
福祉人材センターとは
福祉人材センターとは、社会福祉法第93条に基づき都道府県知事が都道府県ごとに一つ指定する、福祉分野に特化した無料職業紹介機関です。指定の要件、8つの業務、中央福祉人材センターとの関係、ハローワークや有料職業紹介との違いを条文で整理します。
福祉人材センターの定義
福祉人材センターとは、社会福祉法第93条に基づき都道府県知事が都道府県ごとに一つだけ指定する、福祉の仕事に特化した無料職業紹介機関です。指定を受けられるのは社会福祉法人に限られ、しかも職業安定法第33条第1項の無料職業紹介事業の許可を受けていることが条件になります。求人の紹介だけでなく、啓発、調査研究、研修、事業所への技術的援助まで担う点が、職業紹介専門の窓口とは異なります。
目次
福祉人材センターの指定要件と法律上の位置づけ
社会福祉法第93条第1項は、社会福祉事業等に関する連絡および援助を行うこと等により社会福祉事業等従事者の確保を図ることを目的として設立された社会福祉法人であって、第94条の業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、都道府県ごとに一個に限り、都道府県福祉人材センターとして指定することができると定めています。指定するのは都道府県知事です。
無料職業紹介の許可が指定の前提になっている
見落とされやすいのが第93条第2項です。都道府県知事は、申請者が職業安定法第33条第1項の許可を受けて社会福祉事業等従事者につき無料の職業紹介事業を行う者でないときは、指定をしてはならないとされています。つまり福祉人材センターは、厚生労働大臣による無料職業紹介事業の許可と都道府県知事による指定という二重の関門を通った組織です。
この構造は取消しの場面にも表れます。第98条第1項は、無料職業紹介事業について職業安定法第33条第1項の許可を取り消されたときや、許可の有効期間の更新を受けていないときには、都道府県知事は指定を取り消さなければならないと定めています。職業紹介の許可を失えば、福祉人材センターとしての地位も失う仕組みです。
実際にはどこに置かれているか
全国社会福祉協議会の説明によれば、都道府県福祉人材センターは都道府県知事の指定を受けて都道府県社会福祉協議会に設置されています。市区町村単位に置かれる福祉人材バンクは、都道府県福祉人材センターの支所という位置づけです。求人・求職の情報は「福祉のお仕事」のホームページで公開されています。
福祉人材センターの8つの業務
都道府県福祉人材センターは、当該都道府県の区域内において次の業務を行うものとされています。職業紹介はこのうちの1つに過ぎません。
- 社会福祉事業等に関する啓発活動を行うこと
- 社会福祉事業等従事者の確保に関する調査研究を行うこと
- 社会福祉事業等を経営する者に対し、基本指針に定める措置の内容に即した措置の実施に関する技術的事項について相談その他の援助を行うこと
- 社会福祉事業等の業務に関し、従事者および従事しようとする者に対して研修を行うこと
- 社会福祉事業等従事者の確保に関する連絡を行うこと
- 社会福祉事業等に従事しようとする者について、無料の職業紹介事業を行うこと
- 社会福祉事業等に従事しようとする者に対し、その就業の促進に関する情報の提供、相談その他の援助を行うこと
- 前各号のほか、社会福祉事業等従事者の確保を図るために必要な業務を行うこと
第95条は、これらの業務を行うにあたって、地方公共団体、公共職業安定所その他の関係機関および他の団体との連携に努めなければならないと定めています。ハローワークと競合するのではなく、連携する前提で設計されています。
また第95条の5により、第6号の無料職業紹介を除く業務は、厚生労働省令で定める者に一部を委託することができます。職業紹介だけは委託できない、つまりセンター自身が担うべき中核業務とされている点が読み取れます。
離職した介護福祉士等の届出
第95条の3は、介護福祉士その他厚生労働省令で定める資格を有する社会福祉事業等従事者は、離職した場合その他の厚生労働省令で定める場合には、住所、氏名その他の事項を都道府県センターに届け出るよう努めなければならないと定めています。届け出た事項に変更が生じた場合の届出も同様です。第3項では、社会福祉事業等を経営する者などに対して、この届出が適切に行われるよう必要な支援を行うよう努めることが求められています。いずれも努力義務です。
福祉人材センターとハローワーク・有料職業紹介の違い
| 比較軸 | 福祉人材センター | ハローワーク(公共職業安定所) | 有料職業紹介事業者 |
|---|---|---|---|
| 根拠法 | 社会福祉法第93条以下 | 職業安定法(第8条以下) | 職業安定法第30条 |
| 運営主体 | 都道府県知事が指定した社会福祉法人(多くは都道府県社会福祉協議会) | 国の行政機関 | 厚生労働大臣の許可を受けた民間事業者 |
| 設置数 | 都道府県ごとに一個に限る | 全国に多数設置 | 許可を受けた事業者の数だけ存在 |
| 対象分野 | 社会福祉事業等に限定 | 全産業・全職種 | 届け出た取扱職種の範囲による |
| 求人者の費用 | 無料 | 無料 | 手数料が発生する |
| 求職者の費用 | 無料 | 無料 | 原則として徴収禁止(職業安定法第32条の3第2項) |
| 職業紹介以外の機能 | 啓発、調査研究、研修、事業所への技術的援助まで担う | 職業指導、雇用保険、各種助成金の窓口 | 事業者ごとに異なる |
費用面では、求職者にとって3者に実質的な差はありません。違いが出るのは、扱う求人の範囲と、職業紹介の前後にどんな支援が付いてくるかです。福祉人材センターは研修や相談援助を同じ組織内に持っているため、資格取得や再就職の準備段階から関われる点が特徴になります。
福祉人材センターを使う場面と中央福祉人材センターの役割
社会福祉法第99条は、都道府県センターの業務に関する連絡および援助を行うこと等により都道府県センターの健全な発展を図るとともに、社会福祉事業等従事者の確保を図ることを目的として設立された社会福祉法人を、全国を通じて一個に限り、中央福祉人材センターとして指定することができると定めています。指定するのは厚生労働大臣です。全国社会福祉協議会に設置されています。
第100条が定める中央センターの業務は、都道府県センターの業務に関する啓発、2以上の都道府県にまたがる調査研究、都道府県センターの職員および社会福祉事業等従事者への研修、都道府県センター業務の連絡調整と指導援助、情報・資料の収集と提供などです。求職者を直接紹介する窓口ではなく、都道府県センターを支える機能を担っています。
どういうときに向いているか
福祉人材センターは、社会福祉法人や社会福祉協議会が運営主体の求人を扱う比率が高くなりやすい窓口です。また第94条第4号の研修と第7号の就業促進に関する情報提供・相談援助を同じ組織が持っているため、次のような場面で使いやすい特徴があります。
- 資格取得やブランクからの復帰を含めて、就業の準備段階から相談したい場合
- 福祉分野に絞って求人を見たい場合
- 都道府県内の福祉職場の状況をまとめて把握したい場合
一方、対象は社会福祉事業等に限られるため、医療機関や福祉以外の業種も視野に入れるならハローワークのほうが範囲は広くなります。1か所に絞る必要はなく、扱う求人の母集団が違う窓口として併用するのが現実的です。
福祉人材センターのよくある質問
Q利用に費用はかかりますか
かかりません。社会福祉法第94条第6号が定める業務は「無料の職業紹介事業」であり、求職者・求人者のいずれからも手数料は徴収されません。
Q福祉人材バンクとは違うものですか
全国社会福祉協議会の説明によれば、福祉人材バンクは都道府県福祉人材センターの支所として位置づけられ、市の社会福祉協議会に設置されています。別組織ではなく、同じ体系の中の窓口です。
Q都道府県に複数のセンターがありますか
ありません。社会福祉法第93条第1項は、都道府県ごとに一個に限り指定することができると定めています。中央福祉人材センターも、第99条により全国を通じて一個に限られます。
Q介護福祉士が離職したとき、届出は義務ですか
義務ではなく努力義務です。社会福祉法第95条の3は、介護福祉士その他厚生労働省令で定める資格を有する者が離職した場合などに、住所・氏名その他の事項を都道府県センターに届け出るよう「努めなければならない」と定めています。
福祉人材センターの参考資料
- [1]社会福祉法- e-Gov法令検索
第93条(指定等)、第94条(業務)、第95条(関係機関等との連携)、第95条の3(介護福祉士等の届出等)、第98条(指定の取消し等)、第99条・第100条(中央福祉人材センター)。
- [2]
- [3]
- [4]
福祉人材センターのまとめ
福祉人材センターは、社会福祉法第93条に基づき都道府県知事が都道府県ごとに一つ指定する組織で、指定の条件として職業安定法第33条第1項の無料職業紹介事業の許可を受けていることが求められます。第94条が定める8つの業務のうち職業紹介は1つで、啓発、調査研究、研修、事業所への技術的援助まで含む点が特徴です。国の行政機関であるハローワークとも、許可を受けた民間の有料職業紹介事業者とも成り立ちが異なるため、扱う求人の母集団と受けられる支援の中身で使い分けるのが実際的です。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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