定着率とは
介護職向け

定着率とは

定着率とは、一定期間が経過した後もなお在籍している職員の割合。100%から離職率を引いた値とは限らず、算定期間と母集団の定義で数字が変わります。介護労働実態調査の離職率の算定式とあわせて、比較できる読み方を解説します。

ポイント

この記事のポイント

定着率とは、ある時点を起点として、一定期間が経過した後にもなお在籍している職員の割合をいいます。法令上の定義がある指標ではないため、起点をいつに置くか、誰を母集団に含めるかによって、同じ職場でも数字が変わります。「100%から離職率を引いた値」と説明されることがありますが、両者は分子のとり方が違うため必ずしも一致しません。求人票や施設の案内で定着率を見るときは、数字そのものよりも算定条件を確認することが重要です。

目次

定着率の算定式と、離職率と一致しない理由

定着率の一般的な算定式は次のとおりです。

定着率(%)= 起点日に在籍していた職員のうち一定期間後もなお在籍している人数 ÷ 起点日の在籍者数 × 100

一方、公益財団法人介護労働安定センターの『介護労働実態調査』は、離職率を次の式で算出しています(令和7年度調査の場合)。

離職率(%)= 1年間の離職者数 ÷ 令和6年10月1日時点の在籍者数 × 100

2つの式を見比べると、分母はどちらも起算日時点の在籍者数ですが、分子の性質が違います。離職率の分子である「1年間の離職者数」には、起算日より後に入職してすぐに辞めた人も含まれます。期中に入職して期中に離職した人が分子に入る以上、離職率は理論上100%を超えることもありえます。これに対して定着率の分子は「起点日にいた人のうち残っている人」に限られます。つまり両者は補数の関係にはならず、定着率と離職率を足して100%にならなくても計算が間違っているとは限らないのです。

介護業界の定着をめぐる公的データ

令和7年度の介護労働実態調査(令和8年7月29日公表、事業所調査の有効回答8,955件)からは、次のことが分かります。

  • 訪問介護員と介護職員を合わせた2職種計の離職率は12.4%で前年度から横ばい、採用率は14.6%で2年ぶりの上昇でした。
  • 年齢階層別に見ると29歳以下の離職率が17.3%と他の階層より高く、若年層の定着が課題とされています。
  • 同調査は事業所に「従業員の定着状況」もたずねており、「定着率は低くない」が73.1%、「定着率が低く困っている」が18.7%でした。サービス系型別では、施設系(入所型)で27.7%、居住系で23.7%が「定着率が低く困っている」と回答しています。

ここで注意したいのは、この調査が定着率そのものを数値として算出しているわけではないという点です。定着状況の設問は事業所の主観的な評価をたずねたものであり、離職率のような算定式に基づく数値ではありません。「介護業界の定着率は◯%」という形で紹介されている数字を見かけたら、それが何を測った値なのかを確かめる必要があります。

定着率を比べるときに確認したい4つの条件

  1. 起点日と期間:入職1年後なのか3年後なのか。新規入職者の1年後定着率と、全職員を対象にした年間の定着率では意味がまったく違います。
  2. 母集団:正社員だけか、パートタイム職員や派遣を含むか。介護現場は非常勤の比率が高いため、この違いで数字が大きく動きます。
  3. 集計の範囲:法人全体か、応募先の事業所単体か。法人全体の平均は、配属先の実態を必ずしも表しません。
  4. 定年退職や休職の扱い:定年退職者や産前産後休業・育児休業中の職員を離職に数えるかどうかで、同じ職場でも数値が変わります。

定着に効果を実感している取り組みは、採用に効くものとは違う

令和7年度介護労働実態調査は、事業所が実施している採用・定着・離職防止の方策と、その効果の実感をたずねています。実施している事業所のうち「職場定着に効果があった」と回答した割合が高かったのは、次の2つでした。

  • 有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり(実施率75.4%、うち職場定着に効果があった57.9%)
  • 人間関係が良好な職場づくり(実施率74.2%、うち職場定着に効果があった54.6%)

これに対して「採用に効果があった」割合が最も高かったのは「賃金水準の向上」の38.4%でした。採用に効く手と定着に効く手が同じではない、という点がこの集計の要点です。求職者としては、賃金の高さだけで職場を選ぶのではなく、休暇の取りやすさやシフト変更の柔軟性を面接の場で具体的に確認しておくと、入職後のずれを減らせます。

定着率に関するよくある質問

Q. 定着率が高い施設ほど良い職場ですか?

A. 一概にはいえません。人の入れ替わりがほとんど起きない状態は、裏を返せば新しい視点が入りにくい状態でもあります。定着率は候補を絞る手がかりのひとつであって、実際の働きやすさは配置人数やシフトの組み方、休暇の取りやすさとあわせて見る必要があります。

Q. 求人票に定着率が書かれていない場合はどう確認しますか?

A. 面接や見学の場で「昨年度、この事業所では何人が入職して何人が退職しましたか」と実数でたずねるのが確実です。割合より実数のほうが、算定条件のあいまいさに左右されません。

Q. 介護業界の離職率は他の産業に比べて高いのですか?

A. 令和7年度介護労働実態調査は、厚生労働省「雇用動向調査」における令和6年の全産業の離職率14.2%と比較して、最近3年間の介護労働者の離職率は全産業に比べ低い水準で推移しているとしています。

Q. 施設側は定着率をどう管理すればよいですか?

A. 算定条件を固定したうえで、年度をまたいで同じ式で追うことが出発点です。入職からの経過月数ごとに残っている人数を見ると、いつ辞めやすいのかが分かり、対策を打つ時期を絞り込めます。

参考文献・出典

まとめ

定着率は、法令上の定義がないぶん、提示する側が算定条件を選べる指標です。だからこそ数字だけを比べても意味がありません。起点日と期間、母集団、集計の範囲という条件をそろえて初めて比較できます。介護労働実態調査が示す離職率12.4%という数値と、事業所の73.1%が「定着率は低くない」と答えている事実は、測っているものが違うだけで矛盾していません。求職者は実数でたずね、施設は算定条件を固定して年度をまたいで追うのが、この指標との付き合い方です。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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