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📑目次

  1. 01はじめに──在宅介護は「何から始めればいいかわからない」が普通
  2. 02ステップ1|まず地域包括支援センターに相談する
  3. 03ステップ2|要介護認定を申請する
  4. 04ステップ3|ケアマネジャーを選び、ケアプランを作成する
  5. 05ステップ4|利用できる在宅介護サービスを知る
  6. 06介護保険の自己負担──費用はいくらかかるのか
  7. 07【独自分析】要介護度別・サービス組み合わせの考え方
  8. 08在宅介護の限界サイン──見逃してはいけない警告兆候
  9. 09介護離職を防ぐ──仕事と介護を両立する制度と方法
  10. 10家族の心身のケア──介護うつを防ぎ、自分を守る
  11. 11在宅介護に関するよくある質問
  12. 12参考資料・公的情報源
  13. 13まとめ──在宅介護は「一人で頑張るもの」ではない
在宅介護の始め方──家族が最初に知るべき手順・サービス・費用のすべて

在宅介護の始め方──家族が最初に知るべき手順・サービス・費用のすべて

在宅介護を始める家族向けの入門ガイド。要介護認定の申請手順、ケアマネとの関わり方、訪問介護・デイサービス・ショートステイの使い分け、介護保険の自己負担、介護離職を防ぐ方法まで網羅的に解説します。

ポイント

この記事のポイント

在宅介護を始めるには、まず市区町村の窓口か地域包括支援センターで要介護認定を申請し、認定後にケアマネジャーとケアプランを作成します。利用できるサービスは訪問介護・デイサービス・ショートステイなど多岐にわたり、介護保険により自己負担は原則1割(所得に応じ2〜3割)です。一人で抱え込まず、早めに専門家へ相談することが在宅介護を無理なく続ける最大のポイントです。

📑目次▾
  1. 01はじめに──在宅介護は「何から始めればいいかわからない」が普通
  2. 02ステップ1|まず地域包括支援センターに相談する
  3. 03ステップ2|要介護認定を申請する
  4. 04ステップ3|ケアマネジャーを選び、ケアプランを作成する
  5. 05ステップ4|利用できる在宅介護サービスを知る
  6. 06介護保険の自己負担──費用はいくらかかるのか
  7. 07【独自分析】要介護度別・サービス組み合わせの考え方
  8. 08在宅介護の限界サイン──見逃してはいけない警告兆候
  9. 09介護離職を防ぐ──仕事と介護を両立する制度と方法
  10. 10家族の心身のケア──介護うつを防ぎ、自分を守る
  11. 11在宅介護に関するよくある質問
  12. 12参考資料・公的情報源
  13. 13まとめ──在宅介護は「一人で頑張るもの」ではない

はじめに──在宅介護は「何から始めればいいかわからない」が普通

「親が転倒して入院した」「物忘れがひどくなった」──そんな出来事をきっかけに、ある日突然"介護"が家族の生活に入り込みます。厚生労働省の「国民生活基礎調査(2022年)」によると、主な介護者の約5割が同居の家族であり、そのうち約7割が「介護の準備をしていなかった」と回答しています。

介護は突然始まりますが、制度やサービスを知っていれば慌てる必要はありません。この記事では、在宅介護を始めるにあたって家族が知るべき手順をステップ形式で解説します。要介護認定の申請からケアマネジャーの選び方、利用できるサービスの種類と費用、介護疲れの限界サイン、そして介護離職を防ぐ制度まで──初めての方でもこの1記事で全体像がつかめるよう構成しました。

「まず何をすればいいのか」を知りたい方は、ぜひ読み進めてください。

ステップ1|まず地域包括支援センターに相談する

在宅介護で最初にすべきことは、お住まいの地域の地域包括支援センターに連絡することです。「何から手をつければいいかわからない」という状態でも問題ありません。むしろ、それが相談の一番多い理由です。

地域包括支援センターとは

地域包括支援センターは、各市区町村が設置する高齢者の総合相談窓口です。全国に約5,400か所あり、おおむね中学校区に1か所の割合で配置されています。利用は完全無料で、電話相談も訪問相談もできます。

センターには以下の3職種が配置されています。

  • 保健師(または看護師):健康面・医療面の相談
  • 社会福祉士:権利擁護・虐待防止・生活支援の相談
  • 主任ケアマネジャー:介護サービスの調整・ケアプラン相談

センターに相談できること

  • 要介護認定の申請代行
  • 介護保険サービスの種類と選び方
  • ケアマネジャーの紹介
  • 認知症の初期対応
  • 介護に関する家族の悩み(経済面・精神面)
  • 高齢者虐待・消費者被害の相談

センターの探し方

最寄りのセンターは、市区町村の介護保険課に電話するか、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」で検索できます。「地域包括支援センター ○○市」でWeb検索しても見つかります。

ポイント:入院中の場合は病院の「医療ソーシャルワーカー(MSW)」にも相談できます。退院後の在宅介護の準備を一緒に進めてくれます。

ステップ2|要介護認定を申請する

介護保険サービスを使うには、要介護認定(または要支援認定)を受ける必要があります。認定を受けることで、サービス利用時の自己負担が原則1割になります。

申請に必要なもの

  • 要介護認定申請書(市区町村の窓口またはHPで入手)
  • 介護保険被保険者証(65歳以上の方に交付済み)
  • 主治医の氏名・医療機関名(申請書に記入。主治医がいない場合は市区町村指定の医師が対応)

※40〜64歳(第2号被保険者)は医療保険証が必要です。申請費用は無料です。

認定までの流れ(約30日)

  1. 申請:市区町村窓口・地域包括支援センターで申請(本人以外の家族や地域包括支援センターによる代行申請も可能)
  2. 訪問調査:市区町村の認定調査員が自宅や病室を訪問し、心身の状態を74項目で確認
  3. 主治医意見書:市区町村から主治医に依頼(自己負担なし)
  4. 一次判定:調査結果をコンピュータで分析
  5. 二次判定:介護認定審査会(医師・福祉職など5名程度)が一次判定結果と主治医意見書をもとに最終判定
  6. 結果通知:申請日から原則30日以内に「認定通知書」と「被保険者証」が届く

要介護度の区分と利用限度額

区分状態の目安区分支給限度額(月額)自己負担1割の場合
要支援1日常生活はほぼ自立、一部支援が必要約50,320円約5,032円
要支援2立ち上がりや歩行が不安定、入浴に一部介助約105,310円約10,531円
要介護1歩行不安定、排泄・入浴に一部介助約167,650円約16,765円
要介護2起き上がり困難、排泄・入浴に介助が必要約197,050円約19,705円
要介護3自力歩行困難、排泄・入浴・着替えに全介助約270,480円約27,048円
要介護4日常生活全般に介助が必要、認知症の症状あり約309,380円約30,938円
要介護5寝たきり、意思の伝達が困難約362,170円約36,217円

※上記は2024年度の介護報酬に基づく概算値です。地域加算により若干異なります。

訪問調査で「本来の状態」を伝えるコツ

訪問調査当日は、高齢者本人が調査員の前で「普段より元気にふるまう」ケースが非常に多いです。対策として:

  • 普段の様子をメモしておく(転倒回数、夜間の徘徊、食事量の変化など)
  • 家族が必ず同席する(本人の申告だけでは実態が伝わりにくい)
  • 具体的なエピソードを伝える(「先週2回転倒した」「夜中に3回トイレに起きる」など数字で伝える)

認定結果に不服がある場合は、都道府県の「介護保険審査会」に審査請求できます。また、状態が変化した場合は有効期間内でも区分変更申請が可能です。

ステップ3|ケアマネジャーを選び、ケアプランを作成する

要介護認定の結果が届いたら、次はケアマネジャー(介護支援専門員)を選びます。ケアマネジャーは在宅介護の「司令塔」であり、利用者と家族にとって最も身近な相談相手になります。

ケアマネジャーの役割

  • ケアプランの作成:どのサービスを・週何回・どの事業所で利用するかを計画
  • サービス事業者との調整:訪問介護事業所やデイサービス施設との連絡・契約手続き
  • 月1回の訪問モニタリング:サービスが適切かを確認し、必要に応じてプランを見直す
  • 介護に関する相談窓口:家族の悩みや困りごとの相談

ケアプラン作成の費用は全額介護保険負担(自己負担ゼロ)です。

ケアマネジャーの探し方

  1. 地域包括支援センターに紹介を依頼する(最も一般的)
  2. 市区町村が配布する「指定居宅介護支援事業者一覧」から選ぶ
  3. 厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」で検索する

良いケアマネジャーを見極めるポイント

  • 話をしっかり聞いてくれるか:一方的に提案するのではなく、本人・家族の希望を丁寧にヒアリングしてくれる
  • 説明がわかりやすいか:専門用語を噛み砕いて説明してくれる
  • 複数の選択肢を提示してくれるか:特定の事業所だけでなく、複数のサービスを比較提示してくれる
  • 在宅介護の経験が豊富か:ケアマネジャーにも施設介護に詳しい人、在宅に詳しい人がいる
  • 連絡が取りやすいか:緊急時の対応体制があるか確認する

重要:ケアマネジャーとの相性は介護生活の質を左右します。「合わない」と感じたらいつでも変更可能です。変更は地域包括支援センターに相談すればスムーズに進みます。

ケアプラン作成の流れ

  1. アセスメント(課題分析):ケアマネジャーが自宅を訪問し、本人の心身状態・生活環境・家族の介護力を把握
  2. 原案作成:本人と家族の希望を踏まえ、目標とサービス内容を含むケアプラン原案を作成
  3. サービス担当者会議:本人・家族・ケアマネ・サービス事業者が集まり、プランの内容を確認・調整
  4. 同意・契約:プランに同意したら各サービス事業者と契約し、サービス開始

ステップ4|利用できる在宅介護サービスを知る

在宅介護で利用できるサービスは大きく「訪問系」「通所系」「短期入所系」「その他」の4カテゴリに分かれます。ケアプランではこれらを組み合わせて、本人と家族にとって最適なプランを設計します。

訪問系サービス──自宅にプロが来る

訪問介護(ホームヘルプサービス)

ホームヘルパー(介護福祉士など)が自宅を訪問し、身体介護(食事・入浴・排泄の介助)や生活援助(掃除・洗濯・調理)を行います。在宅介護の中心的サービスです。

  • 対象:要介護1〜5
  • 費用目安(1割負担):身体介護30分未満で約250円、生活援助45分未満で約183円
  • 注意点:あくまで「本人の日常生活支援」が対象。家族分の食事準備やペットの世話は対象外

訪問看護

看護師が自宅を訪問し、バイタル測定、服薬管理、褥瘡(床ずれ)処置、カテーテル管理などの医療的ケアを行います。理学療法士によるリハビリを受けられるステーションもあります。

  • 対象:要支援1〜要介護5
  • 費用目安(1割負担):30分未満で約470円、30〜60分で約821円

訪問入浴介護

専用の浴槽を自宅に持ち込み、看護師と介護士のチーム(通常3名)で入浴介助を行います。自宅の浴室が使えない方に適しています。

訪問リハビリテーション

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が自宅を訪問し、自宅環境に合わせたリハビリを実施します。退院後の在宅復帰期に特に重要です。

通所系サービス──施設に通う

通所介護(デイサービス)

日帰りで施設に通い、食事・入浴・レクリエーション・機能訓練を受けます。家族の介護負担軽減と本人の社会参加の両面で効果があります。

  • 対象:要介護1〜5(要支援は総合事業として利用)
  • 費用目安(1割負担、7〜8時間):要介護1で約655円、要介護3で約780円(別途食事代・入浴加算あり)
  • 利用頻度の目安:週1〜3回が一般的

通所リハビリテーション(デイケア)

医療機関や介護老人保健施設に通い、医師の指示のもとでリハビリを受けます。デイサービスよりリハビリに特化しています。

短期入所系サービス──一時的に施設に泊まる

短期入所生活介護(ショートステイ)

特別養護老人ホームなどに数日〜最大30日泊まり、食事・入浴・排泄の介助を受けます。家族の休息(レスパイトケア)や、冠婚葬祭・出張時に活用されます。

  • 対象:要支援1〜要介護5
  • 費用目安(1割負担):要介護3で1日約780円(別途食費・滞在費が約2,000〜3,000円)
  • 利用のコツ:人気施設は予約が取りにくいため、1〜2か月前の予約が推奨

その他のサービス

福祉用具レンタル・購入

車いす、介護ベッド、手すり、歩行器などを介護保険でレンタルできます(1割負担)。腰掛便座やシャワーチェアなど衛生用品は購入費の支給対象です(年間10万円まで)。

住宅改修

手すりの取り付け、段差の解消、床材の変更などに対し、最大20万円(うち自己負担1〜3割)の補助が受けられます。事前にケアマネジャーを通じて市区町村に申請が必要です。

小規模多機能型居宅介護

「通い」「泊まり」「訪問」の3つのサービスを1つの事業所で柔軟に組み合わせられます。定額制で利用でき、急な予定変更にも対応しやすいのが特徴です。

介護保険の自己負担──費用はいくらかかるのか

在宅介護の費用を考えるうえで、介護保険の自己負担割合と高額介護サービス費制度の2つを理解しておくことが重要です。

自己負担割合の決まり方

負担割合対象者の目安(65歳以上の場合)
1割本人の合計所得金額が160万円未満
2割本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満(年金収入のみなら280万円以上)
3割本人の合計所得金額が220万円以上(年金収入のみなら340万円以上)

※2025年時点の基準。2026年度には2割負担の対象拡大が検討されています(厚生労働省「介護保険制度の見直しに関する意見」2025年12月)。

在宅介護の月額費用シミュレーション

要介護3の方が在宅介護サービスを利用する場合の目安です(1割負担)。

サービス利用頻度月額費用(1割負担)
訪問介護週3回(身体介護30分+生活援助30分)約6,500円
デイサービス週2回(7〜8時間)約6,200円
ショートステイ月3日約2,300円+食費・滞在費約8,000円
福祉用具レンタル介護ベッド+手すり約1,500円
合計約24,500円/月

※上記はあくまで一例です。要介護度・利用回数・地域加算により変動します。食費や交通費などの自費部分は別途かかります。

高額介護サービス費──負担が重いときの救済制度

1か月の自己負担額が一定の上限を超えた場合、超過分が払い戻されます。

所得区分月額上限
生活保護受給者15,000円(個人)
市町村民税非課税(年金80万円以下等)15,000円(個人)/ 24,600円(世帯)
市町村民税非課税24,600円(世帯)
一般(課税世帯)44,400円(世帯)
現役並み所得者44,400〜140,100円(世帯)

申請は市区町村の介護保険課で行います。一度申請すれば、以降は自動的に適用されます。

介護保険外の費用も忘れずに

介護保険でカバーされない費用も家計に影響します。

  • おむつ代:月額5,000〜15,000円(市区町村の助成制度がある場合も)
  • 配食サービス:1食500〜800円程度
  • 通院の交通費:介護タクシーは片道2,000〜5,000円が目安
  • 自費ヘルパー:介護保険では対応できない家事(庭掃除、ペットの世話等)は1時間2,500〜4,000円程度

【独自分析】要介護度別・サービス組み合わせの考え方

厚生労働省「介護給付費等実態統計(令和5年度)」のデータをもとに、要介護度ごとによく利用されるサービスの組み合わせパターンを整理しました。ケアプラン作成時の参考にしてください。

要支援1〜2:予防と見守りが中心

  • メイン:総合事業の通所型サービス(週1回)
  • サブ:訪問型サービス(週1回、掃除・買い物支援)
  • ポイント:要支援段階では「これ以上悪化させない」ための予防が最重要。筋力トレーニングや社会参加に重点を置く

要介護1〜2:自立支援と家族負担の軽減

  • メイン:デイサービス(週2〜3回)+訪問介護(週2〜3回)
  • サブ:福祉用具レンタル(手すり、シャワーチェア)
  • ポイント:日中の見守りが必要になる段階。デイサービスで日中を過ごし、訪問介護で朝夕の身体介護を補う組み合わせが多い。家族が仕事を続けるなら、この段階から小規模多機能型居宅介護も検討に値する

要介護3〜4:介護負担が本格化

  • メイン:訪問介護(毎日〜1日2回)+デイサービス(週3〜4回)
  • サブ:ショートステイ(月3〜7日)+訪問看護(週1回)+福祉用具(介護ベッド・車いす)
  • ポイント:排泄介助や移乗介助が増え、家族の身体的負担が一気に大きくなる段階。ショートステイを定期的に利用して家族の休息(レスパイト)を計画的に確保することが、在宅介護を長続きさせるカギ。厚労省の統計では、要介護3以上でショートステイの利用率が約35%に跳ね上がる

要介護5:在宅の限界ラインを見極める

  • メイン:訪問介護(1日複数回)+訪問看護(週2〜3回)+夜間対応型訪問介護
  • サブ:ショートステイ(月7日以上)+福祉用具フル装備
  • ポイント:区分支給限度額(約36万円/月)をほぼ使い切るケースが多い。それでも24時間の介護を家族だけでまかなうのは困難。施設入所も含めた選択肢をケアマネジャーと率直に相談すべき段階

上記はあくまで一般的な傾向です。実際のケアプランは本人の状態・家族の介護力・住環境によって大きく異なります。大切なのは、支給限度額を効率的に使い切ることと、家族が無理をしないサービス量を確保することのバランスです。

在宅介護の限界サイン──見逃してはいけない警告兆候

在宅介護には「ここまでなら続けられる」というラインがあります。その限界を超えたまま無理を続けると、介護者の健康が壊れたり、被介護者への不適切なケア(虐待)につながるリスクがあります。厚生労働省「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果(令和4年度)」では、養護者による虐待の発生要因として「介護疲れ・介護ストレス」が最多でした。

介護者(家族)の身体的な限界サイン

  • 慢性的な腰痛・膝痛:移乗介助や排泄介助による身体負担が蓄積し、日常生活に支障が出ている
  • 睡眠不足の常態化:夜間のトイレ介助や見守りで、まとまった睡眠が1か月以上取れていない
  • 自分の通院ができない:介護に追われ、自分の持病の治療や健康診断を後回しにしている
  • 体重の急激な増減:食事が不規則になり、3か月で5kg以上の変動がある

介護者の精神的な限界サイン

  • 介護を「義務」としか感じられない:感謝や愛情ではなく、義務感と罪悪感だけで介護を続けている
  • 被介護者に対してイライラが止まらない:些細なことで怒鳴ってしまい、自己嫌悪に陥る
  • 外出や趣味への意欲が完全に消失:以前楽しめていたことに一切興味がわかない
  • 「消えたい」「逃げたい」という思いが頻繁によぎる:これは介護うつの可能性があり、早急に専門家への相談が必要

被介護者側の状態変化──在宅での対応が難しくなるサイン

  • 夜間の徘徊や大声が頻繁:認知症の行動・心理症状(BPSD)が悪化し、夜間の安全確保が困難
  • 暴力行為が出現:介護者に対する殴打・引っかきが日常的になっている
  • 医療的ケアの必要度が増した:吸引、経管栄養、褥瘡処置など、家族だけでは対応しきれない医療行為が必要
  • 誤嚥性肺炎を繰り返す:入退院の繰り返しで、在宅介護の継続性が保てない

施設入所を検討すべきタイミング

上記のサインが複数該当する場合、施設入所は「敗北」ではなく「適切な選択」です。以下の場合は、ケアマネジャーに施設入所について率直に相談してください。

  • 要介護3以上で、主たる介護者が1人(老老介護を含む)
  • 認知症の進行によりBPSDが顕著で、在宅での安全が確保できない
  • 介護者自身が治療を要する疾病を抱えている
  • ショートステイを月の半分以上利用しないと在宅生活が成り立たない

特別養護老人ホーム(特養)への入所は原則要介護3以上が対象です。申し込みから入所まで平均1〜2年の待機期間があるため、「まだ大丈夫」と思えるうちに情報収集を始めることを強くおすすめします。

介護離職を防ぐ──仕事と介護を両立する制度と方法

総務省「就業構造基本調査(2022年)」によると、介護・看護を理由に離職した人は年間約10.6万人にのぼります。しかし、介護離職は経済的基盤を失うだけでなく、社会的孤立や介護者自身の心身の悪化にもつながります。「仕事を辞めないこと」が在宅介護を持続させる最大の戦略の一つです。

育児・介護休業法に基づく介護休業制度

介護休業は、要介護状態の家族を介護するために取得できる休業制度です。雇用保険の被保険者であれば、正社員だけでなく契約社員やパートタイマーも対象になります。

項目内容
取得日数対象家族1人につき通算93日、3回まで分割取得可能
対象家族配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫
給付金介護休業給付金として休業開始時賃金日額の67%をハローワークから支給
申請方法開始日の2週間前までに事業主に書面で申出

重要な考え方:93日間は「自分で介護をするための期間」ではなく、「介護の体制を整えるための期間」として使うのが正しい活用法です。ケアマネジャーの選定、サービス事業者の契約、施設の見学と申し込みなど、「仕事に復帰した後も介護が回る体制」を作ることに使いましょう。

介護休暇制度

介護休業とは別に、短期の介護対応に使える介護休暇制度があります。

  • 日数:対象家族1人につき年5日、2人以上なら年10日
  • 取得単位:1日単位または時間単位で取得可能(2021年法改正により時間単位が義務化)
  • 用途:通院の付き添い、ケアマネとの打ち合わせ、介護サービスの手続きなど
  • 賃金:法律上は無給でも可(会社の就業規則による)

その他の両立支援制度

  • 所定外労働の制限(残業免除):介護終了まで事業主に請求可能
  • 時間外労働の制限:月24時間・年150時間を超える時間外労働の免除を請求可能
  • 深夜業の制限:午後10時〜午前5時の労働を免除
  • 短時間勤務等の措置:利用開始から3年以上の期間で2回以上、短時間勤務・フレックスタイム・始業終業時刻の繰り上げ繰り下げ等のいずれかの措置を事業主が講じる義務
  • テレワーク:2025年4月施行の改正育児・介護休業法により、事業主は介護中の労働者に対しテレワークを選択できる措置を講じる努力義務が課される

会社に介護を伝えるタイミングと方法

  1. まずは上司に相談:制度を利用する意向がなくても、状況を共有しておくことで急な休みへの理解を得やすい
  2. 人事・総務部門に制度の確認:自社の就業規則で介護休業・休暇の条件(有給か無給か、上乗せ制度の有無等)を確認する
  3. ケアマネジャーに勤務状況を伝える:勤務時間や通勤時間をケアプランに反映してもらうため、ケアマネにも仕事の状況を共有する

厚生労働省の「仕事と介護の両立支援ガイド」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/index.html)に、企業向け・労働者向けの詳細な情報がまとまっています。

家族の心身のケア──介護うつを防ぎ、自分を守る

在宅介護では、介護を受ける本人だけでなく介護する家族自身の健康管理が極めて重要です。厚生労働省の調査では、在宅介護者の約3〜4割がうつ状態(CES-Dスケールで16点以上)に該当するとの研究結果も報告されています。

介護うつの兆候を知る

介護うつは「気合が足りない」「甘え」ではなく、慢性的なストレスによる脳の機能変化です。以下の兆候が2週間以上続く場合は、かかりつけ医や精神科への受診を検討してください。

  • 何をしても楽しいと感じられない
  • 朝起きるのがつらく、体が鉛のように重い
  • 涙が止まらなくなることがある
  • 食欲が極端に増減する
  • 集中力が落ち、家事や仕事でミスが増える
  • 「自分がいなくなったほうがいい」と考えることがある

特に最後の項目に該当する場合は、すぐに相談してください。よりそいホットライン(0120-279-338、24時間無料)や、各自治体の精神保健福祉センターで相談できます。

レスパイトケアを計画的に利用する

レスパイト(respite)は「一時的な休息」を意味します。介護者が定期的に休息を取ることは、贅沢ではなく介護を継続するための必要条件です。

介護保険で利用できるレスパイト手段

  • ショートステイ(短期入所生活介護):数日〜最大30日の施設入所。家族の旅行や休養に活用。月1〜2回の定期利用がおすすめ
  • デイサービス(通所介護):日中の見守りをプロに任せることで、介護者が日中の自分時間を確保
  • 小規模多機能型居宅介護:通い・泊まり・訪問を柔軟に組み合わせ、急な用事にも対応可能

介護保険外のレスパイト手段

  • 認知症カフェ(オレンジカフェ):認知症の当事者と家族が気軽に集まれる場。全国に約8,000か所以上あり、参加費は無料〜数百円程度。家族同士の情報交換の場としても有効
  • 家族介護者の会:同じ立場の家族と悩みを共有できる。地域包括支援センターや社会福祉協議会で紹介してもらえる
  • 市区町村の家族介護者支援事業:介護者向けのリフレッシュ講座、相談事業、介護用品の支給など。内容は自治体によって異なるため、地域包括支援センターに確認を

介護者自身の健康を維持する5つの実践

  1. 自分の通院・健診を最優先に:介護者が倒れたら介護は破綻します。年1回の健康診断と、持病の定期通院は絶対に後回しにしない
  2. 「完璧な介護」を目指さない:プロでも完璧な介護はできません。「70点でいい」と自分に許可を出す
  3. 介護以外の社会的つながりを維持する:友人との食事、趣味の時間を意識的に確保する。社会的孤立は介護うつの最大のリスク要因
  4. 情報を集めすぎない:ネット上の情報は玉石混交。信頼できる相談先(ケアマネ、地域包括)を決めて、そこに集中する
  5. 「助けて」と言える練習をする:家族、友人、ケアマネ、地域包括──誰でもいいので、つらいときは声を上げる。一人で抱え込まないことが最も大切

在宅介護に関するよくある質問

Q1. 要介護認定の申請は本人でないとできませんか?

いいえ、家族による代行申請が可能です。さらに、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に申請手続きを代行してもらうこともできます。入院中の場合は、病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談すれば、退院前に手続きを進めてくれます。

Q2. 要介護認定の結果に納得できない場合はどうすればいいですか?

まず、担当のケアマネジャーに相談してください。認定調査時に本人の状態が正確に伝わっていなかった可能性があります。正式な手続きとしては、通知を受けた日の翌日から3か月以内に都道府県の「介護保険審査会」に不服審査請求ができます。また、心身の状態が変化した場合は、いつでも区分変更申請が可能です。区分変更のほうが不服審査より迅速に結果が出るため、実務上は区分変更申請を選ぶケースが多いです。

Q3. 介護保険サービスを利用するのに、いくらくらい用意しておけばいいですか?

要介護度や利用するサービスにより異なりますが、1割負担の場合、月額1万5,000円〜3万5,000円程度が一般的な目安です。これに食費・おむつ代・交通費などの自費分が加わります。高額介護サービス費制度により、所得に応じた月額上限(一般的な課税世帯で44,400円)があるため、青天井にはなりません。

Q4. 認知症の親が一人暮らしをしています。在宅介護は可能ですか?

認知症の程度と利用できるサービス体制によります。軽度(要介護1〜2程度)であれば、訪問介護+デイサービス+見守りセンサーの組み合わせで一人暮らしを継続している方は多くいます。ただし、火の不始末、徘徊による行方不明リスク、服薬管理の困難などが見られる場合は、小規模多機能型居宅介護やグループホームへの移行をケアマネジャーと相談してください。

Q5. 介護休業を取ると会社での評価に影響しませんか?

育児・介護休業法では、介護休業の申出や取得を理由とする不利益取扱い(解雇、降格、減給等)を禁止しています(同法第16条)。また、2025年4月施行の改正法では、従業員への制度の個別周知と意向確認が事業主の義務になりました。法的に保護されている権利ですので、遠慮なく利用してください。不利益な扱いを受けた場合は、各都道府県の労働局に相談できます。

Q6. 在宅介護と施設介護、どちらが費用的に安いですか?

一般的には、要介護2程度までは在宅介護のほうが費用を抑えられます。要介護3以上になると、在宅でも利用サービスが増えて費用がかさみ、施設介護と大きな差がなくなるケースもあります。特別養護老人ホーム(特養)は、多床室であれば月額8〜13万円程度(食費・居住費込み)で利用でき、低所得者には「特定入所者介護サービス費(補足給付)」による減額制度もあります。費用だけでなく、介護者の負担や本人の生活の質も含めて判断することが大切です。

Q7. 急に親が倒れました。介護認定が出るまでサービスは使えませんか?

認定結果が出る前でもサービスは利用可能です。申請日にさかのぼって保険給付の対象になるため、申請後すぐにケアマネジャーと相談してサービスを開始できます(暫定ケアプラン)。ただし、認定結果が想定より軽度だった場合、限度額を超えた分は全額自己負担になる可能性があるため、ケアマネジャーと相談しながら慎重にプランを組みましょう。

まとめ──在宅介護は「一人で頑張るもの」ではない

在宅介護は、制度とサービスを正しく使えば、家族だけで抱え込む必要はありません。この記事で解説した手順を振り返ります。

  1. 地域包括支援センターに相談する(無料・何度でも)
  2. 要介護認定を申請する(結果が出る前からサービス利用可能)
  3. ケアマネジャーを選び、ケアプランを作成する(費用は自己負担ゼロ)
  4. 必要なサービスを組み合わせて利用する(訪問・通所・短期入所)
  5. 限界サインを見逃さず、無理をしない(施設入所も選択肢の一つ)
  6. 仕事との両立制度を活用する(介護休業93日、介護休暇年5日)
  7. 自分自身の心身のケアを忘れない(レスパイトケアは必須)

最も大切なのは、「助けを求めることは弱さではない」ということです。プロの力を借り、制度を最大限活用し、自分の人生も大切にしながら介護と向き合ってください。

「自分に合った介護との向き合い方がわからない」「仕事と介護のバランスに悩んでいる」という方は、まず自分の状況を整理することから始めてみませんか。

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公開日: 2026年4月16日最終更新: 2026年4月16日

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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