
エンディングノートとは
エンディングノートは、もしもの時に家族が判断・手続きを進められるよう自分の希望や情報を書き残すノート。書く内容、遺言書との法的効力の違い、人生会議(ACP)との関係、自治体配布の例、書き方のコツを公的資料をもとに解説します。
エンディングノートとはの直接回答
エンディングノートとは、自分にもしものことがあったときに備えて、家族や周囲の人が判断・手続きを進める際に必要な情報や、自分の希望・想いを一冊に書き残しておくノートのことです。書く内容は自由で、いつでも書き換えられます。ただし遺言書と違って法的な効力はなく、財産の分け方を確実に実現したい場合は別途、遺言書の作成が必要です。
目次
エンディングノートの概要と位置づけ
エンディングノートとは何か
エンディングノートとは、法務省と日本司法書士会連合会が共同で作成した冊子では「自分自身に何かあったときに備えて、ご家族が様々な判断や手続を進める際に必要な情報を残すためのノート」と説明されています。終活の代表的なツールとして広く知られ、書店でも多くの種類が市販されているほか、全国の自治体が無料で配布する例も増えています。
大きな特徴は、書く内容にも形式にも決まりがないことです。すべての項目を埋める必要はなく、書きやすいところから記入し、状況や気持ちが変わったらいつでも書き換えられます。終活のためだけでなく、突然の入院などで本人が意思を伝えられなくなったときにも、家族が「本人ならどうしたいか」を知る手がかりになります。
一方で注意したいのが、エンディングノートには遺言書のような法的効力がないという点です。書かれた内容は、あくまで家族や相続人への「お願い」や「メッセージ」にとどまります。財産を誰にどう渡すかを法的に確実にしたい場合は、エンディングノートとは別に、民法の方式に従った遺言書を用意する必要があります。役割が異なるため、両者は使い分けることが大切です。
エンディングノートに書く内容の項目
エンディングノートに書く主な内容
書く内容に決まりはありませんが、市販品や自治体配布版でよく取り上げられる項目には、次のようなものがあります。すべてを書く必要はなく、家族に知っておいてほしいことから記入していくとよいでしょう。
- 自分の基本情報:本籍・生年月日・健康保険証や年金の番号など、手続きで必要になる情報
- 資産・お金のこと:預貯金や口座、保険、不動産、借入金、年金など
- デジタル情報:携帯電話やパソコン、Webサイトのアカウント・ID、サブスクリプションなど
- 医療・介護の希望:かかりつけ医、持病やアレルギー、延命処置や終末期に望む医療・ケアの考え方
- 家族・親族・友人の連絡先:もしものときに知らせてほしい人の一覧
- 葬儀・お墓の希望:葬儀の形式や規模、納骨先、菩提寺などの希望
- ペットのこと:世話を頼みたい相手や、かかりつけの動物病院
- 大切な人へのメッセージ:家族や友人への感謝や想い、これまでの人生の記録
医療・介護に関する希望の欄は、後述する人生会議(ACP)で家族や専門職と話し合った内容を整理して書き留める場としても役立ちます。
エンディングノートと遺言書の違いの比較
エンディングノートと遺言書の違い
最も大切な違いは法的効力の有無です。遺言書は、民法で定められた方式に従って作成されていれば、誰にどの財産をどれだけ相続させるかの指定が法定相続分のルールに優先します。一方、エンディングノートに同じ内容を書いても法的効力はなく、相続人がその希望に従う義務はありません。
| 項目 | エンディングノート | 遺言書 |
|---|---|---|
| 法的効力 | なし(家族へのお願い・メッセージ) | あり(法定相続分に優先) |
| 書く内容 | 自由(医療・介護・葬儀・想いなど何でも) | 主に財産の分け方など法律で定められた事項 |
| 形式・ルール | 決まりなし。書きやすいところから自由に | 民法の方式に従う必要がある(自筆証書・公正証書など) |
| 書き換え | いつでも自由に修正できる | 方式に従った書き直しが必要 |
| 主な役割 | もしもの時に家族が困らないための情報共有 | 財産の分配を確実にし、相続争いを防ぐ |
たとえば「世話になった甥にすべての財産を残したい」とエンディングノートに書いても、ほかに法定相続人がいれば、その人が相続分を主張できます。確実に希望どおりに財産を渡したいなら、遺言書が必要です。逆に、医療・介護の希望や葬儀のこと、家族へのメッセージなどは遺言書には馴染まないため、エンディングノートが向いています。両者は対立するものではなく、補い合う関係と考えるとよいでしょう。
エンディングノートと人生会議ACPの関係
人生会議(ACP)・自治体配布との関係
エンディングノートは、近年広がっている人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)とも深く関わっています。人生会議とは、もしものときに望む医療やケアについて自分で前もって考え、家族など信頼できる人や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有しておく取り組みのことです。厚生労働省が2018年頃から愛称「人生会議」として普及を進めており、11月30日を「人生会議の日」としています。
命の危機が迫った状態になると、約7割の人が自分で医療やケアを決めたり望みを伝えたりできなくなるといわれます。そこで、話し合った内容を書き留めておく場として、エンディングノートが活用されています。エンディングノートそのものは終活全般を扱う幅広いノートですが、「医療・介護の希望」を整理する欄は、人生会議の成果を残すツールにもなります。
こうした背景から、全国の自治体が独自のエンディングノートを無料で配布する動きが広がっています。長野県伊那市の「自分ノート」、山形県酒田市の「人生会議ノート」、静岡県内各市町の「エンディングノート(ACPノート)」など、名称はさまざまです。多くは地域包括支援センターや市区町村の介護保険担当窓口で受け取れ、相談窓口の情報や書き方の手引きが付いている点が市販品にはない強みです。なお自治体版も、記入は強制ではなく法的効力を持たないものとして案内されています。
エンディングノートの書き方のコツ
完璧に書こうとすると手が止まりがちです。次のポイントを押さえると、無理なく続けられます。
- 書きやすいところから書く:最初から順番に埋める必要はありません。連絡先や趣味など、気軽に書ける項目から始めましょう。
- 一度で完成させようとしない:気持ちや状況は変わります。時々見直して、書き足したり書き換えたりするのが前提です。
- 家族に「ある場所」を伝えておく:せっかく書いても、もしものときに見つけてもらえなければ意味がありません。保管場所を家族や信頼できる人に伝えておきましょう。
- 財産の分け方は遺言書で:相続を確実にしたい内容は、エンディングノートではなく遺言書に書きます。判断に迷うときは司法書士や弁護士に相談できます。
- 元気なうちに始める:判断力があるうちに書き始めるほど、自分の意思を反映しやすくなります。
エンディングノートのよくある質問
Qエンディングノートに書いた財産の分け方は有効ですか?
いいえ。エンディングノートには法的効力がないため、財産の分け方を書いても相続人がそれに従う義務はありません。確実に希望どおり相続させたい場合は、民法の方式に従った遺言書を作成する必要があります。
Qエンディングノートと遺言書はどちらを書けばよいですか?
役割が異なるため、両方を使い分けるのがおすすめです。医療・介護の希望や葬儀のこと、家族へのメッセージなどはエンディングノートに、財産を誰にどう渡すかは遺言書に書くと、それぞれの強みを活かせます。
Qエンディングノートはどこで手に入りますか?
書店で多くの市販品が販売されているほか、全国の自治体が独自のノートを無料配布しています。多くは地域包括支援センターや市区町村の介護保険担当窓口で受け取れ、書き方の手引きや相談窓口の情報が付いていることが多いです。
Q何歳から書き始めるべきですか?
年齢の決まりはありません。判断力があり元気なうちに書き始めるほど、自分の意思を反映しやすくなります。突然の入院など若い世代にも備えとして役立つため、思い立ったときが始めどきです。
Q人生会議(ACP)とエンディングノートは何が違いますか?
人生会議は、望む医療やケアについて家族や医療・介護の専門職と繰り返し話し合い共有する「取り組み」です。エンディングノートはその話し合いの内容を含め、自分の情報や希望を書き残す「ノート」で、人生会議の成果を記録する場としても使えます。
エンディングノートの参考資料
- [1]
- [2]
- [3]
- [4]
- [5]
エンディングノートのまとめ
まとめ
エンディングノートは、もしものときに家族が困らないよう、自分の情報や医療・介護の希望、想いを自由に書き残しておくノートです。遺言書と違って法的効力はないため、財産の分け方を確実にしたいときは遺言書を、医療・介護や葬儀の希望、家族へのメッセージはエンディングノートを、と役割で使い分けるのがポイントです。人生会議(ACP)で話し合った内容を書き留める場としても役立ち、自治体が無料配布する版も増えています。書きやすいところから、元気なうちに始めてみましょう。
この用語に関連する記事

知的障害のある高齢者の介護|早期老化・ダウン症の認知症・65歳問題と支援の工夫
知的障害のある人の高齢化が進む中、介護職に求められる支援を解説。加齢に伴う早期老化やダウン症の認知症合併、障害福祉から介護保険への移行(65歳問題)、意思決定支援、多職種・家族連携のポイントを厚労省・国立のぞみの園の資料に基づき整理します。

介護保険法改正案、衆院本会議で可決|過疎地サービス基準緩和とケアマネ新類型を含む27項目の附帯決議
2026年5月26日、介護保険法・老人福祉法・社会福祉法等の改正案が衆議院本会議で可決。過疎地での運営基準弾力化、住宅型ホーム入居者向けケアマネ新類型『登録施設介護支援』の創設、有料老人ホーム登録制導入など多岐にわたる。原則2027年4月施行で参議院審議へ。

高額療養費の自己負担上限、2026年8月から段階的引き上げ|長期療養者向け「年間上限」を新設
厚生労働省は2025年12月25日、社会保障審議会医療保険部会で高額療養費の見直しを決定。2026年8月と2027年8月の2段階で月額上限を引き上げ、長期療養者向けに新たに「年間上限」を設ける。年収約650万〜770万円の現役世代では月額上限が8万100円から最終的に11万400円へ。介護費との合算自己負担への影響もあわせて整理する。

在宅高齢者の転倒を防ぐ住環境改修|介護保険20万円給付の使い方と費用相場
在宅高齢者の転倒の約7割は居室・玄関・浴室で発生。介護保険の住宅改修費20万円給付の対象6種目を転倒予防効果と費用相場で整理し、危険箇所セルフチェックから事業者選定・申請までを家族視点で解説。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。