
二人介助とは
二人介助とは2人の介助者が連携して行う介助。重度・全介助の移乗や転倒リスクが高い場面で、利用者の安全と介助者の腰痛予防に有効。声かけと役割分担、ノーリフティングケアとの関係を解説。
二人介助とは(直接回答)
二人介助(ふたりかいじょ・2人介助)とは、2人の介助者が連携して1人の利用者を支える介助技術です。ベッドから車椅子への移乗など、1人では安全に支えきれない重度・全介助の場面で用い、利用者の転倒・転落を防ぐと同時に、介助者の腰への負担を分散して腰痛を予防します。医療的処置ではなく、声かけと役割分担で動作のタイミングを合わせる介護技術です。
目次
二人介助の概要
二人介助とは何か
二人介助とは、2人の介助者が同時に1人の利用者の介助に入り、互いの動きを合わせながら移乗・移動・体位変換などを行う方法です。一般的な日常介助は1人で行いますが、利用者の身体状況や介助環境によっては1人では安全を確保できない場面があり、そのときに2人で役割を分担して対応します。
たとえばベッドから車椅子への移乗では、1人が利用者の上半身(体幹)を後方から支え、もう1人が下肢や臀部を支えて持ち上げる動作を合わせます。一方が「せーの」で合図を出し、もう一方が同じタイミングで動くことで、利用者を不安定な姿勢のまま宙に浮かせる時間を最小にし、転倒・転落のリスクを下げます。
二人介助は医療行為ではなく、誰がどこを支え、いつ動くかを言葉で共有する「連携の介護技術」です。厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」(2013年6月改訂)でも、人力での抱え上げは原則として行わせず、やむを得ない場合でも複数人で対応するか福祉用具を使うことが求められており、二人介助はこの方針を現場で具体化する基本動作のひとつに位置づけられます。
ただし「2人いれば安全」ではありません。役割分担と合図が曖昧なまま2人で持ち上げると、力の入れどころがずれてかえって腰を痛めたり、利用者の関節に無理な力がかかったりします。後述する声かけ・タイミングの基本を共有してはじめて、二人介助は安全な技術になります。
二人介助が必要な場面(一覧)
二人介助が必要になる主な場面
次のような状況では、1人介助より二人介助や福祉用具の活用が検討されます。施設や事業所のアセスメントで個別に判断します。
- 重度・全介助の移乗:自分で立位や座位を保てず、体重の大部分を介助者が支える必要がある場合。
- 体格差が大きい:利用者の体格が大きい、または介助者が小柄で1人では体重を支えきれない場合。
- 拘縮・麻痺がある:関節が固まって動きにくい(拘縮)、片麻痺で姿勢が崩れやすいなど、支える点が増える場合。
- 転倒・転落リスクが高い:急に力が抜ける、立ちくらみがある、不随意な動きがあるなど、姿勢が一気に崩れる可能性がある場合。
- 痛みや恐怖が強い:触れられると痛みを訴える、移乗に強い不安があり身体がこわばる場合。1人が声かけと支え、もう1人が動作を担う。
- 床からの抱え起こし:転倒後に床から起こすなど、低い位置からの動作で腰部負担が極端に大きい場合。
これらは「2人でやれば力技で持ち上げてよい」という意味ではありません。後述のとおり、可能な場面ではリフトやスライディングボードなどの福祉用具を優先し、二人介助はそれらと組み合わせて使うのが現在の考え方です。
二人介助のメリット(利用者・介助者)
二人介助のメリット
二人介助には、利用者側と介助者側の両方に明確な利点があります。
利用者にとって(安全と安心)
- 支える点が増えるため、移乗中に姿勢が崩れても立て直しやすく、転倒・転落のリスクが下がる。
- 不安定な座位や立位を1人が専任で支えられるので、恐怖心が和らぎ、身体のこわばりが減る。
- 関節や麻痺側に無理な力が一点に集中しにくく、痛みや皮膚トラブルを避けやすい。
介助者にとって(腰痛予防)
- 1人が背負っていた荷重を2人で分け合うため、1人あたりの腰部への負担が減る。厚生労働省の腰痛予防の啓発資料でも、1人での抱え上げを避け複数人や福祉用具で対応することが基本とされている。
- 無理な中腰や ねじり動作(前かがみで身体をひねる動き)を減らせるため、急性腰痛(ぎっくり腰)の予防につながる。
- 万一利用者の力が抜けても、もう1人が支えに入れるため、とっさの落下を1人で受け止める事態を避けられる。
腰痛は介護職の代表的な職業性疾病であり、離職要因にもなります。二人介助の適切な運用は、利用者の安全だけでなく、介助者が長く働き続けられる職場づくりの一部でもあります。
二人介助の声かけと役割分担の基本
声かけ・役割分担・タイミングの基本
二人介助の安全性は、力の強さよりも「2人の動きがそろうか」で決まります。基本の流れを共有しておきます。
1. 始める前に役割を決める
誰が「リーダー(合図役)」になるかを最初に決めます。多くの場合、利用者の上半身・体幹を支える側がリーダーになり、声をかける役を担います。もう1人は下肢・臀部など、より大きな荷重を扱う側を受け持ちます。「どちらが何を支え、どこへ動かすか」を動作前に一言で確認します。
2. 利用者本人にも声をかける
介助者同士だけでなく、利用者本人にも「今からベッドから車椅子に移りますね」「3つ数えたら立ちますよ」と説明します。本人が心の準備をして力を合わせられると、安全性も自立支援の面でも向上します。
3. 合図でタイミングを合わせる
「1、2、3」や「せーの」など、事業所で決まった合図に統一します。リーダーが合図を出し、その瞬間に2人が同時に動きます。タイミングがずれると、片方だけが荷重を受けて腰を痛めたり、利用者が宙づりになったりします。
4. ボディメカニクスを2人とも守る
足を肩幅に開いて支持基底面を広くとる、膝を曲げて重心を落とす、利用者に近づいて持つ、背中を丸めずねじらない、といったボディメカニクスの原則は二人介助でも同じです。2人が同じ原則で動いてはじめて、負担分散が成立します。
5. 終わったら姿勢と状態を確認する
移乗後は、利用者が安定して座れているか、皮膚や衣服の引っかかりがないか、痛みがないかを2人で確認します。
二人介助とノーリフティング・人手不足の考え方
ノーリフティングケアとの関係と、人手不足のなかでの考え方
「2人で持ち上げれば安全」という発想は、現在は見直されています。近年の腰痛予防の考え方であるノーリフティングケア(抱え上げない介護)では、人力で持ち上げる動作そのものを減らし、移乗用リフトやスライディングボード、スライディングシートなどの福祉用具に置き換えることを優先します。たとえ2人でも、人力での抱え上げは腰部負担と事故リスクが残るためです。
この考え方に立つと、二人介助の位置づけは次のように整理できます。
- 第一選択は福祉用具:移乗用リフトなどで持ち上げ動作を機械に任せられないかをまず検討する。
- 用具を安全に使うための二人介助:つり具の装着、姿勢の調整、利用者の不安への対応など、リフト操作も1人より2人のほうが安全な場面が多い。二人介助は用具と対立するものではなく、組み合わせて使う。
- 用具がない・使えない場面の二人介助:用具が間に合わない緊急時などは、役割分担と合図を守った二人介助で対応する。
人手不足のなかでどう考えるか
介護現場は慢性的な人手不足にあり、「2人がかりの介助に毎回人を割けない」という現実があります。だからこそ、すべてを人力の二人介助でまかなおうとするのではなく、福祉用具の導入で1人でも安全に行える動作を増やし、人の手が本当に必要な場面に二人介助を集中させる発想が重要になります。腰痛による休職・離職を防ぐことは、結果的に現場の人手を守ることにもつながります。介助方法は個人の判断ではなく、事業所のアセスメントとルールに沿って決めることが原則です。
二人介助のよくある質問
二人介助に関するよくある質問
Q. 二人介助と1人介助はどう使い分けますか。
利用者の身体状況(立位や座位の保持力、麻痺や拘縮の有無)、体格差、転倒リスク、介助環境をもとに、事業所のアセスメントで判断します。1人では安全を確保できない、または介助者の腰部負担が大きすぎると評価された場合に二人介助や福祉用具を選びます。個人の感覚で都度変えるのではなく、ケアの方法として共有しておくことが大切です。
Q. 2人なら持ち上げてもよいのですか。
「2人だから力技でよい」わけではありません。現在はノーリフティングケアの考え方が広がり、人力での抱え上げ自体を減らし、移乗用リフトなどの福祉用具に置き換えることが優先されます。二人介助は、用具を安全に使うためや、用具が使えない場面の補完として位置づけるのが基本です。
Q. 二人介助で気をつける最大のポイントは何ですか。
動作のタイミングを合わせることです。役割(誰が体幹を支え、誰が下肢を扱うか)を決め、リーダーの合図で同時に動きます。タイミングがずれると片方に荷重が集中して腰を痛めたり、利用者が不安定になったりします。
Q. 人手が足りず二人介助の人員を確保できません。
すべてを人力の二人介助でまかなうのではなく、福祉用具の導入で1人でも安全に行える動作を増やし、人の手が必要な場面に二人介助を集中させる考え方が現実的です。腰痛による離職を防ぐことが、結果的に人手の確保にもつながります。導入や運用は事業所単位で検討します。
二人介助の参考資料
- [1]職場における腰痛予防対策指針(2013年6月改訂)- 厚生労働省
福祉・医療分野の介護・看護作業を対象に加えた改訂版。人力での抱え上げを原則行わせず、やむを得ない場合も複数人や福祉用具で対応するよう求める。
- [2]
- [3]
- [4]
二人介助のまとめ
まとめ
二人介助は、2人の介助者が役割を分担し合図で動きを合わせて行う介護技術です。重度・全介助の移乗、体格差、拘縮・麻痺、転倒リスクが高い場面で、利用者の安全と介助者の腰痛予防の両方に役立ちます。ただし「2人なら持ち上げてよい」のではなく、まず移乗用リフトなどの福祉用具を優先し、二人介助はそれを安全に使うため、あるいは用具が使えない場面の補完として位置づけるのが現在の考え方です。人手不足のなかでは、用具で1人でも安全に行える動作を増やし、人の手が必要な場面に二人介助を集中させることが、利用者の安全と職員が働き続けられる職場の両立につながります。介助方法は個人判断ではなく、事業所のアセスメントとルールに沿って決めましょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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