スロープ(福祉用具)とは

スロープ(福祉用具)とは

段差解消用スロープ(福祉用具)の種類(一枚板・レール型・固定式)、車いすが安全に通れる勾配の目安、介護保険の福祉用具貸与・特定福祉用具販売の選択制、住宅改修との違い、選び方の注意点を公的資料に基づき解説します。

ポイント

スロープ(福祉用具)の定義

スロープ(福祉用具)とは、車いすや車輪付き歩行器などが段差を越えるために使う、傾斜のついた板状・レール状の用具です。介護保険では「段差を解消するための福祉用具であって、取付けの際、工事を伴わないものに限る」と定義され、福祉用具貸与の対象となります。要支援1・2の方も利用できます。出典は公益財団法人長寿科学振興財団(健康長寿ネット)です。

目次

スロープ(福祉用具)の概要

スロープ(福祉用具)とは何か

福祉用具としてのスロープは、玄関の上がりかまちや屋外の段差、室内のわずかな段差などに置いて傾斜路をつくり、車いす・電動車いす・車輪付き歩行器・シルバーカーといった「車輪のついた移動用具」が段差を乗り越えられるようにするものです。歩行が不安定な方が足を引っかけて転ぶのを防ぐ目的でも使われます。

介護保険の福祉用具貸与の品目では、厚生労働省告示で「段差を解消するための福祉用具であって、取付けの際、工事を伴わないもの」と位置づけられています。つまり、置くだけ・差し込むだけで使え、ネジ留めやコンクリート工事を伴わないことが条件です。工事を伴って恒久的に段差を解消する場合は、福祉用具ではなく介護保険の「住宅改修(段差の解消)」の扱いになります。

注意したいのは、敷居など室内のごく小さな段差に使う三角形の固定板です。床や敷居に固定して動かさずに使うものは、福祉用具ではなく住宅改修の対象として扱われる場合があります。どちらの制度を使うかは、固定の有無・段差の大きさ・利用者の状態をふまえ、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員が判断します。

福祉用具のスロープは、要支援1・2や要介護1といった軽度の方でも比較的利用しやすい品目です。車いす本体や介護ベッドなどは軽度者には原則として貸与の対象外ですが、置き型スロープや手すり、歩行器などは原則のままでも利用しやすいとされています(出典:厚生労働省「介護保険における福祉用具の選定の判断基準」、健康長寿ネット)。

スロープ(福祉用具)の種類

スロープの主な種類

段差解消用のスロープは、形状と設置方法によって大きく次のタイプに分かれます。設置場所・段差の大きさ・使う移動用具に合わせて選びます。

  • 可搬式(折りたたみ・持ち運び型):必要なときだけ置いて使い、使わないときは折りたたんで収納できるタイプです。一枚板を二つ折り・四つ折りにできる製品が多く、外出時や来客時の一時的な段差解消に向きます。アルミ製やカーボン繊維製で軽量化された製品もあります。
  • 一枚板タイプ:走行面が一枚の板になっているスロープです。介助者もスロープ上を歩いて押せるため安定しやすく、走行できる幅に余裕があるので、ほとんどの車いす(電動を含む)に対応しやすいのが特徴です。
  • レール型(2本組):車いすの左右の車輪の位置に合わせて2本のレールを置くタイプです。介助者はスロープに乗らず地面を歩き、車いすだけがレール上を進みます。左右の幅を調整でき、狭い場所でも使え、持ち運びしやすい一方、車輪をレールに合わせて進む必要があります。
  • 据置式(設置式):玄関先などに置いて据え置きで使う、比較的しっかりした構造のタイプです。重量のある電動車いすに対応する製品もあります。工事を伴わず置いて使うものは福祉用具貸与、床や敷居に固定して工事を伴うものは住宅改修の扱いになります。

材質はアルミ(金属)製、グラスファイバー(FRP)製、木製、プラスチック製などがあり、敷居のような数センチの段差には数センチ幅の小さな板、屋外の大きな段差には数メートルの長いものが使われます(出典:健康長寿ネット、テクノエイド協会)。

スロープの安全な勾配の目安

安全な勾配と必要な長さの目安

スロープの安全性は勾配(傾き)でほぼ決まります。段差の高さが同じでも、長いスロープにするほど勾配はゆるやかになり安全になります。勾配は「段差の高さ : 水平距離」で表し、たとえば1/12は水平に12進んで1上がる傾きです。代表的な目安は次のとおりです(出典:健康長寿ネット、バリアフリー法に基づく一般的な基準、福祉用具メーカーの公開資料)。

勾配(傾斜角度)必要な長さの目安使える場面
1/12(約5度)段差の高さ×約12倍女性や高齢の介助者でも楽に押せ、体力があれば自走も可能。常設・バリアフリー法の基準
1/8(約8度)段差の高さ×約8倍電動車いすの走行や、女性介助者が押すのに向く角度
1/6(約10度)段差の高さ×約6倍簡易スロープで介助前提の実用的な目安。自走は困難で、介助者の付き添いが必要
1/4(約15度)段差の高さ×約4倍かなりの急勾配。これ以上は危険とされ、使用は避ける

たとえば段差30cmに自走できる1/12勾配をつくるには約360cm、介助前提の1/6勾配でも約180cmの長さが必要です。玄関先では3m級のスロープを置くスペースを確保できないことも多く、現実には介助前提の勾配に落ち着くケースが少なくありません。なお屋外では雨で滑りやすくなるため、1/15(約3.8度)程度のさらに緩やかな勾配が理想とされています。

電動車いすや電動アシスト車いすを使う場合は、機種ごとの「実用登坂角度」とスロープの傾斜角度を必ず照らし合わせ、耐荷重も確認します。急勾配ではスロープの先端が車体の底に当たることがあるため注意が必要です。

スロープの貸与・購入・住宅改修の違い

福祉用具貸与・特定福祉用具販売・住宅改修の違い

スロープは、形状や固定の有無によって介護保険上の扱いが分かれます。同じ「段差解消」でも使う制度が異なり、自己負担や手続きも変わります。

区分対象になるスロープ給付の仕組み
福祉用具貸与(レンタル)工事を伴わない可搬型・据置型のスロープ月額レンタル料の1〜3割が自己負担。状態変化に合わせて交換しやすい
特定福祉用具販売(購入)主に敷居等の小さい段差に使い、頻繁な持ち運びを要しない固定式スロープ(可搬型は除く)令和6年4月から貸与と販売の選択制の対象に追加。購入費は年間10万円を上限に1〜3割負担
住宅改修工事を伴って恒久的に段差を解消する傾斜路(コンクリートスロープ等)原則20万円までを上限に、対象工事費の1〜3割負担。「段差の解消」として施工

令和6年4月の制度改正で、固定式スロープ・歩行器・単点杖・多点杖は「貸与と販売のどちらかを選べる」選択制の対象になりました。長く使う見込みなら購入、状態が変わりやすければレンタル、というように、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員の提案を受けて選びます。なお厚生労働省の判断基準では、スロープを貸与する前に、まず住宅改修による段差解消が適切でないかを検討するよう求めています(出典:厚生労働省「介護保険における福祉用具の選定の判断基準」、介護サービス情報公表システム)。

スロープの選び方と設置の注意

選び方と設置で気をつけること

スロープは「置けば安全」になるわけではなく、段差・移動用具・介助力・設置場所の4点をそろえて選ぶことが大切です。厚生労働省の判断基準でも、勾配のゆるやかさ、スロープの長さ・重さ、持ち運びのしやすさを総合的に判断するよう求めています。

  • 段差の高さを正確に測る:必要な長さは段差の高さで決まります。自走なら高さの約12倍、介助前提でも約6倍が目安です。
  • 誰が操作するかを決める:本人が自走するのか、介助者が押すのかで安全な勾配が変わります。自走には1/12のゆるやかさが必要です。
  • 耐荷重と車いすの重量を確認:電動車いすは本体だけで重く、利用者の体重と合わせて耐荷重を超えないか確認します。
  • 前後のスペースを確保:スロープに進入・退出するには前後に平らな助走スペースが必要です。狭い玄関では曲がりきれないこともあります。
  • 持ち運びと収納のしやすさ:重くて取り外せないスロープは、かえって介助負担を増やします。可搬型は重量と折りたたみ寸法を確認しましょう。
  • 滑り止め・雨対策:屋外用は表面の滑り止め加工や、雨天時の濡れに強い材質を選びます。
  • 専門相談員に試用相談を:レンタルなら状態変化に合わせて交換できます。福祉用具専門相談員に実際の段差で試してもらうと失敗を防げます。

製品選びは特定のメーカーに偏らず、利用環境に合うものを中立的に比較することが大切です。判断に迷うときはケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談しましょう。

スロープ(福祉用具)のよくある質問

よくある質問

スロープは介護保険でレンタルできますか

はい。工事を伴わない可搬型・据置型のスロープは福祉用具貸与の対象で、月額レンタル料の1〜3割が自己負担です。要支援1・2の方も利用できます。

スロープと段差解消機は何が違いますか

スロープは傾斜路を上り下りする受動的な用具で、電気を使いません。段差解消機は車いすごと人を電動で垂直に昇降させる設備で、より大きな段差に対応します。段差解消機は重大事故の報告もあり、用途と設置条件が異なります。

固定式スロープは購入もできますか

令和6年4月から、主に敷居などの小さい段差に使う固定式スロープは、貸与と販売を選べる選択制の対象になりました。可搬型は引き続き貸与が中心です。

車いすが自分でこいで上れる勾配の目安は

自走するには1/12(約5度)程度のゆるやかな勾配が目安で、段差の高さの約12倍の長さが必要です。1/6(約10度)になると自走は難しく、介助者の付き添いが前提になります。

スロープと住宅改修はどちらを選べばよいですか

置いて使う一時的な段差解消には福祉用具のスロープ、工事で恒久的に段差をなくすなら住宅改修が向きます。厚生労働省の判断基準では、貸与の前にまず住宅改修での解消が適切でないかを検討するよう求めています。ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談して決めましょう。

スロープ(福祉用具)の参考資料

スロープ(福祉用具)のまとめ

まとめ

スロープ(福祉用具)は、工事を伴わずに段差を解消し、車いすや車輪付き歩行器の移動を助ける用具です。可搬式・一枚板・レール型・据置式といった種類があり、安全に使える勾配は自走で1/12(約5度)、介助前提で1/6(約10度)が目安です。工事を伴わない可搬型・据置型は福祉用具貸与、固定式は令和6年4月から貸与と販売の選択制、工事を伴う恒久的な傾斜路は住宅改修と、制度上の扱いが分かれます。段差の高さ・使う移動用具・介助力・設置スペースを総合的にみて、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談しながら選ぶことが、安全で負担の少ない段差解消につながります。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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