介護の採用面接で見るべき評価軸とNG質問|面接官ガイド
介護職向け

介護の採用面接で見るべき評価軸とNG質問|面接官ガイド

介護施設の採用担当者・面接官向けに、離職理由データから逆算した評価軸の作り方、ケース別の質問例、公正な採用選考で避けるべきNG質問の言い換え、求人票との条件すり合わせまでを実務目線で解説します。

ポイント

この記事のポイント

介護施設の採用面接でまずやるべきことは、応募者を見抜く技術を磨くことではなく、自施設が何を評価するのかを先に決めることです。令和7年度介護労働実態調査では、直前の介護関係の仕事を辞めた理由の最多が「職場の人間関係に問題があったため」で27.3%、次いで「勤務先の事業理念や運営のあり方に不満があったため」が21.0%でした。定着に効く評価軸はこの離職理由から逆算できます。同時に、厚生労働省が示す「就職差別につながるおそれがある14事項」に触れない質問設計が必要で、介護の面接では家族や家庭環境への質問が特に紛れ込みやすい点に注意が必要です。

目次

介護の採用は、応募者を集める段階よりも、面接から入職後の数か月に落とし穴が集中します。面接官が変わるたびに評価が変わる、人手が足りないので途中から基準が甘くなる、場を和ませるつもりで家族の話を振ってしまう。どれも悪意なく起きますが、結果は同じで、入職後に「思っていたのと違う」が双方から出て、数か月で欠員が戻ってきます。

この記事は、介護施設の管理者・採用担当者・面接官が、自施設の面接を設計し直すためのものです。公的データから評価軸を逆算する手順、そのまま使えるケース別の質問例、法令上そもそも聞いてはいけない事項とその言い換え、面接では分からない部分の埋め方、そして入職後のギャップを減らす条件すり合わせまでを、実務の順番どおりに並べています。応募者向けの面接対策ではなく、面接をする側の設計図として読んでください。

介護の面接は「見抜く力」ではなく「評価軸」で決まる

面接の精度が上がらない施設には、共通して「評価軸が言語化されていない」という状態があります。面接官の勘や相性で決めていると、同じ応募者でも担当者によって結論が変わり、なぜ採ったのか、なぜ落としたのかを後から説明できません。説明できない採用は、振り返りもできないので改善もしません。

採用の量と質は、どちらも足りていないのが標準

令和7年度介護労働実態調査で、過去1年間に採用した従業員の人数や質をどう評価しているかを聞いた結果は、「人数・質ともに確保できていない」が30.6%で最も高く、「質には満足だが、人数は確保できていない」が27.6%でした。施設系(入所型)では「人数・質ともに確保できていない」が42.0%、居住系で38.6%と、入居施設ほど厳しくなっています。従業員の定着状況でも「定着率が低く困っている」は全体で18.7%、施設系(入所型)では27.7%です。

ここから読み取るべきは、人が採れないという悩みと、採った人が続かないという悩みが、同じ施設に同時に起きているという事実です。面接を「頭数を確保する関門」として運用している限り、この二つは同時には解けません。面接は選別の場であると同時に、入職後の期待値をそろえる場でもあります。

介護の面接がもつ3つの目的

  1. 適性・能力の評価。自施設のケアで求められる行動を、応募者が過去に取ってきたかを具体的に確認する。
  2. 期待値のすり合わせ。夜勤の回数、記録の方式、看取りの有無、移動距離といった実際の条件を、良い面も負荷も含めて共有する。
  3. 選ばれる場としての機能。応募者は複数の施設を比較しています。面接官の態度と説明の具体性は、そのまま辞退率に跳ね返ります。

この3つを1回の面接に同居させるには、時間配分と役割を先に決めておく必要があります。60分の面接なら、評価のための質問に30分、条件説明と質疑に20分、事務連絡に10分といった枠を作り、面接官が話しすぎて評価材料が集まらない事態を防ぎます。

離職理由から逆算する、介護の面接で見るべき5つの評価軸

何を評価すべきかは、実際に人が辞めた理由から逆算するのが最も確実です。令和7年度介護労働実態調査(労働者調査)では、直前の仕事が介護関係だった人がその仕事を辞めた理由(複数回答、n=6,163)は次のようになっています。

直前の仕事を辞めた理由(直前が介護関係)割合
職場の人間関係に問題があったため27.3%
勤務先の事業理念や運営のあり方に不満があったため21.0%
他に良い仕事・職場があったため17.2%
収入が少なかったため15.7%
結婚・妊娠・出産・育児のため14.0%
自分の将来の見込みが立たなかったため12.4%

重要なのは、上位2つの中身がさらに分解されている点です。「職場の人間関係に問題があったため」と答えた人(n=1,680)のうち、具体的な内容として最も多いのは「上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった」で45.8%、次いで「仕事の進め方に関する上司や同僚との意思疎通がうまくいかなかった」が38.0%、「上司の業務指示が不明確、リーダーシップがなかった」が37.4%です。同僚からのきつい言動は25.0%で、上位は上司・先輩との関係に集中しています。

「勤務先の事業理念や運営のあり方に不満があったため」の中身は、「介護の質の向上の手法・方向性が自分の考え方とは異なっていた」が34.2%、「介護の質の向上の取り組みに対して職員の体制や処遇が追いつかなかった」が33.9%、「介護の質を向上させる姿勢がなかった」が33.3%と並びます。つまり、ケア観のズレと、掲げた理念に運営が追いついていないことの両方が離職に直結しています。

入職の決め手にも同じ構造が出ている

同じ調査で、現在の法人に就職した理由(複数回答)は「通勤が便利だから」が51.8%で最多、次いで「職場の人間関係がよさそうだったため」35.1%、「自分のやりたい介護ができそうだったため」34.2%でした。勤続1年未満に限ると、人間関係が41.7%、やりたい介護ができそうが40.3%、時間外労働が少ないためが30.5%と、いずれも全体より高くなります。直近で入職を決めた層ほど、人間関係とケア観と時間の3点を見て選んでいることになります。

逆算して置くべき5つの評価軸

評価軸データ上の根拠面接で確認する行動
対人葛藤の処理の仕方離職理由1位が人間関係、その中身は上司・先輩との関係が最多意見が食い違ったときに、誰に、どの順番で、どう伝えたか
ケア観の言語化と自施設との相性理念・運営への不満の中身がケアの方向性のズレ直近で悩んだケアの判断と、その理由を自分の言葉で説明できるか
指導・フィードバックの受け止め方指導や言動のきつさが人間関係離職の45.8%指摘を受けた経験と、その後に何を変えたか
業務条件への適合入職理由に時間外労働の少なさが上位(勤続1年未満で30.5%)夜勤・早出遅出・移動・身体負担といった条件に従事可能か
働き続けられる現実条件入職理由1位が通勤の便通勤手段と所要時間、勤務可能な曜日・時間帯(本人が申告する範囲で)

5つ目の軸は扱いに注意が必要です。通勤や勤務可能時間の確認は業務上必要ですが、そこから家庭の事情や同居家族の状況に踏み込むと、後述する公正な採用選考のルールに抵触します。聞くのは「本人が就労条件としてどう申告するか」までで、その背景の家庭環境は評価対象にしません。

構造化面接を介護現場に落とし込む手順と評価シート

構造化面接とは、質問項目、質問の順番、評価の基準を事前に決めておき、応募者全員に同じ形式で行う面接のことです。面接官による評価のばらつきを減らし、なぜその判断になったかを後から説明できるようにする手法で、公正な採用選考の観点からも相性がよい進め方です。介護施設で導入するときは、次の手順で組み立てます。

手順1: 求める人物像を「行動」で書き出す

「明るい人」「優しい人」では評価できません。「利用者の拒否があったときに、いったん引いて時間を置き、別の職員と代わる判断ができる」のように、観察できる行動に落とします。ユニット型特養と通所介護と訪問介護では求める行動が違うので、事業所ごとに書き分けます。

手順2: 評価軸を4〜6個に絞る

前の章の5軸をベースに、自施設の事情を1つ足す程度が現実的です。軸が10個を超えると面接官が処理できず、結局は印象評価に戻ります。

手順3: 1軸につき主質問1つと深掘り3段を用意する

深掘りは「状況」「実際に取った行動」「結果と学び」の順に固定します。たとえば「同僚と意見が合わなかった場面を教えてください」に対して、「そのときの状況は」「あなたは具体的に何をしたか」「その後どうなり、今なら何を変えるか」と3段で追う形です。一般論ではなく過去の実際の行動を聞くことで、回答の作り込みに左右されにくくなります。

手順4: 評価基準を4段階で先に文章化する

評価軸主質問4(高評価)の状態1(低評価)の状態
対人葛藤の処理職員間で意見が割れた場面と、そのときの対応相手の意図を確認したうえで、事実ベースで上長やチームに共有した具体例がある相手の人格への評価に終始し、自分が取った行動が語られない
ケア観直近で判断に迷ったケアと、最終的にどうしたか利用者の意思と安全のはざまで、根拠を挙げて判断を説明できる「マニュアルどおり」「上に従う」以上の説明が出てこない
指導の受け止め仕事で指摘を受けた経験と、その後に変えたこと指摘の内容を具体的に再現でき、行動変化と結果まで語れる指摘された経験自体を思い出せない、または不当だったという説明のみ
業務条件の適合当施設の勤務条件を提示したうえで、従事可能かの確認可否と条件を明確に答え、不可の範囲も具体的に示す曖昧なまま「大丈夫です」と答え、条件の確認をしない
チームでの学び方新しいやり方を覚えたときの学習手順誰に何を聞き、どう記録し、どう再現したかを説明できる見て覚えた、慣れた、以上の説明がない

手順5: 面接官は2名以上、独立採点してからすり合わせる

1名で決めると主観が補正されません。採用する部署の責任者と採用担当者の2名で担当し、面接直後にそれぞれが単独で採点し、点数を見せ合ってから議論する順番にします。先に議論すると、声の大きい方に引きずられます。

手順6: 面接官自身の振る舞いを点検する

面接は構造上、面接官の側に力が偏ります。腕組み、無表情、遮り、質問の連射は、応募者からは圧迫と受け取られ、辞退の理由になります。面接官同士で模擬面接を行い、様子を録画して見返すと、自分の癖は驚くほど自覚できていないことが分かります。話す割合の目安は、面接官3割、応募者7割です。

ケース別・そのまま使える質問例

以下はいずれも、応募者の適性・能力を確認するための質問です。人物像や家庭の事情ではなく、過去の行動と業務条件に焦点を当てています。自施設の評価軸に合わせて取捨選択してください。

介護経験者に聞く

  • 直近の職場で担当していた利用者の状態像と、あなたが主に任されていた業務を教えてください。(経験の実像を確認する)
  • 重度の方や認知症の方への対応で、印象に残っている場面を1つ挙げてください。そのとき何を意識しましたか。(ケアの具体性)
  • ケアの方針で他の職員と考えが違ったとき、どのように話を進めましたか。(対人葛藤の処理)
  • ヒヤリハットや事故に関わった経験があれば、その後にご自身が変えたことを教えてください。(安全に対する姿勢)
  • 前の職場で、これは良い仕組みだったと思うものと、変えたいと思っていたものを1つずつ挙げてください。(改善志向と、当施設との相性)
  • 当施設の1日の流れと記録の方式をご説明します。前職とのやり方の違いで、慣れるのに時間がかかりそうな部分はどこですか。(適応の見立て)

未経験・異業種からの応募者に聞く

  • 前職で、相手の要望と自分たちの都合が食い違ったとき、どう対応しましたか。(対人対応の転用可能性)
  • チームで仕事を進めるうえで、あなたが意識していた役割を教えてください。(協調のスタイル)
  • 新しい業務を覚えるときの、あなたなりの手順を教えてください。(学習の再現性)
  • 介護の仕事について、これまでに調べたり見学したりしたことがあれば教えてください。(動機の具体性)
  • 介護の現場では、移乗や入浴の介助で身体を使う場面があります。実際の動きをご覧いただいたうえで、対応できそうか率直な感触を教えてください。(業務遂行上の適性を、本人の申告として確認する)
  • 資格取得の支援制度があります。入職後1年でどこまで学びたいか、イメージがあれば教えてください。(定着の見通し)

夜勤がある施設系で聞く

  • 当施設は月4回程度の夜勤があり、16時間勤務で仮眠は2時間です。この条件で従事可能でしょうか。(条件の可否を、条件を示したうえで本人に確認する)
  • 夜勤帯は職員が少なくなります。判断に迷う場面で、どのタイミングでオンコールに連絡しますか。(判断基準の持ち方)
  • 夜勤明けの体調管理で工夫していることがあれば教えてください。(セルフマネジメント)
  • 入職当初は日勤で慣れていただき、独り立ちの目安は3か月です。この進め方について希望はありますか。(期待値のすり合わせ)

訪問介護で聞く

  • 1人で訪問し、その場で判断する場面があります。判断に迷ったとき、誰にどう連絡しますか。(報連相の設計)
  • 利用者やご家族から、サービス提供責任者が定めた計画にない依頼を受けたとき、どう答えますか。(制度理解と線引き)
  • 移動は自転車または自動車で、1日あたり4〜6件を担当します。この移動量で従事可能でしょうか。(業務条件の確認)
  • 訪問先で気になる変化に気づいたとき、記録にどう書きますか。(観察と記録)

リーダー・管理職候補に聞く

  • 部下や後輩に指摘をするとき、どんな順番で伝えていますか。(離職理由1位の中身に直結する軸)
  • シフトが埋まらないとき、どこから手を付けますか。(運営の実務力)
  • チームの中で成果が上がらない職員がいた場合、最初の1か月で何をしますか。(育成の具体性)
  • あなたが理想とするケアと、現場の人員体制が合わないとき、どう折り合いをつけてきましたか。(理念と運営のギャップへの耐性)
  • 直近で、あなたの判断でやめた業務・減らした業務があれば教えてください。(業務改善の実績)

そのひと言が違反になる。NG質問と言い換えの対比

厚生労働省は「公正な採用選考をめざして」の中で、採用選考は応募者の基本的人権を尊重し、適性・能力に基づいて行うべきものだとしています。そのうえで、就職差別につながるおそれがある具体的事項として「14事項」を挙げています。介護の面接では、このうち家族と生活環境に関する項目が、雑談や気づかいの形で紛れ込みやすいのが実情です。

就職差別につながるおそれがある14事項

厚生労働省は、次の(a)(b)をエントリーシート・応募用紙に記載させる、面接時にたずねる、作文の題材とするなどによって把握することや、(c)を実施することは就職差別につながるおそれがある、としています。

(a)本人に責任のない事項の把握

  • 本籍・出生地に関すること
  • 住宅状況に関すること(間取り・部屋数・住宅の種類・近隣の施設など)
  • 家族に関すること(職業・続柄・健康・病歴・地位・学歴・収入・資産など)
  • 生活環境・家庭環境などに関すること

(b)本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握

  • 宗教に関すること
  • 人生観・生活信条などに関すること
  • 思想に関すること
  • 購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
  • 支持政党に関すること
  • 尊敬する人物に関すること
  • 労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること

(c)採用選考の方法

  • 身元調査などの実施
  • 合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
  • 本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用

同省の解説では、応募者から「本人の適性・能力以外の事項を把握された」と指摘があったもののうち、「家族に関すること」の質問が多くを占めており、面接の空気を和らげるために聞いてしまうケースが多いと注意を促しています(令和6年度にハローワークで把握した854件の内訳)。介護の面接で家族の話が出やすいのは、まさにこの「和ませるつもり」と、夜勤や急な出勤に家庭の理解が必要だという思い込みが重なるためです。

介護の面接で起きがちなNG質問と、正当な言い換え

確認したい業務上の必要は、ほとんどの場合、家庭の事情を聞かずに「条件を示して従事可能かを問う」形に置き換えられます。

避けるべき聞き方抵触しうる事項言い換え(適性・能力の確認として成立する形)
ご家族は夜勤に賛成していますか家族・家庭環境に関すること当施設は月4回程度、16時間の夜勤があります。この条件で従事可能でしょうか
お子さんは何歳ですか。急な発熱のときは誰が見ますか家族・家庭環境に関することシフトは月ごとに確定します。勤務できない曜日や時間帯があれば教えてください
ご家族に介護が必要な方はいますか家族に関すること(健康・病歴)当法人の休暇制度と両立支援の仕組みをご説明します。利用が必要になった場合は入職後に申し出てください
ご主人(奥様)はどんなお仕事ですか家族に関すること(職業)(採否とは無関係なので、そもそも聞かない)
ご実家はどちらですか。ご出身は本籍・出生地に関すること通勤手段と、自宅から当事業所までのおおよその所要時間を教えてください
今はどんなお住まいですか。持ち家ですか住宅状況に関すること(住宅の種類は採否に無関係。通勤の可否のみ確認する)
尊敬する人は誰ですか尊敬する人物に関することこれまでの職場で、仕事の進め方の参考にした先輩の行動を教えてください
座右の銘を教えてください人生観・生活信条に関すること介護の仕事で大切にしている判断の基準を教えてください
信仰されている宗教はありますか(行事の都合を聞くつもりで)宗教に関すること年末年始やお盆も交代でシフトに入っていただきます。この点について確認しておきたいことはありますか
体力は大丈夫ですか。持病はありませんか健康診断の必要性、家族の病歴に波及しやすい移乗・入浴介助の実際の動きをご説明します。業務として対応可能かを教えてください

業務遂行に必要な条件の確認は、堂々と行ってよい

誤解されがちですが、夜勤の回数、早出・遅出の可否、休日出勤、訪問時の移動手段と件数、身体介助の負荷といった労働条件の確認は、採用選考として正当に行えます。線引きはシンプルで、施設側が条件を先に提示し、それに従事できるかを本人に確認する形なら問題なく、応募者の家庭内の事情や属性を探る形にすると危ういということです。

採用選考の方法についても点検が必要です。前職への無断の照会や近隣への聞き取りは身元調査に該当しうる行為です。健康診断も、業務との関連で合理的・客観的な必要性が説明できない限り、選考の要件にすべきではありません。厚生労働省は、応募者に既往歴を確認する行為や、健康状態の告知書を提出させる行為もここに含まれるとしており、真に必要な場合であっても、検査内容とその必要性をあらかじめ十分に説明したうえで実施することを求めています。応募書類も同様で、本籍が記載された住民票の写しや戸籍謄本の提出を求めることは、本籍・出生地の把握に該当します。市販の履歴書には家族構成や本籍の欄が残っているものもあるため、厚生労働省が用意している応募用紙の様式に統一しておくと事故が減ります。

面接だけで分からない部分は、見学と体験で埋める

60分の面接で分かることには限界があります。特に、チームへのなじみ方、身体介助の実際の動き、記録の速さといった要素は、話を聞くだけでは判断できません。ここを面接の質問で無理に見抜こうとすると、圧迫的な質問や、属性への詮索に流れやすくなります。手段を分けるのが正解です。

職場見学と体験入職

令和7年度介護労働実態調査では、採用活動として「職場体験、職場実習の受け入れを実施」している事業所は24.7%で、実施している事業所のうち23.6%が採用に効果があったと回答しています。実施率で見ればまだ少数派であり、取り入れる余地の大きい手段です。設計時の注意点は次のとおりです。

  • 見せる時間帯を選ぶ。整った時間だけを見せると、入職後のギャップが生まれます。食事介助や入浴の時間帯など、忙しい場面を含めて見てもらいます。
  • 案内役は現場職員にする。管理者だけが同行すると、応募者は本音の質問ができません。年次の近い職員が案内し、質問の時間を別に取ります。
  • 体験入職では業務をさせすぎない。実際に労働に従事させる形にすると、賃金の支払いや労災の扱いが問題になります。見学と説明を中心にし、労働に当たる作業を頼む場合は、その日を有償の勤務として扱う前提で設計します。
  • 利用者の個人情報に配慮する。利用者や家族への説明、記録類の取り扱い、撮影の禁止などをあらかじめ決めておきます。

スポットワークを長い面接として使う

同調査では、過去1年間にスポットワークを利用したことがある事業所は8.9%で、そのうち約3割(28.0%)がスポットワークで働いた人を正社員等として雇用したことがあると回答しています。単発で働いてもらう仕組みは、人手の穴埋めとしてだけでなく、相互に見極める機会としても機能しています。ただし、単発勤務でも労働者としての受け入れになるため、教育と安全配慮、記録の権限設定は通常の採用と同じ水準で用意する必要があります。

リファレンス(前職への照会)の扱い

前職での働きぶりを確認したい場面はありますが、本人の同意なく前職や関係者に照会する行為は、公正な採用選考が禁じる身元調査に近づきます。行うのであれば、照会先と照会内容を本人に明示し、書面で同意を得たうえで、業務遂行に関する事実に限って確認する形にとどめます。同意が得られない場合に、それ自体を不利に評価しないことも決めておきます。

採用の入口そのものを見直す

面接の設計を整えても、母集団が薄ければ判断は甘くなります。同調査では、採用活動として「職員に対して友人・知人などの紹介を依頼」が66.0%、「ハローワークや福祉人材センターの担当者に相談」が64.8%と実施率が高く、効果があったとする割合はそれぞれ47.3%、41.8%でした。チャネルごとの効果差については介護の採用チャネル別「効果率」、職員紹介の制度化については介護のリファラル採用(職員紹介制度)の作り方もあわせて確認してください。

内定辞退と早期離職を防ぐ、条件すり合わせの実務

面接の評価が正しくても、条件の伝え方を誤れば結果は同じです。求人票に書いた内容と面接での説明がずれていると、入職後に「話が違う」となり、試用期間中の離職や、口コミでの評判低下につながります。ここは感覚の問題ではなく、法令上の義務がかかる領域でもあります。

労働条件の明示は募集の段階から義務がかかる

職業安定法第5条の3第1項は、労働者の募集を行う者などに対し、募集に応じて労働者になろうとする者に、従事すべき業務の内容および賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定めています。さらに同条第3項は、労働契約を締結しようとする場合であって、第1項で明示した内容を変更する場合などには、その変更内容を相手方に明示しなければならないと定めています。求人票に書いた条件と違う条件で採用するなら、契約前に変更を明示しなければならないということです。

そもそも求人票に示した労働条件は、そのまま労働契約の内容になることが期待されるものであり、変更明示を行えば自由に変えてよいという趣旨ではありません。「とりあえず高めに出しておいて、面接で調整する」という運用は、法令上も、応募者体験の面でも取るべきではありません。

加えて、2024年4月から労働条件明示のルールが変わり、すべての労働契約の締結時に、雇い入れ直後の就業場所・業務の内容に加えて、これらの「変更の範囲」の明示が必要になりました。複数の事業所を運営する法人で、系列施設への異動や配置転換の可能性があるなら、その範囲を書面で示す必要があります。介護の法人では「グループ内の別事業所への異動が当然」と現場が思い込んでいることが多く、明示が抜けやすい論点です。

面接の場で必ず口頭確認するチェックリスト

  • 基本給と、固定的に支給される手当の内訳(処遇改善の加算に由来する手当は、その旨と支給の考え方)
  • 夜勤の回数の目安と夜勤手当、仮眠の有無と時間
  • 時間外労働の実績(月あたりの平均でよいので、実数で伝える)
  • 年間休日数、有給の取得実績、希望休の出し方
  • 就業場所と、異動・配置転換の範囲
  • 業務の内容と、その変更の範囲(フロア異動、送迎の有無、行事対応など)
  • 試用期間の長さと、その間の労働条件
  • 独り立ちまでの育成計画と、指導担当者の有無

この場で言いにくい条件ほど、後から効きます。同調査で、採用に効果があったとする割合が最も高い方策は「賃金水準の向上」で38.4%、職場定着に効果があったとする割合が最も高いのは「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」で57.9%、次いで「人間関係が良好な職場づくり」が54.6%でした。面接では、この3点を抽象的な自慢ではなく、実際の数字と運用で説明できるかどうかが差になります。

面接後から入職までの動線を切らさない

  1. 結果連絡の期限を面接の場で伝える。「1週間以内に連絡します」と約束し、守ります。介護職の求職者は複数を並行して受けているため、連絡の遅さがそのまま辞退になります。
  2. 内定通知では、評価した点を具体的に伝える。「誰でもよかったのでは」と感じさせないことが、入職後の初速に効きます。
  3. 労働条件通知書を早く出す。口頭の説明と書面の内容が一致しているかを、発行前に採用担当者が突き合わせます。
  4. 入職日までに現場と情報を共有する。面接で本人が語った得意・不安を受け入れ側に渡しておくと、初日の受け止め方が変わります。
  5. 不採用者にも丁寧に連絡する。地域の介護は人のつながりが濃く、対応の質は評判として残ります。

面接の質を上げる運用のコツ

  • 質問票と評価シートを紙で持ち込む。記憶で進めると、忙しい日ほど質問が抜けます。書式があるだけで面接官による差は縮まります。
  • 面接の記録は事実と評価を分けて書く。「暗い印象」ではなく「前職の退職理由を3回言い直した」と事実を書き、評価は別欄にします。後から検証できる記録になります。
  • 雑談を禁止するのではなく、話題を決めておく。天気、通勤経路の分かりやすさ、施設の設備など、属性に触れない安全な話題をあらかじめ用意しておくと、家族の話に流れません。
  • 面接官研修を年1回は行う。公正な採用選考の14事項は、知識として知っていても口が滑ります。模擬面接でNG質問を実際に言ってみる演習が効果的です。
  • オンライン面接では条件説明の資料を画面共有する。口頭だけだと条件の記憶が曖昧になり、入職後の齟齬につながります。
  • 外国籍の応募者には、在留資格の種類と期間、就労制限の有無を確認する。不法就労の防止に必要な確認であり、在留カードで行います。一方で、厚生労働省は国籍を含む本人の責任によらない事項の把握は就職差別につながるおそれがあるとしています。出身国や宗教、家族の状況を採否の判断材料にしないことを、面接官の間で明確にしておきます。
  • 不採用の理由を社内向けに1行で残す。理由を言語化できない不採用が続く場合、評価軸が機能していないサインです。
  • 面接の歩留まりを月次で見る。応募から面接設定、面接から内定、内定から入職の各段階の通過率を見れば、詰まっている工程が特定できます。

よくある質問

Q. 夜勤ができるかを確認したいのですが、家庭の事情を聞かずにどう確認すればよいですか

A. 施設側の条件を先に提示し、それに従事可能かを本人に確認します。「月4回程度、16時間の夜勤があります。従事可能でしょうか」という形なら、業務遂行に必要な条件の確認として成立します。「ご家族は夜勤に賛成ですか」は家族・家庭環境の把握に当たるため避けます。

Q. 応募者が自分から家族の話をしてきた場合はどうすればよいですか

A. 本人が自発的に話すこと自体を止める必要はありませんが、そこを深掘りして質問を重ねたり、評価に反映したりしてはいけません。話題が出たら「ご事情は伺いました。勤務可能な曜日と時間帯の希望として整理させてください」と、業務条件の話に戻すのが安全です。

Q. 人手が足りないとき、基準を下げてでも採るべきでしょうか

A. 基準を下げるのではなく、どの軸なら入職後に育てられるかを事前に決めておくのが実務的です。介護技術や記録の書き方は育成で伸ばせますが、指摘を受けたときの反応やケア観は短期では変わりにくい部分です。育成可能な軸と、譲れない軸を分けておけば、その場の判断で全体が緩むのを防げます。

Q. 面接は1回で足りますか

A. 判断に迷いが残るなら2回目を設定する価値があります。ただし、日程が延びるほど辞退は増えます。1回目で条件と評価軸を固め、迷った点だけを2回目で確認する形にして、間隔は1週間以内に収めるのが現実的です。職場見学を2回目の代わりに置く方法もあります。

Q. 採用選考のときに健康診断書を提出してもらうのは問題ですか

A. 厚生労働省は、合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施を、就職差別につながるおそれがある事項として挙げています。同省は、応募者に既往歴を確認する行為や、健康状態の告知書を提出させる行為も採用選考時の健康診断に含まれるとしたうえで、その必要性を慎重に検討し、応募者の適性と能力を判断するうえで合理的かつ客観的に必要である場合を除いて実施しないよう求めています。真に必要な場合でも、検査内容とその必要性をあらかじめ十分に説明したうえで実施してください。

Q. 求人票の給与と実際の提示額が変わってしまう場合は

A. 職業安定法第5条の3第3項により、労働契約を締結しようとする際に、募集時に明示した労働条件を変更する場合は、その内容を相手方に明示しなければなりません。口頭で済ませず書面で示し、変更の理由も説明します。そもそも求人票の条件は労働契約の内容になることが期待されるものなので、安易に変える前提での求人作成は避けてください。

参考文献・出典

まとめ

介護の採用面接で成果を分けるのは、面接官個人の見る目ではなく、面接という工程の設計です。押さえるべき点を整理します。

  • 評価軸は、実際の離職理由から逆算する。令和7年度介護労働実態調査では、直前の介護関係の仕事を辞めた理由の1位が「職場の人間関係に問題があったため」(27.3%)、2位が「勤務先の事業理念や運営のあり方に不満があったため」(21.0%)で、人間関係の中身は上司・先輩との関係に集中している。
  • 質問・順番・評価基準を事前に決め、全員に同じ形で行う。面接官は2名以上で、独立採点してからすり合わせる。
  • 厚生労働省が示す就職差別につながるおそれがある14事項に触れない。介護では家族・家庭環境への質問が最も紛れ込みやすい。
  • 夜勤や移動といった業務条件の確認は、施設側が条件を先に示し、従事可能かを本人に確認する形にすれば正当に行える。
  • 面接で分からない部分は、職場見学や体験入職で埋める。前職への照会は本人同意を前提にする。
  • 求人票と面接の説明を一致させる。募集時に明示した労働条件を変更するなら、労働契約の締結前に変更を明示する義務がある。

面接の設計は、一度作れば毎回使える資産になります。まずは自施設の評価軸を4つから5つ書き出し、それぞれに主質問を1つずつ用意するところから始めてください。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

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介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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