
看取り介護加算(特定施設)とは
特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホーム)における看取り介護加算ⅠとⅡの違い、算定要件、単位数、特養の看取り介護加算やターミナルケア加算との違いを解説します。
この記事のポイント
看取り介護加算(特定施設)とは、介護付き有料老人ホームなどの特定施設入居者生活介護において、入居者の終末期ケア体制を整備し、医師の医学的知見にもとづく看取りを実施した場合に算定できる介護報酬の加算です。加算Ⅰと加算Ⅱの2区分があり、死亡日に近づくにつれ単位数が段階的に増えます(死亡日は加算Ⅰで1,280単位、加算Ⅱで1,780単位)。
目次
看取り介護加算(特定施設)の位置づけ
看取り介護加算は、特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅のうち特定施設指定を受けたもの・養護老人ホーム特定施設)が、終末期にある入居者へ施設内で看取りを行う体制を整備し、実際に看取りを実施した場合に算定できる介護報酬の加算です。同じ名称でも特別養護老人ホーム(特養)と特定施設では単位数構成・要件が異なり、本稿では特定施設版を扱います。
背景には、高齢者の死亡場所が病院に偏っていた状況を是正し、住み慣れた施設で最期を迎える選択肢を制度的に支える狙いがあります。2006年の介護報酬改定で特養に「看取り介護加算」が創設されたのち、2009年改定で特定施設にも導入されました。2024年度改定では加算Ⅱの単位数引き上げや、夜勤・宿直看護職員配置要件の整理など、看取り対応の質向上を促す方向で見直しが続いています。
特定施設は「住まい+介護」の中間的な性格をもち、医療機関への入院ではなく入居中の居室で最期を迎えるニーズが強い領域です。看取り介護加算が算定できる施設かどうかは、入居者・家族にとって「終末期になっても住み替えを迫られないか」を判断する重要な指標となります。
算定区分と単位数(特定施設)
特定施設の看取り介護加算は、加算Ⅰ・Ⅱの2区分で、死亡日からの日数に応じて4段階の単位数が設定されています。
| 期間 | 加算Ⅰ | 加算Ⅱ |
|---|---|---|
| 死亡日45日前〜31日前 | 72単位/日 | 572単位/日 |
| 死亡日30日前〜4日前 | 144単位/日 | 644単位/日 |
| 死亡日前々日・前日 | 680単位/日 | 1,180単位/日 |
| 死亡日 | 1,280単位/日 | 1,780単位/日 |
加算Ⅱは加算Ⅰに対して全期間で500単位が上乗せされる構造で、配置医師との連携体制や24時間医療対応体制の整備が要件となります。1単位=10〜11円台のため、加算Ⅱを死亡日まで45日間フルに算定した場合、1人あたり概算で約6万単位(約60万円超)の報酬になります。
算定要件(加算Ⅰ・Ⅱ共通+追加要件)
加算Ⅰの主要要件
- 常勤看護師1人以上配置と、看護職員または病院等との連携による24時間連絡体制の確保
- 看取りに関する指針を整備し、入居・契約時に本人・家族へ説明して同意を得ること
- 医師・看護職員・介護職員等が共同して看取り検討会を開催し、指針の見直しを行うこと
- 看取りに関する職員研修を計画的に実施
- 個室または静養室の利用が可能な看取りに適した療養環境の整備
- 医師による医学的知見にもとづく説明と、本人・家族の意思決定プロセスを踏まえた看取りに関する計画書の作成
- 医療・ケアチームによる疼痛緩和、本人・家族への精神的・社会的援助を含めた総合的ケア
加算Ⅱの追加要件
- 配置医師と施設との間で、入居者の注意事項・病状情報の共有方法、診察依頼の手順、24時間連絡方法を文書で取り決めていること
- 複数名の配置医師を配置、または配置医師と協力医療機関の医師が連携し、施設の求めに応じて24時間対応体制を確保していること
- 看取り期において夜勤または宿直の看護職員を配置していること(介護付き有料老人ホーム)
本人・家族との話し合いは1回で終わらせず、状態変化に応じて繰り返し実施し、その都度内容を文書化することが求められます。意思は変動し得る前提で記録を残し、医療・ケアチーム全員で共有することが算定の前提条件です。
特養の看取り介護加算・ターミナルケア加算との違い
「看取り」に関する加算は施設・サービス種別ごとに名称と単位数が異なります。混同を避けるため、特定施設版との違いを整理します。
| 項目 | 特定施設の看取り介護加算 | 特養の看取り介護加算 | ターミナルケア加算 |
|---|---|---|---|
| 対象施設 | 介護付き有料老人ホーム・特定施設指定のサ高住・養護老人ホーム特定施設 | 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) | 訪問看護ステーション・介護老人保健施設・介護医療院 |
| 区分 | 加算Ⅰ・Ⅱ(2区分) | 加算Ⅰ・Ⅱ(在宅復帰時の評価あり) | サービス種別ごとに名称が異なる |
| 死亡日の単位数 | Ⅰ:1,280単位 / Ⅱ:1,780単位 | Ⅰ:1,280単位 / Ⅱ:1,580単位 | 訪問看護2,500単位(死亡月)など |
| 看護体制の要件 | 常勤看護師1名以上+24時間連絡体制(Ⅱは夜勤・宿直看護職員必須) | 常勤看護師1名以上+配置医師との連携 | サービス種別ごとに看護師配置基準が異なる |
| 医師との関係 | 配置医師との連携(Ⅱは協力医療機関との24時間体制) | 配置医師との緊密な連携 | 主治医の指示書にもとづく訪問 |
特定施設版の特徴は、(1)加算Ⅱが特養より上位設定で看護体制を手厚く評価する構造、(2)入居者の「住まい」としての性格が強いため夜勤・宿直の看護職員配置が加算Ⅱで必須化されている点、(3)居住費・食費は実費のままで介護報酬の中で看取りを評価する仕組み、の3点です。利用者・家族から見ると、特定施設は「最期まで自分の居室で過ごせる住まい」を実現するための加算といえます。
算定の質を上げるための実務ポイント
看取り介護加算は単位数こそ大きいものの、書面要件・体制要件・実務運用のすべてが噛み合わないと算定取り消しのリスクがある加算です。算定の「数」だけでなく「質」を担保するためのポイントを整理します。
1. 多職種カンファレンスを定例化する
看取り期に入ってから慌てて集まるのではなく、状態変化の節目(食事量低下・嚥下困難・意識レベル変動など)でカンファレンスを開く運用が望ましい構造です。施設長・配置医師・看護職員・介護職員・生活相談員・本人・家族が定期的に同じ情報を共有することで、ACP(人生会議)の更新が自然に進みます。
2. 看取りに関する指針を「読まれる」ものにする
形式的な指針ではなく、入居時に本人・家族と一緒に読み合わせ、施設で実施できる医療範囲(点滴・酸素・人工栄養の可否など)を具体的に確認するプロセスが重要です。後の意思決定の質を左右する起点となります。
3. 看取り後のグリーフケア・職員フォロー
家族へのお別れの会の機会提供、看取りに関わった職員のデブリーフィング(振り返り)は加算要件には含まれませんが、職員の離職予防と次回看取りの質向上に直結します。施設の文化として定着させると、看取り対応力そのものが上がります。
4. 配置医師との連携文書を「使われる」状態に保つ
加算Ⅱの取り決め文書は、年に一度更新しただけで現場が把握していないケースがあります。夜勤帯の介護職員が即座に医師連絡手順を取り出せるよう、ファイリングとデジタル共有の両輪が望ましい形です。
よくある質問
Q1. 住宅型有料老人ホームでも看取り介護加算は算定できますか?
住宅型有料老人ホームは特定施設指定を受けていないため、施設としての看取り介護加算は算定できません。ただし入居者個別に契約している訪問看護ステーション等が、訪問看護のターミナルケア加算を算定する形での看取り対応は可能です。算定主体が「施設」か「在宅サービス事業者」かが大きな違いです。
Q2. 死亡日45日以上前から看取り期に入った場合は算定できますか?
看取り介護加算は死亡日からさかのぼって最大45日間が算定対象です。それ以前の期間は加算対象外で、通常の特定施設入居者生活介護費の中でケアします。ただし45日を超える長期の看取りケアであっても、計画書整備・カンファレンス記録は事前から残しておくことで、算定開始時の根拠資料となります。
Q3. 看取りに関する計画書はいつまでに作成すればよいですか?
厳密な期限はありませんが、医師による説明と本人・家族の意思決定がなされた時点で速やかに作成し、状態変化のたびに更新する運用が望ましい形です。算定する初日までには整備されている必要があります。
Q4. 病院搬送後に亡くなった場合は算定できますか?
原則として施設内で死亡が確認されたケースが算定対象ですが、看取り期にあると判定後、緊急搬送先で死亡した場合などは過去算定分が請求可能なケースもあります。判断は配置医師・自治体の指導内容を確認してください。
Q5. 加算Ⅰから加算Ⅱへ切り替えるには何が必要ですか?
配置医師との取り決め文書の整備、複数配置医師または協力医療機関との24時間体制契約、夜勤・宿直の看護職員配置が必須要件です。設備投資より人件費インパクトが大きいため、看護職員の採用計画と並行して検討するのが現実的です。
参考資料
- [1]令和6年度介護報酬改定の主な事項について- 厚生労働省
- [2]
- [3]
- [4]介護報酬の算定構造(特定施設入居者生活介護)- WAM NET
- [5]介護給付費等実態統計(看取り介護加算 算定状況)- 厚生労働省
まとめ
看取り介護加算(特定施設)は、介護付き有料老人ホームなどが終末期の入居者を施設内で看取るための体制を整え、医学的・人間的に支えた場合に算定できる加算です。加算ⅠとⅡの差は配置医師との連携体制・24時間対応・夜勤看護職員配置にあり、加算Ⅱでは死亡日1,780単位という高水準で評価されます。算定の質を担保するには、書面要件の充足だけでなく、多職種カンファレンスの定例化・ACPの繰り返し更新・グリーフケアの組み込みといった文化づくりが欠かせません。入居先選びの際は「最期まで住み続けられる施設か」を判断する指標として、看取り介護加算の算定状況を確認するとよいでしょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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