
胆石症とは
胆石症は胆汁の通り道に石ができる病気。高齢者に多い背景、右上腹部痛や発作・無症状結石、胆のう炎・胆管炎・膵炎の合併と発熱や黄疸の危険サイン、治療・食事の注意・受診や救急の目安を一次ソースに基づきやさしく解説します。
胆石症の定義(直接回答)
胆石症(たんせきしょう)とは、肝臓で作られる胆汁の通り道(胆のう・胆管)に「胆石」と呼ばれる石ができる病気です。多くは無症状ですが、石が胆汁の流れをふさぐと右上腹部の痛みや発作を起こし、胆のう炎・胆管炎・膵炎を合併すると発熱や黄疸を伴い命に関わることがあります。高齢になるほど増える病気で、加齢・肥満・女性・食生活が主な背景です。
目次
胆石症の概要と高齢者に多い背景
胆石症とは|胆汁の通り道にできる石
胆汁は肝臓で1日600〜1000ミリリットルほど作られる黄褐色の消化液で、胆管という管を通って十二指腸に流れ、脂肪やビタミンの消化吸収を助けます。胆管の途中には「胆のう(胆嚢)」という袋状の貯蔵庫があり、ここで胆汁が濃縮され、食事の刺激で十二指腸に分泌されます。この胆汁の流れ道の中に石ができる病気が胆石症です。
胆石はできる場所によって、胆のう結石・総胆管結石・肝内結石に分けられます。日本消化器病学会の患者向けガイドによると、胆石症の多くは胆のう結石で約80パーセントを占め、総胆管結石が約20パーセント、肝内結石が約2パーセントの頻度とされています。
高齢者に多い背景
胆石は、胆汁に含まれる成分が固まってできます。日本人の約7割を占めるコレステロール石は、胆汁中のコレステロール濃度が高いときに結晶化して石になります。もう一方の色素石(ビリルビンカルシウム石など)は、胆汁に細菌が感染することなどが原因とされます。
公益財団法人長寿科学振興財団の健康長寿ネットは、胆石が発症する要因として加齢・肥満・女性・妊娠・過激なダイエット・薬剤・食習慣などを挙げています。日本人の胆石保有率は食生活の欧米化や高齢化により年々増加しているとされ、加齢そのものが大きな要因です。古くからコレステロール石ができやすい人の特徴として「4F」(Fatty=肥満、Female=女性、Forty=40代以降、Fertile=多産)が知られています。また絶食や過度なダイエット、胃の切除後では胆のうの働きが落ちて胆石ができやすくなります。介護を受ける高齢者では、食事量の低下や長期の絶食・点滴栄養が引き金になることもあります。
胆石症の症状(右上腹部痛・発作・無症状結石)
胆石症の症状|右上腹部痛・胆石発作・無症状結石
胆石症の症状は石の場所や詰まり方で大きく変わります。代表的なものは次のとおりです。
- 胆石発作(胆道痛):右の肋骨の下やみぞおちの痛みが典型で、右の背中から肩へ広がる(放散する)こともあります。脂っこい食事のあとしばらくして急に出ることが多いのが特徴です。
- 右上腹部の痛み:胆のう結石では食後に急に起こる激しい痛みが典型的です。短時間で治まる場合と、鈍い痛みが続く場合があります。
- 吐き気・嘔吐:痛みに伴ってみられることがあります。
- 無症状結石:日本消化器病学会のガイドによると、胆のう結石では約8割、総胆管結石でも2〜3割の人は自覚症状がありません。健診の超音波検査で偶然見つかることも多く、肝内結石はほとんどが無症状です。
痛みが胸や背中、右肩に放散するため、心臓や胃の病気と間違われることもあります。鈍い痛みが半日以上続く場合は、胆のう炎や胆管炎を起こしている可能性が考えられます。
高齢者では症状が出にくいことに注意
国立長寿医療研究センターは、高齢者では症状が出にくいため急性胆管炎を起こしても初期にははっきりせず、重症化して敗血症に至る場合があると注意を促しています。MSDマニュアル家庭版も、高齢者の胆のう炎では食欲不振・疲労感・脱力感・嘔吐だけだったり発熱がなかったりと、最初の症状があいまいになりやすいと述べています。介護現場では「なんとなく元気がない」「食べない」といった変化が唯一のサインのことがあります。
胆石症の合併症と危険サイン(胆のう炎・胆管炎・膵炎)
胆のう炎・胆管炎・膵炎の合併と危険サイン
胆石症で注意すべきなのは、石が流れをふさいで細菌感染や炎症を起こしたときです。次の合併症は急速に重くなることがあります。
- 急性胆のう炎:石が胆のうの出口(胆のう管)に詰まって炎症が起こります。日本肝胆膵外科学会によると、初期は上腹部の鈍い痛みから始まり、右の肋骨の下(右季肋部)の激痛へ進みます。発熱・吐き気を伴い、放置すると腹膜炎や敗血症に至ることがあります。
- 急性胆管炎:主に総胆管結石で起こり、胆汁がうっ滞して細菌感染すると発症します。発熱・腹痛・黄疸の3つ(シャルコー3徴)が代表的なサインで、進行すると意識障害やショックを加えた「レイノルズ5徴」となり、敗血症で命に関わります。
- 胆石性膵炎:胆管と膵管は十二指腸の同じ出口に合流するため、石が出口に詰まると膵液も流れにくくなり膵炎を起こします。うずくまって動けないほどの激しい腹痛が急に襲うことが多く、緊急の処置が必要になることが少なくありません。
すぐに受診・救急を考えたい危険サイン
- 白目や皮膚が黄色くなる黄疸、尿が褐色〜黒色になる、便が白っぽくなる(総胆管がふさがっているサイン)
- 38度以上の発熱や、ぞくぞくする強い悪寒(悪寒戦慄)
- 半日以上続く強い腹痛、増していく激痛
- 意識がもうろうとする、血圧が下がってぐったりする
これらがそろう、または急に悪化するときは、重い胆管炎・膵炎・敗血症の可能性があり、ためらわず救急受診が必要です。
胆のう炎と胆管炎の違い(胆石症)
胆のう炎と胆管炎の違い
どちらも胆石症から起こる胆道の感染症ですが、炎症の場所と特徴的な症状、危険度が異なります。違いを知っておくと、危険サインの見分けに役立ちます。
| 項目 | 急性胆のう炎 | 急性胆管炎 |
|---|---|---|
| 炎症の場所 | 胆のう(胆汁をためる袋) | 胆管(胆汁のメインの通り道) |
| 主な原因 | 石が胆のう管を詰まらせる | 総胆管結石などで胆汁がうっ滞し感染 |
| 特徴的な症状 | 右上腹部痛・発熱・吐き気 | 発熱・黄疸・右上腹部痛(シャルコー3徴) |
| 黄疸 | 通常は目立たない | 出やすい |
| 危険度 | 放置で腹膜炎・敗血症のおそれ | 急速に重症化し敗血症・ショックに至りやすい |
| 治療の柱 | 抗菌薬と胆のう摘出術 | 抗菌薬と緊急の胆道ドレナージ |
黄疸(白目や皮膚が黄色くなる、尿が濃くなる)を伴うときは、より重症化しやすい胆管炎を疑うサインです。なお、胆石が原因の腹痛は心臓や胃の病気と紛らわしいことがあり、自己判断は禁物です。
胆石症の検査・治療と食事の注意
胆石症の検査・治療・食事の注意
検査
診断はまず体への負担が少ない腹部超音波(エコー)検査が第一選択です。さらにCTで石灰化した石を確認したり、超音波でわかりにくい総胆管結石にはMRI(MRCP)が使われます。詳しい検査や治療を兼ねてERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)を行うこともあります。
治療
治療は石の場所・大きさ・症状・個数によって異なり、主治医と相談して決めます。一般的な考え方は次のとおりです。
- 無症状の胆のう結石:基本は治療せず経過観察します。ただし無症状でも胆のうがんが疑われる場合などは手術を検討します。
- 症状のある胆のう結石:日本消化器病学会のガイドラインでは原則手術が推奨され、腹腔鏡下胆のう摘出術が標準的です。入院はおよそ1週間が目安です。CTに映らない小さなコレステロール石では、ウルソデオキシコール酸などの内服で溶かす治療が選ばれることもあります。
- 総胆管結石:無症状でも胆管炎や膵炎を起こすおそれがあるため、内視鏡(ERCP)や手術で石を除去することが勧められます。
- 急性胆管炎・重い胆のう炎:絶食・点滴・抗菌薬に加え、胆汁を体外に出す胆道ドレナージが行われます。重症では緊急処置が必要です。
胆のうを摘出しても胆汁は肝臓で作られ続けるため消化は可能で、日常生活への支障はほとんどありません。手術直後は下痢や軟便になりやすい人もいますが、多くは数か月で落ち着きます。
食事・生活の注意(予防)
- 揚げ物・脂身の多い肉・バター・生クリームなど脂肪分やコレステロールの多い食事を控える
- 野菜・果物・食物繊維(海藻・きのこなど)をしっかりとる
- 1日3食を規則正しくとり、長時間の空腹を避ける(空腹が続くと胆汁が濃縮されやすい)
- 水分を十分にとる、無理のない範囲で適正体重を保つ(肥満も急なダイエットも胆石のリスク)
- 定期的な健康診断で早期発見を心がける
これは一般的な目安です。糖尿病や腎臓病などの持病がある高齢者では制限が異なる場合があるため、具体的な食事内容は主治医や管理栄養士に相談してください。
胆石症と介護現場での観察・受診/救急の目安
介護現場での観察と受診・救急の目安
高齢者の胆石症は症状が出にくく、重症化してから気づかれることがあります。ご家族や介護職が次のポイントを押さえておくと早期発見につながります。
- 食後の右上腹部やみぞおちの痛み・不快感を訴える、痛みで前かがみになる
- 食欲がない・なんとなく元気がない・ぐったりするといった非典型サイン(高齢者では唯一の症状のこともある)
- 白目や肌が黄色い、尿が濃い・便が白いといった黄疸のサイン
- 食事内容(脂っこい食事のあとに痛みが出ていないか)と排泄・体温の変化
受診・救急の目安
- 早めに受診:軽い右上腹部痛が繰り返す、健診で胆石を指摘された、食後に鈍い痛みが出る
- すぐに受診・救急を検討:38度以上の発熱や強い悪寒、黄疸、半日以上続く強い腹痛、増していく激痛、吐いて食べられない、意識がもうろうとする・ぐったりする
胆管炎や膵炎、敗血症は短時間で重くなることがあります。介護職は医療職ではないため診断や薬の判断は行わず、危険サインに気づいたら看護師・主治医に速やかに報告し、急変時はためらわず救急要請につなげることが大切です。
胆石症のよくある質問
Q. 胆石が見つかったら必ず手術が必要ですか?
いいえ。無症状の胆のう結石は治療せず経過観察するのが標準的です。日本消化器病学会のガイドラインでは、腹痛などの症状がある場合に原則手術が推奨されます。判断は石の場所・大きさ・症状によるため主治医に相談してください。
Q. 胆石症はどんな人に多いですか?
加齢・肥満・女性・妊娠経験・脂質異常症・高カロリー食などが背景になります。コレステロール石ができやすい特徴として「4F」(肥満・女性・40代以降・多産)が知られ、高齢になるほど保有率が上がります。
Q. どんなときに急いで受診すべきですか?
38度以上の発熱や強い悪寒、黄疸(白目や肌が黄色い)、半日以上続く強い腹痛がそろうときは、胆管炎や膵炎など重い合併症のおそれがあります。ためらわず受診・救急要請を検討してください。
Q. 胆のうを取っても大丈夫ですか?
胆汁は肝臓で作られ続けるため、胆のうを摘出しても消化は可能で、日常生活への支障はほとんどありません。手術直後は下痢や軟便になりやすい人もいますが、多くは数か月で落ち着きます。
Q. 食事で気をつけることは?
脂肪分やコレステロールの多い食事を控え、食物繊維・野菜・果物をとり、1日3食を規則正しくとって長時間の空腹を避けます。持病による制限がある場合は主治医や管理栄養士に相談してください。
胆石症の参考資料・出典
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胆石症のまとめ
まとめ
胆石症は胆汁の通り道に石ができる病気で、加齢とともに増えます。多くは無症状ですが、石が流れをふさぐと右上腹部痛や胆石発作を起こし、胆のう炎・胆管炎・膵炎を合併すると発熱や黄疸を伴って急速に重くなることがあります。とくに高齢者は症状が出にくく重症化しやすいため、食欲低下や黄疸などのサインを見逃さず、発熱・黄疸・強い腹痛がそろうときはためらわず受診・救急につなげることが大切です。診断や治療は医師に相談し、無症状でも定期的な健診で早期発見を心がけましょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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