口すぼめ呼吸とは

口すぼめ呼吸とは

口すぼめ呼吸とは、鼻から吸って口をすぼめてゆっくり長く吐く呼吸法。COPDなどで気道の虚脱を防ぎ息切れを和らげる仕組み、やり方、腹式呼吸との違い、介護現場での声かけを解説します。

ポイント

口すぼめ呼吸とは(要点)

口すぼめ呼吸とは、鼻から息を吸ったあと、口を笛を吹くように軽くすぼめて、ゆっくり長く息を吐く呼吸法です。COPD(慢性閉塞性肺疾患)などで息を吐くときに気管支がつぶれる(虚脱する)のを防ぎ、肺にたまった空気を効率よく吐き出して息切れを和らげます。吸う時間の約2倍かけて吐くのが目安で、特別な道具は要らず、動作の開始時や階段昇降時にその場で使えます。

目次

口すぼめ呼吸の概要と仕組み

口すぼめ呼吸の仕組み(なぜ息切れが楽になるのか)

口すぼめ呼吸は、鼻から息を吸い、口をすぼめて細く長く吐く呼吸法です。COPDなどでは、息を吐くときに肺の弾力が落ちて末梢の気道(気管支の細い部分)がつぶれやすくなり、吐き切れない空気が肺に閉じ込められます(エアトラッピング、動的肺過膨張)。この吐き残しが積み重なることで、動いたときに強い息切れが起こります。

口をすぼめて吐くと、気道の出口に抵抗がかかり、気管支の内側に圧力(呼気終末陽圧)が加わります。内側から支える圧力があることで、息を吐くあいだも気管支がつぶれにくくなり、空気を効率よく吐き出せます。結果として肺にたまる空気が減り、息切れがやわらぐと考えられています。日本呼吸器学会も、息切れを軽くする呼吸法として呼吸リハビリテーションのなかで紹介しています。

胸式呼吸(首や肩を使った浅く速い呼吸)になっている人は、酸素を取り込む効率が悪く息切れが起きやすいため、口すぼめ呼吸や腹式呼吸といった効率の良い呼吸へ切り替えることが勧められます。

口すぼめ呼吸のやり方(手順)

口すぼめ呼吸のやり方

  1. 姿勢を整える。肩や首の力を抜いてリラックスします。立っていても座っていても構いません。
  2. 鼻からゆっくり息を吸う。1、2と数えながら、鼻から軽く吸い込みます。
  3. 口を軽くすぼめる。ろうそくの火を消すときのように、口を笛を吹く形に軽くすぼめます。
  4. すぼめた口から長く吐く。1、2、3、4と数え、吸う時間の約2倍かけて細く長く吐き出します(吸う1:吐く2が目安)。

はじめは呼気(吐く息)に意識を集中し、軽く口をすぼめて吐くことから始めます。慣れてきたら、徐々にすぼめを強めて呼気を長くしていきます。息切れが強くなったら無理をせず、軽くすぼめる段階に戻して繰り返します。

使うとよい場面

  • 立ち上がる、歩き始めるなど、動作の開始に合わせて行う。
  • 階段の昇り降りなど、息切れしやすい動作の最中に行う。
  • 息が切れて呼吸が乱れたとき、呼吸を整えるために行う。

動作のときは息を止めず、息を吐きながら動くのがコツです。

口すぼめ呼吸と腹式呼吸の違い

口すぼめ呼吸とよく一緒に紹介されるのが腹式呼吸です。どちらも息切れを軽くする効率の良い呼吸法ですが、働きが異なります。

  • 口すぼめ呼吸:吐き方を工夫する呼吸法。口をすぼめて吐くことで気管支がつぶれるのを防ぎ、肺にたまった空気を吐き出しやすくします。
  • 腹式呼吸:横隔膜(お腹の奥の筋肉)を使う呼吸法。お腹を膨らませて深く吸うことで、一度に取り込める空気の量を増やします。横隔膜のトレーニングにもなります。

2つを併用すると、たくさんの空気を肺に取り込みながら効率よく吐き出せます。ただし、COPDが進んで肺が大きくふくらみ横隔膜が下がっている人は、腹式呼吸がうまくできない場合があります。その場合は無理に行わず、医師や理学療法士に相談することが勧められます。

口すぼめ呼吸の注意点と介護現場での声かけ

注意点と、介護現場での声かけ

注意したいこと

  • すぼめすぎない。強く口をすぼめ過ぎると、お腹の筋肉が強く収縮して、かえって息切れが強くなることがあります。軽くすぼめるところから始めます。
  • やめると効果は続かない。口すぼめ呼吸は行っているあいだに効果が出る呼吸法です。動作のたびに意識して使うことが大切です。
  • すべての病気に有効とは限らない。肺が硬くなる間質性肺炎などでは効果が乏しいこともありますが、呼吸を整えて息切れを楽にする助けにはなります。自己判断せず主治医に相談します。

介護現場での声かけ・活用

息切れが強い利用者には、介護職が動作のタイミングに合わせて呼吸を誘導すると、動作が楽になります。

  • 立ち上がりや移乗の前に「鼻から吸って」「口をすぼめて、ふーっと長く吐きましょう」と声をかける。
  • 「スー(吸う)」「フー(吐く)」のリズムを一緒に行い、吐く時間を吸う時間より長く保つよう促す。
  • 息を止めて力まないよう、「吐きながら動きましょう」と伝える。
  • 顔色や唇の色、息苦しさの訴え(SpO2を測れる環境なら数値)を観察し、強い息切れやチアノーゼがあれば動作を中断し看護師に報告する。

呼吸法は本人ができるようになることが目標です。介護職は手順を肩代わりするのではなく、タイミングの合図とペース配分を支える役割を担います。

口すぼめ呼吸のよくある質問

よくある質問

口すぼめ呼吸は1日に何回やればよいですか。

回数のノルマよりも、息切れしやすい動作のたびに使うことが大切です。立ち上がりや歩き始め、階段の昇降など、動作に合わせて取り入れると息切れが軽くなります。練習として呼吸法そのものに慣れておくと、いざというときに自然に行えます。

吸うときも口からですか。

吸うのは鼻からが基本です。鼻から吸い、口をすぼめて吐きます。吐く時間は吸う時間の約2倍が目安です。

強くすぼめたほうが効果がありますか。

強くすぼめ過ぎるとお腹の筋肉が緊張して、かえって息切れが強くなることがあります。軽くすぼめるところから始め、慣れに応じて少しずつ調整します。

COPD以外でも役に立ちますか。

口すぼめ呼吸は主にCOPDで使われますが、息が切れて呼吸が乱れたときに呼吸を整える方法としても役立ちます。ただし病気によって向き不向きがあるため、続けて行う場合は主治医や理学療法士に相談してください。

口すぼめ呼吸の参考資料

口すぼめ呼吸のまとめ

まとめ

口すぼめ呼吸は、鼻から吸って口をすぼめてゆっくり長く吐く呼吸法です。気管支がつぶれるのを防いで肺にたまった空気を吐き出しやすくし、COPDなどの息切れを和らげます。吸う1に対して吐く2を目安に、動作の開始時や階段昇降時に取り入れるのがコツです。介護現場では、動作のタイミングに合わせて「鼻から吸って、口をすぼめて長く吐く」と声をかけ、本人がペースをつかめるよう支えることが、安全で楽な動作につながります。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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