
特定技能「介護」完全ガイド|試験内容・就労条件・現場で働く外国人材の受入実態【2026年版】
特定技能「介護」制度の全体像を徹底解説。試験内容(介護技能評価試験・日本語試験)、就労条件、EPA・技能実習・在留資格介護との違い、2026年の受入拡大、日本人介護職の視点まで網羅した完全ガイドです。
この記事のポイント
特定技能「介護」とは、深刻化する介護人材不足に対応するため2019年4月に創設された在留資格で、一定の専門性・技能を持つ外国人が最長5年間、日本の介護現場で就労できる制度です。介護技能評価試験・日本語試験・介護日本語評価試験の3つに合格することが要件で、2025年6月末時点の在留者数は54,916人と過去最多を更新。2025年4月からは訪問系サービスも解禁され、2024〜2028年度の5年間で最大13万5,000人の受入れが見込まれています。日本人介護職にとっては、人手不足の緩和と多文化共働きの新たなキャリア環境が広がる重要な制度変化です。
特定技能「介護」とは|制度創設の背景と目的
特定技能「介護」は、2019年(平成31年)4月に施行された改正入管法によって新設された在留資格「特定技能1号」の16分野のうちの一つです。深刻化する介護業界の人手不足に対応するため、一定の専門性と技能を持ち「即戦力」として現場で働ける外国人材を受け入れることを目的に創設されました。
なぜ特定技能「介護」が必要とされたのか
厚生労働省の推計によれば、高齢化のピークとなる2040年度には約272万人の介護職員が必要とされていますが、2022年度との比較では約57万人の不足が見込まれています。2026年度だけでも約240万人の介護職員が必要とされ、国内人材の確保・処遇改善・離職防止といった施策だけでは到底追いつかない規模の需要が発生しています。こうした背景から、日本政府は「生産性向上や国内人材確保の取組を行ってもなお人材確保が困難な分野」に限定して外国人材を受け入れる制度として、特定技能制度を創設しました。
他の在留資格との大きな違い
特定技能「介護」の最大の特徴は、「即戦力」として入国時から日本人職員と同じく人員配置基準に算定できる点です。技能実習やEPA介護福祉士候補者は、一定期間の研修や経験を経て初めて配置基準に算定されるのに対し、特定技能外国人は介護技能評価試験と日本語試験に合格した状態で来日するため、就労開始と同時に即戦力となります。また、日本人の常勤介護職員と同数まで受け入れ可能という上限があるものの、介護事業所にとっては比較的導入しやすい制度設計となっています。
在留期間・技能水準・日本語能力水準
特定技能1号の在留期間は通算で上限5年間で、1年・6か月・4か月ごとの更新が必要です。家族の帯同は原則認められず、受入れ機関または登録支援機関による生活・就労支援が義務付けられています。技能水準は介護技能評価試験で確認し、日本語能力水準は「日本語能力試験N4以上」または「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)200点以上」に加えて、「介護日本語評価試験」の合格が必要です。5年の在留期間中に介護福祉士国家試験に合格すれば、在留期間の制限がない在留資格「介護」に変更でき、永続的な就労も可能になります。
2025年4月の大改正|訪問系サービスの解禁
これまで特定技能「介護」は訪問系サービスへの従事が認められていませんでしたが、2025年4月から訪問介護、訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、総合事業の訪問型サービスなどへの従事が解禁されました。訪問系サービスに従事するには、通常の特定技能「介護」の要件に加えて、介護分野での実務経験1年以上かつ介護職員初任者研修等を修了していることが条件となり、事業所側にも利用者・家族への事前説明や同行訪問などの追加要件が課されています。これは訪問介護分野で特に深刻な人手不足を受けての大改革で、介護業界の外国人材受入れを大きく変える転換点となっています。
特定技能「介護」の受入人数の推移|2019年から2025年の急増
特定技能「介護」の在留者数は制度開始(2019年4月)以降、継続的に増加を続けています。出入国在留管理庁と厚生労働省が公表している統計データから、その急増ぶりが明確に読み取れます。
2019年から2025年までの在留者数の推移
以下は出入国在留管理庁の公表データに基づく特定技能「介護」の在留者数の推移です。
- 2019年12月末:19人(制度施行直後・コロナ禍前)
- 2020年6月末:170人
- 2020年12月末:939人
- 2021年6月末:2,703人
- 2021年12月末:5,155人
- 2022年6月末:10,411人(初めて1万人を突破)
- 2022年12月末:16,081人
- 2023年6月末:21,915人(2万人突破)
- 2023年12月末:28,400人
- 2024年6月末:36,719人
- 2024年8月末:39,011人
- 2024年12月末:44,367人
- 2025年6月末:54,916人(過去最多)
2019年の19人から2025年の54,916人まで、わずか約6年で実に2,800倍以上の増加となりました。全分野(16分野)の特定技能1号在留者数のうち、介護分野は約17%を占めており、介護は特定技能制度の中でも最も存在感のある分野の一つとなっています。
介護分野の外国人在留者全体の内訳(2024年時点)
介護分野で働く外国人は、特定技能だけでなく4つの在留資格に分かれています。厚生労働省資料によれば、2024年時点での介護分野の外国人在留者数は以下のとおりです。
- 特定技能「介護」:39,011人(2024年8月末時点)
- 技能実習「介護」:15,909人(2023年12月末時点)
- 在留資格「介護」:10,468人(2024年6月末時点)
- EPA介護福祉士・候補者:2,858人(うち資格取得者505人、2024年11月時点)
4制度の合計は約68,000人を超え、介護現場で働く外国人材が今や無視できない規模に成長していることが分かります。特に特定技能の伸びは突出しており、2024年8月以降はEPA・技能実習・在留資格「介護」の合計を大きく上回っています。
2024〜2028年度の受入れ見込み数|13万5,000人の上限設定
2024年3月29日の閣議決定により、介護分野の特定技能1号の受入れ見込み数は、2024年度から5年間で最大13万5,000人と設定されました。これは全16分野合計の82万人のうち約16%を占める規模で、建設・飲食料品製造業に次ぐ大きな枠となっています。2025年6月末時点で約5.5万人ですので、上限までの充足率は約40%。今後さらに加速的に受入れが進む見通しです。
国籍別・地域別の傾向
厚労省の資料によれば、特定技能「介護」の国籍別ではインドネシアが最多で、ミャンマー、ベトナム、フィリピン、ネパールなどが続きます。特にインドネシアからの来日が急増しており、日本の介護現場との文化的・宗教的な親和性の高さが注目されています。施設タイプ別では特別養護老人ホーム(特養)が最多で全体の約16%を占め、介護老人保健施設や有料老人ホーム、病院などが続いています。地域別では大阪府・東京都・神奈川県といった大都市圏への集中が見られます。
介護で働ける4つの在留資格|それぞれの位置づけ
日本の介護現場で働くことができる外国人の在留資格は、以下の4つが存在します。それぞれ制度の目的や要件、在留期間が大きく異なるため、特定技能「介護」を理解するには他の3制度との関係性を把握することが不可欠です。
① EPA(経済連携協定)介護福祉士候補者
2008年から始まった最も歴史の長い制度で、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国との経済連携協定に基づく人材受入れです。二国間の経済連携強化を目的とし、母国で一定の看護・介護教育を受けた候補者が原則4年間、日本の介護施設で就労・研修を行いながら介護福祉士国家試験合格を目指します。国際厚生事業団(JICWELS)が調整機関として関与するため、質が担保されやすい反面、人数枠に上限があり採用難易度は高めです。
② 在留資格「介護」
2017年9月に創設された、日本の介護福祉士養成施設(2年以上)を卒業し介護福祉士資格を取得した外国人が持つ専門的・技術的分野の在留資格です。在留期間に制限がなく、訪問系を含むすべてのサービスに従事可能で、夜勤も可。家族帯同も認められるため、外国人材にとって最も長期的なキャリア形成が可能な資格です。2024年6月末時点の在留者数は10,468人と、年々増加傾向にあります。
③ 技能実習「介護」(2027年4月から育成就労制度へ移行予定)
2017年11月から始まった、母国への技能移転(国際貢献)を目的とした制度です。最長5年(技能実習1号・2号・3号の合算)の在留が認められ、監理団体を通じて受入れが行われます。ただし、技能実習制度は2024年6月の法改正により廃止が決定し、2027年4月からは転籍(転職)が条件付きで認められる新制度「育成就労制度」に移行する予定です。技能実習2号を良好に修了した外国人は、試験を受けずに特定技能「介護」へ移行できる移行ルートが用意されています。
④ 特定技能「介護」
2019年4月から始まった、人手不足対応のための「即戦力」外国人材受入れ制度です。介護技能評価試験・日本語試験・介護日本語評価試験の3つに合格すれば、学歴要件なしで来日・就労が可能となります。通算5年の在留が上限ですが、介護福祉士国家試験に合格すれば在留資格「介護」に切り替えて永続的に働くことができます。近年最も急速に拡大している制度で、介護現場で外国人材を受け入れる主要ルートとなっています。
4制度の使い分けの考え方
どの制度を選ぶかは受入れ施設のニーズによって変わります。「即戦力を短期的に確保したい」なら特定技能、「長期的にキャリアを築いてほしい」なら在留資格「介護」やEPA、「一定期間の戦力として育成したい」なら技能実習(育成就労)が選ばれる傾向にあります。日本人介護職員にとっても、どの制度で働いている外国人同僚なのかを理解することで、コミュニケーションや業務分担の工夫がしやすくなります。
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EPA・技能実習・特定技能・在留資格「介護」の徹底比較
4つの在留資格は、制度目的・在留期間・日本語能力・業務範囲・転職可否などの面で大きく異なります。表形式で整理することで、特定技能「介護」の位置づけがより明確になります。
4制度比較表
| 項目 | EPA介護福祉士候補者 | 技能実習「介護」 | 特定技能「介護」 | 在留資格「介護」 |
|---|---|---|---|---|
| 開始年 | 2008年 | 2017年11月 | 2019年4月 | 2017年9月 |
| 制度目的 | 二国間の経済連携強化 | 母国への技能移転(国際貢献) | 人手不足対応(即戦力) | 専門的・技術的分野の受入れ |
| 在留期間 | 原則4年(介護福祉士取得後は制限なし) | 最長5年(1号・2号・3号合算) | 通算5年 | 制限なし(更新可) |
| 送り出し国 | インドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国のみ | 17か国と協力覚書(2024年時点) | 制限なし | 制限なし |
| 入国時の日本語能力 | N3〜N5(国により異なる) | N4程度(2号移行時N3) | N4以上+介護日本語評価試験合格 | N2相当(養成施設入学要件) |
| 配置基準算定 | 就労開始から(N2以上の場合) | 就労6か月後から(N2以上は即日) | 就労開始から即日 | 就労開始から即日 |
| 訪問系サービス | 介護福祉士取得後のみ可能 | 原則不可 | 2025年4月から条件付きで可能 | 制限なし(すべて可) |
| 夜勤 | 条件付きで可能 | 条件付きで可能 | 可能(1人夜勤も可) | 可能 |
| 転職 | 原則不可(資格取得後は可) | 原則不可(育成就労では条件付き可) | 同一職種内で可能 | 可能 |
| 家族帯同 | 不可(候補者段階) | 不可 | 原則不可 | 可能(配偶者・子) |
| 調整機関 | 国際厚生事業団(JICWELS) | 監理団体 | 登録支援機関 | なし(施設独自採用) |
| 学歴・経験要件 | 看護学校・高等教育卒など | 基本的になし | なし(試験合格のみ) | 介護福祉士養成校卒 |
特定技能「介護」の独自ポイント
特定技能「介護」の最大の強みは、「試験合格さえすれば学歴や経験を問わず来日できる」「入国即日から配置基準に算定できる」「1人夜勤も可能」「同一職種内で転職が可能」という柔軟性です。一方で、通算5年の上限があり家族帯同が原則不可であるため、長期就労を望む場合は介護福祉士国家試験に合格して在留資格「介護」に切り替える必要があります。
独自分析|なぜ特定技能「介護」が選ばれているのか
上記の比較からも分かるとおり、特定技能「介護」は「即戦力性」と「柔軟性」のバランスが最も優れています。技能実習のような長い育成期間が不要で、EPAのような国・人数の制限もなく、在留資格「介護」のような養成校卒業という高いハードルもありません。介護現場が「今すぐ働ける人材が欲しい」というニーズに応える制度として設計されているため、在留者数が急増している理由がここにあります。2025年の訪問系サービス解禁によって、特定技能の活用幅はさらに広がっており、介護業界における中核的な外国人受入れ制度としての地位を確立しつつあります。
特定技能「介護」の試験内容|3つの試験を徹底解説
特定技能「介護」の在留資格を取得するには、原則として以下の3つの試験に合格する必要があります(技能実習2号修了者・EPA修了者・介護福祉士養成施設修了者は一部または全部が免除)。どのような内容が問われるのかを理解することで、外国人同僚の実力レベルを把握する手がかりにもなります。
① 介護技能評価試験
介護現場で必要な実践的な知識と技能を測る試験で、プロメトリック株式会社が実施しています。CBT方式(コンピューターベーステスト)で、試験時間60分・全45問、合格基準は総得点の60%以上です。出題科目は以下のとおりです。
- 介護の基本(10問):介護保険制度、介護職員の職業倫理、介護記録、事故対応など
- こころとからだのしくみ(6問):人体の構造、加齢による変化、認知症の理解など
- コミュニケーション技術(4問):利用者・家族との関わり方、報連相など
- 生活支援技術(20問):食事介助、入浴介助、排せつ介助、移乗、体位交換など
- 判断等試験(実技形式5問):事例問題をもとにした判断力テスト
問題文は現地語(または日本語)で出題されるため、母国語で介護技術を学んだ人材でも受験可能です。日本の介護福祉士実務者研修レベルの基礎知識が問われる内容です。
② 日本語試験(JFT-Basic または JLPT N4以上)
生活や業務で必要な基本的な日本語能力を測る試験です。以下のいずれかに合格する必要があります。
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)200点以上:独立行政法人国際交流基金が実施するCBT方式の試験。日常生活で遭遇する場面で基礎的な日本語ができるかを測定。
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上:読み書きを含む総合的な日本語能力を測定する試験。N4は「基本的な日本語を理解できるレベル」。
N4レベルは「簡単な会話はできるが、スピードの速い日常会話はまだ難しい」という水準のため、現場での声かけや記録業務には追加の日本語学習が必要になることが多いです。
③ 介護日本語評価試験
介護の現場特有の日本語能力を測る試験で、プロメトリックが実施しています。試験時間30分・全15問で、合格基準は総得点の60%以上です。出題科目は以下のとおりです。
- 介護のことば(5問):「介助」「排せつ」「拘縮」「褥瘡」など介護特有の専門用語
- 介護の会話・声かけ(5問):利用者への声かけ、申し送り、家族対応の会話
- 介護の文書(5問):介護記録、申し送り表、ケア計画などの文書理解
一般的な日本語試験ではカバーしきれない「介護現場の専門用語」に特化しているため、合格することで基本的な業務コミュニケーションが成立する水準の日本語力が担保されます。
受験料と2026年4月の改定
受験料は従来1,000円程度で設定されていましたが、日本国内では2026年4月1日以降の試験から約2,000円に改定される予定です。試験はプロメトリックのWEBサイトからID作成後、試験日の59日前から3営業日前まで予約可能です。受験資格は17歳以上(インドネシア国籍のみ18歳以上)です。
試験実施国と試験ルート
2025年時点で、介護技能評価試験・介護日本語評価試験はフィリピン、インドネシア、カンボジア、ネパール、モンゴル、ミャンマー、タイ、中国、日本など13か国以上で実施されています。日本国内では47都道府県で実施されており、在留中の外国人(留学生や技能実習修了者など)も受験できます。介護分野では、特定技能1号外国人全体の傾向(技能実習ルート約7割)と異なり、約8割が試験ルートで特定技能に移行しているのが特徴です。
試験免除者(4つのルート)
以下に該当する人は試験の一部または全部が免除されます。
- 技能実習2号「介護」を良好に修了した者 → 技能試験・日本語試験が免除
- 介護福祉士養成施設(2年以上)を修了した者 → 試験免除で特定技能へ移行可能
- EPA介護福祉士候補者として4年間適切に就労・研修した者 → 試験免除
- 介護福祉士国家試験の合格基準点の5割以上を得点したEPA候補者 → 試験免除
日本人介護職への影響と向き合い方|共働きのコツ
特定技能「介護」の急増は、日本人介護職にとっても働き方に大きな影響を与えています。「外国人と一緒に働くのは不安」という声もあれば、「人手が増えて現場が助かる」という前向きな声もあります。ここでは、日本人介護職の視点から、特定技能外国人と共に働くメリット・課題・実践的なコミュニケーションのコツをまとめます。
メリット①|慢性的な人手不足の緩和
最も大きなメリットは、やはり人員不足の緩和です。特定技能「介護」は入国即日から配置基準に算定できるため、これまで「人員配置基準ギリギリで回していた」施設でもシフトに余裕が生まれます。夜勤回数の減少、休暇取得率の向上、残業時間の削減といった具体的な効果が報告されており、日本人職員のバーンアウト(燃え尽き症候群)防止にも貢献しています。特に2025年4月から訪問介護への従事が解禁されたことで、人手不足が最も深刻な訪問介護分野にも光が差しつつあります。
メリット②|業務の「見える化」と標準化の進展
外国人同僚がいることで、これまで「暗黙知」になっていた業務が明文化される現場が増えています。「なんとなく」で済まされていた声かけや介助手順をマニュアル化したり、写真や動画で共有したりする動きが進み、結果として日本人新人職員にとっても教えやすい環境が整います。また、ICTツール(翻訳アプリ、音声入力記録、写真付き申し送りアプリなど)の導入が加速し、業務効率全体が底上げされる副次効果もあります。
メリット③|多様な視点による介護の質向上
特定技能外国人は、日本人が無意識に持っている固定観念や先入観を持たず、「シンプルかつ客観的な視点」で利用者と向き合うことができる、という評価が受入れ施設から多く寄せられています。真面目で基本に忠実に業務を遂行する姿勢が、日本人職員にも良い刺激を与え、現場全体の介護の質向上につながっているという声も少なくありません。
課題①|コミュニケーションの壁
特定技能の日本語要件はN4+介護日本語評価試験合格のため、基本的な業務コミュニケーションは可能ですが、微妙なニュアンスや早口の日常会話、敬語の使い分けにはまだ苦労する場面が多いのが現実です。「お願いします」と言われても具体的に何をすればよいか分からない、利用者の方言や不明瞭な発話を聞き取れないといった場面が発生します。
課題②|文化・宗教・生活習慣の違い
イスラム圏(インドネシア等)出身者はハラール食への配慮や礼拝時間の確保が必要な場合があります。食事介助の際に豚肉・アルコールを含む料理を扱うことへの配慮、排せつ介助など同性介助の希望、宗教的な祝日への理解なども必要になります。こうした違いを「面倒」と捉えるのではなく、「多様性を受け入れる職場文化」を醸成することが、日本人職員にも求められています。
実践コツ①|「やさしい日本語」を使う
外国人同僚と話すときは、「短く・はっきり・一文一義」を心がけることが最も効果的です。たとえば、「ちょっとAさんのところ見てきてもらえる?」ではなく、「301号室のAさんの部屋に行ってください。Aさんの呼吸を見てください。」と具体的に伝えます。敬語や婉曲表現を避け、主語・動詞を省略せず、擬音語・擬態語(「ゴロゴロ」「スッと」など)も分かりやすい言葉に言い換える工夫が有効です。
実践コツ②|視覚的・具体的な指示を併用する
口頭だけでなく、写真・イラスト・動画・ジェスチャーを組み合わせて伝えると理解度が格段に上がります。介助手順を写真付きの手順書にする、申し送りをホワイトボードに書きながら説明する、実技を実演しながら教えるなど、五感を使ったコミュニケーションが効果的です。翻訳アプリ(VoiceTra、Google翻訳など)もためらわずに活用しましょう。
実践コツ③|小さな成功体験を共有する
外国人同僚ができたことを小まめに褒めることで、自信とモチベーションが育ちます。「発音が上手になったね」「この前の入浴介助、安全にできていたよ」など、具体的な行動に対する称賛は母国語・文化に関係なく通じます。日本人職員にとっても、褒める文化の醸成は自身の働き方の改善につながります。
実践コツ④|文化の違いを質問し合う関係づくり
「なぜその動作をするの?」「日本ではこうするんだよ」とお互いに質問し合える関係を作ることが、長期的な信頼関係の基盤になります。休憩時間に母国の食べ物や習慣について話してもらったり、逆に日本の季節行事(お正月、お花見、お月見など)を一緒に体験したりする機会を設けると、職場全体の結束が強まります。
日本人介護職自身のキャリアへの影響
特定技能外国人の増加は、日本人介護職にとって「指導者・リーダー層」としてのキャリアパスを広げる機会でもあります。外国人材の教育・メンター役、やさしい日本語での指示出しスキル、多文化マネジメント経験などは、今後の介護現場で重宝されるスキルセットです。厚労省は2019年10月から「リーダー級介護職員の処遇改善」を進めており、外国人材を指導できる日本人リーダーの価値は今後ますます高まっていく見通しです。
特定技能「介護」に関するよくある質問
特定技能「介護」に関するよくある質問
Q1. 特定技能「介護」の外国人は、日本人と同じ給料で雇われるのですか?
A. はい。特定技能外国人の報酬は、受入れ機関の同じ業務に従事する日本人労働者と「同等以上」であることが法律で義務付けられています。厚生労働省はこれを厳しくチェックしており、違反があれば受入れ機関は制度利用を停止されます。したがって、日本人介護職員の賃金が外国人採用によって引き下げられる、という事態は制度上発生しません。
Q2. 特定技能外国人は1人で夜勤に入れますか?
A. 入れます。特定技能1号は、試験により介護技能と日本語能力が担保されているため、1人夜勤も可能です。一方、技能実習「介護」は2年目以降に限定され、業界ガイドラインで「日本人等と複数名で業務を行う」旨が規定されているなど、より慎重な運用が求められます。ただし、特定技能であっても施設側の判断で「最初の数か月は日本人と一緒に夜勤を組む」運用をしている事業所が一般的です。
Q3. 特定技能「介護」に2号はありますか?
A. 介護分野に特定技能2号は設定されていません。これは、介護分野には在留期間に制限のない在留資格「介護」が既に存在しているためです。したがって、特定技能1号の外国人が長期的に日本で働き続けたい場合は、在留中に介護福祉士国家試験に合格して、在留資格「介護」に切り替える必要があります。
Q4. 特定技能外国人は転職できるのですか?
A. 同じ業務区分内(介護職または看護助手)であれば転職可能です。ただし、分野が違う仕事(例:外食、建設など)への転職はできません。同一業界内での転職は自由であるため、受入れ施設には「選ばれ続ける職場」としての努力が求められます。日本人介護職にとっても、これは「外国人に選ばれる職場とは?」を考えるきっかけになっています。
Q5. 2025年4月から訪問介護で働けるようになったのは、特定技能だけですか?
A. いいえ。2025年4月の改正により、特定技能「介護」と技能実習「介護」の両方で訪問系サービスへの従事が解禁されました。ただし、いずれも追加要件があり、実務経験1年以上・介護職員初任者研修の修了・受入れ事業所による同行訪問・利用者家族への事前説明などが求められます。従来から訪問介護に従事できたのは、在留資格「介護」(介護福祉士)とEPA介護福祉士のみでした。
Q6. 特定技能外国人の受入れには、施設側にどんな費用がかかりますか?
A. 主な費用は、①人材紹介料(送り出し機関・紹介会社経由の場合)、②登録支援機関への支援委託料(月1.5〜3万円/人が相場)、③住居手配費用、④日本語学習支援費用などです。EPAと比べて初期費用や面談から入国までの期間(3〜6か月)が短く、結果的にトータルコストは抑えられる傾向にあります。
Q7. 日本人介護職員として、外国人同僚を指導する資格は必要ですか?
A. 特別な資格は必要ありません。ただし、「やさしい日本語」や「多文化コミュニケーション」の研修を受けておくと、指導がよりスムーズになります。厚労省や介護労働安定センターが外国人介護人材受入れに関する研修資料・ガイドブックを公開しており、無料で活用できます。介護福祉士やリーダー級の職員がこうしたスキルを身につけることで、施設内での評価や処遇改善にもつながります。
Q8. 介護分野の特定技能1号はどの国籍が多いですか?
A. 厚生労働省の資料によれば、インドネシアが最多で、ミャンマー、ベトナム、フィリピン、ネパールなどが続きます。特にインドネシアは人口が多く、日本語学習者人口も増加中で、文化的・宗教的にも日本の介護現場との親和性が高いとされています。国籍ごとに言語・宗教・食事の特徴が異なるため、施設ごとの受入れ方針に応じた配慮が必要です。
Q9. 介護福祉士国家試験には、特定技能の外国人でも合格できますか?
A. はい、挑戦可能です。特定技能1号の在留期間(通算5年)中に、3年以上の実務経験を積み、介護福祉士実務者研修を修了した上で国家試験に合格すれば、在留資格「介護」に切り替えて永続的な就労が可能になります。合格には日本語力の更なる向上が必要ですが、国や施設の支援を受けながら目指す外国人材も増えています。
まとめ|特定技能「介護」は日本の介護現場の未来を担う制度
特定技能「介護」は、2019年4月の制度開始からわずか6年余りで在留者数が19人から54,916人(2025年6月末時点)へと急拡大し、介護現場を支える中核的な外国人受入れ制度となっています。2024〜2028年度の5年間で最大13万5,000人という受入れ見込み数が設定されており、2025年4月からは訪問系サービスへの従事も解禁されるなど、制度はさらに拡大する方向にあります。
特定技能「介護」の特徴を整理すると、以下の4点に集約されます。
- 介護技能評価試験・日本語試験(N4以上またはJFT-Basic 200点以上)・介護日本語評価試験の3試験合格が要件
- 入国即日から配置基準に算定可能な「即戦力」制度
- 通算5年の在留上限だが、介護福祉士国家試験合格で在留資格「介護」へ切替可能
- 同一業務区分内での転職が可能で、受入れ施設には「選ばれる職場づくり」が求められる
日本人介護職にとっては、慢性的な人手不足の緩和、業務の標準化・ICT化の進展、多様な視点による介護の質向上など、多くのメリットが期待できます。一方で、やさしい日本語の使用、視覚的・具体的な指示、文化・宗教への配慮といった新たなスキルも求められる時代に入っています。外国人同僚を指導できるリーダー級の日本人介護職員は、今後ますます重宝される存在となるでしょう。
2026年は、2027年4月に施行される「育成就労制度」への移行前の重要な過渡期です。技能実習制度の廃止と新制度への移行、特定技能「介護」のさらなる拡大、訪問介護解禁の本格化など、外国人介護人材を取り巻く環境は大きく変わろうとしています。介護業界で働く日本人にとっても、このタイミングで特定技能制度を正しく理解し、多文化共働きを前向きに捉える姿勢が、自身のキャリアと日本の介護の未来を切り拓く鍵となるはずです。
介護業界のキャリアに関する最新情報や、職場選びのポイントについては、当サイトの他の記事もぜひ参考にしてください。あなたに合った働き方を見つける第一歩として、働き方診断の活用もおすすめします。
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2026年6月 介護報酬臨時改定まとめ|介護職の給料はいくら上がる?【最新版】
2026年6月施行の介護報酬臨時改定を徹底解説。改定率+2.03%で介護従事者全体に月1万円、生産性向上事業所にはさらに月7,000円の上乗せで最大月1.9万円の賃上げが実現します。全15サービスの加算率一覧表、施設タイプ別の年収シミュレーション、転職先選びの5つのチェックポイントまで網羅した最新版です。