
介護の採用計画の立て方【離職率からの逆算モデル】
介護施設の管理者・採用担当者向けに、年間何人採用するかを数字で決める手順を解説。令和7年度介護労働実態調査の離職率を使い、事業所規模別・サービス系型別に現員維持に必要な採用数を逆算し、歩留まりから必要応募数まで落とし込みます。
この記事のポイント
介護の採用計画は、「現員数 × 離職率 + 増員計画数」で年間の必要採用数を出し、そこに応募から入職までの歩留まりを掛け戻して必要応募数まで落とすと、数字で確定します。令和7年度の介護労働実態調査(公益財団法人介護労働安定センター、令和8年7月29日公表)では、訪問介護員と介護職員を合わせた2職種計の離職率は12.4%でした。現員30人の事業所なら、増員がゼロでも年間3.6人から3.7人を採用しないと、いまの人数を維持できない計算になります。
目次
介護施設の採用が後手に回るときの流れは、だいたい決まっています。職員から退職の申し出があり、そこで初めて求人を出し、埋まらないまま管理者が夜勤に入る。そしてまた別の職員が辞める。この繰り返しです。
令和7年度の介護労働実態調査では、従業員が不足していると答えた事業所は65.8%にのぼりました。労働者側に労働条件や仕事の負担についての悩みを聞いた設問でも、「人手が足りない」が52.3%で最も多くなっています。
この状態を抜け出す最初の一歩は、採用手法を増やすことではありません。「年間で何人採るのか」を数字で確定させることです。必要な人数が決まっていなければ、求人にいくらかけるべきかも、いつ動き出すべきかも決められません。
この記事では、公表されている離職率を使って自施設の年間必要採用数を逆算し、そこから必要応募数と月あたりの応募目標まで落とし込む手順を、5つのステップで説明します。計算式はすべて明示するので、自施設の数字を入れて計算し直せます。
なぜ「辞めてから探す」では間に合わないのか
欠員は人員配置基準に直結する
指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)では、介護職員および看護職員の総数を、常勤換算方法で入所者の数が3またはその端数を増すごとに1以上と定めています。いわゆる3対1の配置です。
この基準は「年間を通して平均的に満たしていればよい」というものではありません。割り込んだ状態が続けば、運営指導での指摘や介護報酬の減算につながります。つまり欠員は、シフトが苦しいという現場の問題である前に、経営上のリスクです。
さらに、夜勤帯の配置や加算の算定要件など、別の人員要件が重なります。基準の計算式から出た最低人数をそのまま採用目標にすると、実際のシフトは回りません。
補充には数か月かかる
退職の申し出から実際の退職日までは、就業規則にもよりますが1か月から2か月程度が一般的です。一方で、求人を出して応募が集まり、面接、内定、入職までを終えるにはそれ以上かかることも珍しくありません。辞めると分かってから動き始めれば、空白期間はほぼ確実に生まれます。
採用計画とは、この時間差を先に埋めておく仕組みのことです。「誰が辞めるか」は予測できませんが、「毎年おおよそ何人辞めるか」は、過去の実績と公表統計から見積もれます。
欠員が次の離職を呼ぶ
欠員が出た職場では、残った職員の負担が増えます。前述のとおり、労働者側の悩みの1位は「人手が足りない」でした。1人抜けたことが次の1人の離職理由になる、という連鎖が起きます。
後述のステップ5で見るように、この連鎖に入った事業所と、入っていない事業所とでは、必要な採用数が年間で2倍近く違います。採用計画は、採用の話であると同時に、この連鎖を断つための予防策でもあります。
ステップ1:現状把握で棚卸しする4つの数字
計画の精度は、最初に集める数字の精度で決まります。以下の4つを、職種別に洗い出します。
1. 現員数(職種別・常勤換算と実人数の両方)
人員配置基準は常勤換算で判定しますが、シフトを組むのは実人数です。両方を持っておきます。あわせて、産前産後休業・育児休業・長期の私傷病休職に入っている人を「在籍しているが稼働していない人数」として別枠で数えます。ここを現員に含めたままにすると、計画が最初から数人分ずれます。
2. 自施設の離職率(過去3年分)
全国平均を使う前に、自施設の実測値を出します。介護労働実態調査と同じ定義で計算すれば、全国平均と直接比べられます。
離職率 = 1年間の離職者数 ÷ 1年前時点の在籍者数 × 100
1年前時点の在籍者数 = 現在の在籍者数 - 1年間の採用者数 + 1年間の離職者数
この2つ目の式は、1年前の名簿が残っていなくても計算できるようにするためのものです。同じ考え方で採用率も出せます。
採用率 = 1年間の採用者数 ÷ 1年前時点の在籍者数 × 100
増減率 = 採用率 - 離職率
単年だと数人の増減で率が跳ねるので、3年分を並べて平均を見ます。特に現員が20人を下回る事業所では、1人の離職で離職率が5ポイント動きます。
3. 年齢構成
29歳以下、30歳代、40歳代、50歳代、60歳から64歳、65歳以上の6区分で人数を数えます。後述するとおり、年齢階層によって離職率は大きく違うため、同じ人数規模でも構成が違えば必要採用数が変わります。
4. 資格保有状況と資格要件のひもづけ
介護福祉士、実務者研修修了者、初任者研修修了者、無資格者の内訳を出します。あわせて、サービス提供体制強化加算などの加算を算定している場合は、その要件を満たすために必要な有資格者数を書き出します。「人数は足りているが有資格者比率が要件を割る」という形の欠員は、単純な人数管理では見えません。
棚卸しシートの型
| 項目 | 介護職員 | 看護職員 | 生活相談員 | 介護支援専門員 |
|---|---|---|---|---|
| 現員(実人数) | ||||
| 現員(常勤換算) | ||||
| 休職・育休中 | ||||
| 直近1年の離職者数 | ||||
| 直近1年の採用者数 | ||||
| 自施設の離職率 | ||||
| 29歳以下の人数 | ||||
| 介護福祉士等の有資格者数 |
【独自試算】現員を維持するだけで、年間何人採用が必要か
ここが本記事の中心です。公表されている離職率を使って、「増員ゼロ、いまの人数を維持するだけ」に必要な年間採用数を逆算します。式はひとつだけです。
現員維持に必要な年間採用数 = 現員数 × 離職率
使う離職率は、公益財団法人介護労働安定センター『令和7年度介護労働実態調査』(令和8年7月29日公表)の公表値です。同調査の離職率は、訪問介護員と介護職員を合わせた2職種計で、対象期間は2024年10月1日から2025年9月30日までの1年間。定義は「1年間の離職者数 ÷ 2024年10月1日時点の在籍者数 × 100」です。2職種計の全国平均は、採用率14.6%、離職率12.4%、増減率2.2%でした(回答事業所7,246)。
試算1:事業所の規模区分で見る
同調査は、介護サービスに従事する従業員数の規模区分ごとにも離職率を公表しています。全国平均の12.4%を一律に当てるより、自施設が属する規模区分の値を使うほうが精度が上がります。
| 規模区分(2職種計) | 採用率 | 離職率 | 回答事業所数 |
|---|---|---|---|
| 4人以下 | 13.1% | 16.9% | 161 |
| 5人から9人以下 | 16.7% | 14.4% | 1,080 |
| 10人から19人以下 | 15.3% | 13.0% | 2,685 |
| 20人から49人以下 | 14.6% | 11.9% | 2,339 |
| 50人から99人以下 | 13.7% | 11.9% | 738 |
| 100人以上 | 14.5% | 13.1% | 185 |
この値を当てはめると、必要な年間採用数はこうなります。
| 現員数 | 適用した離職率 | 年間必要採用数(増員ゼロの場合) |
|---|---|---|
| 5人 | 14.4% | 0.7人 |
| 10人 | 13.0% | 1.3人 |
| 15人 | 13.0% | 2.0人 |
| 20人 | 11.9% | 2.4人 |
| 30人 | 11.9% | 3.6人 |
| 40人 | 11.9% | 4.8人 |
| 50人 | 11.9% | 6.0人 |
| 70人 | 11.9% | 8.3人 |
| 100人 | 13.1% | 13.1人 |
読み取れることが2つあります。ひとつは、離職率が最も低いのは20人から99人の層で、それより小さい事業所も大きい事業所も高いこと。もうひとつは、100人規模になると絶対数が効いてきて、年間13人の採用が必要になることです。これは月に1人以上のペースであり、「欠員が出たら募集する」という運用では絶対に追いつきません。なお、4人以下と100人以上は回答事業所数が少ないため、値の振れ幅が大きい点には注意が必要です。
試算2:サービス系型で見る
現員30人で固定し、サービス系型別の離職率を当てた場合の必要採用数です。
| 介護サービス系型 | 採用率 | 離職率 | 現員30人での年間必要採用数 |
|---|---|---|---|
| 訪問系 | 15.3% | 12.0% | 3.6人 |
| 施設系(入所型) | 13.3% | 12.1% | 3.6人 |
| 施設系(通所型) | 15.4% | 12.8% | 3.8人 |
| 居住系 | 15.8% | 13.6% | 4.1人 |
| 居宅介護支援 | 11.1% | 10.6% | 3.2人 |
主なサービス種別で見ると、離職率は介護老人福祉施設12.4%、介護老人保健施設10.7%、訪問介護11.9%、通所介護13.1%、特定施設入居者生活介護14.1%、地域密着型介護老人福祉施設14.3%、小規模多機能型居宅介護11.9%、訪問看護14.2%です。特定施設と地域密着型の特別養護老人ホームが高く、老健が低いという並びになっています。
試算3:開設からの経過年数で見る(差が最も大きい)
今回の集計でいちばん差が出たのが、介護事業を開始してからの経過年数別の離職率でした。
| 介護事業の開始後経過年数 | 採用率 | 離職率 | 現員30人での年間必要採用数 |
|---|---|---|---|
| 1年から2年未満 | 39.1% | 20.5% | 6.2人 |
| 2年から3年未満 | 30.9% | 21.4% | 6.4人 |
| 3年から4年未満 | 26.6% | 16.6% | 5.0人 |
| 4年から5年未満 | 18.6% | 16.0% | 4.8人 |
| 5年から10年未満 | 17.0% | 14.1% | 4.2人 |
| 10年以上 | 12.7% | 11.4% | 3.4人 |
開設2年目から3年目の事業所の離職率は21.4%で、10年以上の事業所の11.4%のおよそ1.9倍です。同じ現員30人でも、必要な年間採用数は6.4人と3.4人で3人の差が出ます。新規開設や新事業所の立ち上げを計画している法人は、開業初期の採用計画を既存施設と同じ前提で組んではいけない、ということになります。
試算4:年齢構成で加重する
同調査は年齢階層別の離職率も公表しています。2職種計で、29歳以下17.3%、30歳から39歳12.4%、40歳から49歳11.3%、50歳から59歳10.9%、60歳から64歳10.4%、65歳以上9.8%です。29歳以下は採用率も32.1%と突出しており、若年層は「入るのも出るのも多い」回転層になっています。
そこで、同じ現員30人の事業所を2つ想定し、年齢構成だけを変えて加重平均を取ってみます。
| 年齢階層 | 離職率 | 若手型の人数 | 期待離職 | 中高年型の人数 | 期待離職 |
|---|---|---|---|---|---|
| 29歳以下 | 17.3% | 12人 | 2.08人 | 3人 | 0.52人 |
| 30歳から39歳 | 12.4% | 8人 | 0.99人 | 5人 | 0.62人 |
| 40歳から49歳 | 11.3% | 5人 | 0.57人 | 8人 | 0.90人 |
| 50歳から59歳 | 10.9% | 3人 | 0.33人 | 9人 | 0.98人 |
| 60歳から64歳 | 10.4% | 2人 | 0.21人 | 5人 | 0.52人 |
| 合計 | - | 30人 | 4.2人 | 30人 | 3.5人 |
若手型の実効離職率は13.9%、中高年型は11.8%となり、年間必要採用数は4.2人と3.5人で0.6人の差がつきます。5年で約3人分です。人数規模が同じでも、若手を多く採ってきた施設は、そのぶん翌年以降の採用負荷が上がるという構造が数字で見えます。逆に言えば、29歳以下の定着に手を打つことは、そのまま翌年の採用数を減らす投資になります。
この試算の限界
ここで使った離職率は、全国の回答事業所の平均です。地域の労働市場、賃金水準、施設の状態によって実際の離職率は大きく振れます。あくまで自施設の実測値が出るまでの暫定値として使い、ステップ1で自施設の3年平均が出たら、そちらに置き換えてください。
ステップ2:必要採用数を確定させる(増員と配置基準を織り込む)
現員維持の数が出たら、そこに増員分と基準充足分を足して、最終的な必要採用数を確定します。
年間必要採用数 = 現員数 × 離職率 + 増員計画数 + 基準充足のための不足分
増員計画数の出し方
増員が必要になるのは、主に次の場合です。
- 入所定員や利用定員を増やす、または稼働率の目標を上げる
- 新規事業所を開設する、既存事業所に新たなサービスを併設する
- 夜勤体制を厚くする、日中の配置を増やして加算を算定する
- 時間外労働を減らすために、いまのシフトに人を足す
4つ目は見落とされがちです。残業時間の削減を目標に掲げるなら、その分の労働時間はどこかで補う必要があり、それは増員計画数です。目標だけ立てて人を足さなければ、現場は達成できません。
人員配置基準からの逆算
特別養護老人ホームの場合、介護職員および看護職員の総数は常勤換算で入所者の数を3で割った数以上です。定員60人であれば、常勤換算で20人以上になります。
基準上の必要数(常勤換算) = 入所者数 ÷ 3
基準充足のための不足分 = 基準上の必要数 - 現在の常勤換算数
ただし、この数字は最低ラインです。実際には、夜勤帯の配置、休暇取得、研修参加、急な欠勤への対応を織り込む必要があるため、実人数は常勤換算の必要数を上回ります。どれだけ上回らせるかは自施設のシフト表から出すしかありません。過去1年で「基準は満たしているがシフトが埋まらなかった日」が何日あったかを数え、その日数をゼロにするのに何人分の労働時間が要るかを計算します。
休職見込みを織り込む
年齢構成と性別構成から、翌年に産前産後休業や育児休業に入る可能性のある人数を見積もり、その期間分を実質的な欠員として計画に含めます。育児休業の取得は権利であり、それを織り込んでいない計画のほうが不備です。
職種別に分ける
採用計画は職種ごとに作ります。令和7年度調査の離職率は、介護職員12.7%、訪問介護員11.6%、看護職員14.6%、介護支援専門員9.5%、生活相談員7.8%、サービス提供責任者7.8%、機能訓練指導員にあたる理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等9.0%でした。看護職員は採用率20.8%、離職率14.6%と調査対象の7職種中いずれも最も高く、出入りが激しい職種です。逆にサービス提供責任者と生活相談員は離職率が最も低く、そのぶん欠員が出たときの補充難度は上がります。
必要応募数まで落とし込む(歩留まりの掛け戻し)
採用計画は、必要採用数で止めると使えません。「今月あと何件の応募が要るのか」まで落として初めて、日々の判断に使えます。そのために歩留まりを掛け戻します。
必要応募数 = 必要採用数 ÷(応募から面接への到達率 × 面接から内定への通過率 × 内定から入職への到達率)
月あたりの応募目標 = 必要応募数 ÷ 12
歩留まりの数値は自施設で測る
ここで重要な注意があります。介護分野の「応募から入職までの段階別通過率」について、信頼できる公的統計は見当たりません。したがって、この記事では具体的な業界平均を示しません。以下の表は、自施設の実績値を入れて使う空欄モデルです。
| 段階 | 直近1年の件数 | 通過率 | 算出方法 |
|---|---|---|---|
| 応募 | - | 求人媒体ごとの応募件数の合計 | |
| 面接実施 | 面接実施数 ÷ 応募数 | ||
| 内定 | 内定数 ÷ 面接実施数 | ||
| 入職 | 入職者数 ÷ 内定数 |
数えるのは4つの件数だけです。応募管理をしていない事業所は、まず求人媒体ごとの応募件数を月次で記録するところから始めます。歩留まりが計算できない最大の原因は、採用が下手だからではなく、記録がないからです。
計算の流れを示す例(数値はすべて仮定値)
以下の3つの通過率は、計算の流れを示すために置いた仮定値であり、業界平均でも推奨値でもありません。必ず自施設の実測値に置き換えてください。
| 項目 | 値 | 備考 |
|---|---|---|
| 年間必要採用数 | 4人 | 現員30人・離職率11.9%+増員0.4人の想定 |
| 応募から面接への到達率 | 50% | 仮定値 |
| 面接から内定への通過率 | 40% | 仮定値 |
| 内定から入職への到達率 | 70% | 仮定値 |
| 全体の通過率 | 14% | 0.50 × 0.40 × 0.70 |
| 必要応募数 | 約29件 | 4 ÷ 0.14 |
| 月あたりの応募目標 | 約2.4件 | 29 ÷ 12 |
| 必要な面接実施数 | 約15件 | 29 × 0.50 |
| 必要な内定数 | 約6件 | 15 × 0.40 |
この例では、4人採るために年間29件の応募が要ります。月に2件から3件です。ここまで落とすと、「今月の応募が0件だった」ことの意味が変わります。それは単月の不調ではなく、年間計画に対して1か月分の遅れが確定したという意味になります。
どこが詰まっているかで打ち手が変わる
- 応募数が足りない:求人の露出量と条件の問題です。チャネルの追加、掲載内容の見直し、賃金や勤務条件の見直しが打ち手になります。
- 面接に来ない:応募から連絡までの時間と、連絡手段の問題であることが多い領域です。返信を翌営業日以内にする、電話だけでなく短文の連絡手段を用意する、といった運用で変わります。
- 内定を出しても入職しない:他社との比較で負けています。提示条件、入職日の柔軟性、内定から入職までの接点の設計を見直します。
4つの数字を記録していれば、どこが詰まっているかは自動的に分かります。記録がなければ、いつまでも「求人媒体が悪いのでは」という議論から抜け出せません。
ステップ3:採用チャネルと予算配分を決める
必要応募数が出たら、それをどのチャネルで集めるかを割り付けます。ここで使えるのが、令和7年度調査の「採用活動の実施状況と、効果があったとする割合」です。
| 採用活動 | 実施している事業所の割合 | 実施した事業所のうち採用に効果があったとする割合 |
|---|---|---|
| 職員に対して友人・知人などの紹介を依頼 | 66.0% | 47.3% |
| ハローワークや福祉人材センターの担当者に相談 | 64.8% | 41.8% |
| 有料職業紹介所を活用 | 37.9% | 53.4% |
| 事業所ホームページで自事業所の魅力を発信 | 36.8% | 24.4% |
| 民間の有料求人情報サイトを活用 | 36.3% | 44.8% |
| 職場体験、職場実習の受け入れを実施 | 24.7% | 23.6% |
| 就職セミナー、採用説明会に参加・開催 | 22.3% | 26.4% |
| 過去の離職者に再雇用を打診 | 18.2% | 35.2% |
| 交流サイトを活用して自事業所の魅力を発信 | 16.3% | 27.6% |
実施率と効果率のずれが読みどころです。事業所ホームページでの発信は36.8%が実施していますが、効果があったとするのは24.4%で、実施率のわりに効果率が低い部類に入ります。逆に、過去の離職者への再雇用打診は実施が18.2%と少ないのに、実施した事業所の35.2%が効果ありと答えています。チャネル別の詳しい比較は介護の採用チャネル別「効果率」の記事にまとめています。
労働者側から見た経路も突き合わせる
同じ調査の労働者調査では、現在の法人に就職した主な経路は「友人・知人からの紹介」33.8%、「ハローワーク」19.4%、「求人情報サイト」9.6%でした。ところが勤続1年未満に限ると、「友人・知人からの紹介」29.3%、「求人情報サイト」21.3%、「ハローワーク」19.9%と、求人情報サイトの比重が大きく上がります。直近に入職した層ほど求人情報サイト経由が多い、ということです。
最大のチャネルが職員紹介であることは、事業所側と労働者側の両方の数字が一致して示しています。制度として整えるなら、報奨金の設計に法的な注意点があるため、リファラル採用(職員紹介制度)の作り方を先に確認してください。
予算の組み方
チャネル別の応募単価 = そのチャネルにかけた費用 ÷ そのチャネル経由の応募件数
必要予算 = 有料チャネルに割り付ける応募件数 × そのチャネルの応募単価
順番が大事です。まず職員紹介やハローワークなど費用のかからないチャネルで何件集まる見込みかを、過去実績から置きます。必要応募数からその見込みを引いた差分だけを、有料チャネルに割り付けます。最初から有料前提で予算を組むと、無料チャネルの改善が止まります。
なお、有料職業紹介は効果率53.4%と最も高い一方、成功報酬型が中心で1人あたりの費用は大きくなります。予算の総額ではなく、「1人採用するのにいくらかかったか」で比較しないと判断を誤ります。地域によって競合の密度も違うため、都道府県別の採用競合度の記事もあわせて確認してください。
ステップ4:年間スケジュールに落とす
年間の必要応募数を12で割っただけでは、実務では使えません。介護の採用には時期の偏りがあるからです。
介護福祉士国家試験の日程から逆算する
実務経験ルートで受験した人は、合格発表で有資格者になります。第38回介護福祉士国家試験は令和8年1月25日に筆記試験が行われ、令和8年3月16日午後2時に合格発表がありました。受験者78,469人に対し合格者54,987人、合格率70.1%です。
第39回は、受験申込の受付が令和8年7月22日から9月2日まで、筆記試験が令和9年1月31日、合格発表が令和9年3月23日の予定と公表されています。
資格取得を機に転職を考える層は、この発表前後に動きます。4月入職に間に合わせたいなら、合格発表を待ってから求人を出すのでは遅く、1月から2月のうちに接点を作っておく必要があります。逆に、3月下旬から4月にかけては有資格者の応募が増える時期でもあるため、面接の枠を空けておきます。
養成施設卒と新卒
介護福祉士養成施設の卒業者は3月卒業、4月入職が基本です。この層に接点を持つには、卒業年度に求人を出すのでは間に合いません。実習の受け入れや施設見学を、その前年度から仕込む必要があります。職場体験や職場実習の受け入れを実施している事業所は24.7%にとどまっており、実施すること自体が差別化になる余地があります。
4月1日の人員体制から逆算する
年度替わりの4月1日時点で人員配置基準を満たしている必要があります。入職には内定から1か月から2か月、選考にさらに1か月から2か月かかると見れば、遅くとも前年の11月から12月には募集を開始しておく計算になります。
月次への割り付け
次の手順で12か月に配分します。
- 年間必要応募数を12で割り、ベースの月次目標を出す
- 過去3年の離職者数を「退職月」で集計し、自施設で離職が集中する月を特定する
- その月の2か月から3か月前に応募目標を上乗せする
- 4月入職を狙う枠を、11月から2月に別建てで確保する
2つ目を一般論で決めないことが重要です。「賞与の後に辞める人が多い」といった通説はよく聞きますが、自施設に当てはまるかは実績を数えれば分かります。過去3年の退職月を並べるだけの作業です。
ステップ5:定着とセットで考える(採用数を減らす最短の方法)
採用計画の最後のステップは、定着です。定着は「採用の後工程」ではなく、翌年の採用数を決める前工程です。
定着状況で必要採用数が2倍近く違う
令和7年度調査は、従業員の定着状況の回答別に採用率と離職率を集計しています。
| 定着状況(事業所の自己評価) | 採用率 | 離職率 | 増減率 | 現員30人での年間必要採用数 |
|---|---|---|---|---|
| 定着率が低く困っている(回答事業所1,497) | 19.5% | 19.0% | 0.5% | 5.7人 |
| 定着率は低いが困っていない(500) | 19.1% | 16.3% | 2.8% | 4.9人 |
| 定着率は低くない(5,185) | 12.5% | 9.7% | 2.8% | 2.9人 |
「定着率が低く困っている」事業所は、採用率19.5%と大量に採っているにもかかわらず、増減率は0.5%しかありません。採っては辞められ、また採るという回転に人手と費用を投じて、ほとんど純増していない状態です。一方「定着率は低くない」事業所は、12.5%の採用で増減率2.8%を確保しています。少ない採用で人が増えています。
現員30人に換算すると、年間必要採用数は5.7人と2.9人。約2.8人の差です。採用チャネルを増やすより、離職率を下げるほうが必要採用数への効き方は大きい、というのが数字の示すところです。
採用に効く施策と、定着に効く施策は違う
同じ調査で、方策を実施している事業所に「採用に効果があったか」「職場定着に効果があったか」を別々に聞いています。
| 方策 | 実施率 | 採用に効果があった | 職場定着に効果があった |
|---|---|---|---|
| 賃金水準の向上 | 61.4% | 38.4% | 51.6% |
| 有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり | 75.4% | 28.6% | 57.9% |
| 人間関係が良好な職場づくり | 74.2% | 22.4% | 54.6% |
採用に効いたとする割合の1位は賃金水準の向上(38.4%)、定着に効いたとする割合の1位は休暇の取りやすさと勤務日時の変更しやすさ(57.9%)です。順位が入れ替わっています。
ここに実務上の含みがあります。賃上げには原資が要りますが、休暇の取得しやすさと勤務日時の変更しやすさは、シフト設計と運用の問題です。原資が小さくても着手でき、しかも定着への効果率は最も高く、採用にも28.6%が効果ありと答えています。予算をすぐに増やせない事業所が最初に手をつけるべき領域はここになります。
離職1人あたりの損失を自施設で計算する
「採用単価より離職コストのほうが大きい」とよく言われますが、離職1人あたりの損失額について公的な統計はありません。自施設で組み立てます。
離職1人あたりの損失 = 採用コスト(求人費または紹介手数料)+ 教育コスト(指導者の時間 × 時間単価 + 研修費)+ 欠員期間の追加コスト(時間外手当・派遣・応援)+ 立ち上がりまでの生産性の差
この額を仮にAとすると、離職率を下げたときの効果はこう表せます。
年間の削減額 = 現員数 × 下げた離職率のポイント数 ÷ 100 × A
現員30人の施設が離職率を12%から10%に下げると、年間の必要採用数は3.6人から3.0人へ0.6人減ります。Aが自施設の計算で仮に50万円だった場合、年間30万円、5年で150万円です。この50万円は例示のための仮定値であり、必ず自施設の実額に置き換えてください。重要なのは金額そのものではなく、離職率の改善が採用予算の削減として定量化できる、という点です。
通勤圏の設計も定着に効く
労働者調査で、現在の法人に就職した理由の1位は「通勤が便利だから」で51.8%でした。勤続1年未満でも52.1%とほぼ同じです。求人の配信範囲を広げるより、通勤しやすい範囲に絞って露出を厚くするほうが、応募の質と入職後の定着の両方に効く可能性があります。
採用計画の前提になる制度を確認する
採用計画は、提示できる賃金水準が決まらないと組めません。介護分野は公定価格で動くため、制度側の枠組みを先に押さえます。
令和8年度介護報酬改定と処遇改善加算の拡充
厚生労働省は、令和9年度介護報酬改定を待たずに、令和8年度に期中改定を実施しました。改定率は全体でプラス2.03%で、内訳は処遇改善分がプラス1.95%、基準費用額(食費)の引上げ分がプラス0.09%です。
処遇改善の中身は次のとおりです。
- 介護職員のみならず介護従事者を対象に、幅広く月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置
- 生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員を対象に、月0.7万円(2.4%)の上乗せ措置
- 合計で、介護職員について最大月1.9万円(6.3%)の賃上げが実現する措置(定期昇給0.2万円込み)
- 処遇改善加算の対象を介護職員から介護従事者に拡大
- これまで対象外だった訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援等に処遇改善加算を新設
加算の名称は「介護職員等処遇改善加算」で、令和8年6月からの拡充です。採用計画への意味は2つあります。ひとつは、自法人がどの加算区分を取得するかで職員に配分できる額が変わるため、求人票に書く賃金を決める前に区分を確定させる必要があること。もうひとつは、加算の配分ルールを先に決めておかないと、入職後に「聞いていた金額と違う」という齟齬が生まれることです。
加算率や算定要件の詳細は改定ごとに変わります。金額を採用予算に織り込む前に、厚生労働省の該当ページで最新の告示と通知を確認してください。
助成金は年度ごとに変わる前提で扱う
雇用管理の改善や機器の導入に使える雇用関係助成金は複数ありますが、コースの新設・廃止・要件変更が毎年度あります。過去には、案内が出ていたコースが年度末で廃止された例もあります。
したがって、助成金の受給見込み額を先に採用予算に組み込むのは避けたほうが安全です。まず助成金なしで成立する予算を組み、受給できたら上乗せ、という順序にします。申請の可否と現時点の取扱いは、厚生労働省の助成金のページと、管轄の都道府県労働局に確認してください。
採用計画を機能させるための実務メモ
- 職種別に計画を分ける。離職率は職種でまったく違います。看護職員は採用率20.8%・離職率14.6%と調査対象7職種で最も高く、サービス提供責任者は採用率8.0%・離職率7.8%で最も低い水準です。看護職員は「常に募集している」前提の設計、サービス提供責任者は「めったに空かないが空くと痛い」前提の後継者育成という具合に、打ち手が変わります。
- 応募件数を月次で記録する。歩留まりが計算できない最大の原因は記録がないことです。求人媒体ごとの応募件数、面接実施数、内定数、入職者数の4つだけで足ります。表計算ソフト1枚で始められます。
- 過去の離職者名簿を残しておく。過去の離職者への再雇用打診は、実施している事業所が18.2%と少ない一方、実施した事業所の35.2%が採用に効果ありと答えています。退職時の記録を残していない事業所は、この打ち手を使えません。
- 29歳以下の定着に絞って手を打つ。29歳以下の離職率は17.3%で全年齢階層中最も高く、採用率も32.1%と突出しています。ここを1ポイント下げる効果は、他の年齢層より大きく出ます。
- 計画は年1回作って終わりにしない。四半期ごとに、応募件数の累計が計画に対して何割かを確認します。9月末で年間必要応募数の半分に届いていなければ、その時点で下期の打ち手を変えます。年度末に「採れませんでした」と報告するのは計画ではありません。
- 新規開設は別勘定にする。開設2年目から3年目の事業所の離職率は21.4%で、10年以上の11.4%の約1.9倍です。既存施設と同じ離職率で計画を組むと、初年度から破綻します。
よくある質問
Q. 自施設の離職率が分からない場合、全国平均を使ってよいですか
暫定値としては使えます。ただし全国平均は回答事業所の平均であり、地域や施設の状態で実際の値は大きく振れます。ステップ1の式で過去3年の実測値を出し、平均が出たらそちらに置き換えてください。3年分の名簿がなくても、在籍者数・採用者数・離職者数の3つが分かれば計算できます。
Q. 増員の予定がない年でも採用計画は必要ですか
必要です。増員ゼロでも、離職した人数分は採用しないと現員が減ります。令和7年度調査の全国平均で言えば、現員30人なら年間3.6人前後です。この「維持のための採用」を計画に書いていないと、欠員が出るたびに単発の募集を繰り返すことになり、結果として1人あたりの採用コストが上がります。
Q. 歩留まりの通過率はどう決めればよいですか
自施設の直近1年の実績から計算します。応募件数、面接実施数、内定数、入職者数の4つを数えるだけです。記録がない場合は、今日から記録を始めてください。この記事で例に使った50%・40%・70%は計算の流れを示すために置いた仮定値で、業界平均ではありません。そのまま使わないでください。
Q. 現員が10人程度の小規模事業所でも計算する意味はありますか
あります。むしろ小規模ほど1人の欠員が人員配置基準に直結します。ただし率で管理すると振れが大きいため、率ではなく実人数で管理してください。現員10人・離職率13.0%なら年間1.3人です。「2年に3人」というペースを共有しておくだけでも、募集開始の判断が変わります。
Q. 採用計画はいつ作ればよいですか
年度計画に合わせるなら、遅くとも前年度の10月から11月です。4月1日時点で人員配置基準を満たすには、選考と入職までのリードタイムを逆算して11月から12月には募集を始める必要があるためです。すでに年度が始まっている場合は、残り月数で割り直して今日から始めてください。
Q. 計画した人数が採れなかったときはどうしますか
まず歩留まりのどこで詰まったかを特定します。応募が集まらなかったのか、面接に来なかったのか、内定を辞退されたのかで打ち手はまったく違います。そのうえで、不足分は翌年に繰り越さず、当年度中の増員計画の見直し(サービス提供体制の調整)か、定着施策への振り替えで埋める判断をします。採れなかった分をそのまま翌年の目標に足すと、翌年の計画も未達になります。
参考文献・出典
- [1]令和7年度「介護労働実態調査」結果の概要について- 公益財団法人 介護労働安定センター
令和8年7月29日公表。2職種計の採用率14.6%・離職率12.4%、年齢階層別離職率、従業員の過不足状況、採用および職場定着に効果があった方策
- [2]介護労働実態調査(事業所調査結果報告書・労働者調査結果報告書)- 公益財団法人 介護労働安定センター
事業所規模別・介護サービス系型別・介護事業開始後経過年数別・定着状況別の採用率と離職率、採用率と離職率の算定式
- [3]
- [4]
- [5]指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)- 厚生労働省
介護職員および看護職員の総数を常勤換算方法で入所者の数が3またはその端数を増すごとに1以上とする人員基準
- [6]
- [7]
まとめ
介護の採用計画は、次の3本の式に自施設の数字を入れるところから始まります。
1. 年間必要採用数 = 現員数 × 離職率 + 増員計画数 + 基準充足のための不足分
2. 必要応募数 = 年間必要採用数 ÷(応募から面接への到達率 × 面接から内定への通過率 × 内定から入職への到達率)
3. 月あたりの応募目標 = 必要応募数 ÷ 12
令和7年度介護労働実態調査の離職率を当てはめると、現員30人の事業所で年間3.6人から3.7人、現員100人なら13.1人前後が、増員ゼロでも必要になる採用数でした。開設2年目から3年目の事業所ならこれが6.4人(現員30人換算)まで上がり、定着に困っている事業所なら5.7人に上がります。同じ人数規模でも、事業所の状態によって必要な採用数は2倍近く違います。
そして、この数字を下げる最も効く方法は、採用チャネルを増やすことではなく離職率を下げることでした。定着率が低くないと答えた事業所の離職率は9.7%で、困っていると答えた事業所の19.0%の半分近くです。定着に効果があったとする割合が最も高かった方策は、休暇の取得と勤務日時の変更をしやすい職場づくり(57.9%)で、これは賃上げの原資がなくても着手できる領域です。
まずやることは1つです。過去1年の在籍者数、採用者数、離職者数、そして応募件数・面接実施数・内定数を数えてください。この6つの数字が揃えば、年間計画は今日中に作れます。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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