地域共生社会とは

地域共生社会とは

地域共生社会は、制度や分野の縦割りを超えて住民が『我が事・丸ごと』で支え合う社会像。厚労省の定義、社会福祉法106条、重層的支援体制整備事業、地域包括ケアシステムとの違い、介護職・ケアマネへの実務影響を整理します。

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この記事のポイント

地域共生社会とは、制度・分野ごとの「縦割り」や「支え手・受け手」の関係を超えて、地域住民や多様な主体が「我が事」として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて「丸ごと」つながる社会像です。高齢者・障害者・子ども・生活困窮者などを一体的に支える理念で、2017年改正社会福祉法と2020年改正で創設された重層的支援体制整備事業(2021年4月施行)が法的土台となっています。

目次

地域共生社会の定義と背景

厚生労働省は地域共生社会を、「制度・分野ごとの『縦割り』や、『支え手』『受け手』という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が『我が事』として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて『丸ごと』つながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会」と定義しています(出典: 厚生労働省「地域共生社会のポータルサイト」)。

背景にあるのは、少子高齢化・人口減少・単身世帯の増加に加えて、8050問題(高齢の親と中高年の引きこもり子どもの同居)、ダブルケア(育児と介護の同時負担)、ヤングケアラー、ごみ屋敷、社会的孤立といった、従来の高齢・障害・子ども・困窮の制度枠組みでは対応しきれない複合的な生活課題が増えていることです。

これに対応するため、2016年に厚生労働省が「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部を設置し、2017年6月の「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」で社会福祉法が改正され、地域共生社会の理念と市町村の包括的支援体制整備の努力義務が初めて法定化されました(2018年4月施行)。

その後、2020年6月の社会福祉法改正で重層的支援体制整備事業(社会福祉法第106条の4)が新設され、2021年4月から市町村の任意事業として施行されています。

地域共生社会を支える4つの柱

厚生労働省は地域共生社会の実現に向けた改革骨格として、以下の4つの柱を示しています。

  • 地域課題の解決力強化: 住民の支え合い活動と公的支援を連動させ、複合的課題を「我が事」として共有する仕組みを整える。重層的支援体制整備事業や生活支援コーディネーターの配置がこれにあたります。
  • 地域丸ごとのつながり強化: 社会保障の領域だけでなく、農業・産業・教育・住まいなど分野横断で地域資源をつなぐ。共生型サービスや農福連携、就労的活動支援が代表例です。
  • 地域を基盤とする包括的支援の強化: 高齢分野で先行した地域包括ケアシステムの理念を、障害・子ども・困窮を含む全世代・全対象に普遍化する。これが地域包括ケアとの最大の違いです。
  • 専門人材の機能強化・最大活用: 介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士など、対象別に縦割りだった専門職の基礎的素養を共通化し、横断的に支援できる人材を育てる。

この4本柱の上に、後述する重層的支援体制整備事業共生型サービスという2つの具体施策が乗る構造になっています。

地域包括ケアシステムとの違い

地域包括ケアシステムと地域共生社会は混同されがちですが、対象範囲と理念の射程が異なります。地域共生社会は地域包括ケアシステムの「発展形・上位概念」として位置づけられています。

項目地域包括ケアシステム地域共生社会
対象主に高齢者(要介護者中心)高齢者・障害者・子ども・生活困窮者など全世代・全対象
根拠法介護保険法第5条第3項社会福祉法第4条・第106条の3/第106条の4
主な実装手段地域ケア会議、地域支援事業、医療介護連携重層的支援体制整備事業、共生型サービス
キーワード住まい・医療・介護・予防・生活支援の5要素「我が事・丸ごと」「縦割り解消」
到達目標住み慣れた地域で最期まで暮らせる仕組み誰もが役割と生きがいを持ち、世代と分野を超えて支え合う社会

整理すると、地域包括ケアシステムは高齢者ケアの実装モデルであり、地域共生社会はその理念を全世代・全対象に拡張した上位ビジョンです。介護現場では地域包括ケアの仕組みを土台に、障害や子ども領域とつなげる動きが地域共生社会の具体化と捉えられます。

重層的支援体制整備事業の3つの支援と流れ

地域共生社会の具体的な実装手段が、市町村が任意で実施する重層的支援体制整備事業(社会福祉法第106条の4)です。介護・障害・子ども・困窮の各分野で別々に動いていた相談支援を、3つの支援軸で一体運営するのが特徴です。

  1. 包括的相談支援(属性を問わない相談): 介護・障害・子ども・困窮の窓口を一元化し、世帯まるごと・断らない相談を実施。8050問題やダブルケアなど複合課題はここで受け止めます。
  2. 参加支援: 既存の制度的サービスでは対応できない孤立・引きこもり・就労困難などに対し、地域資源(居場所、ボランティア、就労的活動、共生型サービス)と本人をマッチングする。
  3. 地域づくりに向けた支援: 住民同士のつながりづくり、サロン、生活支援コーディネーターによる活動支援、多世代交流拠点の整備など、地域そのものを耕す支援。

3つの支援軸を貫いて、「アウトリーチ等を通じた継続的支援事業」「多機関協働事業」が機能します。アウトリーチ事業は支援につながらない人を訪問で発見し、多機関協働事業は複雑事例について介護・障害・児童・困窮・医療・地域住民を集めて支援プランを調整します。

事業の流れは「相談受付 → 多機関協働でプラン作成 → 包括的相談・参加支援・地域づくりの組み合わせで支援 → アウトリーチで継続フォロー」というサイクルで進みます。市町村は介護保険・障害福祉・子ども・困窮の従来補助金を一括交付金(重層交付金)として受け取り、縦割りに縛られずに使えるのが運営上の大きな特徴です。

介護職・ケアマネへの実務影響

地域共生社会は理念だけの言葉ではなく、介護現場の日常業務に直接影響しています。とくに次の3点は実務で意識したいポイントです。

  • 世帯まるごとアセスメントの定着: ケアマネジャーが要介護高齢者のアセスメントを行う際、同居家族のヤングケアラー・引きこもり・障害・困窮といった課題も視野に入れ、必要なら市町村の重層的支援体制整備事業(包括的相談支援)へつなぐ動きが標準化しつつあります。
  • 共生型サービスの選択肢拡大: 介護保険の通所介護・訪問介護・短期入所と障害福祉の生活介護・自立訓練等を同一事業所で運営する共生型サービスが2018年から制度化。介護職は障害分野の利用者にも対応する場面が増えており、共生型サービスを使うとサービス計画の選択肢が広がります。
  • 地域ケア会議の対象拡大: 従来は高齢者個別ケース中心だった地域ケア会議が、重層的支援体制整備事業の多機関協働事業と連動し、障害・子ども・困窮の関係者も参加する場面が増加。介護現場が地域の多職種ネットワークの結節点になることが期待されています。

一方で、財源(重層交付金の不足)、専門人材の確保、関係機関の合意形成といった運用課題も残されており、市町村ごとに進捗のばらつきが大きいのが現状です。介護職としては、自分の自治体が重層的支援体制整備事業を実施しているかを地域包括支援センター経由で確認しておくと、利用者支援の幅が広がります。

よくある質問

Q1. 地域共生社会と地域包括ケアシステムはどちらが上位概念ですか?

地域共生社会のほうが上位概念です。地域包括ケアシステムが高齢者を中心とした実装モデルなのに対し、地域共生社会はその理念を障害・子ども・困窮を含む全世代・全対象に拡張したビジョンです。厚生労働省も「地域包括ケアを普遍化したもの」と位置づけています。

Q2. 重層的支援体制整備事業はすべての市町村で実施されていますか?

いいえ、市町村の任意事業です。社会福祉法第106条の4で市町村は実施に努めるよう求められていますが義務ではなく、令和7年度時点でも全市町村のおおむね2〜4割程度の実施にとどまっています。実施状況は厚生労働省の地域共生社会ポータルサイトで公表されています。

Q3. 共生型サービスは地域共生社会の一部ですか?

はい、共生型サービスは地域共生社会を制度面で具体化したサービス類型の一つです。介護保険の指定を受けた事業所が障害福祉サービスの指定も同時に受けやすくし、高齢者と障害者を同じ事業所で支援できるようにする仕組みで、地域共生社会の「丸ごと」を事業所レベルで実装しています。

Q4. 介護職が地域共生社会の実現に関わる場面はありますか?

あります。とくに地域ケア会議や生活支援体制整備事業の協議体への参加、共生型サービス事業所での障害分野利用者対応、利用者世帯のヤングケアラー・困窮など複合課題を地域包括支援センター経由で重層的支援体制整備事業につなぐ役割が代表的です。

Q5. 地域共生社会の理念は将来の制度改正でどう発展しますか?

厚生労働省は社会保障審議会で、重層的支援体制整備事業の全国実施、専門人材の養成課程の共通化、共生型サービスの拡大、デジタル活用による地域づくりなどを検討しています。2027年の介護保険制度改正でも地域共生社会の枠組みが議論の前提となる見込みです。

まとめ

地域共生社会は、高齢・障害・子ども・困窮の縦割りを超え、地域住民が「我が事・丸ごと」で支え合う社会像です。2017年改正社会福祉法で理念が法定化され、2020年改正で重層的支援体制整備事業(2021年4月施行)という具体施策が整いました。地域包括ケアシステムを全世代に拡張した上位ビジョンであり、共生型サービスや地域ケア会議の拡張を通じて介護現場の実務にも反映されています。介護職・ケアマネは世帯まるごとアセスメントと多機関連携の起点として、この理念の実装を担う存在です。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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