バーセル指数(BI)とは

バーセル指数(BI)とは

バーセル指数(Barthel Index/BI)は食事・移乗など10項目100点満点でADLを評価する指標。点数配分・FIMとの違い・ADL維持等加算での使い方を介護現場目線で解説。

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この記事のポイント

バーセル指数(Barthel Index/BI)は、食事・移乗・整容・トイレ・入浴・歩行・階段・着替え・排便・排尿の10項目を0〜15点で採点し、合計100点満点で評価するADL(日常生活動作)の指標です。「できるADL」を短時間で点数化でき、介護現場ではADL維持等加算など介護報酬の算定要件としても使われます。

目次

バーセル指数(BI)の位置づけ

バーセル指数は、1965年に米国の理学療法士マホニーとバーセルが脳卒中など慢性疾患のリハビリ評価のために開発したADL(Activities of Daily Living=日常生活動作)の評価尺度です。短時間で採点でき、合計100点満点という直感的なスケールから、半世紀以上を経た現在も日本の医療・介護現場で広く使われています。

BIは「食事」「移乗」「整容」「トイレ動作」「入浴」「歩行」「階段昇降」「着替え」「排便コントロール」「排尿コントロール」の基本的ADL(BADL)10項目を対象とします。買い物・服薬管理・電話などの応用的な動作(IADL)は含まないため、寝たきり〜中等度の介助が必要な利用者の状態把握に向いています。

採点は「できるADL」、つまり評価時点で本人が能力として行える最大水準を捉える設計です。これは普段やっている「しているADL」を見るFIMとは対照的で、BIの方が短時間で済む一方、評価者間で「どこまでが自立か」のばらつきが出やすいという特徴があります。

介護分野では2021年度介護報酬改定で創設された「ADL維持等加算」の算定要件として、利用開始月と7ヵ月目のBI値を比較する仕組みが採用されており、通所介護や特定施設で実務的に避けて通れない指標になりました。看護・リハビリ職だけでなく、介護職員初任者研修や実務者研修のカリキュラムでも触れられる基礎用語です。

10項目の点数配分(100点満点)

BIは10項目を「自立/一部介助/全介助」に分け、項目ごとに重み付けされた点数で採点します。食事・トイレ・着替え・階段昇降・排便・排尿は最大10点、移乗と歩行は最大15点と高く、整容と入浴は最大5点と低めに設定されています。下表は最も普及している標準版の配点です。

項目自立一部介助全介助
食事1050
移乗(車椅子⇔ベッド)1510/50
整容(洗面・髭剃り等)50
トイレ動作1050
入浴50
歩行(平地45m)15105/0
階段昇降1050
着替え1050
排便コントロール1050
排尿コントロール1050
合計100点満点

歩行が困難な場合は「車椅子操作(自立5点・全介助0点)」に置き換えて採点します。整容と入浴は中間点がなく「自立か全介助か」の二択になる点が他項目と異なります。

合計点で読む自立度の目安

BIは「合計点だけ」ではなく「どの項目で点が落ちているか」を読むのが本質ですが、現場の共通言語として下記のカットオフが広く使われています。

  • 100点:全自立。日常生活に介助はほぼ不要。ただし排泄や入浴の準備など環境調整が必要なケースもある。
  • 85点以上:軽度介助。声かけ・見守りが中心で、独居も状況次第で継続可能。
  • 60点:部分自立のカットオフ値。在宅生活継続の分岐点として臨床で広く参照される。
  • 40点前後:大部分介助。移乗・排泄・入浴で日常的に手を借りる状態。施設入所・サービス増量の検討タイミング。
  • 20点以下:ほぼ全介助。寝たきりや重度認知症で複数項目が0点の状態。
  • 0点:全介助。生命維持に関わる動作すべてで介助が必要。

絶対値だけでなく「前回からの変化」を見ることが重要です。たとえば合計点が同じ70点でも、入浴が0点→5点に上がり階段昇降が5点→0点に下がっていれば、状態は静的でなく変化しています。ADL維持等加算では7ヵ月の差(BI利得)を見ることで、サービスがADLの維持・改善に貢献したかを評価します。

FIMとの違い|医療はFIM、介護はBIが主流

ADL評価でBIと並ぶのがFIM(Functional Independence Measure/機能的自立度評価法)です。両者は同じADLを測る目的を持ちつつ、設計思想が大きく異なります。

比較軸バーセル指数(BI)FIM
項目数10項目18項目(運動13+認知5)
評価段階2〜3段階(0〜15点)7段階(1〜7点)
満点100点126点
評価視点できるADL(能力)しているADL(実行状況)
認知項目なしあり(理解・問題解決・記憶ほか)
評価時間5〜10分程度と短い20〜30分とやや長い
主な使用領域介護分野・回復期での要約評価医療分野・回復期リハの詳細評価

BIは項目が少なく評価段階も粗いため、短時間で全体像を掴むのに向いています。一方FIMは認知機能や社会的交流まで含めて細かく見られるため、回復期リハ病棟の入退院時評価や診療報酬の「リハビリテーション実績指数」などで採用されています。

実務的には、医療現場(特に回復期リハビリテーション病棟)ではFIM、介護現場ではBIを使う棲み分けが定着しています。介護報酬のADL維持等加算がBIを採用したことで、通所介護・特定施設ではBIの存在感がさらに増しました。

ADL維持等加算でのBI活用ステップ

通所介護・特定施設・短期入所生活介護で算定できる「ADL維持等加算」では、BIを起点に介護報酬上の加算額が決まります。流れは次の通りです。

  1. 初月にBIを測定:サービス利用開始月に10項目を採点して提出。利用開始から6ヵ月以上経過していることが対象要件。
  2. 7ヵ月目に再測定:開始月から起算して7ヵ月目に同じ10項目を採点。「7ヵ月目BI−初月BI」がADL利得の素点。
  3. 調整係数を加味:初月のBI値に応じて0〜3の調整係数を加える(重度者ほど利得が出にくいため)。
  4. 利得の平均で加算区分を判定:対象利用者の平均ADL利得が1以上3未満で加算Ⅰ(月30単位)、3以上で加算Ⅱ(月60単位)を算定(2024年度介護報酬改定)。
  5. 評価者要件を満たす:BI測定方法に係る研修を受講した職員、または厚労省マニュアル・動画で学習した者が採点する。

2026年度改定では、加算の継続と要件の精緻化が議論されており、訪問介護・訪問看護の処遇改善とも連動する形でADL評価データの活用が広がっています。事業所単位の評価データはLIFE(科学的介護情報システム)にフィードバックされ、PDCAサイクルの一部として位置づけられています。

現場でBIを使いこなす3つのコツ

BIは「測ること」自体は簡単ですが、ケア改善につなげるには採点後の活用が肝心です。

  • 項目別の動きを追う:合計点だけで「変わっていない」と判断せず、10項目それぞれを前回と比較。入浴と着替えはセットで動きやすく、トイレ動作と排泄コントロールも連動しやすいので、項目間の関係を見ると介入ポイントが見えやすい。
  • 「できる」と「している」のズレを意識:BIは能力評価のため、本人が在宅で「やっていない」動作も自立判定になり得る。家族・ケアマネと情報共有し、生活で実際にしている動作(FIM的視点)も合わせて把握すると、ケアプランがリアルになる。
  • 評価者間のばらつきを抑える:「一部介助」の解釈が職員によって違うとBI利得が不安定になる。施設内で採点ケース会議を開き、写真や動画で「何が10点で何が5点か」の合意を作っておくと、ADL維持等加算の信頼性が上がる。

看護師・リハビリ職と介護職が同じ言語でADLを語れるのがBIの最大の価値です。多職種カンファレンスではBI項目ごとに発言者を割り当てると議論が整理されやすくなります。

バーセル指数(BI)に関するよくある質問

BIは誰が採点するの?資格は必要?

明確な国家資格要件はありませんが、ADL維持等加算を算定する場合はBI測定方法に係る研修受講者、または厚労省マニュアル・動画で学習した者が採点する必要があります。実務では看護師・理学療法士・作業療法士・ケアマネジャー・介護福祉士などが担当することが多いです。

BIの最低点は0点?マイナスはある?

BIにマイナス点はありません。最低0点〜最高100点の範囲で採点します。全項目が「全介助」評価であれば合計0点となり、生命維持の介助がすべて必要な状態を示します。

BIと改訂版(Modified Barthel Index/MBI)の違いは?

標準BIは2〜3段階評価ですが、MBI(改訂版バーセル指数)は各項目を5段階で評価し満点100点に揃えた拡張版です。日本の介護報酬上の加算(ADL維持等加算)で使用するのは標準BIであり、MBIではない点に注意してください。

認知症の方のBIはどう測る?

BIには認知項目がないため、認知症が中等度以上でも身体機能が保たれていれば高得点になります。BPSDで実際にはトイレや食事の介助が必要な場合は、BIだけでは状態を捉えきれません。認知機能を含めて評価したい場合はFIMやHDS-R・MMSEを併用します。

BIは何ヵ月おきに測ればいい?

ADL維持等加算では利用開始月と7ヵ月目の2点が必須です。ケア計画上は3〜6ヵ月ごとに測定し、ケアプラン更新時の客観指標とする運用が一般的です。状態が大きく変化した時(入院後・転倒後等)は随時再測定します。

まとめ

バーセル指数(BI)は10項目100点満点という分かりやすい構造で、介護現場のADL評価の共通言語として定着しています。FIMより簡便で、ADL維持等加算など介護報酬の算定要件にも組み込まれているため、看護・リハビリ職だけでなく介護職員・ケアマネが「読み書きできる」ことが今後ますます重要になります。合計点だけでなく項目別の動きと「できる/している」の差を意識して使い、ケア改善のPDCAに活かしましょう。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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