介護職と他産業の賃金格差が月8.2万円に|賃上げ加速の波に取り残される介護業界の現状と対策
介護職向け

介護職と他産業の賃金格差が月8.2万円に|賃上げ加速の波に取り残される介護業界の現状と対策

厚労省「賃金構造基本統計調査」最新データで介護職員の賞与込み給与は月31.4万円、全産業平均39.6万円との格差は8.2万円。2026年6月の臨時改定で処遇改善加算を拡充するも民間賃上げに追いつけるか。転職者が知るべきポイントを解説。

Quick Diagnosis

45

全6問・動画ガイド付き

性格から、合う働き方をみつける。

介護の仕事を嫌いになる前に。施設タイプや転職サービスの選び方を、6つの質問と45秒の動画で整理できます。

無料で診断を始める
ポイント

この記事のポイント

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」最新データによると、介護職員の賞与込み給与は月額31.4万円で、全産業平均の39.6万円との格差は月8.2万円に達しています。前年の格差8.3万円からわずか0.1万円の縮小にとどまり、ほぼ横ばいの状況です。政府は2026年6月の介護報酬臨時改定で最大月1.9万円の賃上げを目指しますが、民間企業の春闘で5%超の賃上げが続く中、格差解消は依然として見通せません。転職を考える介護職にとって、処遇改善加算の取得状況や施設ごとの賃金水準を見極めることがこれまで以上に重要になっています。

目次

介護人材需給データから見る制度改正の背景

厚生労働省の第9期介護保険事業計画に基づく推計では、介護職員は2022年度の約215万人から、2026年度に約240万人、2040年度に約272万人が必要とされています。介護報酬改定や処遇改善のニュースは、個別の制度変更だけでなく、介護職員の必要数が増え続けるという構造課題の中で読む必要があります。

年度介護職員数・必要数2022年度との差見方
2022年度約215万人基準足下の介護職員数
2026年度約240万人+約25万人第9期計画期間の終期に必要な規模
2040年度約272万人+約57万人高齢化が進む2040年度に必要な規模

2040年度までに必要とされる上積みは約57万人です。これは、介護現場の努力だけで吸収するには大きい規模で、処遇改善、採用、定着支援、業務効率化を組み合わせて進める必要があります。政策の効果を見るときは、給付費や事業者支援だけでなく、採用・定着・離職防止にどこまで結びつくかを追うと、現場への影響を判断しやすくなります。

出典: 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2024年7月12日公表)。2022年度の介護職員数は厚生労働省「令和4年介護サービス施設・事業所調査」、2026年度・2040年度は市町村の第9期介護保険事業計画に基づく都道府県推計の集計です。

賃金格差8.2万円の根拠|賃金構造基本統計調査の最新データを読む

2026年4月、厚生労働省が公式サイトで公表した「賃金構造基本統計調査」の最新データが、介護業界の厳しい現実を改めて浮き彫りにしました。

8.2万円の内訳と算出方法

賃金格差「8.2万円」の根拠となるデータは以下のとおりです。

項目金額
介護職員の賞与込み給与(月額換算)31.4万円
全産業平均の賞与込み給与(月額換算)39.6万円
格差8.2万円

ここでいう「賞与込み給与」とは、調査年の6月分として支払われた給与に、前年1月〜12月分の賞与の12分の1を加えた額です。基本給に各種手当を含み、税金や社会保険料が差し引かれる前の額面を指します。

格差の推移|縮まらない「8万円の壁」

賃金格差の推移を見ると、改善の歩みが極めて遅いことがわかります。

介護職員全産業平均格差
2023年(前々年)6.9万円
2024年(前年)8.3万円
2025年(最新)31.4万円39.6万円8.2万円

注目すべきは、2023年から2024年にかけて格差が6.9万円→8.3万円と一気に1.4万円も拡大した点です。これは民間企業の春闘で大幅な賃上げが実現した一方、介護業界の賃上げが追いつかなかったことを如実に示しています。2025年のデータでは0.1万円の縮小にとどまり、格差拡大がようやく止まった程度と言えます。

全産業平均の賃金は過去最高を更新

令和7年(2025年)の賃金構造基本統計調査では、一般労働者の賃金月額は34万600円で過去最高を記録しました。男女間賃金格差は過去最少となるなど、日本全体の賃上げは着実に進んでいます。しかし、介護業界はこの「賃上げの波」に乗り切れていないのが実情です。

なぜ介護職の賃金は上がらないのか|構造的な3つの要因

介護職員の給与は上昇傾向にあるものの、他産業との格差は一向に縮まりません。この背景には、介護業界特有の構造的な問題があります。

要因1:公定価格の制約|価格転嫁ができない

介護サービスの報酬は国が定める「介護報酬」で決まります。一般企業であれば、物価上昇や賃上げコストを商品やサービスの価格に転嫁できますが、介護事業者は自由に価格を設定できません。介護報酬は原則3年に1度の改定で見直されるため、急激な物価上昇や賃上げ圧力にリアルタイムで対応することが困難です。

2024年度の介護報酬改定の引き上げ率は1.59%でしたが、同年の全産業平均の賃上げ率は5%を超えており、この差が格差拡大の直接的な原因となりました。

要因2:賃上げ率の差|全産業5%超 vs 介護職2.58%

介護関係13団体が2025年に実施した共同調査によると、介護職の賃上げ率は2.58%にとどまりました。同時期の全産業平均(春闘)は5.25%で、その差は実に2.67ポイントです。

さらに、日本介護クラフトユニオン(NCCU)の「2025年賃金実態調査」では、月給制組合員の平均月収は26万9,194円で前年比+7,462円(+2.9%)の上昇。しかし全産業平均の月額賃金34万600円との格差は7万1,406円に達し、前年の6万4,689円からさらに拡大しています。

要因3:人材流出の加速|勤続10年以上の離職が深刻

賃金格差の拡大は、介護人材の流出という形で現場に直撃しています。介護関係10団体の2025年調査によると、深刻なデータが並びます。

  • 他産業への離職者(正社員):前々年比で148%に増加
  • 他産業への離職者(パート等):前々年比で166%に増加
  • 勤続10年以上の正社員の他産業への離職:前々年比で172%に増加

全国老人保健施設協会の東憲太郎会長は「人が来ないだけではない。他産業への人材の流出が加速度的に進んでいる。このままでは介護現場はもたない」と危機感をあらわにしています。

介護職員の有効求人倍率は3.28倍、ホームヘルパーに至っては14.74倍と、全産業平均の1.25倍を大きく上回っており、人手不足は深刻度を増すばかりです。

2026年6月の臨時改定で何が変わる?|処遇改善加算の拡充内容

政府はこの事態に対応するため、2026年6月に介護報酬の臨時改定(期中改定)を実施します。通常3年に1度の改定サイクルを前倒しする異例の措置です。

2025年12月〜2026年5月:補正予算による賃上げ支援

まず、2025年度補正予算として1,920億円が計上され、2025年12月〜2026年5月の半年間、以下の賃上げ支援が実施されています。

支援内容対象月額
介護従事者への幅広い賃上げ支援処遇改善加算取得事業所の介護従事者+1.0万円
協働化等に取り組む事業者への上乗せ連携強化・生産性向上に取り組む事業所の介護職員+0.5万円
職場環境改善支援(人件費充当時)職場環境改善に取り組む事業所の介護職員+0.4万円

合計で最大月1.9万円の賃上げが可能となる設計です。

2026年6月〜:介護報酬の臨時改定

補正予算の期間終了後、2026年6月からは介護報酬の臨時改定に移行します。介護報酬を2.03%引き上げる方針で、2024年度改定の1.59%を上回る水準です。

臨時改定での処遇改善の骨格は以下のとおりです。

項目内容月額
介護従事者への賃上げ処遇改善加算の対象を介護職員→介護従事者に拡大+1.0万円(+3.3%)
生産性向上・協働化への上乗せ取り組む事業者の介護職員対象+0.7万円(+2.4%)
定期昇給見込み+0.2万円

合計で介護職員について最大月1.9万円(+6.3%)の賃上げを実現する措置となります。

臨時改定の注目ポイント

今回の臨時改定には、従来にはない重要な変更点がいくつかあります。

  • 処遇改善加算の対象拡大:従来の「介護職員」から「介護従事者」全般に対象が広がり、看護師やリハビリ職なども含まれるようになります
  • 新たなサービスへの加算新設:これまで処遇改善加算の対象外だった訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援等にも処遇改善加算が新設されます
  • 生産性向上が要件に:上乗せ加算の取得には、データ連携システム(ケアプラン連携システム等)の導入が条件となります

1.9万円の賃上げで格差は埋まるのか

率直に言えば、月1.9万円の賃上げでは8.2万円の格差解消には程遠いのが現実です。しかも「最大」1.9万円であり、すべての介護職員がこの金額を受け取れるわけではありません。

NCCUの村上久美子副会長は「他産業では今年の春闘で、一段と大幅な賃上げが進む見通し。賃金格差が一段と拡大してしまう懸念が強い。介護職員のさらなる賃上げ、とりわけ基本給の引き上げなど賃金体系の抜本転換を急ぐべき」と指摘しています。

実際、2026年春闘での全産業の賃上げ率は第3回集計で5.09%(中小5.00%)と3年連続で5%超えを記録しています。介護職の最大6.3%の賃上げ率はこれを上回りますが、もともとの基本給が低いため、金額ベースでの格差縮小には限界があります。

転職者が今すぐ確認すべき5つのポイント

賃金格差の現実を踏まえたうえで、介護業界での転職や就職を検討する方が押さえておくべきポイントを整理します。

1. 処遇改善加算の取得状況を必ず確認する

2024年の改定で処遇改善加算は4段階に再編されました。新加算I(最上位)を取得している事業所では、加算率が最も高く、職員への還元額も大きくなります。求人票や面接時に「どの区分の加算を取得しているか」を確認しましょう。2026年6月の臨時改定では加算率がさらに引き上げられるため、上位区分を取得している事業所ほど恩恵が大きくなります。

2. 「生産性向上・協働化」に取り組む事業所を選ぶ

臨時改定では、生産性向上や協働化に取り組む事業所の介護職員に対して月0.7万円の上乗せ加算が設けられます。ICT機器の導入やケアプラン連携システムを活用している事業所は、追加の賃上げを受けられる可能性が高いと言えます。施設見学時にテクノロジー活用の状況を確認するのも有効です。

3. 資格取得で年収アップを狙う

厚労省の令和6年度介護従事者処遇状況等調査によると、保有資格による給与差は明確です。

保有資格平均給与(月額)無資格との差
無資格約27万円
介護福祉士約33万円+約6万円
ケアマネジャー約37万円+約10万円

介護福祉士の資格を取得するだけで、月額約6万円の差が生まれます。格差が縮まらない環境だからこそ、自分のスキルで給与を底上げする戦略が重要です。

4. 勤続年数による昇給を見据える

同調査では、勤続年数による給与差も確認されています。

  • 勤続1〜4年:月額31.2万円
  • 勤続5〜9年:月額33.6万円
  • 勤続10年以上:月額35.9万円

勤続10年以上では1〜4年目と比べて約4.7万円の差があります。昇給制度が明確な事業所を選ぶことで、長期的な収入アップが見込めます。

5. 施設形態・地域による賃金差を把握する

施設形態によっても賃金水準は大きく異なります。一般的に、特別養護老人ホームや介護老人保健施設は夜勤手当等もあり比較的高い水準にある一方、通所系サービスや訪問系サービスでは低めの傾向があります。また、都市部と地方でも賃金差があるため、地域の相場を把握したうえで転職先を検討しましょう。

自分に合った働き方を見つけよう

介護業界での転職を考えているなら、まずは自分の適性や希望条件を整理することが大切です。働き方診断で、あなたに合った介護の働き方を見つけてみませんか?

出典・参考資料

まとめ|格差の現実を知り、戦略的にキャリアを選ぶ

介護職と他産業の賃金格差8.2万円という数字は、介護業界が構造的に抱える課題の象徴です。政府は臨時改定や補正予算で対策を講じていますが、民間企業の賃上げペースに追いつくには至っていません。

しかし、悲観ばかりする必要はありません。重要なのは、この状況を正しく理解したうえで戦略的にキャリアを設計することです。

  • 処遇改善加算の上位区分を取得している事業所を選ぶ
  • 介護福祉士などの資格取得でベースアップを図る
  • ICT活用や生産性向上に積極的な事業所で追加加算の恩恵を受ける
  • 昇給制度が明確な事業所で長期的な収入増を狙う

2026年6月の臨時改定は、介護業界にとって新たな転機となります。制度変更のタイミングだからこそ、自分のキャリアと働き方を見直す絶好の機会です。

あなたに合った介護の働き方を診断

「自分にはどんな施設が合っている?」「今の給与は適正?」——そんな疑問をお持ちなら、働き方診断をお試しください。あなたの経験や希望に合った働き方の方向性が見えてきます。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

続けて読む

このテーマを深掘り

関連ニュース