エコマップとは

エコマップとは

エコマップは利用者を取り巻く家族・社会資源・支援者との関係を1枚の図に可視化するアセスメントツール。書き方・記号・ジェノグラムとの違い・ケアマネジメントでの活用場面まで解説します。

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この記事のポイント

エコマップとは、利用者を中心に据え、家族・友人・近隣・医療機関・介護サービス事業所など本人を取り巻く社会資源と人間関係を1枚の図に可視化するアセスメントツールです。1975年に米国のソーシャルワーカーアン・ハートマンが考案し、ケアマネジメントのインテーク・アセスメント・モニタリング全段階で活用されます。関係の質(強い/弱い/葛藤)を線種で表し、フォーマル支援とインフォーマル支援を一覧化できる点が特徴です。

目次

エコマップの基本:定義と目的

エコマップ(Eco-map)は、ソーシャルワークの実践理論であるエコロジカル・パースペクティブ(生態学的視点)に基づき、利用者と環境との交互作用を視覚化するアセスメント図です。家系図を中心に家族関係を示すジェノグラムと組み合わせて使われることが多く、両者を併用することで「家族内の関係」と「家族を取り巻く社会資源との関係」の両面を同時に把握できます。

ケアマネジメントにおいてエコマップを描く目的は次の3つです。

  • 支援ネットワークの可視化:誰がどのように関わっているか、不足している支援は何かを一目で把握する
  • 多職種連携の共通言語化:ヘルパー・看護師・主治医など関係職種が同じ図を見て情報を共有する
  • 利用者・家族との協働:本人と一緒に描くことで自己理解を促し、生活課題への気づきを共有する

アン・ハートマンによる提唱の経緯

エコマップは、1975年に米国ミシガン大学のソーシャルワーク研究者アン・ハートマン(Ann Hartman)が、児童福祉の家族アセスメント手法として論文「Diagrammatic Assessment of Family Relationships」で発表したのが始まりです。家族療法やシステム理論を背景に、利用者と環境を1枚の図で表現する道具として急速に普及し、現在では介護・障害・児童・保健領域のソーシャルワーク実践で世界的に使われています。日本では1990年代以降、介護保険制度の創設と前後して日本ケアマネジメント学会などを中心に導入が進み、課題分析標準項目に基づくアセスメントの補助ツールとして定着しました。

エコマップの書き方(4ステップ)

エコマップは特別なソフトがなくても、A4用紙1枚で描けます。基本の手順は次の4ステップです。

ステップ1:中心に本人と同居家族を配置

用紙の中央に円を描き、利用者本人の名前・年齢・要介護度を記入します。同居家族がいる場合は、その円の周囲にジェノグラム(男性は□、女性は○、本人は二重線で囲む)を描き、線で結びます。

ステップ2:周辺に関係者・社会資源を配置

中心の家族円の外側に、以下のような関係者・社会資源を円で配置します。

  • フォーマル支援:訪問介護事業所、デイサービス、訪問看護、主治医、地域包括支援センターなど
  • インフォーマル支援:別居家族、親戚、友人、近隣住民、民生委員、ボランティア、自治会など

関係の濃淡を空間配置でも表現できるよう、関わりが深い相手ほど中心の近くに配置するのがコツです。

ステップ3:関係の質を線で結ぶ

本人(または家族)と各関係者を線で結び、関係の質を線種で表現します(次節で詳述)。資源の流れ(金銭・情報・感情など)に方向性がある場合は矢印を添えます。

ステップ4:日付・作成者を記入する

エコマップは時間の経過とともに変化します。作成日・作成者(ケアマネ名)・利用者氏名を必ず記入し、モニタリング時に更新版を作成して経時変化を追えるようにします。

エコマップの記号と線の意味

関係の質は線種で表します。事業所や教科書によって若干の差はありますが、日本ケアマネジメント学会など実務で広く採用されている表記は次の通りです。

  • ━━━ 実線(太線):強い関係・良好な関係。頻繁な交流があり、心理的にも支えになっている関係
  • ─── 実線(細線):通常の関係・普通の関わり。定期的に接触はあるが特別強い結びつきではない
  • ‐ ‐ ‐ 破線(点線):弱い関係・希薄な関係。連絡頻度が低い、関わりが薄い
  • /// ハッチング線(ギザギザ線):葛藤関係・ストレスのある関係。対立・不和・緊張がある
  • → 矢印:資源・情報・感情の流れの方向(片方向の支援、依存関係など)
  • ↔ 双方向矢印:相互に資源が行き来している関係

記号は事業所内で統一しておくと、多職種でエコマップを共有する際に誤解が生じません。新人ケアマネを採用したら、最初に事業所の凡例を共有することをおすすめします。

エコマップとジェノグラムの違い・併用

エコマップとよく対比されるのがジェノグラム(Genogram)です。両者は別物ですが、ケアマネ実務では併用して初めて家族と社会資源の全体像が見えます。

項目エコマップジェノグラム
主な対象利用者を取り巻く社会資源全体(事業所・友人・近隣等)利用者の家族関係(3世代程度)
表現するもの関わりの質・支援ネットワーク血縁関係・同居状況・死別・離婚など家族構造
使われる記号円・線種・矢印□(男性)・○(女性)・二重線(同居)・斜線(死別)等
主な活用場面アセスメント、社会資源マネジメント家族構造の把握、キーパーソン特定
提唱者アン・ハートマン(1975)マレー・ボーエン(1970年代に体系化)

実務では、まずジェノグラムで家族構造を整理し、その家族円の外側にエコマップで社会資源・関係者を配置するのが定番の併用パターンです。1枚の図にジェノグラム+エコマップを統合した「ファミリーマップ」として描かれることも多く、課題分析標準項目の「家族の状況」「介護力」アセスメントと直接連動します。

ケアマネジメントでの活用場面

エコマップはケアマネジメントの各段階で異なる役割を果たします。

1. インテーク・契約段階

初回面接で本人や家族から聞き取った情報をその場で簡易エコマップにまとめると、支援に関わる関係者を漏れなく把握できます。キーパーソンの特定、緊急連絡先の整理、家族の介護力評価の出発点になります。

2. アセスメント段階

課題分析標準項目(厚生労働省告示)に基づくアセスメントを行う際、「家族の状況」「介護者の状況」「社会との関わり」など対人関係に関する項目は、エコマップに落とし込むことで不足している支援資源が一目で見えます。たとえば「インフォーマル支援が極端に少ない」「主介護者が孤立している」といった構造的課題が浮き彫りになり、ケアプランの目標設定に直結します。

3. ケアプラン作成・サービス担当者会議

サービス担当者会議でエコマップを共有すると、訪問看護・訪問介護・主治医・福祉用具事業者など多職種が同じ全体像を見ながら役割分担を議論できます。「この資源は誰が橋渡しするか」「葛藤関係を持つ家族にどう介入するか」といった具体的な調整につながります。

4. モニタリング段階

モニタリング訪問のたびに更新版を作成すると、支援ネットワークの経時変化が記録できます。新しい事業所が加わった、長女との関係が改善した、近隣住民の見守りが弱まった、といった変化をエコマップ上で追跡することで、ケアプランの再アセスメントの根拠資料になります。

実務でエコマップを活かすコツ

  • 本人と一緒に描く:完成図を見せるだけでなく、面接の中で本人・家族と一緒に書き込むことで、自己理解と協働意識が高まります。
  • フォーマルとインフォーマルを色分け:フォーマル支援を青、インフォーマル支援を緑で囲むなど色分けすると、インフォーマル支援の不足が視覚的に明らかになります。
  • 葛藤関係こそ描く:「家族不和」「キーパーソンとの対立」などネガティブな関係も恐れずに記号化することで、後任ケアマネへの引き継ぎや担当者会議での意思決定に役立ちます。
  • 3か月ごとに更新:少なくとも介護認定の更新時期と合わせて作り直し、初版との差分が分かるようにファイルすると、ケアプラン変更の根拠を説明しやすくなります。
  • 個人情報の取り扱いに注意:エコマップには家族構成や近隣関係など機微情報が集約されます。事業所内の文書管理規程に従って施錠保管し、サービス担当者会議で共有する場合は同意取得を徹底します。

エコマップに関するよくある質問

Q1. エコマップは誰が書くものですか?

主にケアマネジャー(介護支援専門員)やソーシャルワーカーが、アセスメント業務の一環として作成します。事業所の方針によっては相談員や地域包括支援センター職員も書きます。利用者・家族と一緒に書くと協働性が高まり、自己理解を促す援助技術にもなります。

Q2. エコマップの作成は義務ですか?

介護保険法上の作成義務はありません。ただし課題分析標準項目に基づくアセスメントは必須であり、その補助ツールとしてエコマップは多くの居宅介護支援事業所で標準採用されています。実地指導でケアプラン根拠の説明資料として提示できると評価されることもあります。

Q3. ジェノグラムと一緒に描いた方がいいですか?

はい、推奨されます。ジェノグラムで家族構造(血縁・同居・死別など)を整理し、その外側にエコマップで社会資源を配置すると、家族と環境の両面が1枚で把握できます。1枚に統合した形式は「ファミリーマップ」と呼ばれます。

Q4. エコマップに決まったフォーマットはありますか?

厳密な統一フォーマットはありません。ハートマンの原著に近い記号体系を採用する事業所が多いものの、線種や凡例は事業所ごとに微妙に異なります。事業所内で凡例を統一し、新人入職時に共有することが現場の運用ポイントです。

Q5. デジタルツールで作れますか?

PowerPoint・Excel・Cacoo・draw.io などで作成可能で、近年は介護ソフトに作図機能が組み込まれている例もあります。ただし利用者と一緒に描く場面では、手書きの方が双方向のコミュニケーションを取りやすいというケアマネも多く、用途に応じた使い分けが現実的です。

参考資料

  • Ann Hartman「Diagrammatic Assessment of Family Relationships」Social Casework 59(8), 1978(エコマップの原典論文)
  • アン・ハートマン/ジョン・レアード著『ソーシャルワーク実践におけるファミリー・アセスメント』(邦訳)— エコマップ・ジェノグラムを体系化した実践書
  • 日本ケアマネジメント学会(ケアマネジメント実践研究の中核学会)
  • 厚生労働省「課題分析標準項目」(平成11年老企第29号 別表)— エコマップが補助する23項目のアセスメント基準
  • 介護支援専門員実務研修テキスト(一般財団法人長寿社会開発センター)— アセスメントツールの公式実務解説

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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