
地域密着型サービスとは
地域密着型サービスは2006年介護保険法改正で創設された、市町村が指定・指導監督するサービス類型。原則として住所地市町村の住民のみが利用でき、地域包括ケアシステムの中核を担う9種類のサービスを解説します。
この記事のポイント
地域密着型サービスとは、2006年4月の介護保険法改正で創設されたサービス類型で、要介護高齢者ができる限り住み慣れた地域で生活を継続できるよう、市町村が事業者の指定・指導監督を行う9種類のサービスの総称です。原則として事業所が所在する市町村の住民のみが利用でき、地域包括ケアシステムの中核を担います。
目次
制度創設の背景と位置づけ
地域密着型サービスは、2006年(平成18年)4月の介護保険法改正により新設されたサービス類型です。改正前の介護保険サービスは、都道府県が指定する「居宅サービス」と「施設サービス」の2区分でしたが、ここに第3の柱として地域密着型サービスが加わりました。
創設の背景には、(1) 認知症高齢者の急増、(2) 単身・夫婦のみの高齢世帯の増加、(3) 大規模施設志向から「住み慣れた地域での生活継続」へのパラダイム転換、という3つの社会変化があります。介護保険法第8条第14項は、地域密着型サービスを「居宅要介護者について、その心身の状況、その置かれている環境等に応じて、当該居宅要介護者の居宅において、又は厚生労働省令で定める施設若しくは設備…において行われる…サービス」と定義しています。
都道府県指定サービスとの3つの違い
地域密着型サービスは、都道府県指定の居宅・施設サービスと以下の点で大きく異なります。
- 指定権者:都道府県知事ではなく市町村長が事業者を指定・指導監督する
- 利用対象者:原則として事業所所在地の市町村の住民に限定される(住所地市町村主義)
- 運営規模:「小規模」「身近」「顔の見える関係」を重視し、定員上限が設けられている(例:地域密着型通所介護は定員18人以下、地域密着型介護老人福祉施設は定員29人以下)
この仕組みにより、市町村は地域のニーズに応じてサービス整備計画を主体的に立案でき、地域包括ケアシステムの構築を進めやすくなりました。
地域密着型サービス全9種類の一覧
地域密着型サービスは大きく「訪問系」「通所系」「複合型(多機能型)」「居住系」「施設系」の5カテゴリ、合計9種類で構成されます。
訪問系(2種類)
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護:24時間体制で介護職員と看護職員が連携し、定期巡回と随時対応(コール対応)を組み合わせて要介護者の在宅生活を支える。2012年新設。
- 夜間対応型訪問介護:午後6時から翌朝8時までの夜間帯に、定期巡回・オペレーション・随時訪問を行う。一人暮らしや夜間の不安が大きい高齢者向け。
通所系(2種類)
- 地域密着型通所介護:利用定員18人以下の小規模デイサービス。2016年に通所介護から分離し地域密着型に移行。
- 認知症対応型通所介護:認知症と診断された人のみを対象とする小規模デイ。単独型・併設型・共用型の3タイプがある。
複合型(多機能型)(2種類)
- 小規模多機能型居宅介護:「通い」「訪問」「泊まり」を1事業所で柔軟に組み合わせる。登録定員29人以下。
- 看護小規模多機能型居宅介護(看多機):小規模多機能に訪問看護を加えた医療依存度の高い人向けサービス。2012年新設、当初は「複合型サービス」と呼ばれた。
居住系(1種類)
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム):認知症高齢者が5〜9人で共同生活を送る。家庭的な環境と地域との交流を重視。
施設系(2種類)
- 地域密着型特定施設入居者生活介護:入居定員29人以下の小規模有料老人ホーム・ケアハウス。
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護:入所定員29人以下の小規模特別養護老人ホーム。原則要介護3以上が対象。
都道府県指定サービスとの違い
介護保険サービスは「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3類型に分かれ、それぞれ指定権者と利用範囲が異なります。違いを表で整理します。
| 項目 | 居宅サービス(都道府県指定) | 施設サービス(都道府県指定) | 地域密着型サービス(市町村指定) |
|---|---|---|---|
| 指定権者 | 都道府県知事 | 都道府県知事 | 市町村長 |
| 利用対象 | 全国どこでも利用可 | 全国どこでも入所可 | 原則、事業所所在地の市町村住民のみ |
| 主なサービス例 | 訪問介護、通所介護(大規模型)、訪問看護、福祉用具貸与など | 介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院 | グループホーム、定期巡回、小多機、地域密着型通所介護など |
| 規模 | 大規模可 | 大規模可(30人以上が主) | 小規模限定(定員18〜29人以下が多い) |
| 運営推進会議 | 義務なし | 義務なし | 原則必須(地域住民・行政が参加) |
地域密着型サービスは「小さく・身近に・地域と一体で」がキーワード。サービスの質を担保するため、運営推進会議の開催やケアプランへの第三者評価導入など、独自の運営基準が設けられています。
利用するための条件と申請の流れ
地域密着型サービスを利用するには、要介護認定(または要支援認定)を受けたうえで、事業所が所在する市町村に住民票があることが原則条件となります。
利用までの基本ステップ
- 要介護認定の申請:住民票のある市町村の介護保険窓口で要介護(要支援)認定を申請する
- 認定結果の通知:認定調査・主治医意見書をもとに、要支援1〜2・要介護1〜5のいずれかが判定される(原則30日以内)
- ケアマネジャーへの相談:居宅介護支援事業所のケアマネジャーまたは地域包括支援センターでサービス選定の相談を行う
- ケアプランの作成:本人・家族の希望と心身状態をもとにケアプランを作成。地域密着型サービスは要介護度ごとに利用可否のサービスが異なるため、対象範囲を確認する
- 事業者との契約・利用開始:選択した地域密着型サービス事業者と契約し、利用がスタート
住所地特例と例外
原則として「事業所所在地の市町村住民のみ」が利用対象ですが、例外もあります。たとえば、隣接する市町村との協議が整えば、隣接市町村住民の利用が認められるケースがあります(指定の協議制度)。グループホームなどに入居して住所を移した場合、保険者は元の市町村のまま継続される「住所地特例」の適用は地域密着型サービスでは原則対象外ですが、地域密着型特定施設や地域密着型介護老人福祉施設には類似の取り扱いがあるため、転居を伴う入居の際は元市町村の介護保険担当に確認が必要です。
介護職にとっての地域密着型サービスの特徴
転職先として地域密着型サービスを検討する際、大規模施設や訪問介護事業所と比べて以下のような職場特性があります。
- 少人数ケアと顔の見える関係:定員18〜29人以下が中心のため、利用者一人ひとりに深く関われる。「家庭的な雰囲気」「最後まで看取りに関わる」を志向する人に向く
- 多職種・多役割を担う:小規模多機能や看多機では、同じ職員が「通い」「訪問」「泊まり」すべてに関わる。介護技術の幅が広がる反面、シフトや業務の柔軟性が求められる
- 運営推進会議への参加機会:地域住民・行政・利用者家族が参加する会議が定期開催され、職員も発表側に立つことがある。地域連携・プレゼン力が磨かれる
- 夜勤体制が事業所により大きく異なる:グループホーム・地域密着型特養・看多機などは夜勤あり。定期巡回や夜間対応型訪問介護は夜間帯がメイン業務。一方、地域密着型通所介護は日中業務のみ
- キャリアパスの可能性:小規模ゆえに管理者・計画作成担当者(介護支援専門員相当)への登用機会が早く回ってきやすい。認知症介護実践者研修・実践リーダー研修が必要となる職種・職位もある
「特定の利用者と長く関わりたい」「夜勤を含めて多様な介護経験を積みたい」「地域コミュニティと連携した働き方をしたい」という志向に合致しやすい職場類型です。
よくある質問
Q1. 地域密着型サービスはなぜ「住んでいる市町村」でしか使えないのですか?
地域包括ケアシステムの理念に基づき、市町村が地域の高齢者像とニーズに応じて整備計画を立てることが前提だからです。市町村ごとに保険料・整備量・対象者選定の責任を負っているため、原則として住民票のある市町村の事業所を利用する形になっています。ただし、隣接市町村との協議が成立すれば例外利用が認められる場合があります。
Q2. 9種類すべての地域密着型サービスを1つの市町村が整備しているわけではないのですか?
はい、市町村の人口規模・財政状況・高齢化率に応じて整備状況は異なります。小規模町村では「地域密着型サービスは認知症対応型共同生活介護のみ」というケースも少なくありません。各市町村の「介護保険事業計画」で整備目標を確認できます。
Q3. 介護職として転職する場合、地域密着型サービスは大規模施設と何が違いますか?
定員18〜29人以下の小規模運営が中心で、利用者・地域住民・家族との距離が近いのが特徴です。小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護では、同じ職員が「通い・訪問・泊まり」を担うため、介護技術の幅を広げられます。一方で夜勤・多役割を求められる事業所が多いため、働き方の希望を明確にして職場を選ぶことが大切です。
Q4. グループホーム(認知症対応型共同生活介護)はなぜ地域密着型サービスに分類されるのですか?
5〜9人を1ユニットとする小規模・家庭的環境であること、地域との交流を運営基準で義務付けていること、認知症高齢者を地域で支える理念にもとづくサービスであることなどから、2006年改正で地域密着型サービスに位置づけられました。
Q5. 看護小規模多機能型居宅介護(看多機)と小規模多機能型居宅介護の違いは?
看多機は小多機の3機能(通い・訪問・泊まり)に加えて訪問看護を提供できる点が違いです。医療依存度の高い人(がん末期・気管切開・経管栄養・在宅酸素など)にも対応でき、看護師の配置基準も小多機より手厚く設定されています。
参考資料
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/
- WAM NET「地域密着型サービス」https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/kaigo/
- 介護保険法(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
- 公益財団法人長寿科学振興財団「健康長寿ネット 地域密着型サービスとは」https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/chiiki-service/chiiki-service.html
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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