PHR(パーソナルヘルスレコード)とは

PHR(パーソナルヘルスレコード)とは

PHR(パーソナルヘルスレコード)は個人が自身の健康・医療・介護情報を生涯にわたり管理・活用する仕組み。マイナポータルとの違い、EHR・LIFE・介護情報基盤との関係、介護現場での活用シーンまで解説。

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この記事のポイント

PHR(パーソナルヘルスレコード/Personal Health Record)は、健診結果・服薬履歴・予防接種記録・バイタルデータなど、個人の健康・医療・介護情報を本人が生涯にわたり一元的に管理・活用する仕組みです。日本ではマイナポータルを公的基盤として、民間PHRアプリが活用層を支える二層構造で推進されています(厚生労働省「健康・医療・介護情報利活用検討会」)。

目次

PHRの定義と背景

PHR(Personal Health Record/パーソナルヘルスレコード)とは、個人ごとに分散していた健康・医療・介護情報をデジタルで集約し、本人が生涯にわたって閲覧・管理・活用できるようにする仕組みの総称です。母子手帳の予防接種記録、自治体の特定健診結果、医療機関の処方履歴、薬局のお薬手帳、ウェアラブル端末のバイタルデータなど、これまで紙やバラバラのシステムに散らばっていた情報を、本人を中心に統合することがコンセプトです。

日本では厚生労働省が2019年に「国民の健康づくりに向けたPHRの推進に関する検討会」を設置し、2020年からは総務省・経済産業省と連携して「健康・医療・介護情報利活用検討会」のもとPHR推進が国家戦略として位置づけられました。マイナンバー制度とマイナポータルを公的なPHR基盤としつつ、民間PHR事業者が独自アプリで日々の活用層を担う二層構造が基本方針です。

2024年12月にはマイナンバーカードの健康保険証一体化(マイナ保険証)が本格運用に入り、医療機関がオンライン資格確認システム経由で受診歴・薬剤情報・特定健診結果を参照できるようになりました。利用者本人はマイナポータルから同じ情報を閲覧でき、PHRの公的基盤が一気に整備された段階にあります。

EHR・LIFE・介護情報基盤との違い

PHRは似た仕組みと混同されやすいため、主体(誰のために誰が管理するか)と目的で整理すると理解しやすくなります。

仕組み主体・管理者主な目的典型例
PHR個人(本人)本人の健康管理・受診時の情報提供・予防マイナポータル、民間PHRアプリ
EHR(電子健康記録)医療機関・地域連携医療機関間の情報共有・地域医療連携地域医療連携ネットワーク、電子カルテ
LIFE介護事業所→厚労省介護現場の科学的介護データ収集・フィードバック科学的介護情報システム(LIFE)
介護情報基盤国(厚労省・デジタル庁)介護分野の情報を全国で連携・共有2026年度本格運用予定の全国基盤

PHRは「本人を主語」とした個人主導の仕組みで、本人の同意のもとデータを医療機関や介護事業所と共有できる点が最大の特徴です。EHRが医療機関視点、LIFEが介護事業所視点、介護情報基盤が行政視点であるのに対し、PHRだけが本人視点で設計されています。介護現場では、利用者本人が持つPHRと、事業所が運用するLIFE・介護情報基盤が連携することで、入所時の医療情報共有や訪問介護でのバイタル管理が大幅に効率化されると期待されています。

介護分野でのPHR活用シーン

PHRは医療分野での議論が先行しがちですが、介護現場こそ恩恵が大きい仕組みです。代表的な活用シーンを5つ整理します。

  1. 介護施設入所時の医療情報共有:入所予定者やその家族がマイナポータルから直近の薬剤情報・既往歴・アレルギー情報をPDFで出力して持参することで、施設側の情報収集の手間が大幅に減ります。特に複数医療機関を受診している高齢者では効果が大きく、入所アセスメントの精度向上にもつながります。
  2. 訪問介護でのバイタル記録連携:訪問先で測定した血圧・脈拍・体温などをスマートフォンのPHRアプリに記録し、家族や担当ケアマネ、主治医とリアルタイムで共有できます。異常値の早期発見と多職種連携の質を底上げします。
  3. 看取り期の情報引き継ぎ:在宅から施設、施設から病院へと療養場所が変わる場面で、本人の意思(ACP/人生会議の記録)や直近のバイタル変動をPHRに保存しておくことで、引き継ぎ漏れによる本人意向と異なる医療介入を防げます。
  4. 家族介護者の情報管理:遠距離介護をしている家族が、本人の同意のもとPHRを閲覧する権限を共有することで、通院記録や服薬状況をリモートで把握できます。緊急時の判断や次回受診時の同行可否の判断材料になります。
  5. 介護予防・健康増進:要支援・要介護に至る前の段階で、健診結果や日々の歩数・体重をPHRで継続記録することで、フレイル兆候の早期発見や、地域包括支援センターでの介護予防ケアマネジメントに活用できます。

いずれの場面でも、データを「持つ」だけでは価値が生まれず、介護職・医療職が日々の業務フローに組み込めるかが普及の鍵です。介護施設や訪問介護事業所では、入所時の必須持参書類にマイナポータルからの薬剤情報PDFを加えるなど、運用ルールの整備が先行している事業所もあります。

介護職が知っておきたいPHR活用のコツ

PHRを介護現場で活用する際は、技術的な対応よりも本人・家族とのコミュニケーション設計が重要になります。実務で押さえておきたいポイントを整理します。

  • 同意取得を業務フローに組み込む:PHRの閲覧・共有は本人同意が大原則です。アセスメント時にPHR情報の活用同意を書面で取得し、誰が・どの範囲を・どの目的で閲覧するかを明示します。
  • マイナポータルの代理閲覧設定を案内できるようにする:認知症など本人操作が困難なケースでは、家族による代理閲覧設定(マイナポータルの「代理人」機能)の存在を案内するだけでも家族の安心感が変わります。
  • 紙ベースとの併用を前提にする:PHR利用者はまだ全世代に広がっていません。利用していない方には従来通りお薬手帳・診療情報提供書を求め、PHR利用者には併用または優先活用の選択肢を提示しましょう。
  • セキュリティリテラシーを職員間で共有:PHRデータは要配慮個人情報です。スマートフォン画面の覗き見防止、共有時のURL期限設定、退職時のアプリログアウトなど、現場レベルでの運用ルールを定めましょう。
  • 民間PHRアプリの選び方を理解する:厚労省・経産省・総務省の3省ガイドライン適合事業者を選ぶのが基本です。事業者リストは厚労省サイトで公開されており、本人や家族から相談を受けた際の案内材料になります。

よくある質問

Q. マイナポータルとPHRアプリはどう使い分けるのですか?
A. マイナポータルは公的な情報基盤として、特定健診結果・薬剤情報・予防接種記録・医療費通知などを閲覧できます。一方、民間PHRアプリは日々の体重・血圧・運動・食事ログを記録し、グラフ化や健康アドバイスを提供する活用ツールです。両者は連携が進んでおり、公的データ(マイナポータル)+ライフログ(民間アプリ)の組み合わせで本来のPHRが完成すると考えられています。
Q. 介護職員もPHRの情報を閲覧してよいのですか?
A. 本人または法定代理人の同意があれば閲覧可能です。アセスメント・ケアプラン作成・看護指示書連携など業務上の必要性がある範囲に限り、目的・期間・閲覧範囲を明示した同意を取得してください。施設では「PHR情報活用同意書」のような書式整備を進める動きが広がっています。
Q. PHRとお薬手帳の違いは何ですか?
A. お薬手帳は服薬情報に特化した記録媒体で、紙またはアプリで提供されます。PHRはお薬手帳の情報を含む、より広範な健康・医療・介護情報の総称です。電子版お薬手帳の多くはPHRアプリと連携できるよう設計されており、PHRの一部要素として位置づけられます。
Q. 高齢者本人がPHRを使いこなせない場合はどうすればよいですか?
A. 家族による代理閲覧、地域包括支援センター・ケアマネジャーの伴走支援、自治体の高齢者向けデジタル相談窓口の活用が有効です。マイナポータルには代理人設定機能があり、家族1名を代理人として登録すれば代理人のスマートフォンから情報を閲覧できます。
Q. PHRのデータ漏えいリスクが心配です
A. 国は厚労省・経産省・総務省の3省連名で「民間PHR事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針」を策定し、適合事業者を公表しています。ガイドライン適合マークの有無や事業者の運営実績を確認した上でサービスを選択することがリスク低減の基本です。

まとめ

PHR(パーソナルヘルスレコード)は、健康・医療・介護情報を本人主導で一元管理するデジタル基盤であり、マイナポータルを公的基盤、民間PHRアプリを活用層とする二層構造で日本では推進されています。介護現場ではEHR・LIFE・介護情報基盤とは異なる「本人視点」の仕組みとして、入所時の医療情報共有・訪問介護でのバイタル連携・看取り期の意思伝達・家族介護者の遠隔把握・介護予防の各シーンで価値を発揮します。介護職としては、本人同意取得・代理閲覧設定の案内・紙との併用設計を業務フローに組み込み、PHR活用を当たり前のスキルとして身につけていくことが、これからの介護DX時代に求められます。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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