
OT・PT・ST連携(リハビリ職連携)とは
OT・PT・ST連携は、作業療法士・理学療法士・言語聴覚士の3職種がそれぞれの専門性を補完し合いながら、利用者のADL・IADL・嚥下・コミュニケーション機能を包括的に支える実践です。退院前カンファや申し送りで介護職と情報共有する具体的な方法を解説します。
この記事のポイント
OT・PT・ST連携とは、作業療法士(OT)・理学療法士(PT)・言語聴覚士(ST)の3つの国家資格職が、それぞれの専門性を持ち寄って利用者の生活機能を包括的に支える実践のことです。PTは基本動作、OTはADL/IADLと精神機能、STは嚥下とコミュニケーションを担当し、退院前カンファレンスやリハビリ計画書作成の場で介護職員と情報を共有しながらケアを最適化します。
目次
リハビリ職連携の全体像と法的位置づけ
OT・PT・ST連携は、3つの国家資格職が同じ利用者に対して重複なく・抜け漏れなく介入するための実務枠組みです。理学療法士及び作業療法士法(昭和40年法律第137号)と言語聴覚士法(平成9年法律第132号)により、それぞれの業務範囲は明確に区分されていますが、介護現場では1人の利用者が複数の機能低下を同時に抱えるため、職種をまたいだ協働が不可欠になります。
厚生労働省「チーム医療の推進に関する検討会」報告書(2010年)以降、リハビリテーション専門職の協働は政策的にも推進されてきました。介護保険サービスでは、リハビリテーションマネジメント加算や生活機能向上連携加算がOT・PT・STの関与を算定要件に組み込んでおり、連携の質が報酬に直結する仕組みになっています。
具体的な連携の場面は、(1)退院前カンファレンス、(2)リハビリテーション計画書の作成、(3)サービス担当者会議、(4)日々の申し送りやリハ記録の4つに整理できます。介護職員は利用者の最も身近にいる立場として、リハ職が立てた目標を日常生活に落とし込み、観察した変化をフィードバックする役割を担います。
PT・OT・STの役割分担表
3職種は対象範囲が明確に分かれます。介護職が「誰に相談すべきか」を判断する基本マップとして整理しました。
| 職種 | 主な対象機能 | 介護現場での代表的介入 | 介護職が共有すべき観察 |
|---|---|---|---|
| PT(理学療法士) | 基本動作(起き上がり・立ち上がり・歩行・移乗)、筋力・関節可動域、バランス | 歩行訓練、立ち上がり練習、車椅子移乗指導、転倒予防プログラム、福祉用具選定 | ふらつき、歩行距離の変化、転倒ヒヤリハット、痛みの訴え |
| OT(作業療法士) | ADL/IADL、上肢機能、認知機能、精神機能、環境調整 | 食事・更衣・整容動作の練習、自助具選定、住環境調整、認知症の方への作業活動 | 食事自立度、着替え時の混乱、趣味活動への意欲、BPSDの出現状況 |
| ST(言語聴覚士) | 嚥下機能、構音、失語、聴覚、認知コミュニケーション | 嚥下評価(RSST・改訂水飲みテスト)、食形態調整、構音訓練、コミュニケーション支援 | むせ込み、食事時間延長、発話明瞭度の変化、聞き返しの増加 |
重複領域もあります。たとえば食事動作はOT(上肢操作・姿勢)とST(嚥下機能・食形態)が共同で関わり、移乗動作はPT(身体機能)とOT(環境調整)が連携します。介護職が「どちらに連絡するか迷う」場合は、まず生活相談員またはケアマネジャーに伝え、リハ職側で役割分担を調整してもらうのが現場での原則です。
介護現場での連携場面・4つの定型フロー
1. 退院前カンファレンス(病院→在宅・施設)
急性期・回復期病院の入院中に開催され、病棟看護師・MSW・PT・OT・STと、受け入れ側の施設職員・ケアマネ・訪問看護師が同席します。リハ職は到達したADL/IADLレベル、残存機能、リスク管理上の注意点(誤嚥・転倒など)を申し送り、介護職側は自宅・施設の生活環境と人員配置を伝えます。介護職員が参加する場合は、入浴・食事・トイレ動作の介助方法を具体的に質問するのがポイントです。
2. リハビリテーション計画書の作成・3か月ごとの見直し
通所リハ・訪問リハ・老健ではリハマネ加算の算定要件として、医師の指示のもとPT・OT・STのいずれか(必要に応じ複数)が個別計画書を作成し、原則3か月ごとに見直します。介護職員は計画書の目標(例:「6か月後に屋内伝い歩き自立」)を把握し、日々のケアでその目標を意識した声かけ・動作支援を行います。
3. サービス担当者会議
居宅介護支援事業所のケアマネが招集する会議で、訪問リハ・通所リハに関わるPT・OT・STが参加します。ここでは介護職員(訪問介護のサ責、通所介護の生活相談員など)が日常で気づいた変化を共有することで、リハ職が次の計画修正につなげます。
4. 日々の申し送り・リハ記録
施設内では出勤時・終業時の申し送り、訪問系では連絡ノートやICTツールが情報共有の中心です。リハ職は「今日の訓練内容・反応・次回までの介護職への依頼事項」を簡潔に記録し、介護職員は食事量・睡眠・気分・痛みの訴えなど日常観察を返します。SBAR(状況・背景・評価・提案)形式で報告すると、緊急性の高い情報が伝わりやすくなります。
介護職員が押さえる情報共有のコツ
- SBAR形式で伝える:Situation(何が起きているか)・Background(背景)・Assessment(自分の評価)・Recommendation(提案)の順に整理すると、リハ職が短時間で状況を把握できます。たとえば「Aさんが今朝から歩行時にふらつきあり(S)、昨日まで安定(B)、転倒リスク上昇と判断(A)、本日のリハ前に再評価をお願いしたい(R)」のように。
- 主観と客観を分ける:「元気がない」ではなく「朝食を半分残し、声かけに30秒以上の遅延あり」と数値・具体例で書くと、リハ職側の評価精度が上がります。
- 計画書の目標を覚えておく:リハマネ加算の計画書に書かれた長期・短期目標は、介護記録の言葉と合わせると効果的です。目標と乖離した動きがあれば早めに共有しましょう。
- 「リハ職の指示通り」を機械化しない:歩行介助の手の添え方、車椅子のフットサポート位置、嚥下時の頸部前屈角度などは、リハ職が個別に調整しています。手順が不明な場合は、その場で短時間でも実演をお願いするのが安全です。
- 食事・嚥下はST、姿勢・移乗はPT/OTに連絡を基本に、迷う場合はケアマネまたは生活相談員経由で振り分けてもらいます。
よくある質問
- Q1. 介護施設にPT・OT・STが全員配置されている必要はありますか?
- いいえ。配置基準はサービス種別で異なります。介護老人保健施設は常勤の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のいずれかを入所定員100人あたり1人以上の配置が必要です。通所リハや訪問リハも同様に複数職種のうちいずれかで要件を満たします。配置がない職種が必要になった場合は、外部の医療機関や訪問リハと連携する「生活機能向上連携加算」などを活用します。
- Q2. ST(言語聴覚士)が施設にいない場合、嚥下評価はどうしますか?
- 歯科衛生士・看護師による口腔機能向上加算の対象スクリーニング(RSST・改訂水飲みテストなど)が一次評価として用いられます。中等度以上のリスクが疑われた場合は、訪問STや嚥下外来への紹介が標準フローです。介護職員は食事観察での「むせ・声質変化・食事時間延長」を継続記録します。
- Q3. リハビリ計画書の内容は介護職員も閲覧できますか?
- はい。リハマネ加算の運用上、計画書はチーム全員で共有することが推奨されており、介護記録システムや施設内ファイルから閲覧可能です。利用者本人・家族にも交付されるため、ケアの方向性として全職種で参照する前提の文書です。
- Q4. 介護職員からリハ職に提案してもよいですか?
- むしろ歓迎されます。利用者と最も長く接する介護職員の観察は、リハ職の評価精度を大きく左右します。「もっと立ち上がり練習を増やしてはどうか」「食器を変えれば自食が進みそう」などの具体的提案は、サービス担当者会議や日々の申し送りで遠慮なく出してかまいません。
- Q5. PT・OT・STの連携がうまくいかない時の相談先は?
- 施設内では機能訓練指導員のリーダー・リハビリ主任、サービス事業所では管理者・サービス提供責任者が一次窓口です。それでも改善しない場合はケアマネジャー、最終的には施設長・管理者層に介護職員側から相談する経路があります。
まとめ
OT・PT・ST連携は、3職種の専門性を「役割分担表」「退院前カンファ」「リハビリ計画書」「日々の申し送り」の4つの場面で接続する実務枠組みです。介護職員は利用者の最も近くで観察するからこそ、SBAR形式の的確な情報共有と、リハ計画書の目標を意識した日常ケアによって連携品質を大きく押し上げる存在になります。役割分担を理解した上で、迷ったらケアマネ・生活相談員経由でリハ職に橋渡しする習慣をチームで定着させることが、利用者のADL・嚥下・コミュニケーション機能を守る近道です。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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