MNA-SFとは

MNA-SFとは

MNA-SF(簡易栄養状態評価表)は、高齢者の低栄養リスクを6項目14点満点で素早くスクリーニングする評価ツール。食事量・体重・移動能力・ストレス・認知/精神・BMI(またはふくらはぎ周囲長)で構成され、0〜7点は低栄養、8〜11点は低栄養のおそれありと判定する。

ポイント

この記事のポイント

MNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form/簡易栄養状態評価表)は、65歳以上の高齢者の低栄養リスクを6項目・14点満点で短時間にスクリーニングする評価ツールです。食事量・体重・移動能力・ストレス/急性疾患・認知/精神・BMI(またはふくらはぎ周囲長)の合計点で、0〜7点=低栄養/8〜11点=低栄養のおそれあり/12〜14点=栄養状態良好の3区分に分類します。採血が不要なため施設・在宅・外来のどこでも使えます。

目次

MNA-SFとは何か

MNA-SFは、1994年にNestleとフランス・トゥールーズ大学のVellas医師らが開発したMNA(Mini Nutritional Assessment)18項目版を、感度と簡便性のバランスを取って6項目に圧縮した短縮版です。2001年にRubensteinらによって妥当性が検証され、現在では20以上の言語に翻訳されてWHO・各国の高齢者栄養スクリーニングの標準ツールとして広く用いられています。

日本国内でも、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・通所介護・訪問看護・回復期リハビリ病棟などで栄養ケア計画書の初期評価として頻繁に採用されています。特に2021年度介護報酬改定で栄養マネジメント強化加算が新設されて以降、施設系サービスでは入所時およびその後3カ月ごとのスクリーニングを文書化することが運用上ほぼ必須となり、MNA-SFはその第一選択として現場に定着しました。

厚生労働省「高齢者の栄養・食生活ガイド」や日本老年医学会の各種ガイドラインでも、フレイル・サルコペニア対策の出発点として「まず栄養スクリーニングをかける」ことが推奨されており、その具体的な手段としてMNA-SFが例示されています。採血や複雑な計算が不要で、看護師・介護福祉士・管理栄養士・ケアマネジャーのいずれでも5分以内に実施できる点が、現場での普及を後押ししています。

MNA-SFの6項目と配点

MNA-SFは下記の6項目で構成され、合計14点満点で評価します。BMIが測定できない場合のみ、F項目は「ふくらはぎ周囲長(CC)」で代用します。

項目評価内容配点
A 食事量の減少過去3カ月の食欲低下・消化器症状・咀嚼/嚥下困難による食事量変化0〜2点
(0=著しい減少/1=中等度/2=減少なし)
B 体重減少過去3カ月の体重変化0〜3点
(0=3kg超/1=不明/2=1〜3kg/3=減少なし)
C 移動能力自力での歩行・外出可否0〜2点
(0=寝たきり/車椅子/1=屋内のみ/2=自由に外出)
D 急性疾患・精神的ストレス過去3カ月の急性疾患・心理的ストレスイベントの有無0または2点
(0=あり/2=なし)
E 神経・精神的問題認知機能低下・抑うつの程度0〜2点
(0=重度の認知症/うつ/1=中等度の認知症/2=問題なし)
F1 BMI身長・体重から算出(kg/m²)0〜3点
(0=19未満/1=19〜20.9/2=21〜22.9/3=23以上)
F2 ふくらはぎ周囲長(CC)BMI測定不可時のみ使用0または3点
(0=31cm未満/3=31cm以上)

運用上の注意:F項目は原則BMIを優先します。寝たきりで身長計測が困難、浮腫や下肢欠損がある場合のみCCで代用し、その旨を記録に残します。両方測ったときも採点に用いるのはどちらか一方だけです。

スコア合計の判定基準(カットオフ値)

6項目を合計したスコアで、対象者を3つのリスク群に分類します。

合計点判定必要な次のアクション
12〜14点栄養状態良好定期再評価(施設では3カ月ごと、在宅では6カ月ごとが目安)
8〜11点低栄養のおそれあり(At risk)食事内容の見直し・補食の検討・管理栄養士への連絡。フルMNA(18項目)への移行を検討
0〜7点低栄養(Malnourished)原因精査(疾患・口腔機能・服薬等)と栄養介入計画の作成。多職種カンファレンスで栄養ケア計画書を更新

カットオフ値の根拠:2001年Rubensteinらの妥当性検証研究で、フルMNA 17点未満(低栄養)を基準とした場合、MNA-SF 11点以下のカットオフが感度98%・特異度100%を示しました。0〜7点をさらに細分する根拠は2009年Kaiserらの大規模国際研究によるもので、現在の3区分版は2009年改訂版として国際的に統一されています。

他の栄養評価ツールとの違い

高齢者の栄養評価ツールはいくつかあり、それぞれ目的と適用場面が異なります。MNA-SFはスクリーニング段階のツールであり、ハイリスク群を拾い上げた後はより詳細な評価へ移行するのが原則です。

ツール項目数所要時間主な用途
MNA-SF6項目約3〜5分65歳以上のスクリーニング。介護施設・在宅・外来で第一選択
フルMNA18項目約15分MNA-SFで低栄養疑いとなった対象のアセスメント深掘り
SGA(主観的包括的アセスメント)病歴・身体所見約10分入院時の臨床判断。年齢を問わず使用
MUST3項目(BMI・体重減少・急性疾患)約2分欧州を中心に成人全般。MNA-SFより簡便だが高齢者特化ではない
ODA(客観的栄養評価)採血値含む採血必要アルブミン・総コレステロール等の生化学指標で確定診断

MNA-SFの最大の特徴は、採血なし・高齢者の認知/移動状態を評価に組み込んでいる点です。SGAやMUSTは認知機能を直接見ないため、フレイル・サルコペニアと一体で低栄養を捉える日本の介護現場では、MNA-SFが扱いやすいツールとして選ばれています。

MNA-SFの実施手順と記録のコツ

  1. 事前準備:身長計・体重計(体重計に乗れない場合はメジャー)、印刷した記録用紙またはICTの栄養スクリーニング画面を用意します。
  2. 本人/家族への聞き取り:A〜E項目は本人・家族・介護記録から情報を取ります。「過去3カ月」の起点を明確に伝えることで回答のばらつきを抑えられます。
  3. BMIまたはCCの測定:F項目は実測が原則。寝たきりで身長測定が困難な場合のみ、ふくらはぎの最大周囲をメジャーで測定し、31cm未満/31cm以上で採点します。
  4. 合計点の算出と判定:各項目を加算し、0〜7/8〜11/12〜14のいずれかに振り分けます。8点以下なら必ず管理栄養士へ連絡し、フルMNAまたは詳細アセスメントへ移行します。
  5. 記録の三点セット:「採点根拠(どの選択肢を選んだか)」「次のアクション(補食・連携・再評価)」「再評価日」を必ず併記します。点数だけ書いて終わらせると、加算要件の文書監査で指摘されます。
  6. 再評価:施設サービスでは入所時+3カ月ごとが目安。状態急変(発熱・入院・手術後)の場合は、その都度再スクリーニングします。

現場で使いこなすための補足

  • BMIが境界(19・21・23)に乗ったら判定を再確認:身長の0.5cm誤差でも点数が変わるため、測定値は2回測って平均を採用すると安定します。
  • 「ストレス」項目の解釈:D項目は急性疾患(肺炎・骨折・手術等)と精神的ストレスイベント(配偶者死別・転居等)を含みます。慢性疾患の悪化は含めないのが標準解釈です。
  • 認知症がある対象では家族・介護記録を併用:本人の自己申告だけでは食事量や体重減少が過小評価されがちです。介護記録の摂取量と直近3カ月の体重推移を必ず照合します。
  • 栄養マネジメント強化加算との接続:MNA-SFで「低栄養のおそれあり」以上と判定された対象は、加算算定上の「低栄養リスク中・高リスク者」と概ね一致します。施設では算定書類への記載まで一気通貫で運用できます。
  • 多職種で同じ点数を出せるよう校正:同一対象を看護師・介護福祉士・管理栄養士の3者で評価し、点数が3点以上ずれたら判定基準の読み合わせをします。チームの評価精度を保つ近道です。

よくある質問

Q. MNA-SFは何歳から使えますか?
A. 開発元のガイドラインでは65歳以上を対象としています。それより若い世代では他の評価ツール(SGA・MUST等)を選択してください。
Q. 採点に必要な機材は?
A. 身長計・体重計、もしくはBMIが測れない場合はメジャー(CC測定用)です。採血や血液検査値は使わず、聞き取りと身体計測のみで完結します。
Q. 自分一人で実施しても構いませんか?
A. 単独実施は可能ですが、認知症や難聴がある対象では家族・他職種から情報を補完するのが推奨されます。点数だけでなく根拠の記録が運用上重要です。
Q. 低栄養(0〜7点)と判定された場合、まず何をすべき?
A. 管理栄養士への連絡とフルMNAでの再評価が最優先です。並行して原因(口腔機能・嚥下機能・服薬・基礎疾患・うつ等)の精査を行い、栄養ケア計画に反映します。
Q. ふくらはぎ周囲長(CC)は左右どちらで測りますか?
A. 開発元の指示書では非利き脚(通常は左)を測ります。麻痺や浮腫がある場合は反対側で測定し、その旨を記録に残します。

参考文献・公的資料

まとめ

MNA-SFは、6項目14点満点で高齢者の低栄養リスクを短時間に判定できる、介護・看護現場の第一選択スクリーニングツールです。8点以下は管理栄養士連携、0〜7点はフルMNAと多職種カンファレンスへ即時エスカレーションすることを徹底すれば、栄養マネジメント強化加算の運用品質も自然と整います。フレイル・サルコペニアの進行を早期に止める入口として、定期的な再評価とチーム内の校正を続けることが重要です。

この用語に関連する記事

在宅酸素療法・COPDの利用者を施設で支える|介護職の観察・呼吸介助・火気管理と看護連携

在宅酸素療法・COPDの利用者を施設で支える|介護職の観察・呼吸介助・火気管理と看護連携

在宅酸素療法(HOT)やCOPDのある利用者を介護施設で支える介護職向け実務ガイド。SpO2の見方と医行為の境界、増悪サインの観察と記録、呼吸を楽にする体位・介助、火気と感染の管理、息切れに合わせた活動調整、看護師への報告と多職種連携を一次ソースで解説。

インスリン療法の利用者の介護|介護職ができること・できないこと

インスリン療法の利用者の介護|介護職ができること・できないこと

インスリン療法を受ける高齢者の介護で、介護職ができること・できないこと(厚労省令和4年通知の医行為線引き)を解説。低血糖・高血糖の観察と補食対応、シックデイ、看護師への報告・連携まで現場目線でまとめます。

看護師の不足感、病院・介護施設の77.3%に|SMS調査「働き方改革は約5割が未着手」

看護師の不足感、病院・介護施設の77.3%に|SMS調査「働き方改革は約5割が未着手」

株式会社エス・エム・エスが2026年5月に公表した調査で、病院や介護施設など事業者の77.3%が看護師の不足感を回答。働き方改革・定着の取り組みは約5割が未着手。介護現場の医療連携・夜間対応への影響と業務設計の打ち手を読み解きます。

せん妄の見極めと現場対応|認知症との違い・誘発因子・看護師連携を介護職目線で解説

せん妄の見極めと現場対応|認知症との違い・誘発因子・看護師連携を介護職目線で解説

介護職向けにせん妄の見極め方を解説。認知症との違い、準備・直接・促進因子の3因子、CAMの観察ポイント、看護師への報告フォーマット、夜間せん妄の対応と予防までを公的資料に基づき実務目線で整理。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。