帯状疱疹後神経痛とは

帯状疱疹後神経痛とは

帯状疱疹後神経痛(PHN)は、帯状疱疹の皮膚症状が治った後も3か月以上続く神経障害性疼痛です。高齢者ほど残りやすく、症状・治療薬・帯状疱疹ワクチンや早期治療による予防、介護・生活上の注意、受診の目安を解説します。

ポイント

帯状疱疹後神経痛の定義(answer capsule)

帯状疱疹後神経痛(PHN:postherpetic neuralgia)とは、帯状疱疹の皮膚症状(発疹や水ぶくれ)が治った後も続く慢性の痛みのことです。一般に皮疹が消えてから3か月以上痛みが残る場合を指し、神経そのものが傷ついて起こる神経障害性疼痛に分類されます。高齢になるほど残りやすく、80歳以上では帯状疱疹を発症した人の約30%にみられるとされます。

目次

帯状疱疹後神経痛の概要と帯状疱疹との違い

帯状疱疹後神経痛(PHN)とは

帯状疱疹は、子どものころに水ぼうそうにかかった人の体内に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が、加齢や疲労、ストレス、免疫低下をきっかけに再び活動して起こります。神経に沿って帯状に発疹と強い痛みが現れ、皮膚症状はおおむね2〜4週間でおさまります。ところが、ウイルスによって神経そのものが傷つくと、皮膚が治った後も痛みだけが残ることがあります。これが帯状疱疹後神経痛(PHN)です。

帯状疱疹の痛みは、(1)発疹が出る前の「前駆痛」、(2)発疹が出ている間の「急性帯状疱疹痛」、(3)皮疹が治った後も続く「帯状疱疹後神経痛(PHN)」の3つに分けられます。前2者は主に皮膚や組織の炎症による痛みであるのに対し、PHNは神経の障害による痛み(神経障害性疼痛)であり、発症の仕組みも効く薬も異なります。一般的な消炎鎮痛薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンはPHNには効きにくいとされています。

厚生労働省・国立感染症研究所の資料では、皮疹が消えてから3か月以上にわたって痛みが続く場合をPHNとしています。日本ペインクリニック学会の治療指針では、発症後90日(〜120日)以上経過しても痛みが続く状態と定義されています。痛みは数か月から数年に及ぶことがあり、生活の質を大きく下げる要因になります。

※本記事は一般的な情報の解説であり、診断や治療方針の決定に代わるものではありません。痛みが続く場合は自己判断せず、必ず医療機関を受診してください。

帯状疱疹後神経痛の症状と残りやすい人

帯状疱疹後神経痛の症状の特徴

PHNの痛みは人によってさまざまですが、次のように表現されることが多いとされています。

  • 「焼けるような」「締め付けるような」持続的な痛み
  • 「ズキンズキンとする」うずくような痛み
  • 「電気が走るような」「刺すような」発作的な痛み
  • アロディニア(異痛症):衣服が触れる、風が当たるなど、本来は痛みにならない軽い刺激でも痛みを感じる状態。「シャツが擦れて痛い」「痛くて顔が洗えない」など日常生活に支障が出ることがあります
  • 痛みのある部分の皮膚感覚が鈍くなる(感覚低下)こともあります

帯状疱疹後神経痛が残りやすい人(リスク要因)

日本ペインクリニック学会の治療指針や公的資料では、PHNに移行しやすい要因として次が挙げられています。加齢は最も重要なリスク因子です。

  • 高齢者(年齢が上がるほど移行率が高まる)
  • 帯状疱疹発症時の皮膚症状が重症である
  • 発疹が出る前や出ている間の痛みが強い
  • 発疹の範囲が広い・数が多い
  • 免疫が低下する病気を持つ、または免疫抑制状態にある
  • 感覚異常が強い、眼の周囲(眼部)の帯状疱疹

発症率には幅があり、帯状疱疹の症例の10〜50%でPHNを生じると報告されています。日本ペインクリニック学会の指針では、80歳以上で約30%、60〜65歳で約20%がPHNを発症するとされています。

帯状疱疹後神経痛の治療(神経障害性疼痛の薬)

帯状疱疹後神経痛の治療

PHNは神経障害性疼痛のため、急性期の炎症の痛みとは別の薬が使われます。治療の中心は薬物療法で、痛みの程度や年齢、腎機能、ほかの病気などを考慮して薬が選ばれます。以下は日本ペインクリニック学会の治療指針などで挙げられている代表的な治療です。実際の処方は医師の判断によります。

  • Ca²⁺チャネルα₂δリガンド(抗てんかん薬):プレガバリン、ミロガバリン、ガバペンチンなど。異常に興奮した神経からの痛み信号を抑えます。ふらつき・眠気・むくみなどの副作用があり、少量から始めて徐々に増やします。腎機能に応じた用量調整が必要です。
  • 三環系抗うつ薬(TCA):アミトリプチリン、ノルトリプチリンなど。効果が高い一方で、口の渇き・眠気・ふらつき・排尿障害などの副作用が出やすく、高齢者では特に注意が必要です。指針では高齢者にはアミトリプチリンよりノルトリプチリンが副作用が少ないとされています。
  • SNRI:デュロキセチン。三環系抗うつ薬が効かない、または副作用が強い場合に用いられます。
  • トラマドールなどのオピオイド:上記で効果が不十分な場合の選択肢で、指針では第三選択とされ、依存の可能性に注意し専門医のもとで使われます。
  • 神経ブロック療法:局所麻酔薬などを神経の周囲に注射し痛みの伝達を抑える方法で、ペインクリニックで行われます。

急性期の痛みに使うNSAIDsやアセトアミノフェンは、PHN(神経障害性疼痛)には効きにくいとされています。痛みが長引くときは、市販の痛み止めで様子を見続けるのではなく、医療機関で神経障害性疼痛に対応した治療を相談することが大切です。

帯状疱疹後神経痛の予防(ワクチンと早期治療)

帯状疱疹後神経痛を防ぐには

PHNを完全に予防する確立した方法はありませんが、もとになる帯状疱疹を防ぐこと、そして発症したら早く治療することがリスクを下げる鍵とされています。

1. 帯状疱疹ワクチンの接種

50歳以上の人は帯状疱疹ワクチンの接種が可能です。さらに2025年4月から、65歳の人などを対象に予防接種法に基づく定期接種が始まりました(自治体により対象や経過措置が異なります)。ワクチンには2種類あります。

  • 生ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン):皮下注射で1回。帯状疱疹の予防効果は接種後1年で6割程度。免疫が低下している人は接種できない場合があります。
  • 組換えワクチン(シングリックス):筋肉注射で2回(2か月以上あける)。帯状疱疹の予防効果は接種後1年で9割以上、10年後でも7割程度と報告されています。

厚生労働省の資料では、合併症であるPHNに対するワクチンの効果は、接種後3年時点で生ワクチンが6割程度、組換えワクチンが9割以上と報告されています。どちらを選ぶかは効果・回数・費用・体の状態を踏まえ、医師と相談して決めます。

2. 帯状疱疹の早期治療

帯状疱疹を発症したら、できるだけ早く抗ウイルス薬による治療を始めることが、神経のダメージを抑えPHNへの移行リスクを下げるうえで重要とされています。公的資料では、皮疹が出てから72時間(3日)以内の投与開始が望ましいとされています。痒みや痛みの後に水ぶくれが出たら、早めに皮膚科などを受診しましょう。

3. 日ごろの体調管理

帯状疱疹の発症には免疫の低下が関わります。バランスのよい食事・十分な睡眠・適度な運動でストレスや疲労をためないことも、間接的な予防につながります。

帯状疱疹後神経痛の介護・生活の注意と受診の目安

介護・生活での注意点

PHNの痛みは長く続くことがあり、高齢者では睡眠不足や活動量の低下につながりやすいため、生活面の支えが大切です。家庭や介護の現場でできる工夫の例を挙げます(体調や持病により合わない場合があるため、迷うときは医師や看護師に相談してください)。

  • 患部を温める:冷えは痛みを強めることがあり、入浴やカイロ・湯たんぽで温めると和らぐ場合があります。低温やけどを避けるため、皮膚に直接当てないようにします。
  • 刺激を減らす:アロディニアがある場合は、肌当たりのやわらかい下着や衣類を選び、患部への摩擦を避けます。
  • 痛みにとらわれすぎない工夫:痛みを恐れて動かないと、かえって活動量(ADL)が落ちやすくなります。痛みが軽いときは体を動かしたり趣味を楽しんだりして、気持ちが痛みに集中しすぎない時間をつくります。
  • 服薬の見守り:神経障害性疼痛の薬は眠気・ふらつき・むくみなどが出ることがあり、高齢者では転倒に注意が必要です。ふらつきが強いときは介助を増やし、医師に相談します。
  • 睡眠と休息:痛みで眠れないと痛みをより強く感じやすくなります。睡眠の状態も受診時に伝えると治療の参考になります。

受診の目安

次のような場合は、自己判断で様子を見続けず医療機関に相談しましょう。

  • 帯状疱疹の皮膚症状が治った後も痛みが続く・ぶり返す
  • 市販の痛み止めで痛みが治まらない、強くなっている
  • 痛みで眠れない、食欲や活動量が落ちている
  • 軽く触れただけで痛む(アロディニア)など日常生活に支障がある
  • 顔・目の周囲の帯状疱疹だった、目の痛みや見えにくさがある(早急に眼科へ)

受診先は皮膚科・内科のほか、痛みが長引く場合はペインクリニック(疼痛外来)や神経内科が専門的に対応します。急性期に皮膚科にかかっていた場合は、紹介状をもらってペインクリニックを受診する流れが一般的です。

帯状疱疹後神経痛のよくある質問

よくある質問

帯状疱疹後神経痛(PHN)とはどんな状態ですか?

帯状疱疹の発疹や水ぶくれが治った後も、3か月以上にわたって痛みが続く状態です。神経そのものがウイルスで傷ついて起こる神経障害性疼痛で、焼けるような痛みや電気が走るような痛み、軽く触れただけで痛むアロディニアなどが特徴です。気のせいや大げさではなく、治療の対象となる痛みです。

帯状疱疹後神経痛はどのくらい続きますか?

個人差が大きく、数か月で和らぐ人もいれば、数年続く人もいます。日本ペインクリニック学会の指針では、帯状疱疹を発症した人のうち一定割合で2年以上痛みが続くと報告されています。時間の経過とともに自然に和らぐ割合は徐々に少なくなるため、早めの治療が大切です。

どんな薬が使われますか?

プレガバリンやミロガバリンなどのCa²⁺チャネルα₂δリガンド、三環系抗うつ薬、SNRI(デュロキセチン)などが用いられます。これらは神経の異常な興奮を抑える薬で、一般的な消炎鎮痛薬(NSAIDs)はあまり効きません。症状に応じて神経ブロックを組み合わせることもあります。実際の処方は医師が判断します。

予防する方法はありますか?

主に2つあります。1つは帯状疱疹ワクチン(特に組換えワクチン「シングリックス」)の接種で、帯状疱疹そのものとPHNの予防効果が報告されています。もう1つは、帯状疱疹を発症したら72時間以内を目安に抗ウイルス薬の治療を始めることで、神経のダメージを抑えてPHNへの移行リスクを下げます。

何科を受診すればよいですか?

まずは皮膚科や内科で問題ありませんが、痛みが長引く場合はペインクリニック(疼痛外来)や神経内科が専門的に対応します。整形外科や神経内科で対応している施設もあります。かかりつけ医に相談のうえ、痛みの専門医につないでもらうとよいでしょう。

帯状疱疹後神経痛の参考資料

帯状疱疹後神経痛のまとめ

まとめ

帯状疱疹後神経痛(PHN)は、帯状疱疹の皮膚症状が治った後も3か月以上続く神経障害性疼痛で、高齢になるほど残りやすい合併症です。一般の痛み止めは効きにくく、神経障害性疼痛に対応した薬や神経ブロックで治療します。完全に防ぐ方法は確立していませんが、帯状疱疹ワクチンの接種と、発症時72時間以内の早期治療がリスクを下げる鍵です。痛みが長引くときは様子を見続けず、皮膚科・内科やペインクリニックに相談しましょう。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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