
スキンテア(皮膚裂傷)とは
スキンテア(皮膚裂傷)とは、摩擦やずれで高齢者の脆弱な皮膚が裂ける急性の創傷。STAR分類、前腕など好発部位、乾燥や低栄養のリスク、保湿・アームカバーの予防、発生時に皮弁を戻す対応、褥瘡との違いを解説します。
スキンテアの定義
スキンテア(皮膚裂傷)とは、摩擦やずれといった軽い外力によって、高齢者の脆弱な皮膚が裂けて生じる急性の創傷です。真皮深層までの部分層損傷で、体位変換で腕を持ったときやベッド柵への接触、テープを剥がすときなど、日常の介助のなかで発生します。持続的な圧迫で起こる褥瘡とは発生の仕組みが異なります。
目次
スキンテアの概要
スキンテア(Skin Tear:皮膚裂傷)は、日本創傷・オストミー・失禁管理学会によって「摩擦・ずれによって、皮膚が裂けて生じる真皮深層までの損傷(部分層損傷)」と定義される創傷です。加齢によって皮膚が薄く・乾燥し、真皮と表皮の結合が弱くなった高齢者に多く、とくに75歳以上で発生しやすいとされています。
特徴は、原因となる外力がごく軽度である点です。介助者が腕を握って起き上がりを介助した、車いすの移乗時に下肢が金具に触れた、絆創膏やフィルムドレッシングを剥がした、といった通常の療養環境の動作で起こります。裂けた皮膚(皮弁、フラップ)が創面に残っていることが多く、その皮弁をどう扱うかが初期対応の要点になります。
介護職は医療行為としての創傷処置はできませんが、発生リスクの高い利用者を見極め、愛護的な介助と保湿で予防すること、発生時に皮弁を温存して速やかに看護職へつなぐことが現場での重要な役割です。放置すると出血や感染、治癒遅延につながり、利用者の痛みやADL低下を招きます。
スキンテアのSTAR分類
STAR分類 皮弁と色調で5段階に評価する
スキンテアの重症度は、日本創傷・オストミー・失禁管理学会が推奨する「STAR分類(STAR Skin Tear Classification System)」で評価します。「裂けた皮弁で創面を覆えるか」と「皮膚または皮弁の色調変化があるか」の2つの観点で、5つのカテゴリーに分類します。
| カテゴリー | 皮弁で創面を覆えるか | 色調変化 |
|---|---|---|
| カテゴリー1a | 覆える | なし(蒼白・薄黒くない) |
| カテゴリー1b | 覆える | あり(蒼白・薄黒い・暗紫色) |
| カテゴリー2a | 覆えない | なし |
| カテゴリー2b | 覆えない | あり |
| カテゴリー3 | 皮弁が完全に欠損している | (該当なし) |
皮弁の色調が蒼白・薄黒い・暗紫色になっている場合(1b・2b)は、皮弁への血流が乏しく壊死する可能性が高いことを示します。介護職が分類名を診断する必要はありませんが、「皮膚がめくれているか」「めくれた皮膚の色が変わっていないか」という観察の視点を持つと、看護職への報告が具体的になります。
スキンテアの好発部位とリスク要因
好発部位とリスク要因
好発部位
スキンテアが最も多く発生するのは四肢で、右上肢32.6%、左上肢32.5%、右下肢11.0%と、上肢(前腕)に集中します。手背もこすれやすく好発部位です。ベッド柵や車いすのアームレストに触れやすい部位、介助で握られやすい部位が危険であることがわかります。
リスク要因
- 全身要因:高齢(とくに75歳以上)、低栄養、脱水、認知症や麻痺による予測できない動き
- 皮膚の要因:乾燥、浮腫、菲薄化(皮膚が薄い)、以前にスキンテアを起こした瘢痕
- 薬剤の要因:ステロイドや抗凝固薬の長期使用による皮膚の脆弱化・易出血
- 外力の要因:体位変換や移乗での牽引、テープ・ドレッシングの剥離、ベッド柵や車いすへの接触
スキンテアと褥瘡の違い
褥瘡・IADとの違い
スキンテアは皮膚のトラブルとして褥瘡や失禁関連皮膚炎(IAD)と混同されがちですが、発生の仕組みが異なります。
| 項目 | スキンテア | 褥瘡 |
|---|---|---|
| 主な原因 | 摩擦・ずれによる急性の外力 | 持続的な圧迫(と、ずれ) |
| 発生の速さ | 瞬間的(介助動作など) | 時間の経過とともに進行 |
| 好発部位 | 前腕・下肢・手背など四肢 | 仙骨部・踵部など骨突出部 |
| 深さ | 真皮までの部分層損傷 | 皮下組織や筋肉まで及ぶことがある |
骨突出部に持続的な圧で生じるのが褥瘡、四肢に瞬間的な摩擦・ずれで生じるのがスキンテアと整理すると区別しやすくなります。原因が違えば予防策も変わるため、正しく見分けることがケアの出発点です。
スキンテア発生時の対応
発生時の対応 皮弁を戻すことが最優先
スキンテアが起きたときの初期対応は、以下の順序が基本です。実際の処置は看護職・医療職の指示のもとで行いますが、介護職が最初に発見することが多いため手順を知っておくと役立ちます。
- 止血する:清潔なガーゼやパッドで数分間やさしく圧迫し、出血を止めます。
- 洗浄する:生理食塩水や微温湯で創部の汚れを洗い流します。
- 皮弁を元の位置に戻す:めくれた皮弁を、湿らせた綿棒などで丁寧に引き伸ばし、できるだけ元の位置に戻して創面を覆います。乾燥して戻しにくいときは生理食塩水で湿らせます。
- 被覆・固定する:皮膚に負担の少ないシリコーン系ドレッシングやポリウレタンフォームで保護します。剥がすときに再損傷しないよう、剥離方向を矢印で記す配慮も有効です。
強くこすって皮弁を除去したり、通常の絆創膏を貼って剥がす際に周囲の皮膚まで傷つけたりしないよう注意します。判断に迷う場合は速やかに看護職へ報告します。
スキンテアの予防
予防のためにできること
スキンテアは予防が最も重要です。介護現場で日常的にできる対策は次のとおりです。
- 保湿:1日2回以上、保湿剤(ローションタイプが伸ばしやすい)で皮膚のバリア機能を保つ。乾燥はスキンテアの最大の下地です。
- アームカバー・レッグカバー:前腕や下腿を覆い、ベッド柵や車いすとの接触から皮膚を守る。長袖の着用も有効です。
- 愛護的な介助:腕をつかまず下から支える、体位変換時に皮膚を引きずらない、スライディングシートを使うなど、摩擦とずれを減らす。
- 環境整備:ベッド柵や車いすのフレームにカバーを付け、ぶつかりやすい角を保護する。
- 栄養・水分:低栄養と脱水は皮膚を脆弱にするため、食事・水分摂取を支える。
- テープの工夫:粘着力の弱いシリコーン系テープを選び、剥離剤を使ってゆっくり剥がす。
スキンテアのよくある質問
スキンテアは自然に治りますか。
浅いカテゴリー(1a・1b)で適切に皮弁を戻し保護すれば、治癒が期待できます。ただし高齢者は治癒が遅く、感染や皮弁の壊死を起こすこともあるため、自己判断で放置せず看護職の観察を受けることが大切です。
スキンテアと褥瘡の違いは何ですか。
スキンテアは摩擦・ずれによる急性の裂傷で四肢に多く、褥瘡は持続的な圧迫で骨突出部に生じます。原因と好発部位が異なります。
介護職は処置をしてもよいですか。
創傷の医療処置は看護職・医師が行います。介護職の役割は、リスクの高い利用者を把握して予防すること、発生時に皮弁を温存して速やかに報告することです。
予防で一番大切なことは何ですか。
皮膚の保湿です。乾燥した皮膚は裂けやすいため、保湿剤の塗布を習慣にすることが最も効果的な予防になります。あわせてアームカバーと愛護的な介助を組み合わせます。
スキンテアのまとめ
まとめ
スキンテアは、脆弱化した高齢者の皮膚が摩擦・ずれで裂ける急性の創傷です。前腕を中心とした四肢に好発し、STAR分類で皮弁と色調を評価します。乾燥・低栄養・浮腫・ステロイドがリスクを高め、保湿・アームカバー・愛護的介助が予防の柱です。発生時はまず皮弁を元に戻して保護し、看護職へつなぎます。持続圧迫で生じる褥瘡との違いを理解し、日々の観察と予防で利用者の皮膚を守りましょう。
スキンテアの参考資料
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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