
オーラルフレイルとは
オーラルフレイルは口の機能のささいな衰えで、放置すると低栄養・サルコペニア・要介護に進む可能性がある。介護現場で押さえたい4段階・チェックリスト・予防口腔体操を解説。
この記事のポイント
オーラルフレイルとは、加齢に伴って口腔機能(噛む・飲み込む・話す)がわずかに低下し始めた状態を指す概念。日本歯科医師会と日本老年医学会が提唱し、放置すると咀嚼障害・摂食嚥下障害・低栄養・サルコペニアへと進行し、最終的に要介護状態を招く「全身フレイルの入口」と位置付けられている。「口の些細な衰え」を早期に発見し、口腔体操・歯科受診・栄養指導で可逆的に回復させることが目標。
目次
オーラルフレイルの定義と4段階
オーラルフレイル(oral frailty)は、2013年に東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢教授らが提唱し、日本歯科医師会が普及啓発を進める概念である。「口の機能の軽微な低下から要介護に至る一連の連続的な経過」として位置付けられ、可逆性のある段階での早期介入を重視する。
日本歯科医師会のリーフレット「オーラルフレイルに気をつけよう」では、口腔機能の衰えを以下の4段階モデルで説明する。
- 第1レベル:口の健康への意識低下 歯科受診の中断、口腔衛生への関心の薄れ。本人の自覚は乏しい。
- 第2レベル:口のささいなトラブル 滑舌の低下、食べこぼし、わずかなむせ、噛めない食品の増加。「オーラルフレイル」の中核段階。
- 第3レベル:口の機能の低下(口腔機能低下症) 咬合力低下、舌圧低下、咀嚼機能低下、嚥下機能低下が検査で確認できる段階。2018年から保険病名として認められた。
- 第4レベル:食べる機能の障害 咀嚼障害・摂食嚥下障害が顕在化し、低栄養・サルコペニア・要介護状態に直結。
重要なのは、第2レベルの段階で気づき、第1〜第2レベルへ可逆的に戻すこと。第3レベル以降は機能の完全回復は難しくなる。介護現場では「ここ最近、食事中のむせが増えた」「滑舌が悪くなった気がする」といった家族・職員の気づきが入口になる。
オーラルフレイルのセルフチェック8項目
オーラルフレイルのセルフチェック8項目(OF-5/EOF-5由来)
日本歯科医師会と東京大学が共同開発したセルフチェックリスト。該当数が多いほどオーラルフレイル該当度が高い。
- 半年前と比べて、固いものが食べにくくなった(はい=2点)
- お茶や汁物でむせることがある(はい=2点)
- 義歯(入れ歯)を使用している(はい=2点)
- 口の渇きが気になる(はい=1点)
- 半年前と比べて、外出が少なくなった(はい=1点)
- さきイカ・たくあんくらいの固さの食べ物が噛める(いいえ=1点)
- 1日に2回以上、歯を磨く(いいえ=1点)
- 1年に1回以上、歯医者に行く(いいえ=1点)
合計0〜2点=オーラルフレイルの危険性は低い/3点=危険性あり/4点以上=オーラルフレイルの危険性が高い。介護現場では入居時アセスメントや3ヶ月毎のモニタリングに組み込むことで、口腔機能管理加算(介護保険)算定の根拠資料としても活用できる。
オーラルフレイルと口腔機能低下症・摂食嚥下障害の違い
3つの用語は連続的だが、保険診療上の扱いと介入手段が異なる。
| 用語 | 段階 | 診断基準 | 可逆性 | 主な介入 |
|---|---|---|---|---|
| オーラルフレイル | 第2レベル相当 | セルフチェック(基準値未満) | 高い(生活習慣で回復可) | 口腔体操・食事指導・歯科受診 |
| 口腔機能低下症 | 第3レベル相当 | 7項目中3項目以上該当(保険病名) | 中程度(訓練で改善可) | 口腔機能管理・歯科衛生士訓練 |
| 摂食嚥下障害 | 第4レベル相当 | VF・VE等の画像所見 | 低い(維持が中心) | 言語聴覚士による嚥下訓練・食形態調整 |
介護現場で重要なのは、「口腔機能低下症」と診断される前のオーラルフレイル段階で気づくこと。一度第4レベルへ進行すると、誤嚥性肺炎・低栄養・サルコペニアの連鎖で要介護度悪化に直結する。
オーラルフレイル予防の口腔体操とセルフケア
進行段階によって対策の重点は変わるが、いずれの段階でも次の3点を毎日継続することが推奨されている。
1. パタカラ体操
「パ」「タ」「カ」「ラ」の発音を各10回ずつ、1日3セット行う。「パ」は口唇閉鎖、「タ」は舌の前方運動、「カ」は舌の後方運動、「ラ」は舌の巧緻性を鍛える。発音明瞭度の改善と誤嚥予防に寄与する。
2. 唾液腺マッサージ
耳下腺・顎下腺・舌下腺の3か所を指で円を描くように10回ずつマッサージする。食事前に行うと唾液分泌が促進され、咀嚼・嚥下がスムーズになる。
3. 噛みごたえのある食事
軟らかい食事ばかりに偏らず、根菜・たくあん・スルメなど咀嚼回数が増える食材を取り入れる。1口30回噛むことを目標にすると、咬合力と舌圧の維持につながる。
歯科衛生士による定期的な口腔ケアと、6か月ごとの歯科健診(後期高齢者歯科健診など)を組み合わせると、客観的なモニタリングが可能になる。
介護現場でオーラルフレイルを発見する観察ポイント
利用者本人が「むせ」「滑舌の悪化」を自覚していないケースは多い。介護職が普段の食事介助や会話の中で気づける兆候を押さえておきたい。
- 食事中にむせる頻度が増えた
- 食事に時間がかかるようになった、または食べ残しが増えた
- 食形態を軟菜・刻み食に変更してほしいと希望する
- 会話の発音が不明瞭になった、声が小さくなった
- 口腔内の食物残渣が以前より目立つ
これらの兆候を1つでも認めたら、看護師・歯科衛生士・言語聴覚士と連携し、嚥下評価や歯科介入につなぐ。施設では月1回のRSST(反復唾液嚥下テスト)や口腔機能評価を組み込むのが望ましい。
オーラルフレイルに関するよくある質問
Q. オーラルフレイルは何歳から意識すべき?
A. 日本歯科医師会は65歳以上から積極的なセルフチェックを推奨。ただし50代から咀嚼力の低下が始まる人もいるため、後期高齢者歯科健診(75歳)を待たず、かかりつけ歯科で年1回チェックすると安心です。
Q. 入れ歯を使っていてもオーラルフレイルになりますか?
A. なります。義歯が合わないまま使い続けると咀嚼力が落ち、舌・口唇の筋力低下が進みます。義歯調整は6か月〜1年ごとに歯科で行うのが目安です。
Q. 介護保険でオーラルフレイル対策を受けられますか?
A. 通所介護・通所リハビリの口腔機能向上加算、訪問歯科診療、居宅療養管理指導など複数の経路があります。ケアマネジャーに相談しケアプランへの位置づけを依頼してください。
参考文献・出典
- [1]オーラルフレイル概念の提唱とその展開- 日本老年医学会雑誌
- [2]オーラルフレイル対策のための口腔機能管理マニュアル- 日本歯科医師会
- [3]後期高齢者の質問票- 厚生労働省
- [4]健康日本21(第三次)と高齢者の歯科保健- 厚生労働省
- [5]フレイル予防・対策- 国立長寿医療研究センター
まとめ
オーラルフレイルは「滑舌が落ちた」「むせやすくなった」といった軽微な口腔機能の低下から始まり、放置すれば全身フレイル・要介護状態へとつながる連続性のある現象です。早期に気づき、口腔体操・歯科健診・栄養改善を組み合わせれば回復可能なステージなので、介護現場でも食事観察と歯科連携を意識的に組み込みたいところです。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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