タスクシフト・タスクシェア(介護)とは

タスクシフト・タスクシェア(介護)とは

介護のタスクシフト(業務の移管)・タスクシェア(業務の共同化)をやさしく解説。人手不足を背景に専門職が専門的ケアに集中できるよう周辺業務を介護助手やテクノロジーに分担する機能分化の動き、メリットと注意点を厚労省資料で整理。

ポイント

タスクシフト・タスクシェア(介護)の定義

タスクシフトとは、ある職種が担っていた業務を別の職種へ移管することです。タスクシェアとは、ひとつの業務を複数の職種で分け合い、共同で実施することを指します。介護分野では、人手不足を背景に、介護福祉士など専門性の高い職員が専門的なケアに集中できるよう、配膳・清掃・見守り・記録補助などの周辺業務を介護助手やテクノロジーに分担する「機能分化」の動きとして進められています。

目次

タスクシフト・タスクシェアの概要と介護現場での位置づけ

タスクシフト・タスクシェアとは何か

タスクシフト(業務の移管)とタスクシェア(業務の共同化)という言葉は、厚生労働省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会報告書」(2017年)で使われ始めました。元々は医師の長時間労働を是正するため、医師の業務の一部を看護師や薬剤師など他職種へ移したり共同で担ったりする取り組みとして広がった考え方です。

「シフト」と「シェア」は似ていますが意味が異なります。タスクシフトは業務そのものを別の職種へ渡して担当を入れ替えること、タスクシェアは同じ業務を複数の職種が並行して分担することを指します。どちらにするかによって責任の所在や業務の進め方が変わるため、現場では明確に使い分けることが求められます。

介護分野でのタスクシフト・タスクシェア

介護の現場では、2040年に向けて生産年齢人口が減少し、必要な介護職員数が増え続ける一方で人材確保が難しくなることが見込まれています。この状況に対応するため、厚生労働省は「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」のなかで、業務の明確化と役割分担を重要な取り組みとして掲げています。

具体的には、施設の介護職員が行っている業務を、移動・排泄・食事などの介助や清拭といった専門性の高い「直接的な介護業務」と、清掃・洗濯・配膳・買い出しなどの「間接的な業務」に仕分けします。そのうえで、介護職員は専門性を発揮できる直接的なケアに注力し、間接的な業務はいわゆる介護助手やテクノロジーが担うという「機能分化」を進めます。これが介護分野におけるタスクシフト・タスクシェアの中心的な姿です。

2024年度(令和6年度)の介護報酬改定では、施設系サービスにおいて、介護テクノロジーや介護助手の活用などによる継続的な業務改善を評価する新たな加算が設けられ、制度面からもこの動きが後押しされています。

タスクシフトとタスクシェアの違い(介護)

タスクシフトとタスクシェアの違い

言葉が似ているため混同されがちですが、業務を「誰に・どう渡すか」が根本的に異なります。

項目タスクシフト(業務の移管)タスクシェア(業務の共同化)
意味ある職種の業務を別の職種へ移して担当を入れ替えるひとつの業務を複数の職種で分け合い、共同で実施する
担当の構図「A職種 → B職種」へ移管「A職種 + B職種」で並行して担う
責任の所在移管先の職種に移る関わる職種で分担され、整理が必要になる
介護現場の例記録補助や配膳を介護助手へ移す見守りを介護職員とテクノロジー(センサー)で分担する

どちらを選ぶかで責任の範囲や業務実施の体制が大きく変わります。そのため、各事業所で導入する際には「この業務はシフトなのかシェアなのか」を切り分けて検討することが大切です。

介護でタスクシフト・タスクシェアされる周辺業務の例

切り分けの対象になる業務

厚生労働省のガイドラインや実証事業では、介護職員の業務を直接的なケアと間接的な業務に仕分けします。介護助手やテクノロジーへ分担される代表的な周辺業務は次のとおりです。

  • 配膳・下膳、お茶やおやつの準備・片付け
  • 居室やフロアの清掃、片付け
  • 洗濯、リネン交換、ベッドメイク
  • 必要品の買い出し
  • 利用者の話し相手、移動の付き添い、レクリエーションの補助
  • 記録・文書作成の補助(タブレットや音声入力の活用を含む)
  • 見守り(見守りセンサーやインカムなどテクノロジーとの分担)

一方で、移動・移乗・体位変換、排泄介助、食事介助、機能訓練といった利用者の身体に直接触れる専門的なケアは、引き続き介護職員が担います。

介護助手の活用(タスクシフト・タスクシェア)の実態と効果

データで見る効果と広がり

厚生労働省の実証事業や調査では、介護助手への業務分担が現場に与える効果が確認されています。

  • 介護助手等を導入(雇用)している介護施設・事業所は全体の約51%(令和4年度老健事業)。
  • 介護助手として活躍する人は、女性が約81%、年齢60歳以上が約57%、介護系資格を保有していない人が約59%を占める。
  • 介護助手が間接業務を担う時間に応じて、介護職員の間接業務の時間が削減される傾向が把握された。
  • 介護職員が利用者のケアに注力できることで、利用者の発語量や笑顔になる頻度が増える傾向が見られた。

制度面では、2023年(令和5年)の介護保険法改正で、都道府県が事業所・施設の生産性向上の取り組みを促進するよう努める規定が新設されました(2024年4月施行)。さらに2025年にとりまとめられた国の方針では、2040年に向けて介護分野全体で20%の業務効率化を目指す目標が掲げられています。

介護のタスクシフト・タスクシェアのメリットと注意点

メリット

  • 介護福祉士など専門性の高い職員が、移動・排泄・食事介助といった専門的なケアに集中できる。
  • 周辺業務が切り出されることで、職員一人あたりの業務負担が軽くなり、残業の削減や休暇の取得につながりやすい。
  • 業務改善で生まれた時間を利用者と接する時間や教育・研修に充てられ、ケアの質の向上が期待できる。
  • 介護助手として元気な高齢者など多様な人材が参入でき、地域の人材確保にもつながる。

注意点

  • 責任の所在をあいまいにしない。どの業務を誰が担い、何かあったときに誰が判断するかを事前に整理する必要がある。
  • 切り分けの設計が不十分だと、かえって連絡や調整の手間が増えることがある。業務の洗い出しと役割分担をていねいに行う。
  • 専門職と介護助手の連携(チームケア)や、介護助手への教育・育成の仕組みづくりが質の担保に欠かせない。
  • 介護福祉士など中核人材には、資格を持たない人を含めたチームをまとめるマネジメントの役割が新たに求められる。

タスクシフト・タスクシェア(介護)のよくある質問

よくある質問

タスクシフトとタスクシェアは何が違いますか。

タスクシフトは業務そのものを別の職種へ移管して担当を入れ替えること、タスクシェアは同じ業務を複数の職種で分け合って共同で担うことです。責任の所在や体制が変わるため、現場では使い分けて検討します。

介護でタスクシフト・タスクシェアが進む理由は何ですか。

2040年に向けて生産年齢人口が減少し、介護人材の確保が難しくなる一方で介護需要は増え続けるためです。限られた人材で質を保つために、専門職が専門ケアに集中できるよう周辺業務を分担する機能分化が進められています。

誰が周辺業務を担うのですか。

清掃・配膳・記録補助などの周辺業務は、主にいわゆる介護助手や、見守りセンサー・記録システムなどのテクノロジーが担います。身体に直接触れる専門的なケアは引き続き介護職員が担当します。

タスクシフト・タスクシェアで介護の質は下がりませんか。

業務の切り分けと役割分担を適切に設計し、専門職と介護助手の連携や教育の仕組みを整えることが前提です。厚生労働省の実証では、職員が利用者のケアに注力できることで、利用者の発語や笑顔が増える傾向も確認されています。

タスクシフト・タスクシェア(介護)の参考資料

タスクシフト・タスクシェア(介護)のまとめ

まとめ

介護のタスクシフト・タスクシェアは、人手不足のなかでケアの質を保つための「機能分化」の取り組みです。専門職が専門的なケアに集中し、周辺業務を介護助手やテクノロジーが担うことで、職員の負担軽減と利用者と向き合う時間の確保を同時に目指します。導入のカギは、業務の切り分けと責任の所在の整理、そして専門職と介護助手が連携できるチームづくりにあります。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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