
リフレクション(省察的実践)とは
リフレクション(省察的実践)とは、D.ショーンが提唱した専門職の学び方。行為の中の省察と行為についての省察、コルブの経験学習サイクルと結びつけ、介護職の振り返り・事例検討・OJTへの活かし方をやさしく解説。リフレーミングとの違いも整理。
リフレクション(省察的実践)の定義
リフレクション(省察的実践)とは、自分の実践や経験をていねいに振り返り、そこから学びを引き出して次の行動を良くしていく専門職の学び方です。アメリカの哲学者ジョン・デューイの「反省的思考」を源流とし、ドナルド・ショーンが著書『省察的実践とは何か』(原著1983年)で理論化しました。介護の現場では、日々のケアやヒヤリハット、事例検討を「やりっぱなし」にせず、意図的に振り返って専門性を高める土台になります。認知の枠組みを捉え直す「リフレーミング」とは別の概念です。
目次
リフレクション(省察的実践)の概要と理論的背景
リフレクション(省察的実践)とは何か
リフレクション(reflection)は「省察」「内省」「振り返り」と訳されます。単なる反省や感想とは異なり、経験を多様な観点から見つめ直し、「なぜそうなったのか」「次はどうするか」という気づきと教訓を引き出す思考のプロセスを指します。
この考え方の源流は、1930年代にアメリカの哲学者・教育学者ジョン・デューイが示した「反省的思考(reflective thinking)」にあります。それを専門職の実践論として発展させたのが、マサチューセッツ工科大学の教授だったドナルド・ショーンです。ショーンは、看護師やソーシャルワーカー、教師のように、正解のない複雑な状況に向き合う専門職を「省察的実践家(reflective practitioner)」と名づけました。
ショーンが批判したのは、基礎科学で得た理論をそのまま現場に当てはめれば良いとする「技術的合理性」の考え方です。実際の現場では、教科書どおりにいかない不確実で複雑な状況が次々に起こります。ショーンは、優れた専門職の「知」は理論の中ではなく行為(実践)の中にあり、状況と対話しながら自分の枠組みを組み替えていく営みこそが専門性の核心だと論じました。この理論は1980年代以降、欧米の看護教育に取り入れられ、日本でも看護・介護・保育・教育の人材育成に広く応用されています。
リフレクション(省察的実践)を支える2つの理論
リフレクションを支える2つの理論
介護職の振り返りを深めるうえで土台になるのが、ショーンの「2種類の省察」とコルブの「経験学習サイクル」です。両者を押さえると、日々のケアを学びに変える回路がイメージしやすくなります。
ショーンの2種類の省察
- 行為の中の省察(reflection-in-action):ケアをしているまさにその最中に、「あれ、いつもと様子が違う」と気づき、その場でやり方を調整する省察です。予想外の反応に出会ったとき、立ち止まって考えながら手を動かす、熟練した介護職が自然に行っている思考を指します。
- 行為についての省察(reflection-on-action):ケアが終わった後に、「なぜあの対応がうまくいったのか」「別のやり方はなかったか」と振り返る省察です。記録の記入、申し送り、事例検討会、OJTでの振り返りなどが、この省察を意図的に行う場になります。
コルブの経験学習サイクル(4段階)
デイヴィッド・コルブは、経験を学びに変えるプロセスを4つの段階が循環するモデルとして示しました。
- 具体的経験:実際にケアや業務を体験する
- 内省的観察:その経験を多様な視点から振り返る(ここがリフレクションの中心)
- 抽象的概念化:振り返りから、他の場面でも応用できる教訓や自分なりの法則を引き出す
- 能動的実験:導き出した教訓を次の場面で試してみる
この4段階を回し続けることで、経験が「やりっぱなし」で終わらず、専門性の向上につながっていきます。
リフレクション(省察的実践)とリフレーミングの違い
名前が似ているため混同されがちですが、リフレクション(省察的実践)とリフレーミングはまったく別の概念です。介護の学びの場では両方が登場するため、区別して理解しておくと役立ちます。
| 観点 | リフレクション(省察的実践) | リフレーミング |
|---|---|---|
| 意味 | 自分の実践や経験を振り返り、学びを引き出す思考のプロセス | 物事の枠組み(フレーム)を変えて、別の見方で捉え直す技法 |
| 主な目的 | 専門職としての気づきと成長、ケアの質の向上 | 短所を長所として捉え直すなど、認知や感情の切り替え |
| 提唱・背景 | デューイの反省的思考を源流に、ショーンが専門職論として理論化 | 家族療法や心理学の領域で発展した認知の技法 |
| 介護での使われ方 | 事例検討、OJT、振り返りによる人材育成 | 認知症ケアでの関わり方、職員のバーンアウト予防 |
ざっくり言えば、リフレクションは「振り返って学ぶ」こと、リフレーミングは「見方を変える」ことです。リフレクションの過程で物事を別の角度から捉え直す場面ではリフレーミングの発想が役立つこともありますが、両者は目的も理論的背景も異なります。
リフレクション(省察的実践)のよくある質問
リフレクション(省察的実践)に関するよくある質問
Q. リフレクションと「反省」はどう違いますか。
反省が「失敗を悔いる」ことに重心があるのに対し、リフレクションは成功も失敗も含めて経験を多面的に見つめ直し、「なぜそうなったのか」「次はどうするか」という教訓を引き出す点が異なります。うまくいったケアを振り返って再現性を高めるのも、立派なリフレクションです。
Q. 介護の現場ではどんな場面でリフレクションを行いますか。
ケア記録の記入、申し送り、ヒヤリハットの振り返り、事例検討会、新人へのOJTなどが代表的な場面です。一人で行う省察に加えて、チームで語り合うことで、自分では気づかなかった視点が得られます。
Q. 一人でも取り組めますか。進め方のコツはありますか。
取り組めます。コルブの経験学習サイクルにならい、「どんな経験をしたか」「何を感じ、何がうまくいった/いかなかったか」「そこから何を学べるか」「次はどう試すか」を書き出すと整理しやすくなります。まずは1日の終わりに印象に残った場面を1つ振り返る習慣から始めると続けやすいです。
Q. リフレクションは介護職の専門性向上にどうつながりますか。
ショーンは、専門職の本当の力量は理論そのものではなく実践の中の知にあると論じました。経験を振り返って教訓化し、次のケアに活かす循環を回すことで、マニュアルには書かれていない状況判断の力が磨かれ、専門性の向上につながります。
リフレクション(省察的実践)の参考資料
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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