
期限切れ健康保険証の特例、7月末で終了|8月からマイナ保険証か資格確認書が必須、介護現場と利用者受診への影響
厚労省は2026年7月1日の事務連絡で、期限切れ健康保険証でも保険診療を認める暫定措置を7月31日で終了すると周知。8月からはマイナ保険証か資格確認書が必須で、期限切れ保険証のみでは窓口全額支払いに。介護施設の利用者受診・受診同行で職員や家族が確認すべき点を解説します。
結論
厚生労働省は2026年7月1日の事務連絡で、有効期限が切れた健康保険証でも保険診療を認めてきた暫定措置を2026年7月31日で終了すると改めて周知しました。8月1日以降、医療機関・薬局の窓口ではマイナ保険証(スマートフォンのマイナ保険証を含む)または資格確認書の提示が必要になります。期限切れの健康保険証だけを持参した場合は「保険証を忘れたとき」と同じ扱いになり、窓口でいったん医療費の全額を支払い、後日に加入している保険者へ7〜9割の払い戻しを請求する償還払いとなります。介護施設の生活相談員や職員、家族にとっては、利用者の受診同行や通院前の持ち物確認で「マイナ保険証か資格確認書が手元にあるか」を早めに点検しておくことが、8月以降のトラブルを防ぐ実務ポイントになります。
目次
解説動画
マイナンバーカードを健康保険証として使う「マイナ保険証」への移行が進むなか、2026年7月末に一つの区切りが訪れます。従来の紙やプラスチックの健康保険証はすでに2025年12月1日で有効期限が終了していますが、期限切れに気づかず持参した患者にも、これまでは従来どおりの窓口負担で保険診療を認める暫定的な対応が続いてきました。この経過措置が、2026年7月31日をもって終了します。
厚生労働省は2026年7月1日、日本医師会や日本薬剤師会など医療関係団体あてに事務連絡「健康保険証の有効期限終了に伴う今後の医療機関・薬局の受診時等の対応について(周知)」を発出し、8月以降の取り扱いを改めて示しました。8月1日からは、保険診療を受けるにはマイナ保険証か資格確認書のどちらかが必要になります。とりわけ影響が大きいのが、受診の機会が多く、手続きを自分だけで完結しにくい高齢者です。
この変化は、医療機関の窓口業務にとどまりません。介護施設に暮らす高齢者や、在宅で家族に介護される高齢者は、体調を崩して受診する場面が多く、受診の手続きを本人だけで完結できないことも珍しくありません。誰がカードや書類を管理し、通院時に何を持っていくのか。この記事では、制度変更の正確な中身を一次資料で確認したうえで、介護現場の職員・生活相談員・家族が8月を迎える前に何を確認しておくべきかまで、実務目線で整理します。読み終えたときに、担当する利用者やご家族の「受診に必要なもの」を具体的に思い浮かべられる状態を目指します。
厚労省が示した「8月からの受診ルール」
暫定措置は「予定どおり」2026年7月31日で終了
公的医療保険では、患者は医療機関の窓口で医療費の1〜3割を負担し、残りの7〜9割を保険から給付されます。その前提として、患者は「自分が公的医療保険に加入している」ことを窓口で証明しなければなりません。従来はこの役割を健康保険証が担ってきましたが、2024年12月2日以降は新規発行が停止され、2025年12月1日ですべての健康保険証の有効期限が終了しました。以後はマイナ保険証か資格確認書で資格を確認するのが基本の運用です。
とはいえ、期限が切れたことに気づかず従来の保険証を持参する患者は少なくありません。混乱を避けるため、政府は「期限切れを知らずに保険証を持参した場合でも、被保険者番号などからオンライン資格確認で資格を照会できれば、従来どおり1〜3割の窓口負担で保険診療を受けられる」とする暫定的な取り扱いを続けてきました。当初は2026年3月末までとされていたこの措置が7月末まで延長され、厚労省は社会保障審議会・医療保険部会で「予定どおり2026年7月末で終了する」考えを明確にしました。マイナ保険証の利用が一定程度浸透し、マイナ保険証を持たない人には保険者から資格確認書が交付されていることを踏まえた判断です。
8月以降は「保険証を忘れたとき」と同じ扱いに
2026年7月1日の事務連絡は、この終了を医療機関・薬局に改めて周知するものです。厚労省保険局医療介護連携政策課が、日本医師会・日本歯科医師会・日本薬剤師会・日本病院会・全日本病院協会などの団体あてに送付しました。ポイントは、8月1日以降に「期限切れの健康保険証のみ」を持参した患者への対応です。この場合は、従来「健康保険証を忘れた場合」と同様の対応が基本となります。
具体的には、患者はいったん窓口で医療費の全額(10割)を支払い、後日、加入している健康保険組合・協会けんぽ・市町村国保などに差額分(7〜9割)を請求して払い戻しを受ける、いわゆる償還払いの流れになります。窓口での一時的な負担が大きくなるうえ、後から書類をそろえて請求する手間も生じます。厚労省に先立ち、2026年6月22日にも関係団体へ同趣旨の周知依頼が出されており、8月以降はマイナ保険証か資格確認書の持参が必須であることが繰り返し強調されています。
償還払いは「後から戻る」が、その場の負担は重い
償還払いは、支払った差額が最終的に戻ってくる仕組みですが、実務上のハードルは小さくありません。まず、窓口で支払う金額が普段の3〜5倍になります。たとえば普段2,000円で済む受診が、10割負担なら6,000円を超えることもあります。次に、後日の請求には領収書の保管と、保険者への申請書類の提出が必要です。高齢の利用者が単独でこの手続きを完結するのは難しく、家族や施設が代わって書類をそろえる場面が想定されます。払い戻しまでには一定の期間がかかるため、その間の立て替えも家計や施設運営に影響します。
つまり「後から戻るから大丈夫」という理解は、高齢者の受診の現場では必ずしも当てはまりません。だからこそ、そもそも窓口で全額負担にならないよう、マイナ保険証か資格確認書を確実に提示できる状態を、7月のうちに整えておくことが最も確実な備えになります。
「資格確認書」と「資格情報のお知らせ」は別物
ここで混同されやすいのが、「資格確認書」と「資格情報のお知らせ」の違いです。資格確認書は、マイナ保険証を持たない人などに保険者から無償で交付され、単体で従来の保険証と同じように使えます。一方の資格情報のお知らせは、マイナ保険証を持つ人に交付される補助的な書類で、カードリーダーの不具合などでマイナ保険証が読み取れないときに併せて使うものです。単体では保険診療を受けられません。両者は名称もカードサイズも似ているため取り違えが起きやすく、8月以降は「資格情報のお知らせだけ」を持参しても資格確認ができず、全額自己負担となる可能性があります。手元の書類がどちらなのか、上部に「資格確認書」と記載されているかを確認しておくことが重要です。
データで見る移行の実態と地域差
マイナ保険証利用率は68.15%、地域差は大きい
厚労省によると、マイナ保険証の利用率は2026年4月時点で68.15%に達しました。半年前の2025年10月からおよそ20ポイント上昇しています。各保険制度で見ると、加入者に占めるマイナ保険証の利用登録割合は、共済組合の84.6%をはじめ、いずれの制度でも70%を超えています。暫定措置を予定どおり終了する判断の背景には、こうした登録・利用の広がりがあります。
一方で、実際に窓口で使われる利用率には地域差が残ります。都道府県別で高いのは富山県の77.91%、宮崎県の76.42%、静岡県の74.47%と続き、低いのは沖縄県の55.31%、高知県の59.05%、徳島県の61.19%です。首位の富山と最下位の沖縄では20ポイント以上の開きがあります。施設類型別でも、病院68.50%、医科診療所71.16%、歯科診療所71.52%に対し、薬局は63.29%とややばらつきがあります。利用率が相対的に低い地域や、複数の医療機関・薬局を利用する高齢者ほど、8月以降に窓口で戸惑う場面が生じやすいと考えられます。
「3月末まで」から「7月末まで」へ、延長を重ねてきた経緯
今回終了する暫定措置は、一度で決まったものではありません。従来の健康保険証は2024年12月2日に新規発行が停止され、2025年12月1日に法的な有効期限が終了しました。その直後の混乱を避けるため、政府はまず「2026年3月末まで」という猶予を設けました。ところが、マイナ保険証を持たない人へ交付されるはずの資格確認書の発送が住所変更未届けなどで遅れたことや、年度替わりで引っ越し・就職により資格情報が変わる人が多いことから、2026年3月に入って土壇場で「7月末まで」への延長が決まった経緯があります。
このように、移行のスケジュールは現場の準備状況に合わせて後ろ倒しされてきました。しかし厚労省は今回、社会保障審議会・医療保険部会で「予定どおり7月末で終了する」と明言しており、これまでのような再延長は想定しにくい状況です。介護に関わる立場としては、「また延びるだろう」と様子を見るのではなく、7月末という期限を前提に準備を進めておくのが安全です。
現場では「いったん10割負担」がすでに増えている
全国保険医団体連合会(保団連)が2025年10月から11月にかけて全国の医療機関を対象に行った実態調査(有効回答9,580機関)では、移行期の混乱の実態が数字で示されています。期限切れ保険証や資格情報のお知らせのみでの受診を「経験した」と答えた医療機関は66.6%にのぼりました。マイナ保険証による資格確認でのトラブルを経験した医療機関は69.8%で、トラブルの内容としては「資格情報が無効」51.1%、「有効期限切れ」48.1%などが上位に挙がっています。
注目すべきは、トラブル対応として「いったん10割負担をいただいた」と答えたケースが3,403件以上に及び、大幅に増えている点です。オンライン資格確認で有効性を確認したにもかかわらず、後からレセプトが返戻された事例も828件以上報告されています。暫定措置が終了する8月以降は、資格が確認できない場合の全額自己負担が「例外」ではなく「原則」に近づくため、こうした窓口での一時的な高額負担がさらに広がる可能性があります。金銭的な余裕が乏しい高齢者にとって、たとえ後で払い戻されるとしても、その場の10割負担は小さくない負担です。
介護現場の実務:受診同行と持ち物確認をどう変えるか
受診同行の前に「持ち物」を証書単位で確認する
介護施設の生活相談員や介護職員にとって、8月以降の実務で最初に見直したいのが受診同行時の持ち物確認です。これまでは、期限切れの保険証でも窓口で資格が照会できれば保険診療が受けられたため、「とりあえず古い保険証を持っていけば何とかなる」場面がありました。8月からはその前提が崩れます。受診に付き添う職員は、利用者ごとに「マイナ保険証(マイナンバーカード+利用登録)を持っているのか」「資格確認書が交付されているのか」を、あいまいな記憶ではなく実物で確認しておく必要があります。
厚労省が関係団体に依頼した周知内容でも、「マイナ保険証か資格確認書が手元にあるか、置き場所が分かるか」「財布などに入れて持ち歩いていた従来の保険証を、マイナ保険証か資格確認書に入れ替えているか」を本人や家族に確認し、見当たらない場合は7月末までに再発行手続きを呼びかけてほしい、と現場に求めています。施設で預かっている貴重品や、居室に置かれた書類の中に、期限切れの保険証がそのまま残っていないか。8月を待たずに点検し、必要なら保険者への申請を早めに進めることが、受診当日の全額負担を避ける近道です。
高齢者・認知症の人には「携行と提示」の支援が要る
マイナ保険証は、顔認証付きカードリーダーにマイナンバーカードを置いて受付する仕組みです。ここには、高齢の利用者ならではの難しさがあります。カードを自分で取り出して機械に置く動作、暗証番号の入力、あるいは顔認証のためにカメラに正対する動作は、手指の巧緻性が落ちた人や、視覚に障害のある人、認知症のある人にとって簡単とは限りません。暗証番号を3回間違えるとカードにロックがかかり、市区町村窓口へ行かなければ解除できない点も、支援者が把握しておきたい注意点です。
こうした事情から、厚労省はマイナ保険証での受診が困難な高齢者・障害者について、申請により資格確認書を無償で交付する仕組みを設けています。親族などの法定代理人や介助者による代理申請も可能です。マイナ保険証にこだわらず、本人にとって提示のしやすい方を選ぶという判断も、支援の一つの形です。認知症のある利用者では、カードや書類を本人が管理し続けることが難しい場合もあり、施設や家族がどこまで携行と保管を支えるのか、あらかじめ役割を決めておくと当日の混乱を減らせます。8月以降の受診は、単に「証書が変わる」のではなく、「誰が携行し、誰が窓口で提示を支えるか」という介護の分担の問題でもあるのです。
今後の波及:更新期限とキャリアへの示唆
電子証明書の期限切れ・住所変更という「次の落とし穴」
8月の区切りを越えても、資格確認をめぐる注意点はなくなりません。マイナンバーカード本体の有効期限は発行から10年ですが、健康保険証として使うために必要な電子証明書の有効期限は5年です。電子証明書が切れるとマイナ保険証としての読み取りができなくなります。ただし、有効期限が切れてから3カ月間は引き続きマイナ保険証で受診できる猶予があり、この間に市区町村窓口で更新すれば大きな空白は生じません。高齢の利用者は更新通知に自分で気づきにくいため、支援する側が有効期限通知書の到着を見逃さないことが大切です。
資格確認書にも期限があります。多くの保険者は有効期限を最長5年以内の範囲で設定し、国保や後期高齢者医療では1年ごとの更新運用も見られます。また、退職・転職・引っ越しなどで加入する保険が変わると、それまでの資格情報は古くなります。介護施設への入所・退所や、世帯の変化に伴って保険が切り替わる利用者もいます。証書を一度そろえて終わりにするのではなく、更新時期と保険の変更を継続的に見守る姿勢が、8月以降の受診トラブルを防ぐうえで欠かせません。
スマホのマイナ保険証と、家族ができる事前の備え
今回の事務連絡では、マイナ保険証にスマートフォンのマイナ保険証が含まれることも明記されています。スマホ用電子証明書を搭載すれば、マイナンバーカードを持ち歩かなくてもスマートフォンで資格確認ができる仕組みが広がりつつあります。ただし、対応するカードリーダーが設置された医療機関でしか使えないなど、まだ過渡期にあります。高齢の利用者本人がスマホでの受付を完結するのは難しい場合が多く、当面は物理的なマイナンバーカードか資格確認書を軸に考えるのが現実的です。
家族の立場でできる備えも整理しておきましょう。第一に、離れて暮らす親が後期高齢者医療制度や国民健康保険に加入している場合、8月以降にマイナ保険証か資格確認書で受診できることを本人に伝え、手元の書類を一緒に確認することです。後期高齢者医療制度の加入者には、マイナ保険証の保有にかかわらず申請不要で資格確認書が交付される暫定的な運用もあり、まずは何が届いているかを把握するのが出発点になります。第二に、財布や通院バッグの中の古い保険証を、資格確認書やマイナンバーカードに入れ替えておくことです。いざ受診というときに古い保険証しか入っていなかった、という事態を避けられます。こうした小さな確認の積み重ねが、8月以降に高齢の家族が安心して医療を受けられるかどうかを左右します。
介護職・生活相談員に求められる「制度の翻訳役」という役割
今回の変更は、介護の専門職が担う役割の広がりも示しています。マイナ保険証、資格確認書、資格情報のお知らせといった紛らわしい制度用語を、利用者や家族に分かる言葉で説明し、必要な手続きへつなぐ。この「制度の翻訳役」としての機能は、身体介護や生活援助と並ぶ、現場で見えにくいものの重要な支援です。実際、厚労省は福祉関係団体を通じた周知も行うとしており、医療と行政の情報を利用者に橋渡しする役割が、福祉の現場に期待されています。
介護職や生活相談員にとって、こうした制度知識を正確に扱えることは、利用者・家族からの信頼につながり、専門性の証しにもなります。医療との連携や制度手続きの支援に強い職員は、施設運営の面でも価値が高まります。マイナ保険証への移行という大きな流れは、今後も高額療養費の限度額適用の自動化やスマートフォンでの資格確認など、次々と実務に影響を及ぼしていきます。制度の変化を「面倒な負担」で終わらせず、利用者を守る知識として身につけていくことが、これからの介護キャリアで問われる姿勢だと言えるでしょう。
参考文献・出典
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まとめ
期限切れの健康保険証でも保険診療を認めてきた暫定措置は、2026年7月31日で終了します。8月1日からは、医療機関・薬局の窓口でマイナ保険証か資格確認書の提示が必要となり、期限切れの保険証だけを持参した場合は「保険証を忘れたとき」と同じ扱いで、いったん全額を支払って後日に払い戻しを受ける償還払いになります。マイナ保険証の利用率は約68%まで伸びた一方で地域差は大きく、現場ではすでに「いったん10割負担」の事例が増えています。名称の似た資格確認書と資格情報のお知らせの取り違えにも注意が必要です。
介護に関わる人にとって、この変更は窓口の話にとどまりません。受診同行の前に証書を実物で確認し、高齢者や認知症のある利用者には携行と提示を支援し、電子証明書や資格確認書の更新時期を継続的に見守る。制度の紛らわしさを利用者に分かる言葉で翻訳することは、介護の現場が担う見えにくい、しかし確かな支援です。今回のように、一度で終わらず更新や制度変更が続くテーマだからこそ、一過性の対応ではなく、受診の備えを日常の見守りに組み込む視点が求められます。あなたの施設やご家庭では、8月を迎える前に、利用者一人ひとりの「受診に必要なもの」を確認できているでしょうか。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。