
8050問題とは
8050問題とは、80代の親が50代の引きこもり等の子を支え、介護と生活困窮が重なる社会問題。由来・内閣府の推計・地域包括支援センターや重層的支援体制整備事業による相談窓口を解説します。
この記事のポイント
8050(はちまる・ごーまる)問題とは、80代の親が、引きこもりなどで自立が難しい50代の子の生活を支え続け、介護と生活困窮が同時に重なって「親子共倒れ」のリスクが高まる社会問題を指します。生活困窮者自立支援制度の相談窓口で「80代の親・50代の子」の組み合わせが多く確認されたことから名づけられました。高齢の親に介護が必要になった時、子の引きこもりが初めて表面化するケースが多く、介護支援とひきこもり支援の連携が課題となっています。
目次
8050問題の定義と「8050」という言葉の由来
「8050問題」という言葉が広く知られるようになったのは、比較的最近のことです。きっかけは、2015(平成27)年に始まった生活困窮者自立支援制度の相談窓口でした。厚生労働省の「地域包括支援センターにおける『8050』事例への対応に関する調査」報告書は、この窓口で「80歳代の親と50歳代の子どもの組み合わせによる生活問題」が共通して確認されたことから、「8050(はちまる・ごうまる)問題」と呼ばれるようになったと整理しています。
背景にあるのは、ひきこもりの長期化・高年齢化です。かつてひきこもりは10〜20代の若者の問題と捉えられがちでしたが、その当事者がそのまま年齢を重ね、親も高齢化しました。困窮するにつれて親の年金に生活を依存し、親が要介護状態になることで子が離職するといった要因が、社会的孤立と経済的困窮を深めていきます。
8050問題が深刻なのは、一つの世帯に「高齢の親の介護」と「中高年の子のひきこもり・困窮」という複数の課題が同時に存在する点です。高齢の親が亡くなった後に残された子が生活できなくなり、年金の不正受給や孤立死につながる痛ましい事件も報じられています。なお、親が90代・子が60代に達した状態は「9060問題」とも呼ばれ、長期化・深刻化の延長線上にあります。
数字で見る8050問題(公的調査)
8050問題そのものの世帯数を直接数えた公的統計はありませんが、その中核にある「中高年のひきこもり」の規模は内閣府の調査で推計されています。
- 40〜64歳のひきこもり:推計約61.3万人(内閣府「生活状況に関する調査」平成30年/2018年12月実施・2019年3月公表)。中高年層を対象にした初めての調査でした。
- このうち7割以上(76.6%)が男性、ひきこもり期間が7年以上の人が約半数(46.7%)を占め、長期化が鮮明になりました。
- ひきこもりになったきっかけの最多は「退職」で、「人間関係」「病気」が続きます。15〜39歳の推計約54.1万人と合わせ、内閣府は全年齢で100万人超と見込んでいました。
- その後の内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査」(令和4年度)では、15〜64歳のひきこもり状態の人は約50人に1人とされ、全国で約146万人規模と推計されています。
これらの数字はあくまで推計であり、世間体から表面化していない世帯も多いと考えられています。実態は推計を上回る可能性があります。
8050問題と似た言葉との違い
8050問題は「家族のなかで複数のケア・困窮課題が重なる」という点で、近年注目される他の言葉と関連しますが、指す対象は異なります。
| 言葉 | 主に指す状況 |
|---|---|
| 8050問題 | 80代の親が、引きこもり等で自立が難しい50代の子を支える。介護と生活困窮が複合化 |
| ダブルケア | 育児と介護を同一人物・世帯が同時に担う状態 |
| ヤングケアラー | 本来大人が担う家族の介護・世話を、18歳未満の子どもが担う状態 |
| ビジネスケアラー | 働きながら家族の介護を担う現役世代 |
| 9060問題 | 8050問題が長期化し、90代の親が60代の子を支える状態 |
8050問題の特徴は、親の高齢化(介護ニーズ)と子の中高年ひきこもり(就労・生活困窮)が一つの世帯で同時進行する点にあります。このため、高齢者介護の制度だけでも、ひきこもり支援の制度だけでも対応しきれず、分野を超えた連携が必要になります。
8050問題の相談窓口と支援の流れ
8050問題は「制度の狭間」に陥りやすいため、まずは身近な相談窓口につながることが第一歩です。費用はかかりません。一人で抱え込まないことが重要です。
- 地域包括支援センターに相談する:高齢の親の介護・福祉の総合相談窓口です。親の介護をきっかけに、同居する子のひきこもりが初めて把握されるケースが多く、ここが入口になります。
- 自立相談支援機関(生活困窮者自立支援制度の窓口)につなぐ:子の就労・家計・生活の困りごとを相談できます。市区町村や社会福祉協議会が運営し、支援プランの作成や家計改善支援などを行います。
- ひきこもり地域支援センターを活用する:ひきこもりに特化した専門相談窓口で、精神保健福祉士などが対応します。令和4年度からは設置主体が市町村にも拡充されました。
- 重層的支援体制整備事業の窓口(断らない相談):上記が分かれている自治体でも、市町村の包括的な相談窓口を通じて複数機関が連携して支援する仕組みが整いつつあります。
介護のために働けない・離職を迫られているといった場合は、家族介護を理由に退職する「介護離職」を避けるためにも、早めに介護サービスや支援制度につなぐことが大切です。
重層的支援体制整備事業が8050問題のカギになる理由
8050問題が表面化したことは、日本の福祉制度の見直しを後押ししました。従来の制度は「高齢者介護」「障害福祉」「子ども」「生活困窮」と分野ごとに分かれており、一つの世帯に複数の課題があると、どの窓口でも一部しか対応できないという「制度の狭間」が生じていました。
そこで、改正社会福祉法(第106条の4)に基づき、2021(令和3)年4月から「重層的支援体制整備事業」が始まりました。厚生労働省はこの事業の説明資料で、対応すべき複合課題の代表例として「8050世帯」「介護と育児のダブルケア」を明記しています。
- Ⅰ 相談支援(断らない相談):属性や年代を問わず、複合課題をまとめて受け止める
- Ⅱ 参加支援:就労や社会参加への橋渡し
- Ⅲ 地域づくりに向けた支援:地域での見守り・つながりづくり
これにより、たとえばケアマネジャーや地域包括支援センターが高齢の親の介護で訪問した際に、同居する子の困窮を把握したら、生活困窮者の相談支援機関へつなぎやすくなることが期待されています。介護の現場で働く専門職にとっても、8050問題は他分野との連携を意識すべき重要なテーマです。
8050問題に関するよくある質問
- Q. 8050問題はなぜ「8050」と呼ぶのですか?
- A. 80代の親と50代の子が同居する世帯で生活問題が起きることから「8050(はちまる・ごーまる)問題」と呼ばれます。生活困窮者自立支援制度の相談窓口で、この年代の組み合わせが多く確認されたことが名称の由来です。
- Q. ひきこもりでなくても8050問題に含まれますか?
- A. 中核にあるのは中高年のひきこもりですが、病気・障害・失業・離職などで自立が難しく、高齢の親が支えている状態も広く含めて語られます。背景は世帯ごとに多様です。
- Q. 親が要介護になったら、子の問題はどこに相談すればよいですか?
- A. まず地域包括支援センターに親の介護を相談し、そこから子の就労・生活困窮について自立相談支援機関やひきこもり地域支援センターへつないでもらうのが現実的です。重層的支援体制整備事業を実施する自治体では、窓口間の連携が進んでいます。
- Q. 相談に費用はかかりますか?
- A. 地域包括支援センター・自立相談支援機関・ひきこもり地域支援センターなど公的な相談窓口は無料です。なお、民間のひきこもり支援事業者では高額請求などのトラブル報告もあるため、契約前に内容を十分確認しましょう。
- Q. 9060問題とは何ですか?
- A. 8050問題がさらに長期化し、90代の親が60代の子を支える状態を指す言葉です。親の死後に残された子が生活できなくなるリスクがより深刻になります。
参考資料(一次ソース)
- [1]
- [2]
- [3]
- [4]
- [5]
まとめ
8050問題は、80代の親が50代の子を支えるなかで介護と生活困窮が複合化する、現代日本を象徴する課題です。中高年のひきこもりは約61万人(内閣府推計)にのぼり、誰の家庭にも起こりうる身近な問題です。高齢の親に介護が必要になった時こそ、地域包括支援センターを起点に、自立相談支援機関やひきこもり地域支援センター、重層的支援体制整備事業の窓口へとつながることが、親子共倒れを防ぐ第一歩になります。
この用語に関連する記事

介護保険法改正案、衆院本会議で可決|過疎地サービス基準緩和とケアマネ新類型を含む27項目の附帯決議
2026年5月26日、介護保険法・老人福祉法・社会福祉法等の改正案が衆議院本会議で可決。過疎地での運営基準弾力化、住宅型ホーム入居者向けケアマネ新類型『登録施設介護支援』の創設、有料老人ホーム登録制導入など多岐にわたる。原則2027年4月施行で参議院審議へ。

高額療養費の自己負担上限、2026年8月から段階的引き上げ|長期療養者向け「年間上限」を新設
厚生労働省は2025年12月25日、社会保障審議会医療保険部会で高額療養費の見直しを決定。2026年8月と2027年8月の2段階で月額上限を引き上げ、長期療養者向けに新たに「年間上限」を設ける。年収約650万〜770万円の現役世代では月額上限が8万100円から最終的に11万400円へ。介護費との合算自己負担への影響もあわせて整理する。

在宅高齢者の転倒を防ぐ住環境改修|介護保険20万円給付の使い方と費用相場
在宅高齢者の転倒の約7割は居室・玄関・浴室で発生。介護保険の住宅改修費20万円給付の対象6種目を転倒予防効果と費用相場で整理し、危険箇所セルフチェックから事業者選定・申請までを家族視点で解説。

障害者控除対象者認定書とは|要介護高齢者の所得税・住民税が下がる隠れた節税制度
要介護認定を受けた65歳以上の高齢者は、障害者手帳がなくても自治体発行の『障害者控除対象者認定書』で所得税・住民税の控除が受けられます。控除額・認定基準・申請手順・ケアマネへの相談方法まで公的資料ベースで解説。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。