
尿路結石とは
尿路結石は腎臓から尿道までにできる石。激しい背部・側腹部痛や血尿が典型ですが、高齢者は無症状や発熱・元気のなさなど非典型のことも。種類・治療(自然排石・ESWL・内視鏡)・水分摂取による予防・受診目安を解説。
尿路結石とは(直接回答)
尿路結石とは、腎臓から尿管・膀胱・尿道までの「尿の通り道(尿路)」に石(結石)ができる病気です。できる場所により腎結石・尿管結石・膀胱結石・尿道結石と呼び、上部尿路(腎・尿管)の結石が約96%を占めます。石が尿管に詰まると、突然の激しい背部・側腹部痛(疝痛発作)や血尿を起こします。一方で腎臓内にとどまる石は無症状のことが多く、高齢者では発熱や元気のなさだけが手がかりになる場合もあります。
目次
尿路結石の概要と種類
尿路結石とは何か(種類と全体像)
尿路結石は、尿に含まれるカルシウムやシュウ酸、尿酸などの成分が腎臓で結晶化し、それが核となって少しずつ成長してできる石です。日本人の生涯罹患率は男性で約7人に1人、女性で約15人に1人とされ、泌尿器科外来で最も頻度の高い病気の一つです。食生活の変化や人口の高齢化を背景にここ数十年で患者数は増え続けています。
できる場所による分類
- 腎結石:腎臓(腎盂・腎杯)にできる石。無症状で経過することが多く、健診の超音波やCTで偶然見つかることもあります。大きく育つと腎盂の形に沿った「サンゴ状結石」になることがあります。
- 尿管結石:腎臓から落ちてきた石が細い尿管に詰まったもの。最も激しい痛みを起こす代表格です。
- 膀胱結石:膀胱にできる、または膀胱でとどまって育つ石。前立腺肥大症や神経因性膀胱などで残尿が多い状態が続くと、尿がうっ滞してできやすくなります。
- 尿道結石:膀胱結石が排出される途中で尿道に詰まったもの。尿が急に出にくくなることがあります。
腎臓〜尿管の石を上部尿路結石、膀胱〜尿道の石を下部尿路結石と呼び、上部尿路結石が全体の約96%を占めます。石の成分はシュウ酸カルシウム・リン酸カルシウムが大半で、ほかに尿酸結石、感染が関わるリン酸マグネシウムアンモニウム(感染結石)、シスチン結石などがあります。
「尿路感染症(UTI)」とは別の病気
名前が似ている尿路感染症(UTI)は、細菌が尿路に入り込んで炎症を起こす感染症で、原因も治療もまったく異なります。ただし尿路結石は石による尿の停滞が感染の温床になり、結石に感染を合併すると発熱や腎盂腎炎を引き起こすため、両者は関連し合うことがあります。感染を合併した結石は緊急対応が必要になる点に注意が必要です。
尿路結石の主な症状(部位別)
主な症状(できる場所で大きく変わる)
- 疝痛発作(突然の激しい痛み):尿管に石が詰まり腎盂内の圧が急上昇すると、わき腹から背中、下腹部にかけて七転八倒するほどの激痛が起こります。「痛みの王様(king of pain)」とも呼ばれ、夜間や早朝に起きやすいのが特徴です。
- 血尿:石が尿路の粘膜を傷つけることで起こります。目で見て分かる赤い尿(肉眼的血尿)のこともあれば、検査で初めて分かる程度のこともあります。尿管結石を疑うときに尿検査が役立つ理由です。
- 吐き気・嘔吐:強い痛みに伴って現れることが少なくありません。
- 頻尿・残尿感・排尿痛:石が膀胱の近くまで下りてくると、膀胱を刺激してこれらの症状が出ます。
- 無症状:腎臓内にとどまる石や小さな石は、まったく症状がないまま健診で偶然見つかることがあります。
- 発熱・尿の濁り:細菌感染を合併すると高熱が出て、尿が濁ります。腎盂腎炎へ進むと緊急の処置が必要になることがあります。
- 尿が出なくなる:尿道に石が詰まったり、両側の尿管が同時に詰まったりすると、尿が出せなくなり腎機能が急速に悪化する危険があります。
高齢者の尿路結石の特徴と介護現場の気づき
高齢者の特徴と介護現場での気づき
高齢者の尿路結石は、若い人のような典型的な激痛で現れるとは限りません。痛みの訴えが乏しかったり、認知症などで本人が症状をうまく言葉にできなかったりするため、周囲が気づくサインを知っておくことが大切です。
- 無症状・偶発発見が多い:腎臓内の石は痛みを起こさず、健診や別の検査のCT・超音波で偶然見つかることがよくあります。
- 非典型的なサイン:はっきりした疝痛ではなく、なんとなく元気がない、食欲が落ちた、ぐったりしている、微熱が続くといった漠然とした変化だけのこともあります。感染を合併すると発熱やせん妄(急な混乱)として現れることもあります。
- 感染合併に注意:石による尿の停滞は細菌感染の温床になります。発熱・悪寒・尿の濁りや強いにおいがあるときは、腎盂腎炎や敗血症につながる恐れがあり、早めの受診が必要です。
- 排尿量・尿の性状の観察:両側の尿管が詰まると尿が出なくなり腎機能が急速に悪化します。尿量が極端に減った、丸一日出ていない、といった変化は見逃せません。膀胱結石では血尿や尿の濁りが手がかりになります。
- 治療判断は慎重に:診療ガイドラインでも、高齢者の症状のない結石への治療は、治療による負担と除去する利益を慎重に比べて判断することが望まれるとされています。介護職は治療の要否を判断するのではなく、変化を記録して医療職へ的確に伝える役割を担います。
これらはあくまで「気づき」のための目安です。診断や治療方針は必ず医師が決めるため、気になる変化があれば自己判断せず医療職に相談してください。
尿路結石の治療の基本
治療の基本(大きさと場所で選ぶ)
治療法は石の大きさ・位置・成分、そして症状や腎機能の状態によって選ばれます。大きく分けて、自然に石を出すのを待つ「保存的治療」と、石を砕く「外科的治療」があります。
1. 保存的治療(自然排石を待つ)
おおむね10mm未満の小さな石は、自然に排出される可能性があるため、水分摂取と内服薬(痛み止めや排石を促す薬)で経過を見ます。複数の報告で、5mm未満の石の自然排石率は約68%、5〜10mmでは約47%とされています。痛みがあるときはまず鎮痛(非ステロイド性消炎鎮痛薬の坐薬など)を優先します。ただし1か月を超えても排石されない場合や、痛みがコントロールできない場合は外科的治療を検討します。
2. ESWL(体外衝撃波結石破砕術)
体の外から衝撃波を当てて石を細かく砕き、砕けた破片を尿と一緒に自然排出させる、体への負担が比較的小さい治療です。日帰りや短期入院で行える施設が多く、おおむね10mm前後までの腎結石や上部尿管結石が良い適応です。ただしレントゲンに写らない石や非常に硬い石、大きな石では砕けにくく、複数回必要になることがあります。
3. 内視鏡治療(TUL/PNL)
- TUL(経尿道的尿管結石砕石術):尿道から細い内視鏡(尿管鏡)を入れ、レーザーで石を砕いて取り出します。尿管に強く嵌まり込んだ石や10mm以上の石に有効で、麻酔下に数日の入院で行います。
- PNL(経皮的腎砕石術):背中から腎臓に小さな穴を作って内視鏡を入れ、大きな腎結石やサンゴ状結石を砕いて取り出します。一般に20mmを超える腎結石で優先されます。
これらの適応は石の状態によって異なり、TULとPNLを組み合わせる方法(ECIRS)が選ばれることもあります。具体的な治療法は必ず主治医と相談して決まります。ここでの記載は一般的な目安であり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。
尿路結石の予防と受診・救急の目安
予防の基本
尿路結石は再発しやすい病気で、5年で約半数、長期では60〜80%が再発するとも報告されています。だからこそ予防が重要です。
- 十分な水分摂取:尿を薄めて成分の結晶化を防ぐ最も基本的な予防です。診療ガイドラインでは食事以外に1日2,000mL以上の飲水が推奨されています。汗をかいたときはさらに補給します(ただし心臓・腎臓の病気で水分制限がある人は主治医の指示に従います)。
- バランスのよい食事:動物性タンパク質・塩分・糖分・脂質のとりすぎを避けます。シュウ酸の多い食品(ほうれん草、紅茶、コーヒーなど)は、カルシウムと一緒にとることで腸での吸収を抑えられます。
- カルシウムを適量とる:不足するとかえって結石ができやすくなるため、控えすぎないことが大切です。
- 適度な運動と肥満の予防:肥満は結石のリスクを高めます。
受診・救急の目安
- すぐに受診:突然の激しい背部・側腹部痛、目で見て分かる血尿があるときは泌尿器科を受診します。
- 救急を検討:激痛に高熱・悪寒を伴う、痛みで動けず嘔吐が止まらない、といった場合は感染合併(腎盂腎炎)の恐れがあり、夜間でも救急受診を検討します。
- 緊急性が高い:尿がほとんど・まったく出ない(特に両側の詰まりが疑われるとき)、ぐったりして意識がはっきりしないときは、腎機能の急速悪化や敗血症の危険があり、ためらわず救急要請します。
- 高齢者では:はっきりした痛みがなくても、発熱・元気のなさ・尿量の急な減少・尿の濁りなどがあれば、早めに医療職へ相談します。
尿路結石のよくある質問
よくある質問
Q. 尿路結石と尿路感染症(UTI)は同じものですか?
いいえ、別の病気です。尿路結石は尿路に石ができる病気、尿路感染症は細菌が尿路に感染して炎症を起こす病気で、原因も治療も異なります。ただし結石による尿の停滞は感染を招きやすく、両者が合併すると発熱や腎盂腎炎を起こすことがあります。
Q. 小さな石は放っておいても自然に出ますか?
10mm未満の石は自然排石が期待でき、特に5mm未満では約7割が自然に出るとされています。水分摂取と内服で経過を見ますが、1か月を超えて出ない場合や痛みが強い場合は治療を検討します。自己判断せず泌尿器科で相談してください。
Q. 高齢の家族が痛みを訴えないのに結石と言われました。なぜですか?
腎臓内にとどまる石は痛みを起こさないことが多く、健診や別の検査で偶然見つかることがよくあります。高齢者では発熱や元気のなさだけが手がかりになることもあるため、変化に気づいたら医療職に相談しましょう。
Q. 再発を防ぐには何が一番大切ですか?
水分を十分にとることが最も基本的で重要です。食事以外に1日2,000mL以上が目安とされます(水分制限がある人は主治医の指示に従ってください)。あわせて塩分・糖分・動物性タンパク質のとりすぎを避け、カルシウムを適量とることが勧められます。
Q. 介護職は結石を疑ったとき何をすればよいですか?
診断や治療の判断は医師の役割です。介護職は、痛みの訴え・発熱・尿量や尿の色の変化・元気のなさなどを観察して記録し、医療職へ正確に伝えることが大切な役割です。
尿路結石の参考資料・出典
- [1]尿路結石症診療ガイドライン(第2版・2013年)- 日本泌尿器科学会・日本泌尿器内視鏡学会・日本尿路結石症学会
尿管結石・腎結石の治療アルゴリズム、自然排石率、ESWL/TUL/PNLの適応、高齢者の無症候性結石の扱いを示した診療ガイドライン。
- [2]尿路結石症診療ガイドライン 第3版(2023年)- 日本泌尿器科学会/日本尿路結石症学会ほか
診断・治療の全体的な流れ、飲水指導(食事以外に2,000mL/日以上)、再発予防の生活指導を含む最新版ガイドライン。
- [3]
- [4]
- [5]
尿路結石のまとめ
まとめ
尿路結石は腎臓から尿道までの尿路に石ができる病気で、できる場所により腎・尿管・膀胱・尿道結石に分かれます。尿管に詰まると激しい背部・側腹部痛や血尿を起こす一方、腎臓内の石は無症状のことが多く、高齢者では発熱や元気のなさだけが手がかりになることもあります。10mm未満の石は水分摂取と内服で自然排石を待ち、大きい石や排石しない石はESWLや内視鏡治療(TUL・PNL)を行います。再発しやすい病気のため、1日2,000mL以上の飲水とバランスのよい食事による予防が重要です。介護現場では、変化に気づいて記録し、医療職へ正確に伝えることが大切な役割です。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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