
2027年度改定に向け処遇改善加算の効果検証調査を7月実施へ――介護事業経営調査委員会が方針決定
2026年4月8日の介護事業経営調査委員会で、2026年度臨時改定による処遇改善加算の効果検証調査方針が決定。7月調査・11月公表のスケジュールで2027年度改定論議に反映。訪問看護・訪問リハも調査対象に追加。
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この記事のポイント
2026年4月8日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会の介護事業経営調査委員会(第44回)で、2026年度臨時介護報酬改定で拡充された介護職員等処遇改善加算の効果を検証する調査の実施方針が了承されました。調査は2026年7月に実施、同年11月に結果公表という前倒しスケジュールで進められ、2027年度の次期介護報酬改定論議の基礎資料となります。今回の調査では、2026年度改定で処遇改善加算の対象に加わった訪問看護事業所・訪問リハビリテーション事業所も新たに調査対象となっています。
目次
介護人材需給データから見る制度改正の背景
厚生労働省の第9期介護保険事業計画に基づく推計では、介護職員は2022年度の約215万人から、2026年度に約240万人、2040年度に約272万人が必要とされています。介護報酬改定や処遇改善のニュースは、個別の制度変更だけでなく、介護職員の必要数が増え続けるという構造課題の中で読む必要があります。
| 年度 | 介護職員数・必要数 | 2022年度との差 | 見方 |
|---|---|---|---|
| 2022年度 | 約215万人 | 基準 | 足下の介護職員数 |
| 2026年度 | 約240万人 | +約25万人 | 第9期計画期間の終期に必要な規模 |
| 2040年度 | 約272万人 | +約57万人 | 高齢化が進む2040年度に必要な規模 |
2040年度までに必要とされる上積みは約57万人です。これは、介護現場の努力だけで吸収するには大きい規模で、処遇改善、採用、定着支援、業務効率化を組み合わせて進める必要があります。政策の効果を見るときは、給付費や事業者支援だけでなく、採用・定着・離職防止にどこまで結びつくかを追うと、現場への影響を判断しやすくなります。
出典: 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2024年7月12日公表)。2022年度の介護職員数は厚生労働省「令和4年介護サービス施設・事業所調査」、2026年度・2040年度は市町村の第9期介護保険事業計画に基づく都道府県推計の集計です。
調査実施の背景――2026年度臨時改定と処遇改善加算の大幅拡充
2026年度には臨時(期中)の介護報酬改定が行われ、介護職員等処遇改善加算の大幅な見直し・拡充が2026年6月から施行されます。この改定は、介護人材の確保・定着が喫緊の課題となるなか、介護従事者の処遇を改善し他産業との賃金格差を縮小することを目的としています。
処遇改善加算拡充の主なポイント
2026年度の臨時改定では、以下のような処遇改善策が講じられました。
- 介護職員を含む介護従事者を幅広く対象とした月1万円(3.3%)の賃上げを実現
- 訪問介護では最大28.7%という大幅な処遇改善加算率を設定
- これまで対象外だった居宅介護支援(ケアマネ事業所)・訪問看護・訪問リハビリにも処遇改善加算を新設
- 既存の処遇改善加算の加算率も引き上げ
2012年度の介護職員処遇改善交付金からスタートした処遇改善方策は、加算の形に変わりながら段階的に拡充されてきました。しかし、介護従事者の給与は他産業に比べて依然として低い水準にあり、このまま放置すれば人材確保・定着は不可能になるとの危機感が今回の臨時改定の背景にあります。
こうした大規模な処遇改善策は「実施すればよく、それで終わり」というわけにはいきません。効果を検証し、課題があれば次の改定で改善を継続していくことが不可欠です。そのため、2026年度の処遇改善の効果を把握する調査を実施することが決定されました。
調査の概要――対象事業所・調査内容・抽出方法
介護事業経営調査委員会で了承された「令和8年度介護従事者処遇状況等調査」の大枠は、2024年度の調査に倣った設計となっていますが、今回の臨時改定の内容を反映した重要な変更点があります。
調査対象事業所(12種類)
調査は全事業所の20分の1から4分の1を抽出して行われます。対象となる施設・事業所の種類は以下のとおりです。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- 訪問介護事業所
- 通所介護事業所(地域密着型を含む)
- 通所リハビリテーション事業所
- 特定施設入居者生活介護事業所
- 小規模多機能型居宅介護事業所
- 認知症対応型共同生活介護事業所(グループホーム)
- 居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)
- 訪問看護事業所【新規追加】
- 訪問リハビリテーション事業所【新規追加】
上記の施設・事業所に加え、当該施設・事業所に在籍する介護従事者等も調査対象となります。
訪問看護・訪問リハビリの追加の意義
今回の調査で特に注目すべきは、訪問看護事業所と訪問リハビリテーション事業所が新たに加わった点です。これは2026年度の臨時改定で、訪問看護にも1.8%の処遇改善加算が新設されるなど、これまで対象外だったサービスに処遇改善の仕組みが拡大されたことを踏まえたものです。
ただし、訪問看護事業所は比較的小規模な事業所が多いため、回答率の確保が課題になる可能性があります。委員からもこの点について懸念が示されています(後述)。
主な調査内容
調査では、処遇改善加算の取得状況、介護従事者の給与水準の変動、賃金の配分方法などが中心的な項目となります。2024年度調査の枠組みをベースとしつつ、2026年度改定の内容を反映した設問が加えられる見込みです。
前倒しされた調査スケジュール――前回調査との違い
今回の調査で注目すべきもう一つのポイントは、スケジュールが大幅に前倒しされていることです。
前回(2024年度)と今回(2026年度)のスケジュール比較
| 項目 | 2024年度調査(前回) | 2026年度調査(今回) |
|---|---|---|
| 調査実施時期 | 2024年10月 | 2026年7月 |
| 結果公表時期 | 2025年3月 | 2026年11月 |
| 調査から公表まで | 約5か月 | 約4か月 |
前倒しの理由
スケジュール前倒しの最大の理由は、2027年度の介護報酬改定(通常改定)が控えていることです。
2027年度の改定に向けた本格的な論議は2026年の夏から秋にかけて開始されます。仮に前回と同じスケジュール(翌年3月公表)で進めた場合、調査結果が示されるのは2027年3月となり、改定論議に間に合わないという問題がありました。
そのため、調査実施を3か月前倒しして7月とし、結果公表も11月に繰り上げることで、2027年度改定の審議に調査結果を反映できるスケジュール設計がなされています。
タイトなスケジュールがもたらす課題
一方で、スケジュールの前倒しにはリスクもあります。
- 2026年6月施行の直後(わずか1か月後)に調査を行うため、処遇改善加算の効果が十分に表れていない段階でのデータ収集となる可能性
- 調査から結果公表までの期間が短く、十分な分析を行う余裕が限られる
- 事業所側の回答準備期間が短いため、回答率の低下が懸念される
こうした課題を踏まえ、委員からは回答率の確保やしっかりとした分析のための工夫を求める声が上がっています。
委員からの注文――「人材流出に歯止めがかかっているか」の検証を
介護事業経営調査委員会では、調査方針そのものに異論や反論は出ませんでしたが、今後の調査のあり方や分析の視点について重要な意見が委員から出されました。
人材流出の検証を求める声
泉千夏委員(EY新日本有限責任監査法人FAAS事業部シニアマネジャー)は、今後どこかのタイミングで「介護職員等処遇改善加算の拡充等によって、人材流出に歯止めがかかっているのか」を検証する必要があると指摘しました。具体的な検証指標として以下を提案しています。
- 退職率――処遇改善後に退職率が低下しているか
- 充足率――必要な人員が確保できているか
- 勤続年数――定着率の向上につながっているか
- 採用コスト――人材確保にかかるコストが軽減されているか
この意見は、処遇改善加算の本来の目的である「人材確保・定着」が実際に達成されているかを、給与水準の変動だけでなく多角的な指標で検証すべきという重要な問題提起です。
有効回答率の確保を求める声
堀田聰子委員(慶応義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授)と緒方武虎委員(福祉医療機構経営サポートセンターリサーチグループグループリーダー)からは、有効回答率のアップが重要であるとの意見が出されました。
特に、事業所規模の小さな訪問看護なども今回から調査対象に含まれるため、小規模事業所では回答にかけられるリソースが限られます。委員からは「さまざまな工夫を行い、有効回答率・回答数の確保を図ってほしい」との注文がついています。
経営主体別のバラつき解消
また、調査結果の信頼性を高めるため、経営主体別(社会福祉法人、医療法人、営利法人など)のバラつきを解消する工夫も求められています。経営主体によって処遇改善加算の取得状況や賃金配分の方法が異なるため、全体の平均値だけでは実態を正確に把握できないという課題があるためです。
2027年度介護報酬改定への影響と今後の展望
今回の処遇状況等調査は、2027年度の介護報酬改定(通常改定)を左右する重要な基礎資料の一つとなります。
2027年度改定に向けた全体像
2027年度の介護報酬改定に向けては、複数の調査が並行して進められています。
- 介護事業経営実態調査(2026年5月〜7月実施)――事業所の収支・経営状況を把握
- 介護従事者処遇状況等調査(2026年7月実施)←今回の調査――処遇改善加算の効果を検証
- 介護報酬改定の効果検証調査――2024年度改定の各種施策の効果を検証
これらの調査結果を総合的に踏まえ、2026年の夏から秋にかけて2027年度改定の本格的な議論が介護給付費分科会で開始される見通しです。
改定論議の焦点となるポイント
2027年度の改定では、以下の点が大きな論点になると見られています。
- 処遇改善の継続・深化――2026年度臨時改定の効果を踏まえ、さらなる処遇改善が必要かどうか
- 基本報酬の引き上げ――事業所の経営力強化のため、加算ではなく基本報酬そのものの引き上げを求める声がある
- 物価・賃金上昇への対応――持続的な物価上昇を報酬水準に適切に反映する仕組みの構築
- 介護保険制度の持続可能性――給付の効率化・適正化とのバランス
今後のスケジュール
調査票案は、近く開催される親組織の介護給付費分科会に報告され、了承を経て調査実施の準備が進められます。今後の想定スケジュールは以下のとおりです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年4〜5月 | 介護給付費分科会で調査票案を了承、調査準備 |
| 2026年6月 | 臨時介護報酬改定施行(処遇改善加算の拡充開始) |
| 2026年7月 | 介護従事者処遇状況等調査を実施 |
| 2026年夏〜秋 | 2027年度改定に向けた本格論議開始 |
| 2026年11月 | 調査結果公表、改定論議に反映 |
| 2027年度 | 次期介護報酬改定(通常改定)施行 |
介護転職を考える方へ――処遇改善の動きが意味すること
今回の調査方針の決定は、介護業界で働く人・これから働こうとする人にとって重要なシグナルです。
処遇改善は「一度きり」ではない
政府は処遇改善の効果を検証し、不十分であればさらなる改善につなげる姿勢を明確にしています。2026年度の臨時改定で月1万円の賃上げが実現されたことに加え、2027年度の通常改定でも「物価や賃金の上昇等を適切に反映するための対応」を行うことが既に方針として示されています。
新たにケアマネ・訪問看護も処遇改善の対象に
2026年度改定では、これまで処遇改善加算の対象外だった居宅介護支援(ケアマネジャー)や訪問看護にも加算が新設されました。これにより、介護業界のより幅広い職種で給与水準の改善が期待できます。
ただし、新規に加算対象となったサービスでは申請の準備などもあり、すぐに取得率が上がるわけではありません。今後の進捗状況を見ながら、さらなる対応が検討される見通しです。
自分に合った働き方を見つけるために
処遇改善の流れが加速する今、介護業界への転職や職場変更を検討する絶好のタイミングといえます。ただし、処遇改善加算の取得状況や賃金配分の方法は事業所によって異なるため、自分の希望する働き方や条件に合った職場を選ぶことが重要です。
「どんな介護の仕事が自分に向いているかわからない」という方は、まずは簡単な診断から始めてみませんか?
あなたに合った介護の働き方を診断する参考文献・出典
2026年4月8日の介護事業経営調査委員会で、処遇改善加算の効果検証調査の方針が固まりました。7月実施・11月公表という前倒しスケジュールは、2027年度の介護報酬改定論議に調査結果を確実に反映させるための措置です。訪問看護・訪問リハビリの追加や、人材流出への歯止めを多角的に検証すべきとの委員意見など、調査の深化に向けた議論も進んでいます。
介護業界では処遇改善の取り組みが着実に進展しています。2026年度の臨時改定による賃上げに加え、2027年度の通常改定でもさらなる処遇改善が見込まれます。介護の仕事に関心のある方は、この好機を逃さず行動に移してみてはいかがでしょうか。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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