、早期抜去などCAUTI予防の勧告
- [5]
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
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