リハビリ栄養とは

リハビリ栄養とは

リハビリ栄養(リハビリテーション栄養)は、栄養状態を考慮したリハビリと、リハ内容を考慮した栄養管理を一体で行う考え方。若林秀隆氏が提唱し、5段階のリハ栄養ケアプロセスで実践する。

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リハビリ栄養(リハビリテーション栄養)とは、栄養状態を考慮したリハビリテーションと、リハ内容を考慮した栄養管理を一体で行う考え方。リハビリテーション科専門医の若林秀隆氏が提唱し、日本リハビリテーション栄養学会(JSRN)が普及活動を担う。「栄養ケアなくしてリハなし」を合言葉に、低栄養やサルコペニアを抱える高齢者・障害者の機能回復を支える臨床概念で、介護現場でも管理栄養士・PT・OT・ST・看護師の協働で広がっている。

目次

リハビリ栄養の定義と背景

リハビリ栄養とは、国際生活機能分類(ICF)による全人的評価と、栄養障害・サルコペニア・栄養素摂取の過不足の評価・診断・ゴール設定を行ったうえで、障害者や高齢者の栄養状態・サルコペニア・フレイルを改善し、機能・活動・参加・QOLを最大限高める「リハからみた栄養管理」「栄養からみたリハ」を意味する。リハビリテーション科専門医の若林秀隆氏が2010年代に体系化し、現在では日本リハビリテーション栄養学会(JSRN)が学術的な普及・教育・診療ガイドライン策定を担っている。

背景には、入院・入所中の高齢者の4〜8割が低栄養状態とされ、栄養補給が不十分なままリハを行うと、筋たんぱく質が分解されてかえって筋肉量が減り、ADLが下がってしまうという臨床課題がある。逆に、リハで消費するエネルギーを見込まずに栄養だけ与えても、運動不足や過剰栄養で肥満・糖代謝悪化を招く。リハと栄養を別々の専門職が「自分の担当範囲だけ」見ていた従来モデルでは、こうしたミスマッチを防げない。リハビリ栄養はこの構造的なギャップを埋めるための統合フレームワークである。

合言葉として広く知られるのが「栄養ケアなくしてリハなし」。栄養状態が悪い状態でリハを強化しても効果は出にくく、まず栄養を整えてからリハ強度を上げるのが鉄則とされる。介護報酬上も2021年度改定以降、栄養スクリーニング加算・栄養アセスメント加算が拡充され、施設・通所サービスでリハ栄養の考え方を実装しやすくなった。

リハ栄養ケアプロセス5段階

質の高いリハビリ栄養の実践には、リハ栄養ケアプロセス(Rehabilitation Nutrition Care Process)と呼ばれる5段階のフレームワークが使われる。米国栄養士会の栄養ケアプロセス(NCP)をリハ領域に適用したもので、JSRNも標準手順として推奨している。

段階名称主な内容
1 リハ栄養アセスメント・診断推論 ICFに基づく心身機能・活動・参加の評価、栄養障害・サルコペニア・嚥下機能の評価、エネルギー消費量と摂取量の推定、原因仮説の整理
2 リハ栄養診断 低栄養/サルコペニア/栄養素摂取の過不足(過小・過剰)を診断名として確定。原因も「侵襲・悪液質・飢餓・サルコペニア」のどれに該当するか分類する
3 リハ栄養ゴール設定 SMART(Specific/Measurable/Achievable/Relevant/Time-bound)基準で、機能・活動・参加・栄養状態のゴールを設定。例:3か月で歩行自立、体重+2kg、握力+3kg
4 リハ栄養介入 「リハからみた栄養管理」(リハ強度に応じた必要エネルギー+たんぱく質付与)と「栄養からみたリハ」(栄養状態に応じた負荷設定)を多職種協働で実施
5 リハ栄養モニタリング 定期的にゴール達成度・体組成・栄養状態・ADL/IADLを再評価し、プロセスにフィードバック。改善が乏しければ診断・ゴール・介入を見直す

5段階を順序立てて回すことで、「栄養を入れているのにリハが進まない」「リハを頑張っているのに体重が落ちる」といった臨床のミスマッチの原因が見える化され、根本原因に介入できる。介護施設では3か月ごとのカンファレンスでこのプロセスを回すケースが多い。

介護現場でリハ栄養を活かす実践ポイント

1. 低栄養・サルコペニアの早期発見

BMI、体重減少率、MNA-SFスコア、握力(男性28kg/女性18kg未満でサルコペニア疑い)など、簡易スクリーニングを入所時・3か月ごとで実施。看護師・介護職が日常的に体重と食事摂取量を記録するだけでも、リハ栄養の入口として機能する。

2. エネルギー収支とリハ強度を必ずセットで考える

リハ強度を上げる前に、消費エネルギーが摂取エネルギーを超えていないかを確認する。週3回30分のPTでも追加エネルギー消費は無視できず、十分な栄養(特にたんぱく質1.0〜1.2g/kg体重/日以上、低栄養者は1.2〜1.5g/kg)を補わないと筋肉が減る。逆に肥満・糖尿病で過剰栄養なら、リハ強度を上げて消費を増やす方向で考える。

3. 嚥下障害患者は食形態と姿勢が栄養の入口

嚥下障害があると必要量が摂れず低栄養が進む。ST(言語聴覚士)と協働して嚥下調整食(学会分類2021)のレベルを適切に選び、食事姿勢・一口量・とろみ濃度を調整する。経口摂取量が必要量の60%を下回る期間が続けば、補食や栄養補助食品を検討。

4. 多職種カンファでリハ栄養の言語を揃える

医師・看護師・管理栄養士・PT/OT/ST・介護職・ケアマネが、同じ「リハ栄養診断名」と「SMARTゴール」を共有することで、シフトが変わっても介入が継ぎ目なく続く。介護施設では月1回の栄養ケア会議と3か月ごとのアセスメントが軸になる。

5. 介護報酬の加算と組み合わせる

通所介護・特養では栄養スクリーニング加算(Ⅰ20単位/Ⅱ5単位)栄養アセスメント加算(月50単位)を組み合わせることで、リハ栄養ケアプロセスの1〜2段階を制度化できる。LIFE提出が要件となる加算もあり、データに基づくPDCAが回しやすい。

リハビリ栄養に関するよくある質問

Q1. リハ栄養と「栄養ケア・マネジメント」は同じですか?

違います。栄養ケア・マネジメント(NCM)は主に管理栄養士による栄養管理プロセスで、対象を栄養面から評価・介入します。リハ栄養はそこにリハの視点(ICF・活動・参加・サルコペニア)を統合し、PT/OT/ST・看護・介護職と協働する点が特徴です。NCMがベースにあり、リハ栄養はその上位概念として「機能回復のための栄養」を扱います。

Q2. 体重が増えていれば栄養状態は問題ない?

体重だけでは判断できません。サルコペニア肥満では体重があっても筋肉が減り脂肪が増えているため、握力・歩行速度・骨格筋量(生体電気インピーダンス法など)を併せて評価する必要があります。リハ栄養では「体組成」と「機能」をセットで見ます。

Q3. 介護施設の管理栄養士はどんな役割を果たしますか?

栄養スクリーニング・アセスメント、必要エネルギー/たんぱく質量の算出、食形態の調整、リハ栄養ゴール設定への参加、嚥下調整食の運用、加算算定のためのLIFEデータ管理など。リハ栄養に強い管理栄養士は、医師・PT/OT/STと議論できる臨床力を持ち、特養・老健・通所リハ・地域包括ケア病棟で需要が高まっています。

Q4. 「過剰栄養」もリハ栄養の対象ですか?

はい。低栄養だけでなく、肥満・糖代謝悪化・サルコペニア肥満などの過剰栄養もリハ栄養の診断対象です。エネルギー摂取が消費を上回っている場合、リハ強度を上げて消費を増やしつつ、栄養素のバランスを整える介入を行います。

Q5. 在宅介護でもリハ栄養は実践できますか?

可能です。訪問看護・訪問リハ・居宅療養管理指導(管理栄養士)を組み合わせ、ケアマネがケアプランで栄養と運動の両輪を設計します。家族介護では「食事量・体重・できる動作」を簡易記録するだけでもアセスメントの起点になります。

まとめ

リハビリ栄養は、若林秀隆氏が提唱しJSRNが普及を担う「リハ×栄養」の統合フレームワークで、5段階のリハ栄養ケアプロセスを軸に低栄養・サルコペニア・嚥下障害・過剰栄養まで広く扱う。介護現場では管理栄養士・PT/OT/ST・看護師・介護職の協働と、栄養スクリーニング加算・栄養アセスメント加算などの制度活用で実装が進んでいる。「栄養ケアなくしてリハなし」を共通言語として、エネルギー収支とリハ強度をセットで考える視点が、これからの介護施設・在宅・病院いずれでも標準装備になっていくだろう。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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