MDRPU(医療関連機器圧迫創傷)とは

MDRPU(医療関連機器圧迫創傷)とは

MDRPUは医療機器による圧迫で生じる創傷。NPPVマスク・経鼻チューブ・弾性ストッキング等が好発部位。自重による褥瘡との違い、機器・個体・ケアの3要因、観察と予防のポイントを解説。

ポイント

MDRPUの定義キャプセル

MDRPU(医療関連機器圧迫創傷)とは、酸素マスクやチューブ、弾性ストッキング、カテーテルなどの医療関連機器による圧迫で生じる皮膚や下の組織の損傷です。体重(自重)でできる通常の褥瘡とは発生のしくみが異なりますが、広い意味では褥瘡の一種に位置づけられます。日本褥瘡学会は2024年2月に日本語名称を「医療関連機器褥瘡」へ変更しましたが、略称はいずれもMDRPUです。

目次

MDRPUの概要と褥瘡との位置づけ

MDRPUとは何か

MDRPU(エムディーアールピーユー)は Medical Device Related Pressure Ulcer の略で、日本褥瘡学会は「医療関連機器による圧迫で生じる皮膚ないし下床(かしょう)の組織損傷であり、厳密には従来の褥瘡(自重関連褥瘡)と区別されるが、ともに圧迫創傷であり、広い意味では褥瘡の範疇に属する」と定義しています。

つまり、ベッドや車いすで 自分の体重がかかって できる一般的な褥瘡(自重関連褥瘡)に対し、MDRPUは 体に装着・留置された医療機器が皮膚を圧迫して できる創傷である点が決定的に異なります。創傷の重症度評価には、通常の褥瘡と同じく日本褥瘡学会の DESIGN-R®2020 を用いることができます。

なお日本褥瘡学会は 2024年2月、日本語名称をこれまでの「医療関連機器圧迫創傷」から「医療関連機器褥瘡」へ変更すると発表しました。英語名(MDRPU)・略称は変わらず、いずれも同じ病態を指します。本記事では現場で長く使われてきた「医療関連機器圧迫創傷」も併記します。

MDRPUと一般的な褥瘡の違い

一般的な褥瘡(自重関連褥瘡)との違い

項目一般的な褥瘡(自重関連褥瘡)MDRPU(医療関連機器圧迫創傷)
主な原因自分の体重による圧迫・ずれ装着・留置した医療機器による圧迫
好発部位仙骨部・かかと・坐骨など骨が突出した部位機器が当たる部位(鼻根部・耳介・下腿など)
形状の特徴圧迫部位に一致した不定形機器の形に一致した形(チューブ状・帯状など)
評価ツールDESIGN-R®2020DESIGN-R®2020(共通で使用可)
予防の主眼体位変換・体圧分散マットレス機器のサイズ選択・フィッティング・装着部の観察

MDRPUは 機器の形に沿った創傷 ができやすいのが特徴です。鼻にかかるマスクなら鼻根部に、チューブなら接触したライン状に損傷が現れます。「いつもと違う場所・形の傷」は機器が原因のサインです。

MDRPUの好発部位と原因となる医療機器

MDRPUの原因となる主な医療機器と好発部位

日本褥瘡学会のベストプラクティスでは、以下のような機器がMDRPUの原因として挙げられています。介護現場でも見かける機器が多く含まれます。

  • NPPVマスク・酸素マスク:鼻根部・頬・耳介。在宅人工呼吸や夜間のCPAPで好発
  • 経鼻胃チューブ(経鼻栄養チューブ):鼻翼・鼻孔。固定テープの位置にも注意
  • 気管チューブ・気管カニューレ:口角・頸部
  • DVT(深部静脈血栓症)予防用の弾性ストッキング:下腿・足関節・アキレス腱部。しわや食い込みが原因に
  • 血管留置カテーテル・点滴ライン:固定部位の皮膚
  • パルスオキシメータ(SpO2プローブ):指先・耳たぶ
  • 膀胱留置カテーテル(尿道カテーテル):尿道口・大腿内側の固定部
  • ギプス・シーネ・抑制帯:装着部の骨突出部

共通するのは、同じ場所に持続的な圧迫がかかること。装着したまま長時間動かさない夜間や、感覚が低下している方では発見が遅れやすくなります。

MDRPUの3つの発生要因

MDRPUはなぜ起こる? 3つの発生要因

日本褥瘡学会は、MDRPUは「機器要因」「個体要因」「ケア要因」の3つが関連して発生すると整理しています。

  • 機器要因:機器のサイズ・形状が体に合っていない、硬い素材、メーカーからの装着情報が十分でない など
  • 個体要因:皮膚の菲薄化(薄く弱い皮膚)、循環不全、浮腫(むくみ)、湿潤、骨突出、低栄養、感覚低下(痛みを訴えられない)など、高齢者に多く当てはまる要因
  • ケア要因:外力(圧迫・ずれ)を減らすケアの不足、スキンケア不足、栄養管理が不適切、本人・家族への説明(患者教育)不足 など

特に介護施設や在宅では、個体要因(高齢・低栄養・浮腫・感覚低下)が重なりやすく、ケア要因も人手の影響を受けます。機器を使う場面では「合っているか」「観察できているか」を意識することが予防の第一歩です。

MDRPUの予防と観察のポイント

MDRPUの予防・観察のポイント

MDRPUは「気づけば防げる」創傷です。日本褥瘡学会のベストプラクティスをもとに、現場でできる対策をまとめます。

  1. 機器選択:圧迫やずれが最小になる機器・サイズを選び、正しくフィッティングする(きつすぎ・ゆるすぎを避ける)
  2. 装着部の観察:1日2回以上、機器が当たる皮膚を直接見て発赤・水疱・くぼみがないか確認する
  3. 予防的被覆:マスクの当たる鼻根部などに、ポリウレタンフォームなどのドレッシング材を予防的に貼り圧を分散する
  4. 位置の調整:チューブやラインは同じ場所に当たり続けないよう、定期的に固定位置をずらす
  5. 早期の機器除去:医学的に不要になった機器・ラインは可能な限り早く外す
  6. スキンケアと栄養:保湿・清潔を保ち、低栄養・浮腫など個体要因を多職種で評価する

介護職は医療行為そのものは行いませんが、「マスクの跡が消えない」「ストッキングが食い込んでいる」といった日常の気づきを看護師へ早く報告することが、MDRPU予防の重要な役割になります。

MDRPUのよくある質問

よくある質問

MDRPUと褥瘡は何が違うのですか?
褥瘡(自重関連褥瘡)は自分の体重による圧迫で起こるのに対し、MDRPUは装着・留置した医療機器による圧迫で起こります。日本褥瘡学会は、両者とも圧迫創傷であり広い意味では褥瘡に含まれるとしています。
「医療関連機器圧迫創傷」と「医療関連機器褥瘡」はどちらが正しいですか?
どちらも同じMDRPUを指します。日本褥瘡学会が2024年2月に日本語名称を「医療関連機器圧迫創傷」から「医療関連機器褥瘡」へ変更したため、現在は新名称が用いられますが、現場では旧名称も広く使われています。
介護現場でMDRPUができやすい機器は?
NPPV・酸素マスク(鼻根部)、経鼻栄養チューブ(鼻翼)、DVT予防の弾性ストッキング(下腿)、留置カテーテル、パルスオキシメータなどです。在宅や施設でも使われる機器が多く含まれます。
介護職はMDRPUに対して何ができますか?
医療行為は行いませんが、マスクやストッキングの当たる部分の発赤・食い込み・跡の残りなどに気づいたら、早めに看護師へ報告することが重要な予防の役割です。
MDRPUの重症度はどう評価しますか?
通常の褥瘡と同じく、日本褥瘡学会のDESIGN-R®2020を用いて評価できます。

MDRPUの参考資料

MDRPUのまとめ

まとめ

MDRPU(医療関連機器圧迫創傷/医療関連機器褥瘡)は、マスク・チューブ・弾性ストッキング・カテーテルなどの医療機器が皮膚を圧迫してできる創傷です。自重による褥瘡とは原因が異なり、機器の形に沿った傷ができやすいのが特徴です。「機器要因・個体要因・ケア要因」の3つが重なって起こるため、サイズ選択・フィッティング・1日2回以上の装着部観察・早期の機器除去が予防の柱になります。介護現場では、皮膚の小さな変化に気づき看護師へ早く伝えることが、MDRPUを防ぐ大きな力になります。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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