
自立支援促進加算とは
自立支援促進加算は、医師の医学的評価とそれに基づく多職種協働の支援計画で入所者の自立支援を行う際に算定できる加算。2024年改定で特養等は月280単位、老健は300単位。要件と運用を解説。
この記事のポイント
自立支援促進加算とは、介護保険施設において医師の医学的評価に基づき多職種協働で「寝たきり防止」「尊厳の保持」「自立支援」を目的とした特別な支援を行った場合に算定できる加算です。2021年度改定で新設され、2024年度改定で特養・地域密着型特養・介護医療院は月280単位、介護老人保健施設は月300単位に見直されました。LIFEへのデータ提出と6か月ごとの医学的評価、3か月ごとの計画見直しが必須となります。
目次
自立支援促進加算の制度的位置づけと目的
自立支援促進加算は、2021年度(令和3年度)介護報酬改定で新設された加算です。介護保険施設における「寝たきりの予防」「廃用性機能障害に対する機能回復・重度化防止」「尊厳の保持」を一体的に推進することを目的としており、医師による医学的評価とそれに基づく多職種協働の支援計画の策定・実施を要件としています。
従来の機能訓練やリハビリ加算と異なる最大の特徴は、「医師が支援の中心に位置づけられている」点にあります。医師が個々の入所者の身体・認知機能、生活背景、本人・家族の希望を踏まえ、ICFの視点で「できる活動」を医学的に評価し、それを根拠に施設全体で自立支援に取り組む仕組みになっています。
対象施設は介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)・地域密着型介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院の4種別で、要件を満たせば全入所者に対して算定可能です。介護療養型医療施設や有料老人ホーム、グループホーム、在宅サービスは対象外となります。
科学的介護情報システムLIFE(Long-term care Information system For Evidence)へのデータ提出とフィードバックの活用が組み込まれており、エビデンスに基づく介護を施設単位で推進するための代表的な加算として位置づけられています。
自立支援促進加算の主な算定要件
算定にあたっては、以下の要件をすべて満たし、運営指導でも文書で確認できる体制を整える必要があります。
- 医師による医学的評価の実施:入所時に医師が個別評価を行い、その後は少なくとも6か月に1回定期的に再評価する(2024年改定で3か月→6か月へ事務負担軽減として見直し)。
- 多職種協働での支援計画書策定:医師の評価に基づき、医師・看護職員・介護職員・介護支援専門員等が共同して「自立支援に係る支援計画」を策定する。
- 支援計画の定期見直し:策定後は少なくとも3か月に1回、入所者の状態変化や本人・家族の希望を踏まえ計画を見直す。
- 計画に従った特別な支援の実施:寝たきり防止・尊厳保持・廃用性機能障害への自立支援を、施設全体で日常的に提供する。
- LIFEへのデータ提出:医学的評価の結果・支援計画・実施状況等を厚生労働省のLIFEに提出する(提出期限は計画策定月の翌月10日まで)。
- LIFEフィードバックの活用:提出データに基づくフィードバックを受け取り、施設内のPDCAサイクルに組み込む。
- 運営基準・人員基準の充足:基本サービスとしての人員配置基準・運営基準を満たしていることが前提となる。
2024年度改定では、医学的評価の頻度を支援計画の見直し・データ提出の頻度と揃える形で見直しが行われ、現場の事務負担軽減が図られています。
単位数と対象施設(2024年度改定後)
2024年度(令和6年度)改定により、対象施設別に単位数が以下のとおり区分されました。
| 対象施設 | 単位数(月) | 改定前との比較 |
|---|---|---|
| 介護老人福祉施設(特養) | 280単位 | 300単位から減算 |
| 地域密着型介護老人福祉施設 | 280単位 | 300単位から減算 |
| 介護医療院 | 280単位 | 300単位から減算 |
| 介護老人保健施設(老健) | 300単位 | 据え置き |
収益試算例: 入所定員100名の特養が全入所者で算定した場合、280単位×100名×1単位10円換算(地域区分により異なる)=月280,000円、年間で約336万円の増収となります。介護老人保健施設100床なら月30万円・年間360万円規模です。
単価は地域区分により10円〜11.40円で変動するため、東京23区など1級地では収益額がさらに大きくなります。LIFE関連加算の中でも算定額が大きく、施設経営に与えるインパクトの大きい加算です。
運用を成功させる実務ポイント
算定要件を文書で満たすことと、現場で実効的な自立支援ケアを定着させることの両立がカギです。
- 医師の協力体制を最初に固める:配置医師(特養)や勤務医師(老健・介護医療院)と評価フォーマット・実施タイミングを年度初めに合意しておく。医師の時間確保が運用上の最大ボトルネックになりやすい。
- 支援計画書テンプレートの標準化:ICFに沿った「身体機能・活動・参加」の3軸+本人・家族の希望欄を含む施設共通フォーマットを用意し、職員が迷わず記入できる状態を作る。
- LIFE提出スケジュールの月次運用化:計画策定月の翌月10日までに提出が必要なため、月次の事務カレンダーに組み込み、提出漏れによる返戻リスクを防ぐ。
- 多職種カンファレンスへの組み込み:3か月毎の支援計画見直しを既存の入所者カンファレンスやサービス担当者会議と一体運用すると、現場負担を抑えやすい。
- フィードバック活用の証跡化:LIFEからのフィードバックをそのまま放置せず、ケアプラン会議や職員研修での議事録に反映させ、PDCAサイクルの記録を残しておく。
- 運営指導での確認項目を意識:自治体の集団指導資料では「医師評価記録」「支援計画書」「見直し記録」「LIFE提出履歴」が必須確認項目とされている。3点セットでファイリングしておくと運営指導もスムーズ。
よくある質問
Q1. 自立支援促進加算は全入所者に算定できますか?
A. 算定要件を満たし、対象施設で運用している場合は、原則として施設内の全入所者に対して算定できます。短期入所者は別途扱いとなります。
Q2. 訪問介護やデイサービスでも算定できますか?
A. 算定できません。対象は介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院の4種別のみで、在宅サービスや有料老人ホーム・グループホームは対象外です。
Q3. 配置医師がいない施設でも算定できますか?
A. 医師による医学的評価が必須要件のため、医師の協力体制が確保できない施設では算定は困難です。特養では配置医師、老健・介護医療院では勤務医師が中心的役割を担います。
Q4. 2024年改定で何が変わりましたか?
A. 主な変更点は2つです。(1) 特養・地域密着型特養・介護医療院の単位数が300単位→280単位に減額(老健は300単位据え置き)。(2) 医学的評価の頻度が3か月毎から6か月毎に見直され、事務負担が軽減されました。
Q5. LIFEへの提出が遅れた場合はどうなりますか?
A. 提出期限(計画策定月の翌月10日)を守れない場合、当月の算定が認められず返戻となる可能性があります。月次の事務スケジュールに組み込んだ運用が必須です。
まとめ
自立支援促進加算は、医師による医学的評価を起点に多職種で自立支援ケアを実践する施設を評価する、介護報酬の中でも算定額の大きい加算です。2024年度改定で特養・地域密着型特養・介護医療院は月280単位、介護老人保健施設は月300単位と区分され、医学的評価頻度も6か月毎に見直されて事務負担が軽減されました。
算定の鍵は「医師の協力体制 × 多職種カンファレンス × LIFE運用」の3点セットを月次の業務フローに組み込むことです。LIFEへのフィードバック活用まで含めたPDCAサイクルを定着させれば、加算収益と入所者の生活の質向上を両立できる、施設経営にとって戦略的価値の高い加算です。
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執筆者
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