
介護保険負担限度額認定証とは
介護保険負担限度額認定証は特定入所者介護サービス費(補足給付)を受けるための証明書。利用者負担段階1〜4の所得・預貯金基準、食費・居住費の上限、申請手続き、2021年改正の資産要件強化までを公的資料ベースで整理しました。
この記事のポイント
介護保険負担限度額認定証は、特別養護老人ホームや老健、ショートステイの食費・居住費を所得に応じて軽減する「特定入所者介護サービス費(通称:補足給付)」を受けるために必要な証明書です。住民税非課税世帯であり、預貯金が単身1,000万円・650万円・500万円以下のいずれかの基準を満たすと、利用者負担段階1〜3に区分され食費と居住費に1日あたりの上限額が適用されます。市区町村の介護保険担当窓口に申請し、認定後は施設提示で自動的に減額されます。
目次
介護保険負担限度額認定証の制度的位置づけ
介護保険負担限度額認定証は、介護保険法第51条の3に定められた「特定入所者介護サービス費」(短期入所の場合は同法第51条の4「特定入所者介護予防サービス費」相当規定)を受給するために、市区町村が交付する公的証明書です。一般に「補足給付」と呼ばれているのはこの特定入所者介護サービス費のことで、低所得者が施設サービスを利用するときに食費・居住費(滞在費)の自己負担が重くなりすぎないよう、基準費用額と負担限度額の差額を介護保険から施設へ直接支払う仕組みです。
対象となるのは、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護医療院、地域密着型介護老人福祉施設、短期入所生活介護(ショートステイ)、短期入所療養介護の6サービスです。グループホーム、特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム等)、訪問介護、通所介護といった在宅系サービスは対象外なので注意が必要です。
軽減を受けるには、世帯全員(住民票上の世帯を分離している配偶者を含む)が市町村民税非課税であることが大前提となります。さらに2015年改正で預貯金等の資産要件が導入され、2021年8月の改正では段階別に資産要件が引き上げられて、より生活実態に即した区分に再編されました。具体的には第3段階が①と②に分割され、利用者負担段階は1〜4の合計5区分(第3段階を細分すると6区分)となっています。
利用者負担段階と食費・居住費の負担限度額
所得・預貯金基準(2021年8月改正後)
| 段階 | 所得要件 | 預貯金基準(単身/夫婦) |
|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護受給者または老齢福祉年金受給者で世帯全員市町村民税非課税 | 1,000万円以下/2,000万円以下 |
| 第2段階 | 世帯全員市町村民税非課税で、本人の合計所得金額+年金収入が80.9万円以下 | 650万円以下/1,650万円以下 |
| 第3段階① | 世帯全員市町村民税非課税で、80.9万円超〜120万円以下 | 550万円以下/1,550万円以下 |
| 第3段階② | 世帯全員市町村民税非課税で、120万円超 | 500万円以下/1,500万円以下 |
| 第4段階 | 上記以外(住民税課税世帯など) | 負担限度額なし(基準費用額を全額自己負担) |
食費の負担限度額(1日あたり)
| 段階 | 施設入所 | 短期入所 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 300円 | 300円 |
| 第2段階 | 390円 | 600円 |
| 第3段階① | 650円 | 1,000円 |
| 第3段階② | 1,360円 | 1,300円 |
| 第4段階(参考) | 基準費用額1,445円/日が目安 | |
居住費の負担限度額(1日あたり)
| 段階 | 多床室 | 従来型個室 (特養/老健等) | ユニット型個室的多床室 | ユニット型個室 |
|---|---|---|---|---|
| 第1段階 | 0円 | 380円/550円 | 550円 | 880円 |
| 第2段階 | 430円 | 480円/550円 | 550円 | 880円 |
| 第3段階① | 430円 | 880円/1,370円 | 1,370円 | 1,370円 |
| 第3段階② | 430円 | 880円/1,370円 | 1,370円 | 1,370円 |
※従来型個室の左側は特養・地域密着型特養、右側は老健・介護医療院の金額。基準費用額や負担限度額は介護報酬改定や物価動向で変動するため、必ず市区町村の最新公表値を確認してください。
申請手続きと有効期間
申請の流れ
- 窓口を確認する:被保険者証に記載されている市区町村の介護保険担当課(高齢福祉課・長寿支援課等)が窓口です。郵送可の自治体も多くあります。
- 申請書類を準備する:「介護保険負担限度額認定申請書」のほか、本人と配偶者の預貯金通帳の写し(直近2か月分の記帳済みページ・銀行名・名義人・口座番号が分かる箇所)、有価証券や生命保険の残高証明、マイナンバー確認書類、本人確認書類が必要です。
- 同意書に署名する:金融機関等への資産照会に対する同意書を提出します。虚偽申告は最大3倍の加算金徴収(介護保険法第22条の3)の対象となります。
- 市区町村が審査:住民税課税状況・所得・預貯金等を確認し、利用者負担段階を決定します。標準処理期間は2週間〜1か月程度です。
- 認定証が交付される:自宅に郵送されます。施設利用開始時に施設へ提示すると、その月の食費・居住費から負担限度額が適用されます。
有効期間と更新
認定の有効期間は原則として申請月の初日から翌年7月31日までです。介護保険法施行規則第83条の6に基づき毎年更新が必要で、自治体は6月頃に更新案内を送付します。途中で世帯構成・所得・預貯金が大きく変わった場合は、随時届け出が必要となります。
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- 申請が遅れると遡及されない:適用は原則「申請月の初日」からで、入所より後に申請すると入所月の食費・居住費は基準費用額のままになります。入所が決まったらすぐ申請するのが鉄則です。
- 住民票上「世帯分離」していても配偶者は同一世帯扱い:2015年の法改正以降、配偶者は住民票が別でも同一世帯として課税状況・預貯金が合算判定されます。世帯分離だけで第4段階を回避することはできません。
- 有料老人ホーム・グループホームは対象外:在宅扱いのサ高住・住宅型有老・特定施設・グループホームは補足給付の適用がありません。費用負担を軽減したい場合は高額介護サービス費や生活保護住宅扶助など別の制度を併用検討します。
- 非課税年金(遺族年金・障害年金)も判定対象:第2段階・第3段階の所得判定では、非課税の公的年金収入も合算されます。遺族年金受給者は段階区分が思ったより上がることがあるため要注意です。
- 入所相談員・施設のソーシャルワーカーに相談:特養や老健の入所が決まると、施設側が申請書類の準備をフォローしてくれることが多く、ケアマネジャーや相談員に早めに相談すると手続きがスムーズになります。
よくある質問
Q1. 認定証が届く前に施設に入所した場合、食費はどうなりますか?
A. 申請月の初日から認定の効力が発生するため、認定証が後から届いても申請月分まで遡って差額が精算されます。施設へは「申請中」と伝えておきましょう。
Q2. 預貯金が単身で1,001万円ある場合、第1段階は受けられますか?
A. 受けられません。預貯金等が単身1,000万円を超えると第1段階の基準を満たさず、所得要件で下の段階に該当しなければ第4段階扱いとなります。1万円超過でも対象外になるため、申請前に通帳残高の確認が重要です。
Q3. 認定証はどの施設でも使えますか?
A. 介護保険適用の特養・老健・介護医療院・地域密着型特養・短期入所生活介護・短期入所療養介護の6サービスのみで使えます。有料老人ホームやグループホーム、デイサービスでは使えません。
Q4. 第4段階でも特例で軽減される制度はありますか?
A. 「特例減額措置」があり、高齢夫婦世帯で一方が施設入所し、もう一方の在宅生活費が困窮するケース等に第4段階でも段階的な軽減が認められる場合があります。市区町村窓口に相談してください。
Q5. 預貯金にはタンス預金や有価証券も含まれますか?
A. 含まれます。判定対象は預貯金・有価証券・投資信託・金銀(時価評価額)・タンス預金(自己申告)等の現金性資産で、生命保険や不動産は原則含まれません。同意書に基づき金融機関へ資産照会が行われます。
参考資料・一次ソース
- 介護保険法 第51条の3(特定入所者介護サービス費の支給)/第51条の4(特定入所者介護予防サービス費) — e-Gov法令検索
- 厚生労働省「介護保険負担限度額認定について(補足給付)」 — 制度概要・段階別限度額
- 介護保険法施行規則 第83条の6(負担限度額認定の有効期間) — e-Gov法令検索
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」 — 利用者負担と補足給付の位置づけ
- 名古屋市「居住費・食費の利用者負担(負担限度額)」 — 自治体公式の段階別限度額一覧
関連する詳しい解説
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まとめ
介護保険負担限度額認定証は、特養・老健・介護医療院・短期入所の食費と居住費を所得・預貯金に応じて軽減する補足給付(特定入所者介護サービス費)の入口です。2021年改正で資産要件が単身1,000万円・650万円・500万円の3段階に再編され、第3段階は①②に細分化されました。住民税非課税世帯であれば申請しないだけで月数万円の軽減を取り逃す可能性があります。入所が決まったら申請月の初日が適用起点になることを念頭に、市区町村窓口へ早めに動き出しましょう。介護現場で家族支援に関わる職員は、入所相談の初動でこの認定証案内をルーティン化しておくと安心です。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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