
心筋梗塞とは
心筋梗塞とは冠動脈が詰まり心筋が壊死する病気。高齢者に多い背景、前兆、胸痛が続くときの119番のタイミング、狭心症との違い、回復期の生活・介護の注意点を一次情報をもとに解説します。
心筋梗塞とは(結論)
心筋梗塞とは、心臓の筋肉に酸素と栄養を送る冠動脈が血のかたまり(血栓)で詰まり、その先の心筋が酸素不足で壊死してしまう病気です。胸の中央が締めつけられるような強い痛みや圧迫感が20分以上続くのが典型で、安静やニトログリセリンでも治まりません。壊死した心筋は元に戻らないため、いかに早く血流を再開させるかが生死を分けます。胸の症状が5分から20分以上続くときは、迷わず119番通報をしてください。
目次
心筋梗塞の概要と高齢者に多い背景
心筋梗塞の仕組みと高齢者に多い背景
心臓は、収縮と拡張を絶え間なく繰り返して全身に血液を送り出す筋肉のポンプです。この心筋自身に酸素と栄養を届けているのが、心臓の表面を走る「冠動脈」と呼ばれる3本の血管(右冠動脈、左前下行枝、左回旋枝)です。冠動脈が詰まると、その先の心筋には酸素が届かなくなり、時間とともに壊死していきます。これが心筋梗塞です。壊死した心筋は再生せず、心臓のポンプ機能が低下したり、重い不整脈が起きたりして命が危険にさらされます。
詰まりの多くは、動脈硬化によって冠動脈の内側にできた「プラーク(粥腫)」が突然破れ、それをふさごうと集まった血液が固まって血栓になることで起こります。高血圧・脂質異常症(高LDLコレステロール)・糖尿病・喫煙・肥満・加齢などがプラークを進めるリスク要因で、これらは加齢とともに重なりやすいため、高齢者は心筋梗塞のリスクが高い世代といえます。日本心臓財団によると、急性心筋梗塞は日本で年間およそ10万人が発症し、そのうち3万〜4万人が亡くなっているとされ、しかも死亡のおよそ3分の1は病院に運ばれる前に起きているといわれます。
高齢者で特に注意したいのは、症状が典型的に出ないことがある点です。糖尿病による神経障害があると痛みを感じにくく、強い胸痛ではなく「食欲がない」「なんとなく元気がない」「少し息が苦しい」といった軽い症状だけのこともあります。女性も吐き気や息切れだけで、はっきりした胸痛が出ないことがあります。介護の現場や家庭では、本人の訴えが弱くても「いつもと様子が違う」という変化を見逃さないことが大切です。
心筋梗塞の前兆とサイン
心筋梗塞は何の前触れもなく突然起こることが多く、発症者のおよそ半数は前兆なく発症するとされます。一方で、残りの半数は発症前のおよそ1〜2か月以内に、胸の痛みや締めつけられる感じといった前兆(不安定狭心症など)を経験するともいわれます。次のようなサインに気づいたら早めに循環器内科を受診してください。
- 胸の痛み・圧迫感:胸の中央が締めつけられる、押される、焼けつくような感じ。脂汗や冷や汗を伴う強い痛みは危険信号です。
- 痛みの放散:左肩、背中、首、あご、歯、左腕、みぞおち(心窩部)に広がることがあり、肩こりや胃の不調と勘違いされやすいです。
- 全身症状:冷や汗、吐き気・嘔吐、息苦しさ、動悸、めまい、強い倦怠感など。
- これまでにない変化:胸の違和感の頻度が増える、軽い動作でも出る、夜間や安静時にも出る、ニトログリセリンが効きにくくなった、といった変化は悪化のサインです。
- 高齢者・糖尿病の方の非典型例:はっきりした胸痛がなく、食欲低下・元気のなさ・軽い息切れだけのこともあります。「いつもと違う」という周囲の気づきが重要です。
心筋梗塞と狭心症の違い
心筋梗塞と狭心症は、どちらも冠動脈の血流不足(虚血)で胸の痛みや圧迫感が出る「虚血性心疾患」です。最大の違いは「血流が元に戻るかどうか」にあります。狭心症は冠動脈が狭くなって一時的に血流が不足する状態で、安静やニトログリセリンで回復します。これに対し心筋梗塞は冠動脈が完全に詰まり、心筋が壊死してしまう状態で、壊死した部分は元に戻りません。
| 項目 | 狭心症 | 心筋梗塞 |
|---|---|---|
| 冠動脈の状態 | 狭くなる(血流は一部保たれる) | 完全に詰まる(血流が途絶える) |
| 心筋へのダメージ | 壊死しない(可逆的) | 壊死する(不可逆的) |
| 痛みの持続時間 | 数分〜長くても15分程度 | 20〜30分以上続く |
| 安静・ニトログリセリン | 多くは治まる | 治まらない |
| 緊急度 | 受診が必要 | ただちに119番 |
かつては「狭心症が進行して心筋梗塞になる」と考えられていましたが、現在では狭心症の自覚症状がないまま突然心筋梗塞を起こす人が約半数いることがわかっています。なお、胸痛の頻度や強さが急に増す「不安定狭心症」と急性心筋梗塞は同じ病態の連続として「急性冠症候群」とまとめて扱われ、いずれも緊急対応が必要です。狭心症と診断されていても油断は禁物です。
心筋梗塞の発作時の救急対応
発作が疑われるときの救急対応
心筋梗塞では、発症から早く治療を受けるほど助かる可能性が高まります。東京都CCUネットワークによれば、心筋を救う効果が大きいのは発症からおおむね2時間以内とされ、いかに早く血流を再開させる治療(再灌流療法)にたどり着けるかが重要です。胸の症状が続いて急性心筋梗塞が疑われるときは、たとえ落ち着いて見えても、自家用車やタクシーではなく救急車を呼びます。移動中の急変にも備えられるためです。
- 119番通報する:胸の中央の強い痛みや圧迫感、苦しさが5〜20分以上続く、または出たり消えたりを繰り返すときは、ためらわず119番通報します。「胸が痛い」「胸が苦しい」と症状をはっきり伝えてください。
- 判断に迷うときは#7119:救急車を呼ぶべきか迷う場合は、救急安心センター事業の#7119に電話すると、24時間、看護師などが緊急度をアドバイスしてくれます(地域により利用可否があります)。
- 安静にして待つ:本人を楽な姿勢で安静にさせ、衣服をゆるめ、そばを離れないようにします。あわてて歩かせたり動かしたりしないようにします。
- AEDを準備する:近くにAEDがあれば持ってきておきます。意識がなく正常な呼吸がない場合に備えるためです。
- 反応・呼吸がなければ心肺蘇生:呼びかけに反応がなく、普段どおりの呼吸がないときは、ただちに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始め、AEDが届けば音声ガイダンスに従って使用します。救急隊が到着するまで続けます。
ニトログリセリンを処方されている方は、医師の指示に沿って使用しますが、それでも症状が治まらないときは心筋梗塞が疑われます。すぐに救急要請してください。診断や治療方針の判断は医療機関で行うものであり、ここでの内容は受診・救急要請の目安としてお考えください。
心筋梗塞 回復期の生活と介護の注意点
回復期の生活と介護で気をつけたいこと
急性期の治療を乗り越えた後は、再発を防ぎ、体力と自信を取り戻すための「心臓リハビリテーション」が回復の柱になります。心臓リハビリは入院中の急性期から始まり、回復期(発症後おおむね1〜3か月)、維持期(その後生涯)へと段階的に進みます。回復期には、医療スタッフの監視のもとで自転車エルゴメーターやウォーキングなどの有酸素運動を行い、食事・服薬・禁煙の指導や精神面のサポートも受けます。安静にし過ぎると心臓の機能や体力が落ちてしまうため、医師の運動処方に沿って適度に体を動かすことが大切です。
高齢者を在宅や施設で支える場合のポイントは次のとおりです。
- 服薬を欠かさない:抗血小板薬や血圧・脂質・血糖を整える薬は再発予防の要です。自己判断で中断せず、飲み忘れがないよう支援します。
- 無理のない範囲で体を動かす:医師に示された運動の強さ・時間を守り、息切れや胸の痛みが出たら中止して循環器内科に相談します。安静のし過ぎも避けます。
- 生活習慣を整える:禁煙、塩分・脂質を控えた食事、適正体重の維持、十分な睡眠が再発予防につながります。
- 寒暖差・ヒートショックに注意:暖かい部屋から寒い脱衣所・浴室・トイレへの急な移動は血圧を急変させ負担になります。冬場の入浴前後の温度差を小さくします。
- 心不全のサインに気づく:心筋梗塞のあとは心不全を起こしやすくなります。息切れの悪化、足のむくみ、急な体重増加、疲れやすさが続くときは受診の目安です。
- 気分の落ち込みに寄り添う:病気への不安や落ち込みが出やすい時期です。一人で抱えず医師や看護師に相談できるよう声をかけます。
心筋梗塞のよくある質問
心筋梗塞と狭心症の違いは何ですか?
狭心症は冠動脈が狭くなって一時的に血流が不足する状態で、安静やニトログリセリンで治まり、心筋は壊死しません。心筋梗塞は冠動脈が完全に詰まって心筋が壊死する病気で、ダメージは元に戻りません。痛みも、狭心症は数分〜15分程度で治まるのに対し、心筋梗塞は20〜30分以上続き、安静でも治まらないのが特徴です。
胸の痛みが何分続いたら救急車を呼ぶべきですか?
胸の中央の強い痛みや圧迫感、苦しさが5〜20分以上続く、または繰り返すときは、急性心筋梗塞が疑われるため119番通報の目安とされています。呼ぶか迷うときは#7119(救急安心センター)に相談できます。判断は症状や状況によって変わるため、不安なときは早めに連絡してください。
高齢者は症状が出にくいというのは本当ですか?
本当です。高齢者や糖尿病のある方は、はっきりした胸痛が出ず、食欲低下・元気のなさ・軽い息切れだけのことがあります。女性も吐き気や息切れが中心のことがあります。「いつもと様子が違う」という周囲の気づきが受診のきっかけになります。
心筋梗塞のあとは普通の生活に戻れますか?
多くの方が心臓リハビリテーションを通じて日常生活に戻っています。入院中から段階的にリハビリを始め、退院後も運動療法や生活習慣の見直し、服薬を続けることで再発予防を図ります。運動の強さは医師の指示に沿うことが大切で、自己判断で無理をしないようにします。
再発を防ぐにはどうすればよいですか?
処方された薬を欠かさず飲むこと、禁煙、塩分・脂質を控えた食事、適度な運動、適正体重と血圧・血糖・脂質の管理が基本です。具体的な目標値や方法は持病や状態によって異なるため、かかりつけ医に相談して決めましょう。
心筋梗塞の参考資料
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心筋梗塞のまとめ
まとめ
心筋梗塞は、冠動脈が完全に詰まって心筋が壊死する命に関わる病気です。狭心症と違って壊死した心筋は元に戻らず、発症から治療までの時間が予後を大きく左右します。胸の強い痛みや圧迫感が5〜20分以上続くときは、ためらわず119番通報し、迷うときは#7119に相談してください。高齢者や糖尿病のある方は症状が出にくいため、周囲の「いつもと違う」という気づきが重要です。回復期は心臓リハビリと服薬・生活習慣の見直しで再発を防ぎます。気になる症状や治療・予防の判断は、必ずかかりつけ医や循環器内科に相談しましょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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