
糖尿病性腎症とは
糖尿病性腎症は糖尿病の三大合併症のひとつで、透析導入原因の第1位。病期(5期)分類、むくみやたんぱく尿の症状、透析への進行、血糖・血圧・食事管理、介護現場での観察と受診目安を解説します。
糖尿病性腎症とは(直接回答)
糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)とは、長く続く高血糖によって腎臓の糸球体が傷つき、たんぱく尿やむくみ、腎機能の低下が進む病気です。糖尿病網膜症・神経障害と並ぶ糖尿病の三大合併症のひとつで、進行すると人工透析が必要になります。日本では新規に透析を始める原因疾患の第1位を占めています。
目次
糖尿病性腎症の概要と発症のしくみ
糖尿病性腎症の概要
腎臓には、血液をろ過して老廃物を尿として排出する「糸球体」という細い血管のかたまりが約100万個あります。糖尿病で血糖値の高い状態が長く続くと、この糸球体の血管が傷つき、本来は血液中にとどめておくべきたんぱく質(アルブミン)が尿へ漏れ出すようになります。これが糖尿病性腎症の始まりです。
初期には自覚症状がほとんどなく、ごく少量のたんぱく(微量アルブミン尿)が出るだけのため、本人が気づかないうちに進行することが少なくありません。進行すると尿たんぱくが増え、腎臓のろ過能力(eGFR)が下がり、最終的に腎不全に至ります。
糖尿病性腎症は、糖尿病網膜症(目)、糖尿病神経障害(手足のしびれなど)と並ぶ「糖尿病の三大合併症」のひとつです。これらは細い血管が傷む「細小血管症」という共通のしくみで起こるため、腎症がある人は網膜症や神経障害を合併していることが多く、逆に網膜症が見つかった場合は腎症の進行にも注意が必要です。
日本透析医学会の調査では、新たに透析を始めた患者の原因疾患として糖尿病性腎症が最も多く、2022年末時点で全体の約39.5%を占めています。腎臓だけの問題にとどまらず、糖尿病そのものの管理が重要になる合併症です。
糖尿病性腎症の病期分類(5期)
病期分類(5つのステージ)
糖尿病性腎症は、尿アルブミン(尿たんぱく)の量と腎臓のろ過能力(eGFR・GFR)をもとに、第1期から第5期までの5段階に分けて管理されます(日本腎臓学会・糖尿病性腎症合同委員会の病期分類)。
- 第1期(腎症前期):尿アルブミンは正常。自覚症状はなく、検査でも異常が出にくい段階です。
- 第2期(早期腎症期):微量アルブミン尿(30〜299mg/gCr)が出始めます。この段階で気づき、血糖・血圧管理を強化できると進行を抑えやすくなります。
- 第3期(顕性腎症期):顕性アルブミン尿または持続性たんぱく尿(アルブミン300mg/gCr以上)が見られます。むくみや血圧上昇が現れやすくなります。
- 第4期(腎不全期):GFRが30mL/分/1.73m²未満まで低下します。むくみ・倦怠感・貧血・食欲低下などの症状が強まります。
- 第5期(透析療法期):腎機能がほぼ失われ、人工透析や腎移植が必要になる段階です。
※ 病期は採血・採尿の結果から医師が総合的に判断します。同じ「むくみ」でも病期によって意味が異なるため、自己判断せず主治医に確認することが大切です。
糖尿病性腎症の主な症状とサイン
主な症状とサイン
糖尿病性腎症の大きな特徴は、初期にはほとんど自覚症状がないことです。症状が出てきたときには、すでに腎症がある程度進んでいることが少なくありません。進行に伴って次のようなサインが現れます。
- たんぱく尿・尿の泡立ち:尿にたんぱくが漏れ、尿が泡立ちやすく、その泡がなかなか消えないことがあります。
- むくみ(浮腫):たんぱくが失われて体内の水分バランスが崩れ、足のすね・甲、顔やまぶたがむくみます。靴下のあとが残る、靴がきつくなるなどで気づくことがあります。
- 血圧の上昇:腎臓の機能低下により血圧が上がりやすくなり、腎症をさらに進める悪循環になります。
- 倦怠感・疲れやすさ:老廃物が体にたまり、貧血も加わって、だるさや疲れを感じやすくなります。
- 食欲低下・吐き気:腎不全が進むと現れる症状で、透析を考える時期のサインになることがあります。
むくみや尿の泡立ちは腎症以外の原因でも起こります。これらに気づいたら自己判断で様子を見ず、糖尿病や腎臓を診ている医療機関へ相談することがすすめられます。
糖尿病性腎症の進行を抑える管理(血糖・血圧・食事)と透析
進行を抑えるための管理
糖尿病性腎症は、早い段階から血糖・血圧・食事を整えることで進行をゆるやかにできる可能性があります。治療の中心は次の3つです。具体的な目標値や制限の程度は病期や個人の状態で異なるため、必ず主治医・管理栄養士の指示に従ってください。
1. 血糖コントロール
高血糖が腎臓を傷つける根本原因のため、食事・運動・薬(経口血糖降下薬やインスリン)でHbA1cを目標範囲に保つことが基本です。ただし高齢者では低血糖を起こすと転倒や認知機能への影響が大きいため、厳しすぎない個別の目標が設定されます。
2. 血圧管理
高血圧は腎症を進める大きな要因です。減塩と降圧薬で血圧を適切に保ちます。腎臓を保護する作用が期待される降圧薬(ACE阻害薬・ARBなど)が使われることがありますが、選択は医師が判断します。
3. 食事療法
病期が進むと、塩分やたんぱく質の制限が必要になります。日本腎臓学会などの基準では、顕性腎症期以降で食塩を1日3g以上6g未満、たんぱく質を体重1kgあたり0.6〜1.0g程度に抑える管理が示されています。腎不全期にはカリウム制限が加わることもあります。制限の内容は病期で変わるため、自己流ではなく管理栄養士の栄養指導を受けることが重要です。
進行した場合(透析・移植)
管理を続けても腎機能の低下が進み、腎不全期から透析療法期に至ると、人工透析(血液透析・腹膜透析)や腎移植が必要になります。透析は週に複数回の通院など生活への影響が大きいため、できるだけ早い病期で気づき、進行を抑えることが何より大切です。
糖尿病性腎症|介護現場での観察と受診の注意
介護・受診で気をつけたいこと
糖尿病性腎症のある利用者・家族を支える介護現場では、症状が出にくい病気だからこそ、日々の小さな変化に気づくことが進行予防につながります。これは介護職・看護職が現場で活かせる差別化ポイントです。
- むくみの観察:足のすねを指で押してへこみが戻りにくい、体重が急に増えた、靴がきつくなったなどはむくみのサインです。記録して受診時に伝えます。
- 低血糖への注意:腎機能が落ちると薬の効きが変わり、低血糖を起こしやすくなることがあります。冷や汗・ふるえ・ぼんやりなどに注意し、対応を主治医に確認しておきます。
- 食事・水分・塩分:制限がある場合は自己判断で増減せず、管理栄養士や主治医の指示に沿って支援します。減塩食でも食欲が落ちないよう工夫します。
- 定期受診と検査:自覚症状がなくても、尿検査・血液検査を定期的に受けることが早期発見の鍵です。眼科(糖尿病網膜症)の受診も合わせて続けるよう声かけします。
- 受診の目安:急なむくみの悪化、尿量の大きな減少、強い倦怠感や食欲不振、息切れなどがあれば、早めに医療機関へ相談します。
※ ここで示したのは観察と受診の目安であり、診断や治療を判断するものではありません。判断は必ず医師に委ねてください。
糖尿病性腎症のよくある質問
よくある質問
- 糖尿病性腎症は治りますか?
- 傷んだ腎臓を完全に元に戻すことは難しいとされますが、早い病期で血糖・血圧・食事の管理を行うと、進行をゆるやかにできる可能性があります。第2期(早期腎症期)までに気づくことが特に重要です。
- むくみが出たら、もう透析が必要ですか?
- むくみは進行のサインのひとつですが、すぐ透析になるとは限りません。むくみには腎症以外の原因もあります。自己判断せず、医療機関で病期や原因を確認してもらいましょう。
- 糖尿病網膜症があると腎症にもなりやすいですか?
- 網膜症と腎症はどちらも細い血管が傷む合併症のため、合併しやすい関係にあります。一方が見つかったらもう一方の検査も受けることがすすめられます。
- たんぱく質はまったく摂ってはいけないのですか?
- いいえ。制限が必要なのは病期が進んだ段階で、量も人によって異なります。極端な制限は栄養不足を招くため、必ず管理栄養士や主治医の指導のもとで調整します。
- 自覚症状がなければ受診しなくても大丈夫ですか?
- 初期は症状が出ないため、自覚症状の有無で判断するのは危険です。糖尿病のある方は、症状がなくても定期的に尿検査・血液検査を受けることが早期発見につながります。
糖尿病性腎症の参考資料・出典
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糖尿病性腎症のまとめ
まとめ
糖尿病性腎症は、高血糖で腎臓の糸球体が傷つき、たんぱく尿やむくみを経て腎不全・透析へ進む、糖尿病の三大合併症のひとつです。日本では透析導入原因の第1位を占めますが、初期は症状が出にくいため、糖尿病のある方は症状がなくても定期的に尿・血液検査を受けることが早期発見の鍵になります。早い病期での血糖・血圧・食事の管理が進行抑制につながります。介護・看護の現場では、むくみや低血糖のサインに気づき、自己判断せず受診へつなぐ支援が大切です。具体的な目標値や食事制限は病期や個人差が大きいため、必ず主治医・管理栄養士に相談してください。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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