正常圧水頭症とは

正常圧水頭症とは

特発性正常圧水頭症(iNPH)は脳脊髄液の循環障害で起き、三徴(歩行障害・尿失禁・認知機能低下)が特徴。シャント手術で改善可能な認知症類似疾患。

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この記事のポイント

正常圧水頭症(iNPH)は、脳脊髄液の吸収障害により脳室が拡大して脳を圧迫する疾患で、「歩行障害・認知機能低下・尿失禁」の三徴を特徴とします。脳脊髄液圧が正常範囲内のため発見が遅れやすく、認知症と誤診されがちですが、髄液シャント手術で症状の大幅改善が期待できる「治療可能な認知症類似疾患」の代表です。

目次

iNPHの基礎知識

正常圧水頭症(normal pressure hydrocephalus, NPH)は、何らかの原因で脳脊髄液(髄液)の循環・吸収が滞り、脳室が拡大する疾患です。髄液の貯留圧が正常範囲(200mmH2O以下)にとどまる点が他の水頭症と異なる特徴です。

原因不明の「特発性正常圧水頭症(iNPH)」と、くも膜下出血・髄膜炎などが先行する「続発性正常圧水頭症(sNPH)」に分かれます。日本のiNPH有病率は65歳以上の約1〜2%と推定され、認知症と誤診されている例も含めると国内に推定30〜50万人の患者がいると考えられています。

2020年に発行された日本正常圧水頭症学会のガイドラインでは、iNPHは「治療可能な認知症(Treatable Dementia)」として早期診断・早期治療が推奨されています。

三徴とそれぞれの特徴

1. 歩行障害(最も早期かつ高頻度に出現)

すり足歩行・小刻み歩行・開脚歩行(足を広げて歩く)が特徴。方向転換に時間がかかり、「足が床に張り付いた」ように動かしにくくなります。パーキンソン病の歩行と似ますが、上肢振戦は伴いません。

2. 認知機能低下

注意力・意欲・思考速度の低下が中心で、記憶障害は比較的軽度。アルツハイマー型認知症より「動作の鈍さ」が目立つのが特徴です。

3. 尿失禁

初期は「頻尿」「切迫尿意」、進行すると失禁が見られます。三徴の中では最後に出現することが多く、軽度の場合は気づかれにくい症状です。

診断と治療の流れ

iNPHの診療プロセスは「画像診断+髄液排除試験(タップテスト)」が基本です。

1. 画像診断(MRI/CT)

脳室拡大に対し脳溝が圧排されている所見(DESH:Disproportionately Enlarged Subarachnoid space Hydrocephalus)が特徴的です。Evans index(脳室と頭蓋の比)0.3以上が診断補助指標。

2. 髄液排除試験(タップテスト)

腰椎穿刺で髄液を30〜50mL抜き、24〜72時間以内に歩行や認知機能が改善するかを評価します。改善が見られればシャント手術の適応となります。

3. シャント手術

脳室から髄液を腹腔・心房・腰椎へ流すバイパスチューブ(シャント)を埋め込む手術。腰部腹腔(L-P)シャントは低侵襲で高齢者にも適用しやすい術式です。手術後は60〜70%で歩行改善が報告されています。

正常圧水頭症のよくある質問

Q. 認知症との見分け方は?

A. iNPHは歩行障害が認知症より先に・強く出るのが特徴です。「物忘れより歩き方の変化が目立つ」「すり足で方向転換に時間がかかる」「尿失禁が新たに始まった」という3要素が揃ったら、認知症と決めつけず脳神経外科や神経内科で画像検査を受けることが推奨されます。

Q. シャント手術のリスクは?

A. 主な合併症はシャント機能不全(5〜20%)、感染(1〜5%)、過排液による硬膜下血腫(3〜10%)です。圧可変式バルブの使用で過排液リスクは下がっています。

Q. 介護現場でできることは?

A. iNPHは「歩行リハビリ+住環境の段差解消」で転倒予防が必要です。手術前は転倒リスクが高いため、手すり設置・歩行器導入を福祉用具レンタルで早期に整えます。手術後はリハビリ強化で機能回復を最大化します。

参考文献・出典

まとめ

正常圧水頭症は、認知症と紛らわしい三徴(歩行障害・認知機能低下・尿失禁)を呈しながら、シャント手術で症状改善が見込める数少ない疾患です。介護現場で「歩き方の変化が顕著」「尿失禁が新規に始まった」と気づいたら、認知症評価より先に画像検査を提案する視点が重要です。早期診断・早期治療で本人と家族のQOLを大きく取り戻せる「希望の持てる疾患」とも言えます。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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