介護職の懲戒処分|種類とルール・身に覚えがない時の対応
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介護職の懲戒処分|種類とルール・身に覚えがない時の対応

介護職の懲戒処分(戒告・けん責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇)の種類と重さ、減給上限(労基法91条)、有効になる条件、介護現場で多い事例、不当な処分への反論・相談先、転職への影響を法律と判例で解説。

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この記事のポイント

懲戒処分とは、就業規則に違反した労働者に使用者が科す制裁罰で、軽い順に戒告・けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇の7種類が一般的です。減給には労働基準法91条の上限(1回は平均賃金1日分の半額まで、総額は月給の10分の1まで)があり、就業規則に定めのない処分や、行為に対して重すぎる処分は労働契約法15条により無効になり得ます。身に覚えがない、または不当に重いと感じたら、弁明書で反論し、労働基準監督署・労働組合(ユニオン)・弁護士に相談できます。

目次

「事故の報告書を書かされたうえに減給と言われた」「利用者対応のことで突然けん責された」「身に覚えのない理由で諭旨退職を勧められている」。介護の現場では、人手不足や事故対応の緊張感のなかで、こうした懲戒処分をめぐるトラブルが起こりがちです。

懲戒処分は、受ける側の生活や次の転職にも影響する重い不利益です。しかし、会社が「処分する」と言えば何でも通るわけではありません。懲戒には法律上のルールがあり、就業規則の根拠や処分の重さの相当性、適正な手続が欠けていれば、その処分は無効と判断されることもあります。

この記事では、懲戒処分の7つの種類と重さの順番、減給の上限(労働基準法91条)、懲戒が有効になる条件、介護現場で実際に問題になりやすい事例、そして身に覚えがない・不当だと感じたときの反論と相談先までを、法律と判例にもとづいて整理します。処分歴が転職にどう影響するかにも触れます。

懲戒処分とは|就業規則の根拠がなければ科せない

懲戒処分とは、業務命令や服務規律といった労働契約上の義務に違反した労働者に対して、使用者(会社・施設)が制裁罰として行う不利益措置のことです。職場の秩序を維持するための「ペナルティ」であり、上司がその場で行う口頭注意(指導)とは法的な性格が異なります。

懲戒には「就業規則の根拠」が必須

懲戒処分の内容は法律で一律に決まっているわけではなく、どんな行為にどの処分を科すかは各施設の就業規則に委ねられています。逆に言えば、就業規則に懲戒処分の種類と懲戒事由が定められていなければ、会社は懲戒処分を科すことができません。これは労働基準法89条9号が、制裁の定めをする場合はその種類・程度を就業規則に記載するよう義務づけていることが根拠です。

さらに最高裁は、懲戒を行うには「あらかじめ就業規則において懲戒の種別および事由を定め」、かつその就業規則を労働者に周知させる手続が取られている必要があるとしています(フジ興産事件・最判平成15年10月10日)。就業規則を見たことがない、配布も掲示もされていないという場合、その根拠自体が揺らぐことになります。

「懲戒権濫用法理」が歯止めになる

根拠があっても、会社の懲戒権は無制限ではありません。労働契約法15条は、懲戒が「労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」と定めています。つまり、(1)就業規則上の懲戒事由に本当に当たるか、(2)その行為に対して処分が重すぎないか(相当性)、(3)弁明の機会など手続が踏まれているか、が問われるということです。

まず押さえるべき出発点は、「会社が処分すると言っているから従うしかない」のではなく、根拠・相当性・手続の3点を確認できる立場にあるという点です。次章から、処分の種類と重さ、減給の上限を具体的に見ていきます。

懲戒処分の種類と重さ|7段階の順番

就業規則で定められる懲戒処分は、一般的に次の7種類です。下にいくほど不利益が大きく、重い処分になります。名称は施設によって異なることがあるため、必ず自分の就業規則の文言を確認してください。

重さ処分の種類主な内容給料への影響
軽い戒告(かいこく)口頭または文書で注意し、将来を戒める。始末書を伴わないことが多い原則なし
けん責(譴責)始末書を提出させて将来を戒める。戒告とほぼ同義だが書面提出を伴う原則なし
減給賃金から一定額を差し引く。労基法91条で上限あり(次章)1回・平均賃金1日分の半額まで、月の総額は賃金の10分の1まで
出勤停止一定期間(多くは7〜10日)就労を禁止する謹慎処分。期間中は無給が一般的停止日数分が無給(減給91条の制限は及ばない)
降格役職・職位・資格等級を引き下げる。役職手当が下がる降格後の給与が継続的に下がる
諭旨解雇(ゆしかいこ)退職届の提出を勧告し、応じれば退職扱い。応じなければ懲戒解雇とすることが多い退職金が減額・不支給となる場合あり
重い懲戒解雇制裁として一方的に雇用契約を解消する最も重い処分退職金不支給・解雇予告手当なしとなる場合が多い

戒告・けん責(譴責)

最も軽い処分で、いずれも「将来を戒める」注意です。戒告は口頭中心で始末書を伴わないことが多く、けん責は始末書の提出を求めるのが一般的です。直接の経済的不利益はありませんが、人事評価や賞与査定、昇進にマイナスに働き、懲戒歴として記録に残る点には注意が必要です。

出勤停止(自宅謹慎)

労働契約は続けたまま、一定期間の就労を禁止する処分です。期間中は無給で、勤続年数にも算入されないのが通常です。就業規則で上限を7日や10日と定めている例が多く、法律上の期間の上限はありませんが、あまりに長期の出勤停止は無給による不利益が大きく、有効性が厳しく判断されます。なお、出勤停止と似た「自宅待機命令」は業務命令であり、原則として給料が支払われる点で異なります。

降格

役職や資格等級を引き下げる処分で、役職手当などが下がるため、出勤停止より経済的影響が大きくなりがちです。出勤停止は期間が終われば元の給料に戻りますが、降格は下がった給料がその後も続きます。なお、懲戒としての降格と、人事評価にもとづく人事権行使としての降格は性格が異なります(後者には労基法91条の減給制限は及びません)。

諭旨解雇・懲戒解雇

いずれも雇用契約を終わらせる最も重い処分です。諭旨解雇は、懲戒解雇に相当する事由があるものの本人に反省が認められる場合などに、退職届の提出を勧告するものです。応じれば退職扱いになり、応じなければ懲戒解雇に移行するのが一般的な運用です。懲戒解雇は予告なしの即時解雇となることが多く、退職金の全部または一部が支払われない、解雇予告手当も支払われないといった重い結果を伴います。これらの重い処分ほど、後述する相当性・手続のハードルは高くなります。

減給の上限|労働基準法91条のルールと計算方法

7種類のなかで、唯一はっきりとした金額の上限が法律で決まっているのが減給です。労働基準法91条(制裁規定の制限)は、減給の制裁について次の2つの上限を定めています。会社はこの範囲を超えて減給することはできず、超えた場合は30万円以下の罰金の対象になります(同法120条1号)。

2つの上限ルール

①1回の額は、平均賃金の1日分の半額まで
1つの問題行為(1事案)に対する減給は、平均賃金1日分の半額が上限です。

②総額は、1か月の賃金総額の10分の1まで
複数の問題行為があって複数回減給する場合でも、その月(一賃金支払期)の減給の合計は、賃金総額の10分の1を超えてはなりません。超える分は翌月以降に繰り延べる必要があります。

この2つは「どちらか厳しい方」ではなく、両方を同時に満たす必要があります。1回あたりが半額以内でも、繰り返して月の10分の1を超えれば違法。逆に月の10分の1以内でも、1回が半額を超えれば違法です。

具体的な計算例(月給25万円の介護職の場合)

平均賃金は「直近3か月の賃金総額 ÷ その期間の総日数(暦日数)」で計算します(労基法12条)。

  • 直近3か月の賃金総額:25万円 × 3 = 75万円
  • その期間の総日数:たとえば91日
  • 平均賃金(1日分):75万円 ÷ 91日 ≒ 8,242円
  • ①1回の減給上限:8,242円 ÷ 2 ≒ 4,121円
  • ②月の減給総額上限:25万円 ÷ 10 = 25,000円

つまり、事故やミス1件に対する減給は約4,100円が上限で、「今月は罰として3万円引く」といった処分は、1件の事案に対するものであれば明らかに違法です。実際、後段の「10分の1」だけを見て1件の行為に月給の10分の1を減給してしまう誤りは、使用者側でもしばしば起きています。

「減給」に見えても91条の対象外になるもの

次のケースは、給料が下がっても労基法91条の「減給の制裁」には当たらないため、上限の対象外です。混同しやすいので区別しておきましょう。

  • 遅刻・早退・欠勤の控除:働かなかった時間分の賃金が支払われないのは当然で、制裁ではありません(ノーワーク・ノーペイ)。ただし「遅刻1回につき1日分カット」など実際の不就労時間を超えて引くと、制裁とみなされ91条の対象になります(昭63.3.14基発150号)。
  • 出勤停止期間中の無給:出勤停止の当然の結果であり、減給制裁の制限は受けません(昭23.7.3基収2177号)。だからこそ出勤停止は、日数次第で減給より経済的打撃が大きくなります。
  • 人事権としての降格に伴う賃金減:懲戒ではない人事異動としての降格・役職変更による給料減は、91条の対象外です。
  • 労使の合意による減給:本人が同意した賃金変更は制裁ではありません。ただし「同意」が実質的に強制であれば争う余地があります。

懲戒が有効になる条件|根拠・相当性・適正手続

会社が「処分する」と言っても、次の条件を満たさない懲戒は、労働契約法15条によって無効と判断されることがあります。身に覚えがない・重すぎると感じたときに確認すべきチェックポイントでもあります。

1. 就業規則の根拠と周知(罪刑法定主義に近い考え方)

懲戒事由と処分の種類が就業規則に定められ、かつ労働者に周知されていることが前提です(フジ興産事件・最判平15.10.10)。就業規則にない理由で処分する、見たこともない規則を根拠にする、といった懲戒は根拠を欠きます。

2. 懲戒事由への該当性(その行為が本当に当たるか)

処分理由とされた行為が、就業規則上の懲戒事由に客観的に当てはまる必要があります。事実関係があいまいなまま、一方的な申告だけで「やったことにされている」場合は、この該当性自体が争点になります。

3. 相当性(処分の重さがバランスしているか・比例原則)

行為の性質・程度に対して処分が重すぎないことが必要です。軽微なミスにいきなり諭旨解雇、といった「やり過ぎ」は相当性を欠きます。判断にあたっては、行為の悪質性、結果の重大性、本人の反省、過去の指導歴、同様の事案で他の職員がどう扱われたか(平等取扱い)などが考慮されます。とくに懲戒解雇は労働者への打撃が甚大なため、相当性は厳しく判定されます。

4. 適正手続(弁明の機会など)

就業規則に懲戒委員会や弁明手続が定められている場合、その手続を飛ばすこと自体が無効方向に働きます。明文がなくても、本人に言い分を述べる機会(弁明の機会)を与えずに重い処分を下すと、相当性の判断で会社に不利に働きます。

5. 二重処罰の禁止と不遡及

同じ1つの行為に対して二重に懲戒処分を科すこと(一事不再理)はできません。また、行為の時点で就業規則になかった事由を後から作って遡って処分することもできません。

これら5点のどれかに明らかな欠陥があれば、処分は「無効」と争える可能性が出てきます。ただし、欠陥があれば必ず無効になると断定はできません。最終的な有効・無効は、行為の内容や事情を総合して個別に判断され、立証の責任は基本的に会社側にあると解されています。

介護現場で多い懲戒事例|事故・記録・SNS・利用者対応・遅刻欠勤

ここからが、一般的な懲戒解説にはない介護現場ならではの視点です。介護の仕事は、利用者の身体・生命に直結し、記録や個人情報の比重が大きく、人手不足でシフトが逼迫しているという特徴があります。そのため懲戒事由として問題になりやすい行為にも傾向があります。下表は、介護現場で実際に起こりやすい行為を類型化し、就業規則上どの程度の処分に対応しやすいか、そしてどこで相当性が争点になりやすいかを、労働契約法15条の相当性の考え方にもとづいて当サイトが整理したものです。

※ あくまで一般的な傾向の整理であり、実際の処分は就業規則の定めと個別事情で決まります。同じ行為でも、悪質性・反省・過去の指導歴により処分の重さは変わります。

介護現場の行為類型典型例対応しやすい処分の目安相当性が争われやすいポイント
介護事故・ヒヤリハット移乗時の転倒、誤薬、見守り中の事故戒告〜けん責(過失の程度による)人員配置不足など組織側の要因がある場合、本人だけに重い処分は相当性を欠きやすい
記録の不備・改ざん記録の付け忘れ、事後の書き換え、虚偽記載付け忘れ=戒告/意図的改ざん=減給〜出勤停止以上「故意の改ざん」か「多忙による失念」かで重さが大きく変わる
SNS・個人情報利用者の写真や状態をSNS投稿、利用者情報の漏えい減給〜懲戒解雇(漏えいの範囲・悪質性による)個人情報保護・守秘義務違反は重く扱われやすいが、範囲・影響と処分の均衡が問われる
利用者・家族への不適切対応暴言、乱暴な介助、虐待が疑われる行為けん責〜懲戒解雇(虐待は最も重い)事実認定(本当にあったか、程度)が最大の争点。一方的申告のみでの重処分は手続上問題
遅刻・欠勤・無断欠勤繰り返す遅刻、連絡なしの欠勤、シフト破り戒告〜減給/継続的な無断欠勤=出勤停止以上1回の遅刻に重い処分は相当性を欠く。指導・注意の積み重ねがあるかが鍵
業務命令違反・職場秩序正当な指示の拒否、職員間のハラスメント、暴力けん責〜懲戒解雇(暴力・ハラスメントは重い)命令の「正当性」自体が争点になることがある

介護現場で押さえておきたい当てはめの勘所

事故=即懲戒ではない。 介護事故の多くは、注意義務違反といえる過失と、不可抗力に近いものが混在します。人員配置や設備など組織側の事情が背景にある事故で、本人だけに減給以上の重い処分を科すのは、相当性(比例原則)を欠きやすい領域です。事故報告書の作成は安全管理上の義務であり、報告書を書いたこと自体が懲戒の根拠になるわけではありません。

「記録の書き換え」は意図で重さが変わる。 多忙で後から記録を補記すること自体は通常の業務ですが、事実と異なる内容を意図的に記載・改ざんすれば、信用にかかわる重い事由になり得ます。逆に「付け忘れ」レベルにいきなり出勤停止は重すぎると争える余地があります。

虐待・不適切ケアは「事実認定」が出発点。 利用者対応をめぐる処分は、そもそも問題行為が本当にあったのか、どの程度だったのかという事実認定が最大の争点です。家族や同僚の一方的な申告だけで弁明の機会も与えずに諭旨解雇・懲戒解雇に進むケースは、手続・相当性の両面で争いやすい類型です(ただし虐待が事実であれば、最も重い処分が相当とされ得ます)。

身に覚えがない・不当な処分への対応|反論と相談先

「身に覚えがない」「やったが、この処分は重すぎる」と感じたとき、感情的に反発したりその場でサインしたりする前に、順を追って対応することが大切です。冷静に記録と手続を踏むことが、後で処分を争ううえでも有利に働きます。

ステップ1:処分の根拠と事実を確認する

  • どの就業規則の、どの懲戒事由にもとづく処分かを書面で確認する。口頭だけなら「処分理由を書面でください」と求める。
  • 処分の種類(戒告か減給か解雇かなど)と、減給なら金額・計算根拠を確認する。
  • いつ・どこで・何をしたとされているのか、具体的な事実を特定する。あいまいなら「具体的に教えてください」と質問する。

ステップ2:その場で安易にサイン・退職届を出さない

とくに諭旨解雇で「退職届を出せば穏便に済む」と勧められても、その場で提出しないこと。自分の意思で出した退職届は「自己都合退職」とみなされ、後から「不当解雇だ」と争うのが難しくなります。「持ち帰って確認します」と伝えて構いません。始末書も、事実と異なる内容なら署名を留保できます。

ステップ3:弁明書・反論を文書で残す

言い分があるなら、弁明の機会で口頭で述べるだけでなく、事実関係と自分の主張を書面(弁明書)にして残します。「事実誤認である」「人員不足という背景がある」「指導を受けた記憶がない」など、争点を具体的に書きます。やり取りの日時・相手・内容をメモに残すことも有効です。

ステップ4:証拠を集める

シフト表、勤務記録、介護記録、事故報告書、就業規則、給与明細、上司とのやり取り(メール・チャット)など、客観的な資料を保全します。減給額が91条の上限を超えていないかは、給与明細と平均賃金の計算で自分でも確認できます。

ステップ5:外部に相談する

社内で解決しない、または処分が不当だと考えるときは、外部の相談先を使います(次表)。重い処分や金額の大きい争いほど、早めに専門家へ相談する価値があります。

相談先こんなときに特徴
労働基準監督署(労基署)減給が91条の上限を超えている、賃金未払いがある労基法違反に対する指導・是正。無料。ただし「処分が不当か」という民事の有効性判断は範囲外
総合労働相談コーナー(各労働局)処分全般の相談、あっせん制度の利用無料。話し合いによる解決(あっせん)を仲介してくれる
労働組合・合同労組(ユニオン)社内に組合がない、会社と交渉してほしい一人でも加入でき、団体交渉で会社と話し合える
弁護士(労働者側)懲戒解雇・諭旨解雇など重い処分、無効を争いたい処分無効や損害賠償の請求、交渉・訴訟の代理。法テラスで費用相談も可能

労基署は「労基法違反(減給上限オーバー等)」には強い一方、「この懲戒は無効か」という民事上の有効性そのものは判断しません。処分の無効を本格的に争うなら、ユニオンや弁護士が現実的な窓口になります。なお、懲戒処分の無効を裁判で争える期間にも限りがあるため、納得できない処分は放置せず早めに動くことが大切です。

処分歴は転職に影響する?

処分歴が転職にどう響くかは、多くの介護職が気にする点です。結論から言うと、軽い処分が転職を直接妨げることは通常ありませんが、重い処分には注意が必要です。

履歴書に「懲戒歴」を書く義務は基本的にない

戒告・けん責・減給・出勤停止といった在職中の懲戒歴を、転職先の履歴書や職務経歴書に自分から書く義務は通常ありません。これらは前職の社内記録であり、転職先に当然に共有されるものでもありません。

懲戒解雇は「退職理由」として影響し得る

一方で懲戒解雇の場合、退職理由を「懲戒解雇」と正直に伝える必要が生じる場面があります。経歴を偽って入社すると、後で経歴詐称として新たな懲戒の対象になりかねません。前職調査が行われることは介護業界では多くありませんが、重い処分は転職の難易度を上げる要素にはなります。だからこそ、不当な懲戒解雇は受け入れる前に争う・退職理由を「会社都合」に是正してもらう交渉をする、といった対応の価値があります。

介護職特有の事情

介護は慢性的な人手不足で、未経験・ブランクのある人でも採用されやすい業界です。軽い懲戒歴が再就職の致命傷になるケースは多くありません。ただし、虐待・個人情報漏えい・利用者への暴力など利用者の安全に直結する重大事由は、業界内で慎重に扱われます。処分の重さと事由の性質によって、転職への影響は大きく変わると理解しておきましょう。

もし今の職場の処分のあり方や労務管理に不信感があるなら、それ自体が転職を検討するサインかもしれません。就業規則の運用が適正か、弁明の機会がきちんと与えられるかは、働きやすい職場を見分ける一つの基準になります。

よくある質問(FAQ)

Q. 就業規則を見たことがありません。それでも懲戒処分は有効ですか?

懲戒には就業規則の根拠と労働者への周知が必要とされています(フジ興産事件・最判平15.10.10)。就業規則が作成・周知されていない、懲戒事由の定めがない場合、その懲戒は根拠を欠き無効と争える可能性があります。まず就業規則の開示を求めましょう。

Q. 1回のミスで「今月3万円減給」と言われました。これは合法ですか?

1つの事案に対する減給は、平均賃金1日分の半額が上限です(労基法91条)。月給25万円なら1件あたりおおむね4,000円台が上限で、3万円の減給は明らかに上限超過の可能性が高いです。超過分は労基法違反であり、労基署に相談できます。

Q. 出勤停止で給料が出ないのは違法ではないですか?

出勤停止期間中が無給になるのは、出勤停止という処分の当然の結果であり、減給91条の制限は受けません(昭23.7.3基収2177号)。ただし、不当に長い出勤停止は無給による不利益が大きく、有効性が厳しく判断されます。

Q. 諭旨退職を勧められています。応じるべきですか?

その場で退職届を出す必要はありません。退職届を出すと自己都合退職とみなされ、後から不当解雇を争いにくくなります。「持ち帰って検討します」と伝え、処分理由と就業規則を確認し、必要ならユニオンや弁護士に相談してから判断しましょう。

Q. 身に覚えのない理由で処分されそうです。どうすればいいですか?

まず処分理由を書面で求め、いつ・何をしたとされているのか事実を特定します。弁明の機会で「事実誤認である」と文書(弁明書)で反論し、シフト表や記録などの証拠を保全してください。解決しなければ総合労働相談コーナーやユニオン、弁護士に相談します。

Q. 懲戒処分は転職先にバレますか?

戒告・けん責などの在職中の軽い懲戒歴を、転職先に自分から申告する義務は通常ありません。前職調査も介護業界では一般的ではありません。ただし懲戒解雇は退職理由として影響し得るため、不当な処分は受け入れる前に争う選択肢も検討しましょう。

参考文献・出典

まとめ

介護職の懲戒処分は、戒告・けん責から減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇まで7段階があり、下にいくほど重くなります。重要なのは、会社が言えば何でも通るわけではないという点です。懲戒には就業規則の根拠と周知が必要で(労契法15条・フジ興産事件)、減給には労基法91条の明確な上限(1回は平均賃金1日分の半額、月の総額は賃金の10分の1)があります。行為に対して重すぎる処分や、弁明の機会を欠いた処分は、無効と争える余地があります。

介護現場では、事故・記録・SNS・利用者対応・遅刻欠勤といった事由が問題になりやすく、とくに事故や記録ミスは組織側の事情や故意性によって相当性の判断が分かれます。身に覚えがない・不当だと感じたら、その場で退職届やサインをせず、処分理由を書面で確認し、弁明書と証拠を残したうえで、労基署・総合労働相談コーナー・ユニオン・弁護士に相談しましょう。軽い処分が転職を妨げることは通常ありませんが、重い処分ほど早めの対応に価値があります。

処分の運用や労務管理に不信感が残る職場なら、より適正に運営される施設へ移ることも選択肢です。自分に合った働き方や職場を考えるきっかけとして、働き方診断も役立ててください。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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