突発性難聴とは

突発性難聴とは

突発性難聴とは、突然片耳が聞こえにくくなる感音難聴です。耳鳴り・めまいを伴うことも。早期受診の目安、高齢者の注意点、加齢性難聴との違いをやさしく解説します。

ポイント

突発性難聴の定義(要点)

突発性難聴(とっぱつせいなんちょう)とは、はっきりした原因がないまま、ある日突然に片耳が聞こえにくくなる感音難聴です。耳鳴りや耳のつまった感じ、めまいを伴うこともあります。治療は早く始めるほど聴力の回復が見込めるため、聞こえの異変に気づいたら、できるだけ早く(遅くとも発症から2週間以内をめやすに)耳鼻咽喉科を受診することが重要です。

目次

突発性難聴の概要と原因

突発性難聴とはどんな病気か

突発性難聴は、それまで問題なく聞こえていた耳が、突然または短時間(おおむね3日以内)のうちに聞こえにくくなる感音難聴です。日本では昭和48年(1973年)に診断の手引きが作られ、欧米では「隣り合う3つの周波数で30デシベル以上の難聴が3日以内に生じたもの」と定義されることが多いとされています。

多くは片耳だけに起こり、左右どちらの耳に起きるかや男女による差はないと報告されています。朝、目が覚めたときに片耳の聞こえが悪いことで気づく人もいれば、「ゴー」という耳鳴りや耳がふさがった感じ(耳閉感)、めまいで異変に気づく人もいます。難聴の自覚がはっきりしないこともあるため、耳鳴りや耳閉感が続くときも油断はできません。

原因はまだはっきりしていない

突発性難聴の原因は、現在もはっきりとは解明されていません。有力とされているのは、内耳(音を感じる蝸牛)の血流障害(血栓・塞栓・出血・血管のれん縮など)と、ウイルス感染による内耳の炎症です。さらに自己免疫が関わっているとする考え方もあります。睡眠不足・ストレス・過労・糖尿病・多量の飲酒などがリスク要因として報告されることもありますが、はっきりした背景のない健康な人にも起こります。

原因が特定できる難聴(外傷・薬剤・腫瘍・メニエール病など)は別の病気として区別され、それらを除いて診断される点が特徴です。なお、突発性難聴は厚生労働省の急性高度難聴調査研究班の対象疾患であり、年間の推定患者数はおよそ3万5千人(2001年の調査)とされています。

突発性難聴の主な症状とサイン

次のような変化が突然あらわれたときは、突発性難聴の可能性があります。一つでも当てはまり、しかも急に起きた場合は早めの受診が大切です。

  • 突然、片耳の聞こえが悪くなった(朝起きたら聞こえにくかった、電話を当てる耳で聞こえが違う)
  • 耳鳴りがする(「ゴー」「キーン」といった音が続く)
  • 耳がふさがった感じ(耳閉感)がとれない
  • めまい・ふらつきを伴う(回転性または浮動性のめまい)
  • 音が響く、ゆがんで聞こえる

突発性難聴のめまいは、難聴・耳鳴り・耳閉感とともに起こるのが典型です。これら以外に手足のしびれや強い頭痛、ろれつが回らないといった症状を伴うときは、脳の病気など別の原因も考える必要があるため、ためらわず救急を含めて医療機関に相談してください。

突発性難聴の早期受診の目安と治療

なぜ早期受診が大切なのか(受診の目安)

突発性難聴でもっとも大切なのは、できるだけ早く治療を始めることです。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も「発症早期に治療を開始した方が聴力予後が良好であることが報告されており、早期に耳鼻咽喉科を受診することが大切」としています。

受診のめやすは次のとおりです。

  • 気づいたその日〜数日以内が理想。「明日になれば治るかも」と様子を見ているうちに回復のチャンスを逃すことがあります。
  • 遅くとも発症から2週間以内を一つのめやすに。専門資料では、発症2週間以内のステロイド治療で多くの患者の回復が促されると報告されています。時間が経つほど聴力が固定して戻りにくくなります。
  • 休日や夜間に気づいた場合も、できる限り早く耳鼻咽喉科を受診してください。

治療の進め方(参考)

突発性難聴に「これで必ず治る」という確立した治療法はまだありませんが、一般的には副腎皮質ステロイド(飲み薬や点滴、必要に応じて鼓室内への注射)を中心に、血管拡張薬や代謝改善薬、ビタミン製剤、高気圧酸素療法、星状神経節ブロックなどが用いられます。どの治療を行うかは聴力の程度や全身の状態によって医師が判断します。治療の内容や効果には個人差があり、ここでの記載は受診のめやすを示すものです。自己判断で市販薬に頼らず、必ず耳鼻咽喉科で診断を受けてください。

突発性難聴と加齢性難聴の違い

突発性難聴と加齢性難聴(老人性難聴)の違い

同じ「聞こえにくさ」でも、突然起こる突発性難聴と、年齢とともにゆっくり進む加齢性難聴(老人性難聴)はまったく別の病気です。高齢の家族で「最近聞こえが悪い」というとき、どちらなのかで対応が大きく変わります。

項目突発性難聴加齢性難聴(老人性難聴)
起こり方ある日突然(数時間〜3日以内)数年かけてゆっくり進行
左右多くは片耳通常は両耳が同じように進む
主な背景内耳の血流障害・ウイルス感染など(原因不明)加齢による内耳の細胞の変化
受診の緊急度非常に高い(早期治療で回復が見込める)急がないが、補聴器の相談で生活の質が上がる
主な対応ステロイドなどの治療補聴器・コミュニケーションの工夫

ポイントは「急に・片耳だけ」聞こえが悪くなったら突発性難聴を疑って急いで受診すること、「両耳が・少しずつ」なら加齢性難聴として補聴器などの相談を進めることです。なお、回転性のめまいと難聴・耳鳴りを繰り返す場合はメニエール病など別の病気の可能性もあるため、症状の起こり方を医師に伝えると診断の助けになります。

突発性難聴の高齢者・介護現場での注意点

高齢者・介護の現場で気をつけたいこと

突発性難聴は30〜60歳代に多いとされますが、高齢者にも起こります。高齢の方や介護を受けている方の場合、次の点に特に注意が必要です。

  • 「年のせい」で見過ごされやすい。もともと加齢性難聴がある人だと、突然の聞こえの低下が「いつもの聞こえにくさ」と区別しづらく、受診が遅れがちです。「今日は急に呼びかけに反応が悪い」「片耳をこちらに向ける」などの変化に家族や介護職が早く気づくことが回復のカギになります。
  • めまい・ふらつきは転倒につながる。突発性難聴に伴うめまいは、高齢者では転倒・骨折のリスクを高めます。ふらつきがあるときは無理に歩かせず、付き添いや手すりで安全を確保しましょう。
  • 意思疎通の低下を認知機能の問題と混同しない。急に会話がかみ合わなくなったとき、それが「聞こえ」の問題である可能性を忘れないことが大切です。
  • 受診への付き添い・情報共有。いつから・どちらの耳が・どんなふうに聞こえにくくなったかをメモして受診に同行すると、診断がスムーズになります。

介護職や看護職にとっても、利用者の聞こえの急な変化に気づき、速やかに受診へつなぐことは重要な役割です。日々のケアの中での小さな観察が、聴力を守ることにつながります。

突発性難聴のよくある質問

突発性難聴は自然に治りますか?
原因不明のケースでは、約半数の人が正常な聴力を取り戻し、残りの人も部分的に回復すると報告されています。一方で、まったく改善しない場合もあります。回復するかどうかは受診の早さも影響するため、自然に治るのを待たず、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
発症してから何日以内に受診すればよいですか?
できるだけ早く、気づいたその日〜数日以内が理想です。専門資料では発症から2週間以内の治療開始が一つのめやすとされ、遅くなるほど聴力が固定して戻りにくくなります。
聴力が回復するときはどれくらいで分かりますか?
回復する人では、改善はおおむね発症から10〜14日以内に現れることが多いとされています。ただし個人差があり、医師の指示に従って治療と経過観察を続けることが大切です。
突発性難聴は再発しますか?
突発性難聴は基本的に一度きりの病気とされ、同じ耳で何度も繰り返す場合はメニエール病など別の病気を考える必要があります。症状を繰り返すときは必ず医師に伝えてください。
加齢性難聴との見分け方は?
突発性難聴は「急に・片耳」、加齢性難聴は「ゆっくり・両耳」が目安です。急な片耳の聞こえの低下は突発性難聴を疑い、すぐに受診してください。

突発性難聴の参考資料

  • [1]
    突発性難聴(耳鼻科疾患分野)- 難病情報センター(厚生労働省 急性高度難聴調査研究班)

    定義・疫学(推定患者数約3万5千人/年、好発年齢30〜60歳代)・原因・症状・治療法の一次資料。

  • [2]
    耳の病気(突発性難聴を含む)- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

    症状と、発症早期に治療を開始した方が聴力予後が良好であるという受診の重要性の記述。

  • [3]
    突発性難聴(家庭版)- MSDマニュアル

    約72時間以内の発症という定義、約半数が正常聴力を回復・改善は通常10〜14日以内、ただちに受診すべきとの記述。

  • [4]
    突発性難聴(プロフェッショナル版)- MSDマニュアル

    発症2週間以内のステロイド治療で多くの患者の回復が促されるという治療開始時期の記述。

突発性難聴のまとめ

まとめ

突発性難聴は、原因がはっきりしないまま突然片耳が聞こえにくくなる病気で、耳鳴りやめまいを伴うこともあります。最大のポイントは「早期受診」です。できるだけ早く、遅くとも発症から2週間以内をめやすに耳鼻咽喉科を受診すれば、聴力の回復が期待できます。高齢者では加齢性難聴と紛れて見過ごされやすいため、急な聞こえの変化に家族や介護職が早く気づくことが大切です。「急に・片耳」なら突発性難聴を疑い、ためらわず受診しましょう。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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