
福祉避難所とは
福祉避難所は、災害時に高齢者・障害者・妊産婦など要配慮者を受け入れる二次的避難所。災害対策基本法に基づき市町村が指定し、特養や障害者施設が活用される。2021年改定の内閣府ガイドラインで直接避難も制度化された。
この記事のポイント
福祉避難所とは、災害対策基本法に基づき市町村が指定する避難所のうち、一般の指定避難所での生活が困難な要配慮者(高齢者・障害者・妊産婦・乳幼児等)とその家族を受け入れる二次的な避難施設です。バリアフリー化された特別養護老人ホームや障害者支援施設等が指定されることが多く、令和3年の内閣府ガイドライン改定により対象者を限定した「直接避難」も制度化されました。
目次
福祉避難所の定義と法的根拠
福祉避難所は、災害対策基本法施行令第20条の6に定められた「指定避難所」の要件を満たした施設のうち、要配慮者の良好な生活環境を確保するために必要な事項について内閣府令で定める基準に適合するものを指します。市町村長が指定し、災害時に開設・運営を行います。
2011年の東日本大震災では、一般避難所での生活に耐えられず体調を崩したり命を落とす高齢者・障害者が多数発生したことを受け、2013年の災害対策基本法改正で指定避難所制度が法定化されました。これに合わせて福祉避難所の位置づけも明確化され、内閣府は2016年に「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」を策定。令和元年台風第19号の教訓を踏まえ、2021年5月に大幅改定されています。
一般の指定避難所との違い
一般の指定避難所(学校体育館など)は、地震・水害発生直後にまず避難する一次避難所です。これに対し福祉避難所は、その後の長期的な避難生活で一般避難所では支障が出る要配慮者を受け入れる二次的避難所と位置づけられています。バリアフリー構造、専門スタッフによる介護・相談支援、車椅子対応トイレ、医療機関との連携体制など、要配慮者向けの生活環境が整備されているのが特徴です。
厚生労働省・内閣府の調査によると、令和4年12月時点で全国に約25,356か所の福祉避難所が確保されており、そのうち約22,579か所が民間施設との協定に基づくものです。多くは特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、障害者支援施設、社会福祉施設などが指定されています。
福祉避難所の対象となる「要配慮者」
災害対策基本法では「要配慮者」を「災害時において、高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者」と定義しています。福祉避難所に受け入れられるのは、原則として一般の指定避難所では生活が困難な以下のような方々と、その付き添い家族・支援者です。
- 要介護高齢者:要介護認定を受けた方、認知症で見守りが必要な方
- 身体障害者:車椅子利用者、視覚・聴覚障害者、肢体不自由の方
- 知的・精神障害者・発達障害者:環境変化により著しいストレスを受ける方
- 難病患者・内部障害者:人工透析・在宅酸素・人工肛門等の医療的ケアが必要な方
- 妊産婦・乳幼児:授乳や育児に配慮が必要なケース
- 傷病者:一般避難所での生活が難しい疾病・けがを抱える方
ただし、人工呼吸器・経管栄養・喀痰吸引など継続的・高度な医療ケアが必要な方は、福祉避難所ではなく医療機関への緊急入院が想定されます。受け入れの可否は、市町村の保健師や福祉専門職によるアセスメントで判断されます。
福祉避難所の開設と避難の流れ
福祉避難所は市町村が指定・開設の責任を負います。災害発生時の運用は次のステップで進みます。
- 平時の指定:市町村が、福祉施設・社会福祉法人等と協定を締結し、福祉避難所として指定。住民・施設に周知する。
- 災害発生・一次避難:地震・台風・水害等が発生したら、まず最寄りの一般指定避難所(一次避難所)へ避難。
- 市町村による開設判断:被害状況を踏まえ、市町村長が福祉避難所の開設を決定。協定先の施設に開設要請を行う。
- 受け入れ対象者の選定:一次避難所で市町村の保健師・福祉専門職等が要配慮者をアセスメントし、福祉避難所への移送が必要な人を選定する。
- 移送・受け入れ開始:概ね災害発生から数日以内に開設。福祉避難所では介護・相談・健康管理・食事提供等の支援が行われる。
- 受け入れ期間:原則として災害救助法が適用される期間(通常7日以内、必要に応じ延長)。長期化する場合は仮設住宅や施設入所への調整を行う。
2021年改定で制度化された「直接避難」
従来は一次避難所を経由しないと福祉避難所に入れない運用が原則でしたが、令和3年5月の内閣府ガイドライン改定で、個別避難計画に基づき特定の要配慮者があらかじめ指定された福祉避難所へ直接避難する仕組みが制度化されました。これにより、移動負担が大きい重度要介護者や障害児・者が、災害発生直後から専門的な環境で避難生活を送れるようになっています。
ただし、直接避難が認められるのは、市町村が個別避難計画で対象者と受け入れ施設を事前に指定し、施設側と合意している場合に限られます。
介護職の役割と運営上のポイント
福祉避難所として指定されている特養・老健・グループホーム等で働く介護職は、災害時に勤務先施設が避難所として開設される可能性があります。平時から次のポイントを押さえておくと、いざというときに動けます。
介護職に期待される主な役割
- 受け入れアセスメント:避難者のADL・要介護度・既往歴を素早く把握し、必要なケアを判断する
- 日常生活支援:食事・排泄・移動・更衣・口腔ケアなど通常業務と同様のケアを継続提供
- 環境調整:転倒防止のレイアウト、プライバシー確保(パーテーション・段ボールベッド等)
- 多職種連携:保健師・看護師・医師・行政職員・ボランティアと役割分担し、情報共有を密にする
- 家族・関係者対応:避難者の状況を家族・ケアマネジャー・主治医と共有する
医療提供とペット同行
福祉避難所では、市町村が医師会・看護協会・薬剤師会と連携して巡回診療や服薬管理を行う体制が想定されています。ただし高度医療機器が必要なケースは医療機関への搬送が原則です。ペット同行避難は施設の方針によって対応が分かれ、衛生面・アレルギー配慮から別室での受け入れや屋外スペース確保が必要になります。受け入れ可否は市町村・施設の防災計画で事前に整理しておくのが望ましいとされています。
個別避難計画と要支援者名簿
市町村は災害対策基本法に基づき、避難行動要支援者名簿を作成する義務があります。2021年の法改正でこの名簿に基づく個別避難計画の作成も市町村の努力義務となりました。介護事業所はケアマネジャーを通じて、利用者本人・家族・自治会・民生委員と連携し、避難先・避難方法・支援者を定める個別計画の作成支援に関わるケースが増えています。
福祉避難所に関するよくある質問
Q. 自分の地域の福祉避難所はどこで確認できますか?
A. 住んでいる市区町村の防災担当部署・福祉部署のWebサイトまたは防災計画書で公開されています。事前に協定一覧として施設名が掲載されているケースが多く、自治会・民生委員からも情報が得られます。
Q. 福祉避難所には誰でも避難できますか?
A. 原則として一般避難所での生活が困難な要配慮者とその家族が対象です。利用には市町村の保健師等によるアセスメントが必要で、健常者が自由に避難するための施設ではありません。
Q. 災害時、いきなり福祉避難所に行ってもよいですか?
A. 原則は一般指定避難所を経由します。ただし、市町村の個別避難計画で対象者として事前指定されている場合に限り、2021年改定の内閣府ガイドラインに基づく「直接避難」が可能です。
Q. 特別養護老人ホームなどの施設が福祉避難所に指定されると、入所者の生活はどうなりますか?
A. 入所者の生活継続を最優先に、別棟・別フロアなど分離可能なスペースを避難スペースとして活用するのが基本です。受け入れ可能人数も入所者の安全を踏まえて事前に協定で取り決められています。施設の業務継続計画(BCP)と一体で運用されます。
Q. 福祉避難所での滞在期間はどのくらいですか?
A. 災害救助法の適用期間が目安で原則7日以内ですが、被害規模に応じて延長されます。長期化する場合は仮設住宅・みなし仮設住宅・施設入所への移行調整が進められます。
まとめ
福祉避難所は、災害対策基本法に基づき市町村が指定する、要配慮者向けの二次的避難所です。特別養護老人ホーム・障害者支援施設等が活用され、令和3年の内閣府ガイドライン改定で個別避難計画に基づく直接避難も制度化されました。介護職にとっては、勤務先が福祉避難所に指定されている場合、BCP・個別避難計画と連動した災害時運用を平時から理解しておくことが重要です。家族に要配慮者がいる方は、住んでいる市区町村の指定状況と個別避難計画の作成支援を、ケアマネジャーや民生委員に相談してみましょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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