エイジフレンドリーシティとは

エイジフレンドリーシティとは

WHOが2007年に提唱した「高齢者にやさしいまち」の概念。屋外環境・交通・住宅・社会参加など8領域で街の高齢化対応を評価する国際的フレームワーク。秋田市・宝塚市・神奈川22市町など日本の加盟自治体の取り組みも解説。

ポイント

この記事のポイント

エイジフレンドリーシティ(Age-Friendly City)とは、WHO(世界保健機関)が2007年に提唱した「高齢者にやさしいまち」を実現するためのフレームワーク。屋外環境・交通・住宅・社会参加・市民参加など8つの領域から街の高齢化対応を評価し、高齢者が活動的・自立的に暮らせる都市づくりを目指す国際的な取り組みです。2010年に発足したグローバルネットワーク(GNAFCC)には世界60ヶ国・1,705都市が参加し(2025年4月現在)、日本では秋田市・宝塚市・神奈川県内22市町などが加盟しています。

目次

エイジフレンドリーシティの概要

エイジフレンドリーシティ(Age-Friendly City and Community:AFCC)は、世界的な高齢化と都市化が同時進行するなかで、街そのものを高齢者の生活実態に合わせて作り直す必要があるという問題意識から、2007年にWHOが提唱した政策フレームワークです。

「歳を取ることで街から疎外されない」「高齢でも自分の力で外出し、社会と関わり、医療や介護にアクセスできる」状態を目指すもので、単なるバリアフリー設計にとどまらず、交通・住宅・コミュニケーション・社会参加・市民参加・尊厳ある扱いまで含めた都市の総合力を評価します。

2010年にはWHOが「グローバルネットワーク(Global Network for Age-friendly Cities and Communities:GNAFCC)」を発足。加盟都市は行動計画の策定・実施・評価サイクルを公約として運営します。2025年4月時点で世界60ヶ国・1,705市町村が参加しており、日本国内では2011年に秋田市が初めて加盟、その後宝塚市、神奈川県内22市町などが続いています。

日本は世界最速で超高齢社会に突入したため、AFCCの取り組みは介護政策・地域包括ケアシステム・スマートシティ構想などとも接続し、自治体経営の重要テーマとして注目されています。

WHOが定めるエイジフレンドリーシティの8領域

WHOはエイジフレンドリーシティの評価指標として、互いに重なり合う8つの領域(ドメイン)を示しています。加盟都市はこの8領域を参考に、自地域の課題を洗い出し、行動計画を策定します。

  1. 屋外スペースと建物(Outdoor spaces and buildings) — 公園・歩道・公共施設・トイレ・ベンチ・段差・夜間照明など、高齢者が安全に外出できる物理環境。
  2. 交通機関(Transportation) — バス・タクシー・コミュニティ交通・運転免許返納後の移動手段、低床車両、運賃割引、停留所までの距離。
  3. 住居(Housing) — 高齢期の住み替え、サービス付き高齢者向け住宅、改修補助、住み慣れた家に長く住み続けるための支援。
  4. 社会参加(Social participation) — 趣味・スポーツ・学習・宗教活動・世代間交流など、孤立を防ぎ社会的つながりを保つ活動。
  5. 尊敬と社会的包摂(Respect and social inclusion) — 高齢者を「お荷物」「弱者」ではなく地域の資源と位置づけ、メディアや教育で適切に表象する。
  6. 市民参加と雇用(Civic participation and employment) — ボランティア・有償就労・地域活動への参加機会、シルバー人材センター、定年後の再雇用。
  7. コミュニケーションと情報(Communication and information) — 高齢者にも届く広報、文字サイズ、デジタル格差対策、防災情報の確実な伝達。
  8. 地域社会の支援と保健サービス(Community support and health services) — 在宅医療・訪問介護・地域包括支援センター・予防・健康増進プログラムの利用しやすさ。

8領域は独立した「項目」ではなく、相互に関連する都市システムとして設計されています。例えば「住居(3)」が郊外にあれば「交通(2)」と「保健サービス(8)」への依存度が上がる、というように、ひとつの領域の改善が他に波及します。

日本の加盟都市と世界の規模

項目数値備考
世界の加盟都市数1,705市町村60ヶ国(2025年4月時点)
日本初の加盟都市秋田市2011年12月、WHOから正式承認
兵庫県宝塚市2015年加盟
神奈川県22市町2017〜2018年度に集団加盟、県がWHOアフィリエイト
WHO提唱年2007年『Global Age-friendly Cities: A Guide』刊行
グローバルネットワーク設立2010年GNAFCC発足

注目すべきは、神奈川県が「県」というメタレベルで参画し、県内22市町をまとめて推進する広域連携モデルを採っている点です。WHOから「アフィリエイト(提携先)」として認められており、自治体の集合体が県主導で動く形は世界的にも珍しい事例とされています。

一方、秋田市は1自治体として2011年から第1次・第2次・第3次行動計画を継続的に策定しており、PDCAサイクルを長期間回している日本の代表的なベンチマーク事例です。

介護現場・家族介護に活かす視点

エイジフレンドリーシティの概念は、自治体行政だけでなく、介護現場や家族介護にとっても実務的な指針になります。

  • 退院支援・在宅復帰の際 — 「住居(領域3)」「交通(領域2)」「地域社会の保健サービス(領域8)」の3点を、訪問看護師・ケアマネジャーがアセスメント項目として活用すると、生活再建のリスクを洗い出しやすくなります。
  • 家族が遠方介護を検討する際 — 親が暮らす地域が8領域でどの程度整備されているか(買い物の足、通院のしやすさ、見守りや交流の場)を点検することで、施設入居か在宅継続かの判断材料になります。
  • 介護施設の周辺環境評価 — 入居先候補の施設選びでは、施設内の設備だけでなく「街全体が高齢者にやさしいか」(散歩できる歩道、最寄り医療機関、地域行事への参加機会)を見ることで、入居後のQOLを大きく左右します。
  • 介護職のキャリア視点 — エイジフレンドリーシティ加盟自治体では、地域包括ケア・予防プログラム・社会参加事業など領域横断的な事業に介護専門職が関与する機会が増えています。地域づくりに関心がある介護職にとってはキャリアの選択肢が広がる分野です。

エイジフレンドリーシティに関するFAQ

Q. エイジフレンドリーシティとバリアフリーは何が違うのですか?

A. バリアフリーは主に物理的な障壁の除去(段差解消・手すり設置等)に焦点を当てるのに対し、エイジフレンドリーシティは物理環境に加えて社会参加・市民参加・尊厳・情報アクセス・医療介護サービスまで含めた包括的な街づくりの枠組みです。建物・設備の改修だけでなく、コミュニティのあり方や情報の届け方も評価対象になります。

Q. 自分の市町村が加盟しているか確認するには?

A. WHOのグローバルネットワーク公式サイト(Age-friendly World)の加盟都市一覧で確認できます。日本語情報は加盟自治体の公式ページ(例:秋田市「エイジフレンドリーシティの取り組み」)が分かりやすく整理されています。

Q. 加盟するとどんなメリットがありますか?

A. WHOの国際ネットワークを通じた他都市との情報共有・国際会議での事例発表機会、評価フレームワークの活用による政策の体系化、住民への高齢化対応の意思表示などが挙げられます。一方で、行動計画の策定と定期的な進捗報告が義務付けられます。

Q. WHO「エイジフレンドリーシティ」と日本の「地域包括ケアシステム」の関係は?

A. 地域包括ケアシステムは医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供する日本独自の制度で、エイジフレンドリーシティの「保健サービス(領域8)」と強い親和性があります。地域包括ケアが医療介護の供給側に重きを置くのに対し、エイジフレンドリーシティは街全体の生活環境を対象とする、より広い概念として位置づけられます。

Q. 介護家族や本人が活用するには?

A. 親や本人が住む地域でAFCC関連の事業(介護予防教室・社会参加プログラム・移動支援等)が行われていないか、自治体の高齢福祉課や地域包括支援センターに問い合わせるのが第一歩です。加盟自治体では関連事業が体系化されているケースが多いです。

この用語に関連する記事

訪問診療を家族が依頼する方法|在宅医療の始め方・主治医との連携・看取り対応まで

訪問診療を家族が依頼する方法|在宅医療の始め方・主治医との連携・看取り対応まで

訪問診療と往診の違い、在宅療養支援診療所の選び方、24時間対応の体制、医療保険の費用、訪問看護との連携、看取り対応までを厚労省データに基づき家族向けに解説します。

介護保険外サービスの選び方|混合介護・自費サービス・自治体助成の見極めガイド

介護保険外サービスの選び方|混合介護・自費サービス・自治体助成の見極めガイド

介護保険外サービス(民間自費・自治体助成・混合介護)の分類、費用相場、利用シーン別の選び方を厚労省通知に基づき解説。保険サービスと組み合わせて家族の介護負担を軽減する方法を紹介します。

デイサービスとデイケアの違いと使い分け|要介護度別の選び方・費用・送迎範囲を完全比較

デイサービスとデイケアの違いと使い分け|要介護度別の選び方・費用・送迎範囲を完全比較

デイサービス(通所介護)とデイケア(通所リハビリテーション)の違いを厚労省データで徹底比較。リハビリ職配置・医師指示書・費用・送迎範囲・利用シーン別の選び方を解説します。

在宅高齢者の転倒を防ぐ住環境改修|介護保険20万円給付の使い方と費用相場

在宅高齢者の転倒を防ぐ住環境改修|介護保険20万円給付の使い方と費用相場

在宅高齢者の転倒の約7割は居室・玄関・浴室で発生。介護保険の住宅改修費20万円給付の対象6種目を転倒予防効果と費用相場で整理し、危険箇所セルフチェックから事業者選定・申請までを家族視点で解説。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。